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2008/02/21
小沢代表が「現代中国の諸問題と日韓両国の歴史的使命」について講演
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小沢一郎代表が21日、ソウルでの講演で発表した「現代中国の諸問題と日韓両国の歴史的使命」と題する東アジア安定のためのドクトリンは、全文次の通りです。
本日、私に与えられたテーマは、アジアにおいて急拡大している中国のプレゼンスにどう対応するか、ということであります。
そもそも中国は有史以来、アジアで最大の国として、周辺地域にあらゆる面で大きな影響力を行使してきました。それは、私たち周知の事実であります。したがって、今日、中国が改革開放政策の下で急速な経済成長をとげ、経済拡大によってその影響力をさらに強くしてきている、ということもまた、それ自体はそれほど特別な、ことさら取り上げるほどのことではないと思います。
ただ、現在の中国は、いくつか心配すべき問題点があります。
まず第一に、中国は歴史上、常に歴代王朝が覇権を求め、領土の拡大も行ってきました。今の中国政府は「覇権を求めない」と言っていますが、急成長する経済とそれに伴う巨大な軍事力に対し、世界の国々が懸念を持ち始めていることも事実であります。
したがって、中国には、「覇権を求めず」の言葉通りに、今後も覇道ではなくて王道を歩んで行く、その歩みの中で歴史的に、人類史的に大きな貢献をするという決意を、ぜひとも現実の行動によって示してもらいたいと思います。
二番目の問題点は、中国の政治が共産党一党独裁の体制であるということであります。この体制はいずれ必ず、絶対的な矛盾に直面する、と私は考えております。
改革開放、いわゆる「社会主義的市場経済」は、毛沢東の経済政策の失敗と文化大革命の混乱を収拾する上で、非常に効果的な政策であったと思います。しかし、いくら「社会主義的」という文言をかぶせようとも、市場経済は自由競争を基本原理としており、経済活動の自由の上に成り立っているのであります。そうである以上、中国経済はさらに一層、自由化を進めていかざるを得ません。しかしながら、経済の自由化は一方で、必然的に政治の自由化につながり、その要求は国民の間で一層大きくなると思います。
つまり、改革開放の市場経済と共産主義のプロレタリア独裁は原理的に、絶対に両立し得ないのであります。したがって、中国は早晩、相対立する二つの原理について、政治体制を含めて解決する方策を見出さなければなりません。
第三に、中国では、共産党独裁の下で、ただでさえ強大な権力が経済の発展とあいまって、さらに強大になっています。しかし、権力というものは強大になればなるほど、その独占が必ず腐敗を生み出します。実際、今日、世界の国々では政権が交代するたびに、政治・行政の腐敗が摘発され、正に、「長期の権力は必ず腐敗する」という格言の通りになっていますが、中国もその例外ではあり得ません。
私はかつて、そのことを中国政府や共産党の幹部の人たちに、意見交換の中で直接指摘したことがあります。「共産党が中国を支配し得たのは、共産党とその軍隊が強かったからではない。国民党とその軍隊が腐敗し、大衆の心を掴めなかったからだ」と申し上げました。中国の指導者の中でも心ある人たちはみんな、そのことを憂えています。いま正に、中国共産党は国民党の二の舞になりかねない要因を内包しているのであります。
さらにもう一つの問題は、改革開放、いわゆる「社会主義的市場経済」の下で、中国経済がトータルとして大きく膨らんだ半面、国内で様々な格差が拡大して、あまりにもひどい状態になっていることであります。沿岸部と内陸部との格差はその典型であります。現在、中国には、市場経済化で豊かになった富裕層が数千万人おり、その人たちは日本や韓国の富裕層の水準をはるかにしのぐ巨大な富を有していると言われています。しかしその一方で、経済発展の恩恵に十分にあずかっていない国民が十数億人もおり、その日の生活に困っている人たちも珍しくありません。「権力と富の偏在」と言っても過言ではありません。
歴史を紐解くまでもなく、古今東西、様々な紛争は貧富の差が最大の原因であります。例えば、国際テロ組織「アルカイダ」のウサマ・ビン・ラディンが、米軍をはじめ多くの国々の捜索、追及にもかかわらず、今なお捕まらないのはなぜでしょうか。彼の行方さえ分からないのはなぜなのか。貧しい人たちが国境を越えて、秘かに彼らを支持しているからではないでしょうか。いま、国際平和の最大の脅威となっている国際テロリズムを根絶するにしても、どんなに長く困難な道のりではあっても、貧困の克服から始めなければならないと思います。
そのように、あらゆる紛争の根本原因は、貧困、貧富の差にある、と私は考えております。だからこそ、中国は経済成長が変調をきたしたとたんに、貧富の格差に対する不満が一気に爆発するのではないか、と懸念しているのであります。
私は、古来、中国から最も大きな影響を受けてきた日本人の一人として、中国の経済成長を心から喜んでおります。同時に、以上申し上げてきたような、現在の中国が抱える諸問題が、単に中国だけのものではなく、今後の世界の大きなテーマであると考えております。特に、私たちの東アジアにおいては最も重要なテーマであると思います。
それは、中国の混乱は直ちに世界的規模の動乱につながるからであります。したがって、何としても中国が政治、経済、社会のあらゆる面でソフトランディング(軟着陸)、つまり民主化、自由化の道を歩んで行くようにしなければなりません。そのためには、日本、韓国はもちろん、アメリカをはじめ、世界各国が中国の諸問題の解決にもっともっと協力すべきであると思います。
特に韓国と日本は、世界の中で中国の影響を最も強く受けてきた国であり、三国とも漢字文化圏、儒教文化圏の国であります。何よりも、互いに好むと好まざるとにかかわらず、地理的に最も近い一衣帯水の国々であります。その意味において私は、日本と韓国は極東において、力を合わせて中国のソフトランディングという歴史的大テーマを解決する役割を担って行かなくてはならないと考えております。それが、日韓両国の歴史的使命であると思います。
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