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2006年度定期大会
2005年12月17日
民主党2006年度定期大会

前原誠司代表 定期党大会挨拶

 改めまして皆さん、お早うございます。今日は党大会にわざわざお集まりいただきまして、本当に有り難うございました。特に、来賓の皆さま方には、大変ご多用のところ、曲げてご臨席をいただき、先ほどはフライ英国大使、そしてクレディセゾンの林野さん、また連合の高木会長、素晴らしいお話をいただきましたことを、心から御礼申し上げます。
また下村さん、今日はどうも有り難うございます。

 私も15年あまり政治家をやってまいりましたけれども、国会議員200人近くが後ろから見て演説をするのは初めてでございまして、何か異様なプレッシャーを感じながら、代表の挨拶をさせていただきたいと思っております。

 昨日の全代議員会議で活発なご議論をいただきまして、そして党に対する思い、また今後の党のあり方につきまして皆さま方から、多様な、そしてまた建設的なご意見をいただきましたことに改めて心から御礼を申し上げたいと思います。


「たたかう民主党」― 対案・提案路線の貫徹 ―
 まず私が申し上げたいのは、先ほど林野さんからも、或いは高木さんからもお話がございましたけれども、9月11日の選挙には大敗をいたしました。64議席を減らすことになりました。この小選挙区比例代表選挙という選挙制度の下で、負けは負け、大敗は大敗として、潔く受け入れなければなりません。しかし、実際の票をこれまた精緻に分析をすることも、われわれの再生においてはきわめて重要なことであると私は考えております。

 小選挙区においては、2480万票という票をいただきました。それに対する自民党は、民主党の約1.3倍でありました。小選挙区中心の選挙制度でありますので、議席数は2.6倍になりました。しかも自民党は、連立相手である公明党の組織票をほぼ上乗せする形で得票を得て、それだけの議席になりました。つまりはそういった票を除けば、これだけのブームがあったにも関わらず、ほぼ互角の戦いをさせていただいたということ。これは議席数だけを見るのではなくて、この得票数を見ることによって、日本に二大政党制が根付き、そして何よりも、今までで最高の2480万票を得たという、自信と誇りと責任感というものをもって、われわれはこれからの党再生に向けて、努力をしていかなくてはいけないということを、皆さま方とともに改めて確認をしたいと思います。

 しかも今回の選挙、或いは今までの選挙で、私が一言だけ申し上げたいのは、自民党の候補が、連立の相手とはいえ、臆面もなく、自ら自民党の候補であるにも関わらず、比例は公明党へという、他党への投票を呼びかけたということについては、これは議会制民主主義の形骸化につながる。こういうことを絶対に許してはいけないということも、改めて皆さま方に強い決意として私は申し上げていきたいと思っております。

 当たり前のことではございますけれども、政権交代を実現するためには、国民の皆さま方に、有権者の皆さま方に、われわれがどういう政策を行おうとしているのか、どういう国家をめざそうとしているのか。このことを示すことが大変重要だと私は考えております。
先ほど、高木連合会長から、対案路線もほどほどにというアドバイスをいただきましたけれども、私は、もしわれわれが政権を獲った時には、主要な政策課題においては、具体的に民主党はどう考えるのか。今の政権与党を批判することは容易いことであります。ここが悪い、こういった問題にした責任は重い、ということだけを批判するのは簡単でありますが、われわれが本気で政権を担おうとするのであれば、その批判できる問題について、具体的にわれわれが政権を獲った時には、どういう政策で、どういう対応をしていくのかということを示し続けること、このことについては私は重要なポイントだと思っております。

 従って、来年の通常国会においても、お約束をいたしました対案・提案型の路線というものは、徹底して行っていかなければいけないと思っております。確かに、全ての法案に、法案という形で対案を示すわけではございません。主要政策課題において具体的な考え方をまとめるということでも、きっちりとした対案になり得ると私は思っております。その意味では、効果的な論戦を行うために、選択と集中というものを、この対案・提案路線でも、貫いていかなければならないと考えております。


徹底的に行財政改革 ― 分権が本丸 ―
 今日、この定期大会におきまして、改めて国民の皆さま方、そして今日ご来場いただいた皆さま方とともに、今の日本の置かれている問題点というものを、改めて確認をさせていただきたいと思います。

 最も危機的なのは、私は財政だというふうに思っております。先進国としてはまさに突出した規模の財政赤字というものを持つに至りました。しかもこれから出生率が下がる中で、どんどん子どもさんの数が減っていく。そして2007年には、団塊の世代の皆さま方が定年を迎えられるという、非常に速いスピードで高齢化社会というものを迎えるわけでございます。

 ということは、この財政赤字については、将来的にはますます大きな負担となってのしかかってくるということが予想されますし、財政再建に対する骨太の対案というものをしっかり示すことが、私は何よりも重要な、政権担当能力を示すポイントになると考えております。

 従って、われわれ民主党は、「行革なくして増税なし」という考え方を貫いていくために、まずは徹底した、税金のムダづかいというものを洗っていきたい、そう思っております。
先ほど申し上げましたように、「行革なくして増税なし」、私は今の危機的な財政状況、そして人口動態を考えれば、歳出カットだけで将来的な財政再建というものができるとは思っておりません。

 将来的には、増税ということも当然議論していかなくてはいけませんし、それが責任政党としての責務だと思っておりますが、物事には順序というものがあります。まずは徹底してムダを削るということを行うことが、国民の負託に応えることではないかと私は思っております。

 従いまして、5つの分野というものをまずは設定をして、この分野に対する対案を示し、徹底したムダづかいをなくすための真の改革競争というものを行っていきたいと考えております。

 その5つの分野というのは、まず一つは特別会計の改革。一般会計と特別会計に別れていて、一般会計は厳しくチェックがされる。しかし、企業でいえば子会社である特別会計というものが、一般会計の6倍以上に膨れ上がって、そして伏魔殿のように官僚の使い放題、ムダづかい或いは天下りの温床として温存をされている。それどころか、ますますその抜け道というものが巧妙化してしまっている。この問題について、徹底してメスを入れていかなくてはなりませんし、特別会計の改革というものを、一つの柱と位置づけたいと考えております。

 二番目には公共事業改革。談合の問題や、ムダな公共事業をなくすということを含めて、徹底した公共事業改革を行っていきたいと思いますし、またそれにあわせての特定財源、また特別会計改革もあわせて、この問題については具体的な提言をしていきたいと考えております。

 三番目には、公務員制度改革でございます。数の問題、そして給与の問題、また本質的な問題として、私はILO勧告に基づいて労働基本権を付与するという方向性での公務員制度改革というものをしっかりやっていかなくてはいけないと思っておりますし、またあわせて身分保障の撤廃ということも、大きな公務員制度改革の中で、私は議論をして結論を得ていくべき課題だというふうに考えております。

 そして分権、省庁再々編の問題をあわせたこの5つを、われわれは税金のムダづかいをなくすための真の改革競争として、具体的な提案というものをさせていただかなければいけないと考えております。

 さて、そのムダづかいをなくすための真の改革競争において、私は最も力を入れてやっていかなくてはいけない、もっと言えば、行財政改革の本丸だと考えておりますのが、私は地方分権だというふうに考えております。この分権の問題については、今から少し詳しくお話をさせていただきたいと思いますし、またそれは後ほど、われわれがめざすべき国家像ともリンクをさせた形でお話をさせていただきたいと思っております。

 国、そして都道府県、政令都市、中核市、そして市町村、きわめて多層的に複雑な行政機構というものが入り組んでおります。そしてまた、中央から地方に対する補助金、そしてまたそれに対する裏負担を担保する交付税措置。きわめて複雑な形でこの補助金と交付税というものが入り組んで、そしてそれが地方の自立と、そしてまた、地方の経営感覚、国全体の税金のムダづかいをなくすという経営感覚を失わせている大きな問題点となっているということは、長年指摘をされてまいりました。

 しかし、今の三位一体の議論を聞いておりますと、私は何のことか、さっぱり分かりません。20兆円という補助金のうち、3兆円という額、そしてまたその3兆円の数合わせということについては、全く哲学がありませんし、最終的に分権の将来像をどうしていくのかということについてのビジョンもありません。現在、政調会長にお願いをいたしまして、われわれは、基本は30万人以上の基礎自治体に対して政令都市以上の権限を与える中で、緩やかな道州制、そして国の権限というものは、外交や安全保障、マクロ経済政策
などの基本的な考え方を行うものに限定をして、できる限り住民の皆さま方に近い、地方にまさに主権を移譲する、財源を移譲していく中での分権型社会というものを徹底し、それはひいては究極の行財政改革につながるようなそういう社会というものを求めていきたいというふうに思っております。

 翻って自民党の議論を見ておりますと、この三位一体、先ほど申し上げたように、なぜ3兆円なのか、どういう将来像、分権ビジョンを示すのかということが全く見えてこないし、特別会計をめぐる自民党の中の確執もございます。二つのチームができているそうでありますし、また、あるチームが特別会計の案をまとめても、それが予算に反映されない。

いったい何のための改革なのかということを、私は疑わしく思ってしまいます。
 そして、道路特定財源の一般財源化の問題にいたしましても、総理はそれを指示をしたにも関わらず、今回の予算措置については先送りを結果的になされた。小泉さんの任期は9月までであるということを考えれば、小泉さんの時には頬被りをして、そしてまたぞろ族議員が息を吹き返して、今までと同じような古い形での族議員政治というものを復活をさせる、そういう私は息吹さえ感じるわけでございます。

 そういう意味ではまさに、霞ヶ関の縦割りの構造というものを打ち破る、或いは政官業というものの既得権益を打破する、そしてまた、既得権益のしがらみというものを断ち切る、これができるのはわれわれ民主党だけだと、私どもは考えております。従いましてそういった税金のムダづかいをなくすと同時に、まさに霞ヶ関を中心とした政官業癒着が一体となって、伏魔殿のように税金のムダづかいが行われ続けている今の構造に、真にメスを入れるために、口先だけの民営化とか、口先だけの改革というものに踊らされないで、本当のそれに切り込むための、われわれは案というもの、そしてまた政権を獲得をした時にそれを進めるための具体的な手順というものを、しっかりお示しをしていく必要性があると思っております。


安心できるセーフティネット ― 「公」の重要性 ―
 最近、株価が上昇傾向にあることから、表面上、日本経済の健康状態は少し改善しているのではないか、そういうふうに言われております。しかしながら、先ほど申し上げたように、深刻な財政赤字は、いわば表面からは分からない内臓疾患のようなものであると私は考えています。そして今、日本は、もう一つの深刻な内臓疾患を抱えていると思っています。それは社会のみならず、国民にも見える、二極化の現象であります。

 小泉政権は、不要不急の歳出を生み出し、財政赤字を増殖させるメカニズムを放置する一方で、短絡的な競争原理、表面的な効率化による変化を国民に押し付けております。その結果が、豊かで厚い中間層という、日本社会固有の特徴を失わせつつあります。国民は豊かさの面で、明らかに二極化しつつあるというのは、皆さま方もお感じになっておられることと思います。

 また、「官」の責任放棄、「民」の倫理観低下という事態も招いております。現在、問題になっております構造設計の偽装の問題、「官」が担うべき業務を無定見に放棄するとともに、「民」の監督を十分に行えないという事態。私は、官から民への流れを否定するものではありません。しかし、官から民へ任せてそれで終わり。そして、民間に任せてチェックの働かない仕組みを放置している今の政治の無責任な体制に対して、問題だということを申し上げているのであります。

 これからも、短絡的な競争原理、表面的な効率化の流れと言わざるを得ない面というものに、われわれは毅然として立ち向かっていかなければなりません。BSEの問題然り、アスベストの問題然り、様々な事案で垣間見られる問題というものに、われわれこそが真剣に取り組んでいかなければならないと考えております。

 「官」であれ、「民」であれ、守らなければならない倫理観。いわば、「公(おおやけ)の精神」というものが急速に失われつつあります。その傾向は、子どもを守り、お年寄りを敬うという、日本の地域社会に根付いていた特徴、地域や職域の絆といった伝統的な日本の良さ、強みの崩壊にもつながっています。

 私たちは、公正で誠実な政府を樹立をし、財政再建に真剣に取り組むと同時に、不要不急でムダな歳出を生み出すメカニズムそのものは根絶していかなければなりません。「官」には効率化、「民」には公共性を求めることによって、「官でもなく、民でもない」、「公(おおやけ)」を追求する。あるいは「官であれ、民であれ」、守らなければならない「公(おおやけ)の精神」を追求し、日本固有の良さ、強さ、特徴を引き出すことを目標としております。このことが、短絡的な競争原理、表面的な効率化を追い求める自民党との根本
的な違いであると、私は自負をしております。

 「公(おおやけ)」が担うべき機能、それは社会のセーフティネットと言い換えても過言ではありません。「公(おおやけ)」の機能を担っている場合には、社会のセーフティネットの担い手としての自覚と責任を持たなくてはなりません。そして、「官」が担うのは、セーフティネットそのものであり、「官」の役割も再確認しなくてはなりません。もちろん、その「官」が、セーフティネットを果たすために使うべき財源を、浪費したり流用したりすることは、許されるはずはありません。

 構造設計の偽装問題をめぐる先の証人喚問では、わが党の議員がまさに国民の目線、被害に遭われた家族の方々の目線に立って、徹底的に追及をいたしました。私はこのことを誇りに思っておりますし、その取り組みをされている、議員の皆さん、またスタッフの皆さん、国会対策の皆さん方に、心から私は敬意を表したいと思います。

 しかし問題なのは、そういった問題について、まさにあやふやで幕引きをしようとしている政府・与党の姿であります。こういった問題については与党も野党もありません。まさに政治が一体となって責任を担い、国民の安全、財産というものをどのように担保していくのか。そしてまさに公の責任をいかに果たしていくのかということが大切であり、先般の証人喚問で幕引きをしようとする自民党の態度、与党の態度には、私は憤りさえ覚えるわけであります。

 更なる参考人招致、必要に応じては証人喚問、そして政府としての対応を質すための一般質疑というものを、国会が始まるまでにも断続的に行っていくということをわれわれ民主党として提案をし、求め続けていきたいと考えております。


社会の絆(きずな)― 第2現役、リタイア世代との連携 ―
 「官」が本来の職責として用意すべきセーフティネット、「公(おおやけ)」の側面を持つ「民」が担うべきセーフティネット、これを考えることに関連して、11月下旬に民主党の同僚議員の皆さん方とともに視察をした、全国唯一の養護学校のコミュニティー・スクール、京都市立西総合養護学校でのお話を少々させていただきたいと思います。

 そこにはさまざまな障がいを抱えるお子さんたちがおられました。私も以前、養護学校を視察させていただいたことがありますけれども、今までは、その障がいをもっておられる子どもさんの、いわゆる症状にあわせたクラス編成というものが行われていたわけでありますけれども、この総合という名前が付いておりますのは、そういった障がいの中身でクラス分けをするのではなくて、まさに一緒に子どもさんを一つのクラスで教育をする。そのことによって、例えば自閉症の子どもさん、或いは精神に障がいを持っておられる方、或いは寝たきりで流動食しか摂れないような方々、そういった方々がお互いにいたわり合い、そしてまたお互いの違った症状というものを認識しあう中で、教育のレベルを高めていく。そういった方策がとられていて、一定の成果を挙げておられるということに、私は感心をいたしました。

 話を元に戻したいと思いますけれども、このコミュニティー・スクールこそが、私が先ほど申し上げた、究極の行財政改革としての分権社会の、まさにモデルとして、お金の面だけではなくて、これからわれわれが求めるべき社会の像として、一つの私はイメージというものを提案してくれるのではないか。そういう意味で、皆さま方にその中身をご報告をさせていただきたいと思います。

 コミュニティー・スクールというのは、日本語に直しますと学校運営協議会ということになります。コミュニティー・スクールでは学校運営協議会、PTAの方々、そして教師の方々、三者が一体となって子どもさんたちの教育については、或いはカリキュラムについて相談しあって、お互いが責任を持って校長先生に意見を言って支え合う。こういった運営の仕方がなされているわけでございますが、この学校運営協議会というものは、全くのボランティアから成り立っているものでございます。

 私がうかがったその西総合養護学校の学校運営協議会の責任者は、ある大手の企業の経営者であった細見さんとおっしゃる方であります。細見さんは、企業経営で培ったノウハウや人脈をフルに活用して、現在は地域の活動やボランティア活動のリーダーとして活躍されておられます。その細見さんが、養護学校を訪問した私たちに、このようにしみじみと語っていただきました。

 「このような活動に携わってみて分かったことは、世の中は、競争だけ、お金だけではないということです。例えば、こういう学校で一生懸命努力をされて、ある作業が人並み以上にできるようになられた生徒さん、そういう人たちをオープンに受け入れ、働く機会を与える会社、あるいは、短期的には収益を圧迫してまでも、地球環境の保全のためにがんばっている会社、そうした企業を社会がきちんと評価して欲しいのです。皆さん(民主党)が、競争や利益のみで価値判断をするようなことをせず、企業や個人の社会的貢献をきちんと評価をして下さる政党として大きく成長していただければ、必ず国民は皆さんを応援されるようになりますよ。ようこそ、この学校においで下さいました。心から健闘をお祈り申し上げます。」このようにお話をいただきました。

 私たちのまさにスタンスというのは、今ご紹介をさせていただいた細見さんが訥々と語られたこの言葉の中に、その真実があるのではないかと私は考えています。

 先の特別国会で成立をしてしまいました障害者自立支援法という法律は、自立にはほど遠い内容であり、むしろ障がい者の方々の自立を阻害する法案でございました。この養護学校で学び、働く能力を身に付けたお子さんたちにも、容赦なく負担を課していきます。働けるお子さんならまだいい。しかし、先ほど引用させていただいた、流動食を摂るしかできないような方々は、働きたくても働けない。そういう方々にも一律1割の負担を求める。この方々の親御さんが今はお世話をされておりますけれども、親御さんがまさに面倒を見られなくなった時には、こういった子どもさんたちは、この障害者自立支援法の一律サービスの中で、どのような生活を送らなければいけないのでしょうか。

 そういうことを本当に、一人ひとりの国民全ての目線に立って、今の政治が考えているか、私には到底そうは思えないわけであります。まさにわれわれは、何千億もするようなムダなダム事業、公共事業、或いは干拓事業、そういったものを放置をしながら、2百数十億円にしか節約できないような、しかし一人ひとりの生きる尊厳を奪ってしまうような、そういう法律をつくる政府と厳しく対峙をし、そして全てがお金や効率で、そして言葉だけの官から民へというものの流れで受け止められないような政治のスタンスというものを確立することが、私は民主党の大きな役割だというふうに考えております。

 この養護学校を守って下さっている地域の皆さま方のように、地域の絆、博愛とボランティア精神で「公(おおやけ)」の役割を担おうとしていっている皆さま方。こういった皆さま方と、しっかりと手を携えて、連携をしていくことをわれわれは追求をしていかなくてはなりません。再度申し上げます。お金だけではない、心で繋がりあえる社会。そんな社会を民主党としては実現をしていきたいと私は考えております。

 たまたま昨日(16日)の新聞に、栃木県の今市市の老人クラブの皆さま方が、小学校の児童の登下校の際に同伴や巡回を行うことを決めたという記事が出ていました。この栃木の例のみならず、小さな子どもさんたちの命が無惨にも奪われ続けている。このようなことを二度と起こしてはいけないし、被害に遭われた皆さま方に心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、われわれは再発防止のために、まさにこれこそが政治の責任だという意識の中で、全力を尽くしていかなくてはいけないと思っております。

 今日も学校安全のための法律というものを後ほど皆さま方にアピールをさせていただきますけれども、こういった取り組みというものをしていくと同時に、私は全てが「官」で行うというのではなく、まさにこの「孫の世代の安全を守りたい」という熱意から、2800人もの老人クラブの皆さま方が、まさに「公(おおやけ)」のために立ち上がって下さったというニュース、これは非常に感動をいたしました。

 私どもは、こうした動きが、分権型社会の中でもっと様々な分野で出ていくような、そういった受け皿づくりをしっかり行っていかなければならないし、それはまさにわれわれが今後求めていく地域像、社会像ではないかと考えております。

 2007年には、いよいよ団塊の世代の方々が定年退職を迎えられます。今どきの60歳といえば、まだまだお元気な方が多いわけであります。今まで蓄積された知識、経験、ノウハウというものを是非、社会に活かしていただきたいと思います。「生きがい」というものを、そういったものに見い出していただくためにも、市民参画型分権型社会というものを築いて、教育や子どもの安全、或いは介護、農業、山の間伐、観光案内、環境美化などに、基本的にはボランティアで積極的に参加していただく。壮年層が元気で生き生き活動していただける社会は、満足度が高いだけではなくて、健康的で、医療や介護にお世話になる比率を減らすことができます。「高サービス低コスト」社会を、こういった形でも、われわれはめざしていかなくてはならないと考えています。

 私たち民主党は、「官」がその職責として構築すべきセーフティネットを万全に用意することとともに、少子高齢社会の制約の中で、「公(おおやけ)」のために力を尽くして下さる、第2現役やリタイア世代の皆さんと協力し、更には「民」にも「公(おおやけ)」の側面を十分に意識してもらえるような、21世紀の日本にふさわしいビジョンと政策を追求していきたいと考えております。


正論の外交を追求する ― 真の信頼関係を目指して ―
 外交についても一言申し述べさせていただきます。私たち民主党は、真に日本の国民の立場に立って、日本の国民の生命と財産の安全を守るために外交・安全保障政策に取り組む必要があると考えております。

 先般の日米首脳会談において、小泉総理はブッシュ大統領にこうおっしゃいました。日米関係が緊密であればあるほど、中国や韓国、他のアジアの国々との関係は自然とうまくいく、こうおっしゃいました。われわれ民主党も、日米同盟関係というものの重要性を理解し、主体性を担保しながら発展をさせていかなければいけないと考えます。しかし、日米関係さえ良ければ他の国々との関係が自然にうまくいくというのは、私はそれはおかしいと思っております。

 中国、韓国、そしてASEAN、インド、他の国々ともしっかりとした関係を築いていくということが、私は必要だと考えております。このスタンスに立ちまして、私は先週、10日間、米国と中国を訪問させていただきました。米国に対しても、また中国に対しても、言うべきことははっきり言うという、一貫したスタンスで臨んでまいりました。時には激しい議論になることもございました。しかし一つとして、冷ややかなムードになった会談はございませんでした。

 米国では、イラク問題に対する民主党の立場というものを、説明をしてまいりました。また、中国をはじめとしたアジア外交のあり方についても、しっかりと話をしてまいりました。われわれは米国では、先ほど申し上げましたように、イラクの問題、BSEの問題、或いは地球環境の問題、そしてまた日米同盟関係の主体性の問題、基地の日本への主権の返還、そしてまた空域の返還の話にも、忌憚のない意見交換をさせていただきました。また中国でも、前提はエネルギー、環境、そしてまた鳥インフルエンザやHIVなどの感染症対策、北朝鮮の核の問題、或いは軍事力増強、不透明な状況での軍事交流の必要性の問題、こういった本格的な問題というものを、しっかりと議論をする中で、今回は中国共産党と民主党との間で、年に1回、お互いが交流をして、定期協議をするということにも合意をいたしました。

 お互い腹蔵なく、この腹蔵なくという言葉は、唐家セン元外相がおっしゃった言葉でございますけれども、腹蔵なく、お互いの、後で申し上げます開かれた国益に基づいて、しっかりとした議論というものを行っていかなければならないと私は感じております。

 外交安全保障を考える上で、私の好きな言葉がございます。「外交に敵も味方もいない。
あるのは国家利益だけだ」。これは元ソ連のゴルバチョフ書記長の言葉であります。徹底した現実主義を貫いた言葉だと私は思っております。しかし大切なのは、この「国家利益」という言葉のもつ意味であります。国際政治学には、近隣窮乏化策という考え方が古くにはありました。それは、自らの国家利益を追求するためには、周りの国々の富を搾取すれば良いという考え方であります。それぞれの国が独立した時代なら、この考え方も国家利益の追求に繋がったかもしれません。しかし現在は、人・モノ・カネ・サービス、これが国境を越えて行き来するグローバル化の時代であり、相互依存が日に日に高まっております。つまり国家利益を追求するということは、「相互互恵」「共存共栄」「平和と繁栄の享受」「環境面での持続可能性」「国際協調」を、どれだけ達成できるかにかかっております。

 岡田前代表が提唱された、開かれた国益を追求する外交を、そして戦略性、主体性を持った外交を日本は行なっていくべきであり、その具体像をしっかりと民主党は示し続けてまいりたいと考えております。


日本の将来像 ― 尊厳ある国家・日本 ―
 私は政治の世界に入りまして、一貫して「尊厳ある国家」づくりをめざしてまいりました。「尊厳ある国家」とは一体何か。それは、自分の国、国民に、誇りと自信が持て、他国からも一目置かれる国家になるという意味であります。そのためには国民が、そして国が、私は自立をしなければならないと考えております。経済は莫大な借金に依存し、地方は公共事業と国の補助金に依存する。安全保障はアメリカに過度に依存し、国民は官に結果的に依存する。それぞれを時間をかけてでも、自立へと導いていかなければいけません。自立は他への思いやりにもつながると思っております。

 いずれにいたしましても、われわれの責務は、現在生きている全ての人の平和と幸福を、繁栄を通じて享受をしてもらうとともに、私たちの子どもや孫の世代に、より良い日本、社会、そして世界を引き継ぐことだと考えます。

 先週の土曜日に、これまた私の地元の京都で、子どもさんをめぐる悲惨な事件が起きました。最近は、同様な事件や、社会の疲弊と荒廃を感じざるを得ないような事件・事故が後を断ちません。こうした事態は、単なる偶然でも、時代のせいでもないと考えます。世相は政治の鏡であり、社会のあり様は政治や政策がもたらしている結果と言わざるを得ません。私たち民主党は、そうした点に思いを致し、今一度、政治や政策の中身と方向性を再確認し、国民の皆さま方に平和と安寧の心をもたらす国づくり、地域づくり、世相と社会の醸成に努力をしていかなければなりません。

 私はそのためには、徹底した党内での議論というものが必要だと考えております。そのためには、例えば全議員、或いは公認候補者が集まって、何日間か合宿をしてでも、その議論を行うような、そういった機会を何度でも設けるような、それぐらいの気迫がなければ私はいけないと思っておりますので、是非そういった機会というものを設けるための努力をさせていただきたいと思います。

 「子どもたちを守る」、「現役層が納得して働く」、「第2現役やリタイア後の先輩世代が生き生きと活躍できる」、そんな日本を再構築するのが、私たち民主党の願いです。今一度、立党の精神と原点を再認識し、生活者、消費者、納税者の立場に立った、真の国民政党をめざすことを、ここに改めて誓い合いたいと思います。

 私たち民主党は、日本の子どもたち、次世代の宝たちに、安心できる現在と豊かな未来を引き継ぐために、勇気と志と英知を結集して、ここに新たにスタートを切ることを宣言をいたします。

 どうか皆さん、この党大会を一つの契機として、一番初めに申し上げた、今までで一番多い2480万の方々に応援をいただいた。そして二大政党制、政策を競い合う中で、そしてまた政権交代で政権を獲得し、われわれが研鑽を積み重ねた政策を実現することこそが、唯一われわれ民主党の責務であるということをお互い確認をしあって、この党大会の一つの共通の認識とさせていただきたいと思います。ご静聴有り難うございました。


以  上
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