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2003/06/24
イラク人道復興支援特別措置法案に対する代表質問
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民主党・無所属クラブ
衆議院議員 中川正春
私は、民主党・無所属クラブを代表して、「イラク人道復興支援特別措置法案」につき、総理及び関係大臣に質問します。
最初に、国際政治の枠組みに対する基本的な認識について意見を述べ、あわせて、総理のご認識を質したいと思います。
ブッシュ政権誕生後に起きた9.11テロ事件が、アメリカの姿勢を先鋭化させています。私たちは、この一国主義的なアメリカの姿勢に、強い懸念を持っています。イラク問題に対し、民主党は、当初から徹底的な国連査察を通じた平和的解決を訴えました。さらにイラク攻撃に対しては既存の安保理決議では不十分として、新たな国連決議の採択を訴え、単独主義的な姿勢をとった米国等による対イラク攻撃に反対しました。
私たちは、イラクの現状がここに至り、改めて国連の枠組みを有効なものに組み立て、アメリカによる一国主義的な占領政策から、国連主導によるイラク国民の自己決定権を基本にしたネーション・ビルディング、国家建設の枠組み構築を目指すべきだと考えます。その枠組みの中でこそ、日本が惜しみなく援助を実行していく道筋ができるのです。
改めて総理にうかがいます。日本政府としてアメリカに対し、一国主義をあらためて、国連主導の枠組み構築を目指すことを強く主張していくべきだと考えますが、そうした主張をこれまで総理は国際会議の場でアメリカ・ブッシュ政権に対して表明したことがあったのかどうか、明確に答えていただきたい。
イラク人道支援法の論議に入ります。
私は、今回のイラク支援法を議論するにあたり、二つの基本的な論点があると認識しております。
第一に、イラクのトータルな復興支援のニーズに対して、日本が何をもって貢献するのが一番ふさわしいのかと言うことであります。
第二は、日米の同盟関係にたって、連合国暫定統治機構(CPA)を中心にしたアメリカの占領政策に具体的にどのような協力ができるのか、あるいはまた、それは、やるべきではないと言う事なのか。という議論であります。
まず、イラクの現状認識とニーズの問題であります。民主党は、先般、党独自の調査団をイラクとその周辺地域に派遣しました。以下は、その調査団の報告をもとにした私達の主張であります。
<調査団の報告>
統治機能の再構築のため、国連主要国との緊密な連携のもと、暫定政権の設置に向け、日本政府は、連合国暫定統治機構(CPA)や国内諸勢力への働きかけを強めていくべきです。その際、私たちの主張は、米英の占領行政から国連主導によるイラク統治機構再編の動きに切り替えていく事であります。また、連日のように強盗団などによる発砲事件や米軍を狙った攻撃が発生しており、イラクの治安状況は悪化してきております。警察国家だったイラクの警察機構を民主化し、治安を早期に回復させるため、民主的な「交番」システムの紹介や文民警察官や民間警備会社の積極的活用など、わが国警察などによる協力は、有効であり、地元のイラク国民に歓迎される貢献と言えます。
また、60%を越す大量の失業者の出現が社会不安を増幅しています。教育水準や技術水準が高いイラク人が自らの力でイラク再建を手がけるべきだという基本認識に、復興支援事業の原点を置くべきであります。民主党は、略奪などにあった学校・医療施設や、上下水道、放送・通信施設などの復旧事業について、失業中のイラク国民を緊急に臨時雇用し、雇用を創出する「イラク復興、ジャパン・プラン」を提案します。
<自衛隊派遣問題>
次ぎに、この法案の主なる目的、自衛隊派遣について、質問します。
端的に伺います。国会を延長してまでも、自衛隊派遣にこだわるのは、小泉総理の総裁再選に向けた政局的思惑があるからだと、自民党内部の反対勢力の声が聞こえてきます。国際政治の根幹にかかわる事を、政局に利用する事があるとすれば、それだけで、総理大臣並びにそうした内部議論を前提に政局運営をする自民党は政権政党として失格であります。総理、事実を明確に答えていただきたい。
第二に、政府が自衛隊の派遣の論拠にしている国連決議1483は、国連の枠組みによるトータルな支援要請であります。各国の軍隊派遣を特定しているものではありません。そんな中で、小泉総理がどこまでも自衛隊支援にこだわるのは、アメリカから、特に、ブッシュ大統領から小泉総理に要請があったからではありませんか。国連ではなく、アメリカの要請による自衛隊派遣だと理解しますが、総理、その事実をお答えいただきたい。
さらに、最近の英米の国会内部の議論で明らかなように、イラクの大量破壊兵器の保有について、故意に情報操作が行われた疑惑が持ち上がっています。日本も独自の情報源を持ちえず、ただアメリカの追随をすることで、小泉総理は、日本の外交を進めてきたのではありませんか。総理、このイラクへの武力攻撃の米英の大義が崩れかかっている現状をどのように考えますか。
以上の重大な問題点があるにしろ、もう一方で、これからの具体的な法案の審議を通じてさらにはっきりとしなければならない論点があります。現地に本当のニーズがあって、現在の憲法の枠組みのなかで間接的に貢献できる可能性があれば、自衛隊派遣を頭から否定するものではありません。しかし、具体的な復興分野では、民間の専門家、民間業者やNGOが、失業中のイラク専門家、公務員等を雇って事業を推進した方が効率的かつ雇用創出にもつながると、民主党調査団は報告しています。このことを考えると、現時点で自衛隊でなければ果たせない緊急ニーズの特定は困難といわざるを得ない状況であることも事実であります。
先にイラクに派遣された茂木外務副大臣からも、「医療部隊や施設部隊のイラク派遣には現地のニーズはない」と消極的な報告があったように聞き及びます。政府の言う、自衛隊派遣のニーズとは、何を根拠に、どのような内容を想定して提案しているのか総理、外務大臣、そして防衛庁長官から聞かせていただきたいと思います。
それでは以下、具体的に政府の法案の内容について伺います。
<目 的>
政府案では、国連安保理決議678、687、1441等に基づくイラク攻撃を受け、安保理決議1483号等を踏まえ、人道・復興支援活動等を行うものとなっています。民主党は、イラク攻撃に際し、既存の国連決議では国際法上、イラク攻撃を正当化するのは不十分として、新たな国連安保理決議の採択を求めました。それを拒んだ政府が、今回、この法案の要では、一連の国連決議を前提としていますが、イラク攻撃に大義があったのか、あらためて総理の見解を伺います。
<基本原則>
自衛隊の活動に関し、対応措置の実施は、戦闘行為が行われていない地域に限るとされています。現地の治安情勢から判断すると、戦闘地域と非戦闘地域の峻別、或いは戦闘員と非戦闘員の区別は事実上出来ないという事であります。相変わらずのフィクションに依存する姿勢には呆れるほかありません。本当にこれで任務を達成できるのか。自衛隊のトップに立つ防衛庁長官及び総理から、ご所見を伺いたい。
また、この法案では受入国の同意に代わって、「安保理決議等に従って施政を行う機関」の同意を要件としています。これは、現在、占領行政を行うアメリカの連合国暫定統治機構(CPA)の同意を前提としていることであり、占領行政を行う米英軍の指揮下に入る状態は、交戦権を否認する憲法上の制約に抵触する恐れがあります。総理及び外務大臣から、憲法との関連も含め、CPAの同意を前提とし、しかもその指揮下で自衛隊が活動することの是非に対する明確な答弁をいただきたい。
<活動内容>
次に、「安全確保支援活動」について伺います。今回の法案では、従前と違い武器・弾薬の輸送については、否定していません。確かに治安の維持のために、現地でしなければならない支援ニーズはある。しかし、反対勢力は、重火器を携帯しており、自衛隊の装備の点から、安全に任務達成できる見込みがないこと。また、本来、国連派遣の部隊となることが望ましいにもかかわらず、実質的には米軍指揮下の活動となり、反対勢力から、占領軍の一翼を担うものとして攻撃の標的となる危険性が生じるのであります。これでは、現地で良好と言われる対日感情に悪影響を及ぼす可能性が否定できません。イラク周辺諸国からも、日本がアメリカの占領政策に自衛隊によって直接携わるべきでないと言う意見がきかれます。これからの対イラク外交、対中東外交のあり方を想定すると、国益の見地から、このような関与の仕方は妥当でないと考えますが、総理及び外務大臣のご所見を伺います。
<国会承認>
私は、原則的に国会による民主的統制を徹底する意味で、自衛隊が海外で活動するような場合には、国会の事前承認とすべきだと考えます。この点に関しては、過去、テロ対策特別措置法の議論の際も、民主党の主張に対して、大よその理解は得られていたものの、当時の与党の政局的な思惑によって排除された経緯があります。今回は、政局ではなく、国益を踏まえた政策上の慎重な判断をすべきであります。総理から、日本の国益を踏まえたしっかりとしたご答弁をいただきたい。
<民主的統制>
さらに、民主的統制の見地より、「国会の議決による撤退」規定と「国民に対する情報提供義務」規定について、官房長官から、答弁いただきたいと思います。
<特別措置>
次に、法律の有効期限が、施行から4年とされていますが、その期間の根拠となる情勢判断について、総理及び官房長官の明確な答弁を求めます。
<武器使用基準>
最後に、武器使用基準について伺います。聞くところによると、与党内での論議では、法案を「軽いもの」とするために、今回は、懸案となっていた武器使用基準の正面からの見直し緩和は行わず、PKO法に準拠したものとなったということであります。今回の法案審議で、私達は与党の期待する「軽い議論」を行うつもりは一切ありません。小泉政権は、無責任であります。
いったい、現行の武器使用基準によって、重火器で武装する反対勢力が闊歩する地域で、自衛官が安全に任務を達成できると何を根拠に考えているのでありますか。また、法律の改正ではなく、部隊行動基準(ROE)の変更で、重火器の携帯を認めるとの話も聞こえてきます。現場に携わる自衛官からは、このような議論が前提となっていては、任務の達成と、部下のモラルに責任がもてないとの声が出ていると聞き及びます。実際の部隊を預かる防衛庁長官、このような規定であなたは、自衛隊の諸君の命を危険に晒すことに同意するのですか。
以上、この法案に対する具体的な論点について述べました。最後に、大切なポイントを指摘したいと思います。この先、中東についての論議は、イスラエルの和平プロセスは勿論、イランの核疑惑に対するアメリカの強硬姿勢など大きく動く可能性があります。そんな状況で、総理、アメリカへの追随のみを日本の国是とする小泉外交は破綻するときが来る。
私達は、日本の真の国益を見据えて、独自の国際戦略を構築するときに来ているのであります。このことを指摘して質問を終ります。
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