ニュース
ニュース
2003/04/03
独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案要綱
第一 総則

 一 目的

   この法律は、独立行政法人等において個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、保有個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する権利につき定めるほか、独立行政法人等における個人情報の取扱いに関する基本的事項を定めることにより、個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関し本人が関与することその他の個人の権利利益を保護することを目的とする。(第一条関係)

 二 定義

  1 この法律において「独立行政法人等」とは、独立行政法人及び別表に掲げる法人をいうものとすること。(第二条第一項関係)

  2 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいうものとすること。(同条第二項関係)

  3 この法律において「保有個人情報」とは、独立行政法人等の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した個人情報であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に利用するものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいうものとすること。ただし、法人文書に記録されているものに限るものとすること。(同条第三項関係)

  4 この法律において「個人情報ファイル」とは、保有個人情報を含む情報の集合物であって、一定の事務の目的を達成するために氏名、生年月日その他の記述等により特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものをいうものとすること。(同条第四項関係)


第二 独立行政法人等における個人情報の取扱い

 一 特に慎重な取扱いを要する個人情報(第三条関係)

  1 独立行政法人等は、あらかじめ本人の同意を得ないで、次に掲げる事項を含む個人情報(公知であるものを除く。)を取り扱ってはならないものとすること。
  (1)思想及び信条に関する事項
  (2)医療に関する事項
  (3)福祉に係る給付に関する事項
  (4)犯罪の経歴に関する事項
  (5)人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地

  2 1は、次に掲げる場合については、適用しないものとすること。
  (1)法令に基づく場合
  (2)人の生命又は身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
  (3)法令上の義務の履行のために必要な場合その他これに準ずる正当な理由がある場合

  3 独立行政法人等が前項第二号又は第三号の規定に基づき1に定める個人情報を取り扱う場合について、情報公開・個人情報保護審査会への諮問義務及び当該取扱いに関する記録の義務等について定めること。

 二 個人情報の保有の制限等

   独立行政法人等は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める業務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用目的をできる限り特定しなければならないものとし、当該利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を保有してはならないものとすること。(第四条関係)

 三 利用目的の明示

   独立行政法人等は、本人から直接書面に記録された当該本人の個人情報を取得するときは、一定の場合を除き、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を書面又は電磁的方法により明示しなければならないものとすること。(第五条関係)

 四 適正な取得

   独立行政法人等は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならないものとすること。(第六条関係)

 五 正確性の確保

   独立行政法人等は、利用目的の達成に必要な範囲内で、保有個人情報が過去又は現在の事実と合致するよう努めなければならないものとすること。(第七条関係)

 六 安全確保の措置

   独立行政法人等は、保有個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の保有個人情報の適切な管理のために必要な次に掲げる措置その他の措置を講じなければならないものとすること。(第八条関係)

  1 保有個人情報の取扱いに関する業務の実施状況についての定期的な監査の実施

  2 職員の研修の実施

 七 従事者の義務

   個人情報の取扱いに従事する独立行政法人等の役員又は職員並びにその受託業務に従事している者等は、その業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用してはならないものとすること。(第九条関係)

 八 利用及び提供の制限

  1 独立行政法人等は、法令に基づく場合又は内部利用その他一定の事由がある場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならないものとすること。(第十条第一項及び第二項関係)

  2 独立行政法人等が利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供する場合について、情報公開・個人情報保護審査会への諮問義務及び当該利用等に関する記録の義務等について定めること。(同条第三項―第七項関係)

  3 独立行政法人等は、利用目的が異なる二以上の電子計算機処理に係る個人情報ファイルを電子計算機を用いて照合し、又は結合することが個人の権利利益を侵害するおそれがあることに配慮しなければならないものとすること。(同条第八項関係)

 九 保有個人情報の提供を受ける者に対する措置要求

   独立行政法人等は、必要があると認めるときは、保有個人情報の提供を受ける者に対し、個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ずることを求めるものとすること。(第十一条関係)


第三 個人情報ファイル

 1 独立行政法人等は、当該独立行政法人等が保有している個人情報ファイルについて、個人情報ファイルの名称、利用目的、利用目的以外の目的のために利用し又は提供するときは当該目的、記録項目等一定の事項を記載した個人情報ファイル簿を作成し、公表しなければならないものとすること。(第十二条第一項関係)

 2 独立行政法人等は、個人情報ファイル簿を作成した後、新たに個人情報ファイルを保有するに至ったときは、直ちに、当該個人情報ファイルを個人情報ファイル簿に掲載しなければならないものとすること。(同条第三項関係)

 3 独立行政法人等は、個人情報ファイル簿に記載した事項を変更したときは、直ちに、個人情報ファイル簿を修正しなければならないものとすること。(同条第四項関係)


第四 開示、訂正及び利用停止

 一 開示請求権等

  1 何人も、この法律の定めるところにより、独立行政法人等に対し、保有個人情報の開示を請求することができるものとすること。(第十三条関係)

  2 独立行政法人等は、開示請求に係る保有個人情報に次に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが含まれている場合を除き、当該保有個人情報を開示しなければならないものとすること。(第十五条関係)

  (1)未成年者又は成年被後見人の法定代理人が本人に代わって開示請求をする場合において当該本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報
  (2)開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの。ただし、法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができる等の情報、人の生命、健康等を保護するため開示することが必要であると認められる情報並びに公務員等の職務の遂行に係る情報のうち当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分を除く。
  (3)法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、当該法人等若しくは当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの又は独立行政法人等の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供されたものであって、当該条件を付することが合理的であると認められるもの。ただし、人の生命、健康等を保護するため、開示することが必要であると認められる情報を除く。
  (4)国の機関、独立行政法人等及び地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討等に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換等が不当に損なわれること、不当に国民の間に混乱を生じさせること等が明らかであるもの
  (5)国の機関、独立行政法人等又は地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすことが明らかであるもの

  3 開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれているときは、原則として、当該部分を除いた部分につき開示しなければならないものとすること。(第十六条関係)

  4 開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示することができるものとすること。(第十七条関係)

  5 開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、独立行政法人等は、当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができるものとすること。(第十八条関係)

 二 開示請求の手続等

  1 開示請求は、開示請求をする者の氏名等及び開示請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項を記載した開示請求書を提出してしなければならないものとするとともに、開示請求書の補正について必要な規定等を設けること。(第十四条関係)

  2 独立行政法人等は、原則として、開示請求があった日から三十日以内に開示決定等をし、書面により通知しなければならないものとするとともに、事務処理上の困難その他正当な理由等があるときは、開示決定等の期限を三十日以内に限り延長することができるものとすること。この場合には、独立行政法人等は、開示請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間等を書面により通知しなければならないものとすること。(第十九条並びに第二十条第一項及び第二項関係)

  3 開示請求者は、開示請求があった日から三十日内(2により期限が通知された場合にあっては、当該期限まで)に開示決定等がされないときは、不開示決定があったものとみなすことができるものとすること。(第二十条第三項関係)

  4 独立行政法人等は、正当な理由があるときは、他の独立行政法人等又は行政機関の長に対し、事案を移送することができるものとすること。(第二十一条及び第二十二条関係)

  5 開示請求に係る保有個人情報に第三者に関する情報が含まれている場合における意見書提出の機会の付与及び当該第三者が開示に反対する意見書を提出した場合における開示の実施時期について、必要な規定を設けること。(第二十三条関係)

  6 保有個人情報の開示は、文書又は図画については閲覧又は写しの交付により、電磁的記録については独立行政法人等が定める方法により行うものとするとともに、開示の実施について必要な規定を設けること。(第二十四条関係)

  7 開示請求者に対し開示請求に係る保有個人情報が6に規定する方法と同一の方法で開示することとされている他の法令の規定との調整について、必要な規定を設けること。(第二十五条関係)

  8 手数料について、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならないこととし、必要な規定を設けること。(第二十六条関係)

 三 訂正請求権等

  1 何人も、この法律の規定により開示決定を受けた自己を本人とする保有個人情報の内容が事実でないと思料するときは、この法律の定めるところにより、当該保有個人情報を保有する独立行政法人等に対し、当該保有個人情報の訂正を請求することができるものとすること。(第二十七条関係)

  2 独立行政法人等は、訂正請求があった場合において、当該訂正請求に理由があると認めるときは、当該保有個人情報の訂正をしなければならないものとすること。 (第二十九条関係)

 四 訂正請求の手続等

  1 訂正請求は、訂正請求をする者の氏名等及び訂正請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項等を記載した訂正請求書を提出してしなければならないものとするとともに、訂正請求書の補正について必要な規定等を設けること。(第二十八条関係)

  2 独立行政法人等は、原則として、訂正請求があった日から三十日以内に訂正決定等をし、書面により通知しなければならないものとするとともに、事務処理上の困難その他正当な理由等があるときは、訂正決定等の期限を三十日以内に限り延長することができるものとすること。この場合には、独立行政法人等は、訂正請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間等を書面により通知しなければならないものとすること。(第三十条並びに第三十一条第一項及び第二項関係)

  3 訂正請求者は、訂正請求があった日から三十日内(2により期限が通知された場合にあっては、当該期限まで)に訂正決定等がされないときは、訂正をしない旨の決定があったものとみなすことができるものとすること。(第三十一条第三項関係)

  4 独立行政法人等は、正当な理由があるときは、他の独立行政法人等又は行政機関の長に対し、事案を移送することができるものとすること。(第三十二条及び第三十三条関係)

  5 独立行政法人等は、必要があると認めるときは、保有個人情報の提供先に対し、訂正決定をした旨を書面により通知するものとすること。(第三十四条関係)

 五 利用停止請求権等

  1 何人も、この法律の規定により開示決定を受けた自己を本人とする保有個人情報が、第二の一に違反して取扱いがされているとき、第二の二に違反して保有されているとき、第二の四に違反して取得されたものであるとき、又は第二の八に違反して利用され、若しくは提供されていると思料するときは、この法律の定めるところにより、当該保有個人情報を保有する独立行政法人等に対し、当該保有個人情報の利用停止を請求することができるものとすること。(第三十五条関係)

  2 独立行政法人等は、利用停止請求があった場合において、当該利用停止請求に理由があると認めるときは、利用停止をすることにより当該保有個人情報の利用目的に係る事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるときを除き、当該保有個人情報の利用停止をしなければならないものとすること。(第三十七条関係)

 六 利用停止請求の手続等

  1 利用停止請求は、利用停止請求をする者の氏名等及び利用停止請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項等を記載した利用停止請求書を提出してしなければならないものとするとともに、利用停止請求書の補正について必要な規定等を設けること。(第三十六条関係)

  2 独立行政法人等は、原則として、利用停止請求があった日から三十日以内に利用停止決定等をし、書面により通知しなければならないものとするとともに、事務処理上の困難その他正当な理由等があるときは、停止決定等の期限を三十日以内に限り延長することができるものとすること。この場合には、独立行政法人等は、利用停止請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間等を書面により通知しなければならないものとすること。(第三十八条並びに第三十九条第一項及び第二項関係)

  3 利用停止請求者は、利用停止請求があった日から三十日内(2により期限が通知された場合にあっては、当該期限まで)に停止決定等がされないときは、利用停止をしない旨の決定があったものとみなすことができるものとすること。(第三十九条第三項関係)

 七 異議申立て

  1 開示決定等、訂正決定等、利用停止決定等又は開示請求、訂正請求若しくは利用停止請求に係る不作為について不服がある者は、独立行政法人等に対し、異議申立てをすることができるものとすること。(第四十条第一項関係)

  2 開示決定等、訂正決定等及び利用停止決定等について異議申立てがあったときは、異議申立てを受けた独立行政法人等は、原則として、情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならないものとするとともに、諮問をした旨の通知及び第三者からの不服申立てを棄却する場合等における手続について、必要な規定を設けること。(第四十条第二項、第四十一条及び第四十二条関係)

 八 訴訟の管轄の特例等

  1 開示決定等、訂正決定等又は利用停止決定等の取消しを求める訴訟及び開示決定等、訂正決定等又は利用停止決定等に係る異議申立てに対する決定の取消しを求める訴訟(以下「個人情報開示訴訟」という。)については、行政事件訴訟法第十二条に定める裁判所のほか、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(以下「特定管轄裁判所」という。)にも提起することができるものとすること。(第四十三条第一項関係)

  2 1により特定管轄裁判所に訴えが提起された場合であって、他の裁判所に同一又は同種若しくは類似の保有個人情報に係る個人情報開示訴訟が係属している場合においては、当該特定管轄裁判所は、当事者の住所又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所又は行政事件訴訟法第十二条に定める裁判所に移送することができるものとすること。(同条第二項関係)


第五 雑則

 一 保有個人情報の保有に関する特例

   保有個人情報(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第五条に規定する不開示情報を専ら記録する法人文書に記録されているものに限る。)のうち、まだ分類その他の整理が行われていないもので、同一の利用目的に係るものが著しく大量にあるためその中から特定の保有個人情報を検索することが著しく困難であるものは、第四(七を除く。)の適用については、独立行政法人等に保有されていないものとみなすこと。(第四十四条関係)

 二 開示請求等をしようとする者に対する情報の提供等

   独立行政法人等は、開示請求、訂正請求又は利用停止請求をしようとする者の利便を考慮した適切な措置を講ずるものとするとともに、総務大臣は、この法律の円滑な運用を確保するため、総合的な案内所を整備するものとすること。(第四十五条関係)

 三 苦情処理

   独立行政法人等は、独立行政法人等における個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならないものとすること。(第四十六条関係)

 四 施行の状況の公表

   この法律の施行の状況の公表について、必要な規定を設けるものとすること。 (第四十七条関係)

 五 この法律の実施のため必要な事項の政令への委任について、必要な規定を設けるものとすること。(第四十八条関係)


第六 罰則

 一 独立行政法人等の役員若しくは職員等又は受託業務に従事している者等が、正当な理由がないのに、個人の秘密に属する事項が記録された電子計算機処理に係る個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を提供したときは、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処するものとすること。(第四十九条関係)

 二 一に規定する者が、その業務に関して知り得た保有個人情報を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するものとすること。(第五十条関係)

 三 独立行政法人等の役員又は職員がその職権を濫用して、個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画又は電磁的記録を収集したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するものとすること。(第五十一条関係)

 四 独立行政法人等の役員又は職員が、正当な理由がないのに、個人情報ファイル簿に掲載されていない個人の秘密に属する事項が記録された電子計算機処理に係る個人情報ファイル(個人情報ファイル簿への掲載義務が適用除外されるものを除く。)(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を利用したときは、五十万円以下の罰金に処するものとすること。(第五十二条関係)

 五 一から四までについては、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用するものとすること。(第五十三条関係)


第七 附則

 この法律は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の施行の日から施行するものとすること。
記事を印刷する