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1999/12/24
2000年度厚生省予算案について(談話)
民主党ネクストキャビネット
雇用・社会保障大臣 今井 澄

本日、2000年度政府予算案が閣議決定された。厚生省関係予算は、総額約16兆8700億円で、一般歳出の約35%と過去最高の額および比率を占めている。99年度当初予算案に対する伸び率は3.8%、社会保障関係予算に限れば3.9%と、一般歳出予算の伸び率2.6%を大きく上回るものとなった。

 このことは、急激な少子高齢化を迎えており、また来年4月から介護保険制度が実施されることを考えるならば、当然のことと言える。しかし、一方で、きわめて厳しい財政状況にありながら、小渕内閣の景気回復を免罪符とする「何でもあり」の予算編成のなかで、厚生省予算についても「省益あって国益なし」「局益あって省益なし」といった不要不急の予算が含まれていることについて、今後も厳しく指摘していく。

 特に、社会保障関係予算のいくつかについては、「抜本改革を先送りしたまま、将来世代にツケをまわすバラマキ予算」に他ならず、以下に主な点を厳しく指摘する。


 その第一は、医療保険関係費である。1997年度予算において、政府与党は、2000年までの抜本改革を約束して患者の負担増を求め、同年9月から一部負担増を実施した。その結果、国民の不安と不信が増大し、消費の冷え込みを招いた。その愚を今回再び繰り返していると言わざるをえない。

 中央社会保険医療協議会(中医協)で、診療報酬値上げを求める診療側と、引き下げを求める支払い者側の意見が対立して決裂したのち、政府・自民党は「政治決着」と称して特定の圧力団体の意向を受けて診療報酬の実質 0.2%引き上げを決定した。この約560億円にのぼる引き上げ額は、全額患者の自己負担分の引き上げとなるものであり、事業主および被保険者、そして医療機関が等しく痛みを分け合う構造になっていない。

 また、この決定過程で、政府・自民党は関係団体と夜を徹するたび重なる折衝を行ったが、支払い者側の一員でありサラリーマンを代表する連合の意見は一切聞いていない。選挙を視野に入れたきわめて政治的な裏取引で決めたと言わざるをえない。
高齢化にともなう医療費の増加は避けられないが、無駄をなくし、透明な決定ルールのもとで、それぞれが公平に費用を分かち合う、制度の抜本改革を国民は求めている。診療報酬改定について中医協が機能しないのであれば、それに替わる新たな決定機構が必要である。


 第二の問題は、児童手当である。政府は、その政策目的の議論もしないまま、連立与党のなかの2党の談合にまかせて、児童手当の支給対象を3歳未満から就学前児童に拡大した。その財源約2200億円(満年度)のうち約2000億円を16歳未満の扶養控除の10万円減額で補うとしているが、残り200億円は実質赤字国債で賄わざるをえないだろう。

 その結果、1年前の減税で導入された扶養控除の10万円増は朝令暮改よろしく1年で廃止され、義務教育世代の子供のいる家庭では増税となる。

 また、就学前児童への児童手当の財源は、3歳未満は従来通り7割企業負担・3割公費負担であるのに対して、3〜6歳は全額公費負担となり制度としての整合性をまったく欠いている。

 場当たり的なバラマキとしか言いようがない。


 第三の問題は、介護保険関連予算である。先般、政府与党はごうごうたる批判のなかで、保険料減免充当分を中心とする1兆円あまりのバラマキ補正予算を強引に成立させた。今回の予算では、それに続く形で低所得者対策等の予算を盛り込んだが、これもすでに不公平であるとして批判されたものである。

 また、政府は、急遽、新たな5か年計画「ゴールドプラン21」を策定して、その関係予算を盛り込んだが、この計画は単に市町村の事業計画を集計した数字を羅列しただけであり、厚生省の指導性は見られず、介護保険制度の目的とする自立支援、在宅重視に沿ったものとは言えない。


 総じて、思惑の違う連立3党間の談合と、特定の圧力団体の意向を汲んだ、選挙目当てのバラマキ予算としての色彩がきわめて濃いことを改めて指摘し厳しく批判する。

国民の血税を使う予算は、国民の立場に立った、透明・公正なものでなければならない。

以上
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