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1999/05/13
男女共同参画基本法案要綱
民主党・新緑風会

第一 前文

 男女平等は、法の下の平等として日本国憲法に保障されているが、いまだ、性別に基づく差別や偏見、男女の役割に対する固定的な考え方に基づく行動が見られ、また、社会における制度や慣行にも性別による偏りが多く残されており、社会のあらゆる分野の活動における男女の参画には大きな格差がある。このため、個人の人権が尊重され、かつ、男女が社会的文化的に形成された性差にとらわれず、その個性と能力を発揮する機会が確保されるよう、社会のあらゆる分野において男女共同参画の促進を図っていく必要がある。ここに、男女共同参画の促進の基本理念を明らかにしてその方向を示し、男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定するものとすること。

第二 総則

 一 目的

この法律は、男女共同参画の促進に関し、基本理念、国等の責務及び施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ、男女が、社会的文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮する機会が十分に保障される社会を形成することを目的とすること。(第一条関係)

 二 定義

1 男女共同参画

男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成するために、男女が、社会のあらゆる分野における活動に、社会の対等な構成員として、自らの意思によって参画することをいうこと。(第二条第一号関係)

2 積極的是正措置

 男女共同参画の機会に係る男女間の格差を是正するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいうこと。(第二条第二号関係)

 三 基本理念

1 人権の確立

(一) 男女共同参画の促進は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱い(直接的には性別による差別的取扱いをするものではないが、その結果として、男女のいずれか一方に対し差別的効果をもたらすこととなる取扱いを含む。第三の五において同じ。)を受けないこと、男女が個人としてその個性と能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が確立されることを旨として、行われなければならないこと。(第三条第一項関係)

(二) 男女共同参画の促進に当たっては、女性に対する暴力の根絶が女性の人権の確立に欠くことのできないものであることにかんがみ、性犯罪、売買春、夫からの暴力その他あらゆる形態の女性に対する暴力の根絶に向けて積極的な取組がなされなければならないこと。(第三条第二項関係)

 2 男女共同参画の促進に向けた社会意識の形成等

 男女共同参画の促進は、性別による固定的な役割分担の意識が男女共同参画の促進を阻害する要因となっていることにかんがみ、男女が、社会的文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮すべきものであるとの社会意識を形成することを旨とし、及び社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画の促進を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとすることを旨として、行われなければならないこと。(第四条関係)

  3 政策等の立案及び決定への共同参画

 男女共同参画の促進は、男女が、社会の対等な構成員として、国若しくは地方公共団体における政策又は民間の団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されること(必要に応じ、積極的是正措置が講じられることを含む。)を旨として、行われなければならないこと。(第五条関係)

  4 家庭生活における活動と他の活動の両立

 男女共同参画の促進は、家族を構成する者が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならないこと。(第六条関係)

  5 条約等の尊重と国際協力の積極的推進

 男女共同参画の促進は、男女共同参画の促進に関して我が国が締結した条約その他の国際約束が尊重されること及び国際協力が積極的に推進されることを旨として、行われなければならないこと。(第七条関係)

 四 責務

  1 国の責務

 国は、基本理念にのっとり、男女共同参画の促進に関する施策(積極的是正措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定及び実施する責務を有すること。(第八条関係)

  2 地方公共団体の責務

 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国の施策に準じた施策及びその他のその区域の特性に応じた施策を策定及び実施する責務を有すること。(第九条関係)

  3 国民の責務

 国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画の促進に寄与するように努めなければならないこと。(第十条関係)

 五 法制上の措置等

1 国及び地方公共団体は、男女共同参画の促進に関する施策を実施するため、必要な法律、条例等の制定若しくは改廃又は必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならないこと。(第十一条第一項関係)

2 国は、地方公共団体が男女共同参画の促進に関する施策を実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めるものとすること。(第十一条第二項関係)

 六 年次報告等

 政府は、毎年、男女共同参画の促進の状況及び政府が講じた男女共同参画の促進に関する施策についての報告並びに講じようとする男女共同参画の促進に関する施策を明らかにした文書を国会に提出しなければならないこと。(第十二条関係)

第三 男女共同参画の促進に関する基本的施策

 一 男女共同参画基本計画

 1 政府は、男女共同参画の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、男女共同参画基本計画を定めなければならないこと。(第十三条第一項関係)

 2 男女共同参画基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。(第十三条第二項関係)

(一) 総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画の促進に関する次に掲げる施策

(1) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための施策
(2) 男女の家庭生活と職業生活等との両立の支援のための施策
(3) 政策等の立案及び決定への男女共同参画の促進のための施策
(4) 男女平等を推進する教育及び学習機会の充実のための施策
(5) 男女共同参画の視点に立った税制、社会保障制度及び婚姻その他の家族制度に関する法制の見直し等社会における制度又は慣行の改善のための施策
(6) 社会経済活動その他の活動における性別による差別の撤廃のための施策
(7) 女性に対する暴力の根絶のための施策
(8) 妊娠又は出産に係る選択の自由等性と生殖に関する女性の自己決定の尊重及び生理、妊娠、出産等の女性に固有の身体的機能の保護等生涯を通じた女性の健康の支援のための施策
(9) その他男女共同参画の促進のための施策

(二) 男女共同参画の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

  3 内閣総理大臣は、男女共同参画審議会の意見を聴いて、男女共同参画基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。(第十三条第三項関係)

  4 内閣総理大臣は、3による閣議の決定があったときは、遅滞なく、男女共同参画基本計画を国会に報告するとともに、これを公表しなければならないこと。(第十三条第四項関係)

  5 3及び4については、男女共同参画基本計画の変更について準用すること。(第十三条第五項関係)

 二 都道府県男女共同参画計画等

  1 都道府県は、男女共同参画基本計画を勘案して、当該都道府県の区域において講ずべき男女共同参画の促進に関する施策の大綱等について定める都道府県男女共同参画計画を定めなければならないこと。(第十四条第一項及び第二項関係)

  2 市町村は、男女共同参画基本計画及び都道府県男女共同参画計画を勘案して、市町村男女共同参画計画を定めるように努めなければならないこと。(第十四条第三項関係)

  3 都道府県男女共同参画計画及び市町村男女共同参画計画の公表について所要の規定を置くこと。(第十四条第四項関係)

 三 施策の策定等に当たっての基本理念の反映

 国及び地方公共団体は、男女共同参画の促進に影響を及ぼすと認められる施策を策定及び実施するに当たっては、基本理念を反映するように努めなければならないこと。(第十五条関係)

 四 基本理念の理解を深めるための措置

 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、家庭、地域、学校、職域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念に関する理解が深まるよう適切な措置を講じなければならないこと。(第十六条関係)

 五 苦情の処理等のための体制の整備

 国は、政府が実施する男女共同参画の促進に関する施策又は男女共同参画の促進に影響を及ぼすと認められる施策についての苦情の処理及び性別による差別的取扱いその他の男女共同参画の促進を阻害する要因によって人権が侵害された場合における被害者の救済を適切かつ迅速に行うため、当該苦情の処理及び当該救済のための組織及び運営体制についての法制の整備その他の必要な措置を講じなければならないこと。(第十七条関係)

 六 調査研究の推進等

 国は、国の施策又は社会における制度若しくは慣行が男女共同参画の促進に及ぼす影響に関する調査研究その他の男女共同参画の促進に関する施策の策定に必要な調査研究を推進し、その成果を当該施策に適切に反映するように努めるものとすること。(第十八条関係)

 七 条約等の誠実な履行と国際協力の推進のための措置

 国は、男女共同参画を国際的協調の下に促進するため、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約その他男女共同参画の促進に関して我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するために必要な措置を講ずるとともに、外国政府又は国際機関との情報の交換、国際機関への人員の派遣、国際会議への参加、開発途上にある海外の地域に対する支援等男女共同参画の促進に関する国際協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるものとすること。(第十九条関係)

 八 地方公共団体及び民間の団体に対する支援

 国は、地方公共団体が実施する男女共同参画の促進に関する施策及び民間の団体が男女共同参画の促進に関して行う活動との連携を図りつつ、当該施策及び当該活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとすること。(第二十条関係)

第四 男女共同参画審議会

 総理府に、男女共同参画審議会(以下「審議会」という。)を置き、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、男女共同参画の促進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項の調査審議等をすることとするとともに、その組織等について所要の規定を置くこと。(第二十一条から第二十六条まで関係)

第五 附則

 一 施行期日

 この法律は、公布の日から施行すること。(附則第一条関係)

 二 男女共同参画審議会設置法の廃止

 男女共同参画審議会設置法(平成九年法律第七号)は、廃止すること。(附則第二条関係)

 三 経過措置

 二による廃止前の男女共同参画審議会設置法により置かれた男女共同参画審議会は、第四により置かれた審議会となり、同一性をもって存続するものとすること等審議会、委員及び会長等に関する経過措置について所要の規定を置くこと。(附則第三条関係)

 四 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)について所要の改正を行うこと。(附則第四条関係)
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