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1999/04/20
特定化学物質の排出量等の公開等に関する法律案について
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民主党
1.はじめに
1996年にOECD(経済協力開発機構)が、加盟各国に対してPRTR(環境汚染物質排出・移動登録)の導入に取り組むべきことを勧告し、欧米各国では既に法律化されて制度が導入されている。また、OECDでは、PRTRシステム構築に際しての原則や、導入に向けてのガイダンスマニュアルを公表している。
今回、政府から提出された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案」は、明らかにOECDの原則やガイダンスマニュアルに反する手続や内容が多数見受けられる。このような内容の政府案を成立させることになれば、世界の環境法制の流れに逆行することとなり、日本の環境対策は遅れることとなる。
現在の日本の繁栄は、世界にさきがけた公害法制度の整備による技術革新により、世界をリードしてきたことによる部分が大きい。「環境にやさしいということは経済的である(ecology is economy)」という言葉もある通り、環境にやさしい技術こそ、技術大国日本が歩むべき道であり、そのためにも、民主党は世界的に通用するPRTR制度の構築をすべきであると考え、「特定化学物質の排出量等の公開等に関する法律案」を作成したところである。
2.内容
1. 国民の知る権利を保障
(1) 国民は、化学物質の環境への排出量その他化学物質による環境の汚染の状況等に係る十分な情報の提供を保証される(知る権利の保障=情報公開の徹底)
(2) 情報公開は請求によるものではなく、企業秘密を除き、個別データも含めてすべて公開される
(3) データの公開は、市町村、都道府県、国のすべてで閲覧可能で、インターネットでも公開を義務づけている
=いつでも、誰でも、どこでも簡単に情報を取ることができる
(4) 届出内容の拡充・ 移動量、排出量だけではなく、取扱量、貯蔵量、最大貯蔵量も届出内容とする〜住民の関心事項を広く届出させ、公開する
2. 地方自治体の活用=データの正確性を担保、化学物質のリスク削減の推進
(1) 対象事業者のデータの届出先は、一番身近な自治体である市町村とする
〜 中小企業においても、市町村とのきめ細かいコミュニケーションにより、 PRTR制度に十分な対応が可能となる
(2) 対象事業者以外の移動・排出量の推計は都道府県が行う国・事業者等に対する協力要請によりデータの正確性を担保
(3) OECDのガイダンスマニュアルにおいても、「国レベルでのデータの総計を正確で精度の高いものにするためには、地方政府の関与が重要である」とされている
(4) 帳簿の備え付け義務、立ち入り検査権限の付与、罰則の強化
・事業者のデータを帳簿として備え付ける義務を負う(政府案にはない)
・届出が虚偽と疑われる場合、市町村は立入検査ができる(政府案にはない)
・データを届け出ないか虚偽の届け出を行った者に対しては50万円以下の罰金(政府案は20万円以下の過料)
(5) リスク削減計画の策定
・化学物質によるリスクを削減するために、市町村はリスク削減計画を策定することができる
・事業者や住民と一体となって化学物質によるリスク削減を行う
3. 対象化学物質の範囲の拡大=柔軟な制度の構築
(1) 対象化学物質については、科学的知見の進展や社会的な問題の惹起等に柔軟に対応できるよう、法律上幅広く設定
(2) 対象化学物質を定める場合には、その案を国民に示し意見を聴取した上で選定するという透明な制度により決定
(3) OECD原則でも「すべてのPRTRシステムは、実施途中の評価を可能とし、必要性の変化に応じて関係・関連団体による変更が可能な柔軟性をもつべきである」とされている
(4) 政府案では、地球温暖化物質(代替フロン等)や内分泌攪乱物質(環境ホルモン)は法律上対象から除外されており、柔軟な対応ができない
4. 企業秘密の取扱=統一的な基準を定め、不服審査制度により企業秘密を判断
(1) 公表しないことにより保護される利益と公表することによる利益を比較衡量して公表するか否かを決定
(2) 企業秘密については、政令で具体的な基準を定めるとともに、最終的には国の中央化学物質情報公開審査会において統一的に判断する
(3) 政府案では、業所管大臣が企業秘密につき個別に判断することになり、企業秘密が不等に拡大する恐れがある
参考資料
・佐藤謙一郎衆議院議員の政府案への代表質問
・環境庁報道発表資料
・政府提出「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案
・OECD(経済協力開発機構) PRTRシステムの構築に関する原則
・OECDホームページ
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