ニュース
ニュース
2000/02/03
「もうひとつの予算委員会」所信表明
横路孝弘予算・決算ネクスト・キャビネット大臣

 ただいまご指名をいただきました横路です。2000年度政府予算案につきまして、特 に財政問題、公共事業問題、そして行政改革問題を中心にしながら、民主党の考え方 を述べ、問題提起をさせていただきたいと考えております。

 「何でもあり」という小渕総理の旗のもとで、今ほど全国の国民の中に不安が広がっている時代はなかったのではないでしょうか。自殺をされた人の数が3万2000人と史上最高です。ホームレスは昨年2万人を超えて、沖縄の那覇から北海道の札幌に至る都市にホームレスの方々がおられます。あるいはまた失業率が昨年度平均で4.7、そして300万を超える人々が失業をいたしております。それに伴って生活保護の受給者もふえ、生活保護の支給額も1兆5000億を超える、史上最高を示すと言われている のであります。その上に史上最高の借金であります。

 こうした大きな不安が広がっているなかで、小渕総理大臣は、ある新年恒例会でこんなあいさつをされました。「ことしは新しい千年紀のスタートの年だ。日本の歴史の中で新しい千年紀のスタートのときに権力者であった者は2人いる。私・小渕恵三 と、10 00年のときの藤原道長だ」と述べたそうであります。

 藤原道長といえば、

   「此の世をば我が世とぞ思ふ望月の虧(カケ)たる事も無しと思へば」

こう歌った男であります。国民が主権者であることを忘れて、こんな思い上がった姿 勢、このことに私は国民は必ずしっかりと審判を下すものだと考えております。

 さて、行き先知らずの船ですから、2000年度予算案もまさに先送りとばらまきの典型の予算であります。私たち民主党は、経済や景気、環境や福祉、あるいは教育や平和の問題など、安心のできる21世紀をつくる。安心の21世紀をつくるために、今こそしっかりとした行政改革や財政改革を行わなければいけない、このように考えております。我々の行き先はもうはっきりしていると思います。1000年先のことはなかなか難しいわけですけれども、100年先、既にはっきりしていることは二つあります。

 一つは、このままの生産の方式を続けていきますと、地球の温暖化が進んで、平均の気温が2〜3度上がるということであります。日本列島も北のほうは5度上がるといわれているわけであります。1度上がると300キロ赤道に近づきますから、生態系は大きく変わります。この地球の温暖化を防がなければならない。そのためには、今までの工業社会、大量生産・大量消費・大量廃棄という社会そのものを変えていかな ければいけないと思うわけです。そこで、これからの方向としては情報社会であ り、環境循環型社会であるということは、もうはっきりしているわけであります。

 一つは情報社会ですが、情報社会の中で人々の生活も暮らしも、あるいは街も非常に大きく変わっていくだろうと思います。生産一つとってみても、今既にアメリカのデル・コンビューターは生産される製品の40%が個人の注文を受けてつくられています。ホームぺージの中でメモリーやハードディスクなどを自分たちの仕様に基づいて注文をし、それに基づいて生産をされるということになってきていて、これからたぶん今までの大量生産からこうした生産に大きく変わっていくでしょう。あるいはスーパーマーケットはもう売り上げが瞬時にわかる仕組みになっていますが、メーカーと提供するとモノをつくっているほうがその売り上げを見て生産をしていくという仕組みに変わります。そうするとこれは大量生産・大量消費ではなくて、むしろ消費者が選択をして適量生産・適量消費、そして極少廃棄という社会になっていくわけです。

 あるいは環境循環型社会ということも既に日本の企業などは大変な投資をしています。自動車が一番いい例だと思いますが、燃料電池の開発とか、あるいは素材を軽量化して燃費効率を上げるとか、100%リサイクルをめざした素材の開発など、自動車産業はいま大変な投資を行っております。日本の社会は現在一般ゴミは5000万トン、廃棄物が4億トンというようなゴミ社会でございますが、やはりゴミゼロ社会をめざしていかなければいけない。そのことによって工業社会から新しい社会へと変わっていくわけです。そのことのいわば基盤を整備する。そのための研究開発を行う。そのための人材養成を行う。そこに今私たちは予算を集中しなければいけない。そういう ところに来ていると思います。

 もう一つの問題は、いわゆる日本の人口がこのままでいけば100年後には6700万人、ほぼ半分になるだろうと言われています。そして2005年には既に労働力生産人口がピークを迎え、2007年には人口のピークを迎えるといわれていて、高齢化のピッチはますます早くなっていくわけであります。そのためには早く福祉社会への転換を図って、子育てと介護は社会がしっかりと支援をする。そのことを基本とする社会に、 社会の仕組みを変えていかなければいけないと考えております。

 もちろん政府が税金で全部をやるというには無理があります。また市場から供給が十分されるのかというと、そういうわけにもいきません。個人の努力にも限界があります。要するに国や地方はもちろん果たす役割がある。市場がもっといろんなサービスをさらに供給するようにしていかなくてはいけない。同時に、市民が果たす役割が非常に大きくなっているわけです。市民の事業、NPO、あるいはボランティアを含めた市民の参加ということが大事でございますから、これからの福祉社会は私たちは公的なセクター、民間セクター、市民セクター、この三つがそれぞれ役割分担を果たしながら進めていく。そういうネットワークを組んで進めていく社会になっていかなくてはいけない。ここでもやはり基盤の整備が大事であります。人材の要請とか施設の整備、あるいはグループホーム、ケアハウスといったような整備など、そういうと ころにやはり予算を集中すべきときを迎えていると考えております。

 こういういわば大きな変化の中で、日本の予算の構造、あるいは税制、あるいは補助金といったようなものが、こういう変化をさっぱり見ないで、依然として工業社会をベースとした基盤づくりや投資というところに集中しているわけでありまして、これを大きく変えていかなくてはいけないというのが基本的に私ども民主党の2000年度 予算に対する基本的な姿勢であります。

 それでは、具体的に中身を見ていきたいと思います。2000年度予算案は、ご承知のとおり一般会計85兆円、そのうち租税収入が約48兆円で、国債発行が33兆円にも上っています。小渕政権、この2年間で実に84兆円もの国債を発行しているわけでありまして、GDP比、債務残高全体が129%ということで、この予算は1997年度ロシアの財政よりもさらに厳しい、悪いと言われております。たとえ3%の成長をこれから続けていくとしても、とてもこれだけの債務を返済することにはなりません。毎年30兆 円の国債発行が必要だということになったわけです。

 一体どうしてこうなったのか、だれに責任があるのかということであります。川柳 にこういうのがあります。

   「見直して 先送りして 棚上げし」

 構造改革を遅らせてきた。そして利益誘導型の政治を行ってきた。まさにその結果だといわなくてはなりません。規制や保護行政が民間の活力を削いできた。また、旧来型の公共事業中心の相変わらずの景気対策を繰り返してきた。その結果であります。今まさに財政は危機の限度を超えて、奈落の底に落ちようとしているときに、この予算を含めまして、ばらまき体質はますますひどくなるばかりであります。介護保険の徴収の先送り、朝令暮改ともいうべき今年度引き上げた年少者の扶養控除額をもとに戻した児童手当、そして医師会のための抜本改革なき診療報酬の引き上げや、高額医療の引き上げ、そして多くは貯蓄に回った地域振興券、こうした体質がまさに財 政の危機をもたらしているのだというように言わざるを得ません。

 「二兎を追う者は一兎をも得ず」と、景気と財政構造改革を対立させて、そして世 界一の借金王になった小渕総理に、「それでは一兎を得たのですか」、こうお尋ねを したいと思うのであります。

 いま失業者がふえ、そしてこの春の就職の内定もまだ24万人が決まっていない。過去最悪の数字であります。こういう状況の中で、ますます正社員がリストラされ、パート労働がふえる中で、雇用は不安定になっていく。そうした中で個人消費が拡大をしていくんでしょうか。経済の6割を担っている個人消費が拡大をするんでしょうか。今年度は本当にプラスなのでしょうか。もう既に経済の専門家の中からは、2月、3月厳しいよ、この結果本年度マイナス成長だ、と言われる方もいるわけであります。 小渕総理は、政権以来、今日まで予算を含めて315兆円のお金を景気対策と称して投入をしてまいりました。そして84兆円の国債を発行したわけであります。これで一兎も得られないとすれば、その責任をどうするのか、これはもう明白なことだ と私は思います。

 私たちは、この二つを対立させるのではなくて、「景気回復なくして財政再建はない。財政の規律なくして景気の回復はない」と考えます。二兎を追って初めて二兎を得ることができるんだ。そのことは、世界の国が示しているのではないかと思います。 日本経済を発展させるためには、新しい視点で経済産業政策を再構築し、そして次のような行財政改革を行うべきであると私どもは考えております。 まずやらなければいけないのは、中央政府の権限を「市場へ、市民へ、地方へ」と、三つの分権を進めることであります。そしてこの三つの分権をつくって、まず一つには、自由で透明で公正な市場をつくるということ。 もう一つは、市民が主役となる。自分たちが参加をして選択し、決定のできる政治を実現すること。そして社会的な安全ネット をしっかりと整備をすることだと考えております。

 そしてそのために何をしなければいけないのか。少なくとも四つの改革を進めてい かなくてはなりません。一つは行財政改革であり、一つは税制改革であり、一つは公 共事業の改革であり、そしてもう一つは社会保障制度の改革でございます。
 この四つの改革をしっかり行っていくことが大切であると考えておりまして、その 点について少し触れてみたいと思います。

 まず一つは、公共事業改革であります。公共事業は、社会的な状況が大きく変化しているのにもかかわらず、省庁別、事業別の配分はほとんど変化がございません。バブル以降100兆円近い事業を投入しましたが、最近は波及効果も落ちている。むしろ福祉投資のほうが雇用効果があると言われるような状況を見ております。地方財政も厳しくて、地方単独事業はもう昨年の補正後で16%も減っている状態にあります。限 度・限界に来ているわけであります。

 私はまずしなければいけないのは、国はもう景気対策として公共事業をやる時代は終わったということであります。まず直轄事業は例外は認めるにしても、原則は地方に事業を移す。そして地方へは個別補助金制度をやめて、一括交付金制度にするということで、中央・地方の行政改革はこれによってかなり進み、スリムになることがで きるわけであります。

 同時に、来年度政府予算の大きな問題は、公共事業予備費を5000億も計上していることであります。これは99年度予算の使い方を見ていますと、財政法に違反していると言わざるを得ないと思います。きっぱりとこれをやめることだと考えております。後ほど公共事業についてはさらに詳しく前原大臣からお話を申し上げる予定になっ ております。

 そして公共事業と同時に大変大事なことは何かというと、補助金です。来年度予算では20兆6969億円が補助金であります。そのうちの16兆9000億が地方自治体への補助金です。補助金はいわばひもつきの財源でありまして、地方分権推進委員会ではこれをできるだけ縮小して、一般財源化を進めるという方針が出されたにもかかわらず、来年度予算はむしろ補助金がふえているのであります。市町村の日常業務の3割がこの補助金の申請業務にとらわれております。実につまらないところに補助金を使った 行政の浪費が行われているわけであります。

 たまたま私のところに身体障害者の人の車いす、これは補助金が出るんですが、その補装具の補助金が要綱どおりですと地方の判断で出るわけです。ところが要綱にない、たとえば泥はねをつけるとか自分にはちょっと重いので新しい機械を入れるとかいうと全部厚生大臣との協議になるんです。そして去年の9月に厚生省に上がったやつがまだおりてこない、どうなったかという電話の問い合わせを受けました。こういうことは何も市町村で判断すればいいわけでして、わざわざ都道府県を経由して厚生大臣と協議をしてまたそこから下におりてくる。半年も1年もかかってしまう。こん なことは即座にやめていかなくてはいけないと思っております。

 そして一番大きな点は、行政改革がさっばり進んでいないことです。省庁の統合ということが言われましたが、権限は何にも減っておりません。昨年の3月の数字が1 万11 17件、前の年に比べてプラス85件です。毎年毎年ふえているわけです。決して減ってはいない。規制緩和をやりながら、一方で新しい規制をたくさんつくっている というのが今日の実態であります。

 中央省庁のコントロールする法律や通達でできている言葉だけでこれだけあります。許可、認可、免許、特許、承認、認定、確認、免除、決定、証明、認証、解除、公認、検認、試験、検査、検定、指示、登録、届け出、申告、提出、報告、交付など(笑)。やっぱりここからしっかりとした解決をしていかなければ、省庁の数を減らしたからといって、何の改革にもなっていないわけであります。それをしっかりと私 ども進めていかなければいけないと考えております。

 もう一つは、税制の改革であります。税制は皆様方ご承知のように所得課税、資産課税、消費課税とあります。これをバラバラにいじるのではなくて、やはり一括して改革を進めていかなければいけない。そして総合課税を進めていくためには、納税者 番号制度などの導入も早く議論をしなければいけないと考えております。

 私はできるだけ税金は幅広く人々が納めて、そのかわり所得の低い人には政策がしっかりと支えるという方向性が大事だと思っております。消費税の改革やあるいは外形標準課税の導入などど大きな課題がありますけれども、財政再建、歳出のカットを中心にしながらも、しかし、今の税制度の抜本的な改革がやはり必要だと考えており ます。

 これらの改革を私ども民主党、全力を注いでやってまいりたい、このように考えて おります。

 政府の2000年度予算案は、本当に何の思想もなし、行き先を明示もしない相変わら ずの予算であって、アのような予算は認めるわけにはいかないということを申し上げ て、私の与えられた時間になりましたので終わらせていただきます。。(拍手)
記事を印刷する