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2006/05/19
【参院本会議】林議員、実効性なき政府幼保一元化案の問題追及


参議院本会議で19日、民主党・新緑風会を代表して林久美子議員が質問に立ち、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案」(認定こども園法案)をめぐり、小坂文部科学大臣、川崎厚生労働大臣に対し、「幼保一元化がこれまで実現されなかった要因」「制度創設にあたっての担当部局の一元化の実態」「待機児童解消の可能性」「多様なニーズへの対応」「将来像」「利用料の在り方と良質な教育・保育の保障」などに関して質問。同時に、求められる施策を盛り込んだ民主党案のメリットを示した。

 冒頭、「私にも3歳の息子がおります」と語った林議員は、全国の親の思いを代弁する気持ちで民主党は対案を提出していると表明したうえで、幼保一元化の歴史を振り返った。1946年の帝国議会ですでに幼保一元化の議論が行われていることを議事録から明らかにしたうえで、少なくとも60年前から、「同じ年齢の就学前の子どもたちが等しく教育、保育を受けるのが自然である」という素朴な願いがあったにもかかわらず、今日まで二元化体制が維持されてきたことに言及。最大の要因はどこにあると考えるか質した。小坂文科相は「それぞれの時代の社会的ニーズに応えてきたもの。教育・保育の連携強化など、適切に対応するために制度を一元化して新たな選択肢を提供すべく今般の提案をしている」として政府対応の妥当性を主張し、川崎厚労相も同様の答弁を行った。

 続いて、制度の創設にあたっての担当部局設置に関して質問。猪口少子化・男女共同参画担当大臣に、「幼稚園と保育所における教育、保育内容は接近している。幼稚園教育要領と保育所保育指針にある指導上・保育上のねらいは全く同じ。これは、国の二元行政の形骸化を意味しており、幼保一元化の実現は、まさに時代の必然だ」と語った。そうした視点に立って林議員は、依然として担当省庁の一元化がなされていない政府案を問題視し、「文部科学省と厚生労働省が密接に連携して『幼保連携推進室』を設置するとしているが、担当省庁や窓口は一本にするべきではないか」と猪口大臣に指摘した。

 また、法案の名称は、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」とされているが、実際には「総合的な提供」は何らされておらず、単に「認定こども園」という看板の架け替えにすぎないと批判。小泉政権下で依然続いている保育園における待機児童の未解消や幼稚園の定員割れ、地域における幼稚園と保育所の偏在問題等の解決が期待できるのか疑問だとした。同時に、児童虐待の観点からも効果は期待できないと指摘。こうした問題解決に向けて民主党案では、多様なニーズに対応するために、0歳から就学前までの希望する全ての子どもたちの受け入れを可能としているほか、一時保育、病時・病後時保育などへの支援強化も提案していると説明した。

 財政措置による弊害についても、林議員は指摘。政府案では、公立の「認定こども園」は一般財源で、その他の私立の「幼稚園型こども園」は文部科学省の「私学助成」、「保育所型こども園」には厚生労働省の「保育所運営費負担金」と各省の補助制度を活用することとされていることに言及した。そのため「幼稚園型こども園」で保育所機能を、あるいは「保育所型こども園」で幼稚園機能をといった具合に、それぞれが従来になかった新たに機能を拡充した場合、認可をとらない限り、施設側の持ち出しにならざるを得ず、経営的に困難な状況に追いやられる可能性が否めないことを林議員は明らかにした。「その結果、利用料が高くなったり、子どもたちに対する教育、保育の質が低下するのではないかとも懸念される」と述べ、政府案による財政措置に疑問を呈した。
 
 あわせて、「認定こども園」は施設と利用者の直接契約となる予定であるが、保護者に対する支援は、主に私立幼稚園に通う方を対象とした「幼稚園就園奨励費補助」しかないことも指摘。施設が幼稚園、保育所のどちらを母体とするのかによって保護者への支援が異なるという、不公平が存在するのは問題だとした。こうした点について民主党案では、補助金も担当部局で一元的に担当することとしており、機能を拡充した部分についても「認定こども園」制度の中で十分な支援を行い、教育・保育の質を十分に守りつつ、「認定こども園」に参加しようというインセンティブを働かせていくしくみとなっていることを林議員は説明。「保護者に対しても、等しく支援を行なっていくものだ」と語った。

 最後に林議員は、「今回の法案は、幼稚園と保育所を一体とすることを可能とし、法律上明確に位置づけたという点については一定の評価をする」との見方を示したが、「しかし決定的な一元化は行わず、文部科学省と厚生労働省の既得権益を守りつつ、一元化願望を吸収しようとしている、形式だけを整備したまさに“妥協の産物”である」と指摘。そのうえで「一元化は、省庁の既得権益を温存するためのものではなく、子どもたちのため、まさに“チルドレン・ファースト”でなくてはならない。子どもたちの視点に立った一本化は小泉政権にはできないということが明らかになった」として、「民主党こそが子どもたちの育ちを支えていく、私たちにしかできない」強く訴え、質問を終えた。
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