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2000/03/09
「教育職員免許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)」趣旨説明に対する質疑
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民主党 田中 甲
私は、教育職員免許法等の一部を改正する法律案並びに関連する文教施策について、民主党を代表して、質問いたします。 本案は、情報通信革命や高齢社会の急速な進展といった社会情勢の変化を反映した改正案であり、民主党としても、反対するものではありません。
しかしながら、社会情勢の変化を教育が後追いをしている感は否め無いところもあり、むしろ積極的に社会情勢を先取りした二十一世紀に向けての教育制度作りに応える姿が、本来求められているのではないでしょうか。
今回はこうした観点も含め、何点か質問をさせていただきたいと思います。
●「情報」の教員免状教科、新設に関して
まずは、改正案第四条における「情報」の教員免状教科、新設に関して、お尋ねいたします。
これは、IT革命を反映したカリキュラムの新設に伴う改正の一環であり、高校生にコンピューター技術を習得させ、インターネットを通じても国際社会に入っていける人材を育成するものであり、「教育立国」実現のための施策を積極的に推進していく立場から、我が党も、必要なものと受けとめております。
しかしながら、この情報通信革命には負の部分があることにも認識が必要とされております。
ネット上の溢れる情報の中には、例えば麻薬を販売するサイトや無機的に暴力シーンをたれ流しにするものなど、これら青少年に多大な悪影響を与えるホームページも含まれ、氾濫する情報の中で自分を見失っていく若者が、仮想社会の中から犯罪へと駆り立てられ、現実社会の常識から逸脱していく姿には、強い警告がされなくてはなりません。
情報の教員免状教科の新設にあたっては、単に情報技術の教育であってはならず、青少年が氾濫する情報の選択する能力を持つことが重要と考えます。情報化社会においてこそ、「自立」をキーワードにした教育が求められているのではないでしょうか。 この点についての文部大臣の御所見をお伺いいたします。
また、教育現場からは、「情報」科目新設により、コンピューターの設置やインターネットの接続により発生する料金が、予算面で、学校に及ぼす影響について懸念する声も出されており、具体的な措置が望まれています。御見解をお聞かせください。
●命を大切にする教育について
次に本案の免許教科「福祉」の新設に関連して、お尋ねいたします。
高齢社会における福祉教科の必要性は論を待たないところですが、しかし、それ以上に、今問題にしなければならないのは、現在の日本において命というものが余りにも軽く扱われているという現状であります。 崩壊する家庭や社会の中で自分の役割を見失った中高年層が自らの命を絶つ悲劇が不況の中、相次ぎ、自殺者が年に三万人二千人を超え、交通事故で亡くなる方の実に、三倍以上となっています。
青少年が自分より小さい者、弱い者を殺害する事件が相次いでいます。
また、動物の命を粗末にする人が絶えず、その結果として、炭酸ガスによる窒息死という処分の仕方で、猫が三十万匹、犬においては四十万匹が、毎年人の手によって殺されている実態があります。
二十世紀の平和の象徴とされるマハトマ・ガンジーは「国家の偉大さや道徳的水準は、その国で動物たちがどのように扱われているかによって判断できる」と言われました。
命が大事にされていない日本の現状について、また教育の場でいかに命の大切さを子供たちに教え、自分と同じように人の命を大切にする心を育んでいくのか、文部大臣の御答弁を求めます。
●児童虐待問題
さらに近年、我が国において、親からのこどもに対する暴力行為により、深い傷を受け、場合によっては、幼く尊い命が奪われる事件が激増しております。
名古屋にあるキャプナというNGO団体によると、平成十年度には、虐待によって、百三十一人ものこどもが命を落としたとの報告があり、こうした事態を一刻も放置できないと考えております。
現行法令においては児童虐待の定義すらありません。
また虐待の国民的関心の高まりを受けて、相談件数が年間六九三二件と、最近八年間で六倍にも増加しており、児童相談所からは現状では対応しきれないという声が届けられています。
さらに虐待の最終的な解決につなげる、こどもや親へのカウセリングや心のケアも十分に行われているとは言えません。
今こそ、現行法制度を整備し、施策を充実することが必要とされています。
突き詰めるならば「政治とは命を守ること」。
二十一世紀に向けて、日本は命を最も尊ぶ国、「尊命国家」を目指すべきであります。我が党も国政において、こどもの虐待の問題をはじめ、命に関わる取り組みを行ってまいりますが、今後政府としてこの「命」の問題にどう取り組んで行かれるのか、児童福祉法の改正も含め、厚生大臣の答弁を求めます。
本案においては、「福祉」の科目の新設、実施にあたっても、高齢者や身障者に限らず、この児童虐待の問題を考え、防止する姿勢をを教える能力を学校の先生が身につけ、カリキュラムにおいても盛り込まれることを望むものでありますが、文部大臣、いかがお考えでしょうか。
●教育において事実を伝えていく必要性
今世紀は戦争により、アジア一帯において、多くの命が失われ我が国においても、例外ではなく、戦争に参加し、尊い命が失われました。
しかし、我が国では、戦後、五十有余年が経過した現在もなお、その問題の取り上げ方が教育現場に戸惑いを与えてきたことは、否めない点であります。
ドイツのワイツゼッカー元大統領は、演説の中で、「過去に目を閉ざす者は、結局現在にも盲目になる」と語り、ドイツは、戦後一貫して歴史的事実の究明を進め、近隣諸国からの信頼を得て、ヨーロッパ統合の牽引役を務めるに至りました。
二十一世紀には、西にドイツあり、東に日本ありと言われるように、アジア諸国から信頼され、東アジアの平和と繁栄を生み出していくという日本の姿と役割を創り出していかなければなりません。
即ちこの前提として、我が国が自発的に歴史的事実の究明を行い、二十一世紀を担っていく次世代に、「真理が我らを自由にする」という信念の下、学校教育の現場でも正確に事実を伝えていく必要があると考えますが、文部大臣はいかがお考えになりますか。答弁を求めます。
●政治に若い力を・・・公民教育改革について
最後に別表第三条関係、特別免許状制度の改善に関連して、若者の政治参加について、お尋ねさせていただきます。 昨今の我が国の投票率の低下の問題は、民主主義の根幹に関わるものであり、特に二十台前半の若者の投票率は、国政選挙でも三割を切る危機的状況に陥っております。
幕末は若い志士達が明治維新を成し遂げ、戦後も若い力により、日本は奇跡的な復興を果たしました。
終戦直後の第八十九回帝国議会において、堀切善次郎内務大臣は、「清新溌剌(はつらつ)、純真熱烈なる青年有権者の選挙への参加によりまして、選挙界の固着せる弊竇(へいとう)を一新し、これに新日本建設の新しき政治力を形成する重要なる要素を加えることに相成ると信じている次第であります」と高らかに演説し、若い力の必要性を説いたのでありました。
幕末、終戦後に続く、第三の変革期と言われている今、我が国も、選挙権年齢を十八歳に引き下げ、併せて、民主主義の小学校と言われる地方議会への立候補権も与えることが、議会の活性化に資することと提案を致します。 海外に目を向けると百五十六ヶ国が選挙権年齢を十八歳としており、またその多くの国が地方議会選挙に立候補できる被選挙権年齢も同じ十八歳以上としております。
日本の教育現場では、政治制度や仕組みの教育に重点が置かれ、政党政治にはあえて触れず、弁論を競うことは、ほとんど行われておりません。
アメリカでは小学生のうちから、クラスを民主党と共和党に分け、それぞれの政策、主張をディベートで闘わせる授業が行われており、「子供は十二〜十三歳でほぼ成人と同程度の政治意識を形成している」と言われています。
弁論を競うことは、古代ギリシャから始まる民主主義の基本であり、言葉に出し、主張しあうことで、筋道立てた考え方が身に付き、自己の確立と他者との相違の必然性を知ることが出来るのであります。
成熟しない我が国の民主主義は、このように小学校での公民教育改革を行うことから考えていかなくては、ならないのではないでしょうか。
本案では、現状わずか四十二人に留まっている社会人の教員免状取得を促進させることも内容としており、今後は生きた政治教育が出来得る人材の登用も併せて、検討すべきと考えますが、文部大臣の御見解を求め、質問を終わります。
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