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2000/03/01
少年の実名報道の控訴審判決について(談話)
民主党ネクスト・キャビネット大臣
司法担当・江田五月


1. 少年法61条に違反した実名報道につき、大阪高等裁判所は2月29日、名誉毀損に基づく損害賠償を認容した1審判決を取消し、請求棄却の判決を下した。


2. 高裁判決は、「プライバシー権と表現の自由との調整」に際し、「表現行為が社会の正当な関心事であり、かつその表現内容・方法が不当でない場合には、プライバシー権の侵害にならない」と解し、「人格的利益が法的保護に値する利益として認められるのは、その報道の対象となる個人に社会生活上、特別保護されるべき事情がある場合に限られる。」として、実名報道の違法性を否定した。
 

3. 名誉毀損に基づく損害賠償といえども、損害の発生が立証されなければ請求が認容されないのは当然であり、少年が検察官送致となり、成人となった後に懲役18年の判決を受け服役中であることを考えれば、更正可能性への支障を抽象的に主張するだけでは損害が認定されないのはやむを得ない。


4. しかし、確かに少年法61条が少年に「実名で報道されない権利」を付与するものではないとしても、実名報道は同条に違反する違法なものであり一般に少年の更生にとって障害となることはいうまでもない。  憲法の「表現の自由」を重視しつつも、本判決が明確に指摘するとおり、これが無制約な実名報道に道を開くことのないよう、報道機関を初め社会の自制が求められる。
  

5. なお、犯罪被害者の権利をどう確保するかは、加害者の実名報道とは別に重要な検討課題であることはいうまでもない。
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