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2002/07/10
石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律案」及び「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法案」に対する本会議質問
岩本 司

私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました石油公団廃止関連の2法律案について、関係大臣に質問をいたします。

まず、巨額の赤字を抱える石油公団の今後の損失見通しとその処理方針に関して伺います。

石油公団の平成12年度決算によると、石油公団は、昭和42年の創設以来、石油開発会社に対し出資の累計9995億円、融資の累計1兆1051億円、合計2兆1046億円の探鉱投融資を実施しておりますが、その損失額の累計は既に8745億円にも上っています。

この間、公団の投融資対象会社は298社が設立されておりますが、このうち、12年度末までに事業の不成功により事業終結等を行った会社は194社、そのほか解散準備中の会社は35社に上り、現に原油を生産し決算上も剰余金を計上している会社はわずか13社に過ぎません。

こうした結果、石油公団の探鉱投融資事業に対しては、これまで国の石特会計等から累計で1兆2003億円もの国民の税金が公団への出資金として投入されてきましたが、石油公団は平成12年度末現在で4215億円もの、累積欠損金を抱えるに至っております。

これに加えて、石油公団では、これまで、いわゆる「特別対策会社」に対し、貸付金元本の返済猶予や利息の棚上げ等の延命措置を講じてきておりますが、今後、これら特別対策会社等の処理、更には現在、探鉱中の開発会社に係るプロジェクトの成否により、最終的に国民の負担となる石油公団の、累積欠損金も更に増大することが懸念されるところであります。

石油公団に、累積欠損金が生じるということは、言うまでもなく石油の、探鉱投融資事業に充てられた国の出資金、すなわち国民の貴重な税金が失われることを意味します。

それのみならず、石油公団の投融資事業に対して出資されてきた国民の税金は、本来、これをより有用な他の事業に使っていたならば、利息が付いて戻ってくるべきものであり、その意味では、この間に費やされた国民によるコストは、出資金1兆2003億円にとどまらず、はるかに、これを上回るものであって、現状は極めて深刻な状況であると言わざるを得ません。

そこで、まず、平沼経済産業大臣に伺います。

この法律案による石油公団廃止時において、公団の、累積欠損金は、どの程度と見込まれ、その処理をどのように行おうと考えておられるのか。

また、とりわけ、特別対策会社として1400億円を超える貸付金利息の棚上げ等を行っておきながら、現状で3400億円を超える欠損金を抱えている「ジャパン 石油開発株式会社」の処理を今後どのように行っていくつもりであるのか。

そして、石油公団の資産処分によっても最終的に国民負担が生じる場合に誰が、どのような責任をとるつもりであるのか、大臣の所見を伺います。

次に、石油公団の清算のための資産処分について伺います。

法律案では、石油公団の業務を引き継ぐ独立行政法人の設立の際に石油公団を「資産処分等の清算のための組織」に改組するとともに、その後の石油公団の廃止時に、別に法律で定めるところにより、公団の権利・義務を承継する特殊会社を設立して、できるだけ早期に民営化する旨が規定されています。

しかし、これまで多額の損失を生んできた石油公団自らが、自身の清算のための資産処分を行うことは、本来整理すべき投融資先会社が整理されず、過去の過ちを再び繰り返すことが大いに危惧されるところであります。

また、石油公団の資産処分に際しては、法律案では、内閣総理大臣、実質的には行政改革担当大臣に協議することとされています。

この点で、経済産業省からは、石油公団清算の資産処分に関しては、優良な開発会社の株式を、特殊会社に残し、政府主導で石油開発等の中核となる「和製メジャー」を育成するとの考えも示されておりますが、これは、実質的に、官僚支配の強化であり、政府全額出資の特殊会社による民業圧迫にもつながるという点で、行政改革の趣旨に反するものではないでしょうか。

政府が石油公団を廃止すると言うならば、優良資産こそ早期に民間に売却し、民間の知恵と能力を最大限に活用していくべきであり、そのことにより、国の出資金の早期回収と国民負担の最小化を考えていくのが筋であります。

また、我が国のエネルギー政策上、石油開発等に取り組む、中核企業の育成がどうしても必要だとしても、その目的は、官主導の特殊会社を設立しなくても、優良資産の民間への売却自体によって十分達成可能であると考えますが、いかがでしょうか。

経済産業省が「和製メジャー」育成という掛け声の下、特殊会社の設立にこだわるのは、これまでの石油公団の実質を維持したい、この特殊会社の子会社を含め、自らの天下り先を維持したいと勘ぐられても仕方がないと思いますが、

これらの点についてどのように考えるか、石原行政改革担当大臣及び平沼経済産業大臣の所見を伺います。

また、これに関連して、平沼経済産業大臣に伺います。

石油公団清算のための資産処分に関しては、整理すべきものは整理し、売却すべきものは売却するとされておりますが、その際、何より重要なのは、経営責任、行政責任を明確にすることなのではないでしょうか。

民主党では、去る6月19日、20日、議員を5チームに編成し、石油開発会社、石油備蓄会社に調査団を派遣しています。そこでは、石油公団の出融資先会社に対しては、役員に限定せず、さらに石油公団からの天下りも含めると、のべ人数で約150人もの天下りがあるという実態が明らかになりました。

石油開発会社については、経営においても、石油開発においても素人が少なくなく、また、将来への見通しもなく延命させている企業が多いことに驚いています。

長期の不況に直面し、金融機関からの貸し渋り、貸しはがしにあって、身ぐるみはがされている中小企業者からすれば、国民の血税を使って、赤字を出しながらも、のうのうとしている経営者の態度は言語道断であります。

この点で、各石油開発会社の整理に際して、損失を出したり、解散に追い込まれた会社の役員には、個人資産を差し出すくらいのことを求めるべきと考えますが、経営責任、行政責任のとり方について平沼経済産業大臣はどのように考えますか。

さらに、5月の完全失業率は5.4%で、4月から0.2ポイント悪化し、完全失業者数は375万人に達しています。リストラや減給のうき目にあっているサラリーマンやその家族からすれば、天下りの高級官僚が、ろくに仕事もせずに2000万円以上の給料をもらい、3年いただけで3000万円もの退職金を受け取っているようなことは、法外なことと、言わざるを得ません。

民主党をはじめとする野党会派は、天下り禁止法案を国会に提出しておりますが、今般の石油公団廃止関連法案には、そうした措置はどう具体化されていますか。それとも、今後も従来のような天下りを見逃すつもりですか。平沼経済産業大臣の明快なる答弁をお願いします。

 次に、石油公団の巨額の赤字を生み出す背景となった特別会計の見直しについて伺います。

石油公団に巨額の欠損金が発生した一つの背景には、石油税を実質上、特定財源としてきた石特会計、すなわち石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計において、その予算消化という観点から、経済性・採算性に問題のあったプロジェクトにまで安易に、投融資が行われてきたことがあり、これにより多額の国民の税金を無駄にしてきた石油公団及びその監督者たる歴代の、経済産業大臣の責任は極めて大きなものがあると言えます。

石特会計においては、近年でも、石油対策には4000億円から5000億円の予算が組まれ、そのうち開発関係には1000億円前後の 予算が投入されてきております。

これに対し、今日、地球温暖化問題への対応という面からも、新エネルギーの開発普及が大きな課題となっていますが、新エネルギー関係の予算は近年、大きく増加してきているとは言え、数百億円規模であり、その予算配分についても、適切にシフトさせていく必要性は、ますます高まっていると考えます。

こうしたずさんな投融資の温床となった、石特会計の特定財源については、直ちに使途を見直して新エネルギー関係予算に配分すべきと考えますが、いかがでしょうか。


この点、今後の環境税の導入ということも視野に入れなければならないものと思いますが、当面、電源立地対策等の特定財源である、電源開発促進税の見直し、揮発油税等の、道路特定財源の見直しに関する考え方とあわせて、塩川財務大臣及び平沼経済産業大臣の所見を伺います。

最後に、今回の石油公団の廃止は、小泉内閣が、標榜する「聖域なき構造改革」の一環としての、特殊法人等改革の第一弾となるものであります。しかし、その実態は、石油公団の廃止と言っても、その資産処分は、公団自身が行うとともに、公団廃止後も目的・理念が不明確な、新たな特殊会社を、設立しようとするものであり、これでは、結局、これまでの失敗の反省もなく、また、その責任も問うことなく、官主導の、石油開発が実質的に継続するということが大いに懸念されるところであります。

そうした、みせかけの改革ではなく、真に国民に資する改革を実行すべきことを強く主張して、私の質問を終わります。

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