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2002/06/06
使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)案に対する質問
平田健二

 私は、民主党・新緑風会を代表して、議題となりました使用済自動車の再資源化等に関する法律案に対し、自動車ユーザーの観点から質問をいたします。

 利便さを追求する余り、所得を増やすことが選択され、結果的に働き過ぎと浪費の関係が作られたときから、大量生産、大量消費、大量廃棄の悪循環が始まりました。地球の浄化処理能力は想像以上に小さく、そして脆弱であります。資源使用量と廃棄物と汚染を増大させ、消費するために働くという悪循環をどこかで断ち切らねば問題は解決しません。

 一昨年の循環型社会形成基本法の制定を皮切りに、循環型社会を目指す多くの関連法案が整備されました。また、総理は施政方針演説の中で、環境と経済の両立を達成する仕組み作りを目指すと言っておられますが、供給を減らすという根本的な問題に対する明快な回答はいまだ示されておりません。

 自動車に対するリサイクル法は最後の大物と呼ばれてきました。高い価格、長い使用期間、グローバルな市場、さらには、製造・販売・整備業等、関連産業のすそ野の広さは他に類を見ないものがありますし、その静脈産業においては既に一定の循環型社会を形成してきました。

 提案理由でも述べられておりますが、昨今、産業廃棄物最終処分場の逼迫に伴う処分費用の高騰や、鉄スクラップ市場の低迷を背景に、使用済自動車の逆有償化が進み、その結果、従来のリサイクルシステムが機能不全に陥り、自動車の不法投棄や不適正処理の問題を生んでおります。環境や地方自治体に与える影響は看過できない状況まで来ており、新たなリサイクルシステム構築の必要性は言うまでもありません。

 しかし、バブル崩壊以降、日本経済は低迷を続け、度重なる経済政策の失敗で未曾有の財政赤字を生み、失業率は過去最悪を更新しています。国民負担率は年々増加しており、二〇二五年には五〇%を超す負担が見込まれるとの試算もあります。その中で、自動車に係る税は既に毎年度九兆円に達し、租税収入に占める割合は一割を超え、ユーザーにとっては現在でも過酷な税負担となっています。

 このような中で、本法案は、自動車ユーザーに対して、三年間で一兆円を超す負担を求めるものです。公平、公正は当然のこと、国民が十分納得できる制度でなければなりません。

 本法の成立により、新車は登録時、中古車においては車検時若しくは再登録時に一定の金額を預託するわけです。家電リサイクル法では、その費用の徴収を排出時に行っていますし、製品価格内部化という手法もあります。なぜ前払式の自車充当方式を選択されたのか、まず経済産業大臣に伺います。

 また、新たに購入する自動車に対して幾ら負担しなければならないのか、最も気になることです。再資源化費用の算出はメーカーが行うとされておりますが、メーカー、車種ごとにその金額は変わっていくものと思われます。どのようなルールで算出し、いかに透明性を高めていくのか、経済産業大臣、明確にお示しをいただきたいと思います。

 自動車産業は、最先端の世界基準に合わせ、環境への対応やリサイクルへの技術開発を進めております。最も重要な点は、循環型製品の設計と低コストの処理技術開発です。そのためには税制などによる支援、誘導策が必要と考えますが、経済産業大臣、いかがでしょうか、伺います。

 また、メーカーは、十年も先の再資源化費用を算出するわけですから、当然、予測し得ない事態も発生いたします。特に経済の急激な変化、例えばインフレ等による処理費用の大幅な増加も考えられます。法律案によると、価格の変動についてはメーカーがそのリスクを負うとされていますが、場合によっては企業の存続に重大な影響を及ぼす事態も考えられます。また、このことが株価に悪影響を与えることも考えられます。どのように対処されるおつもりか、経済産業大臣にお伺いいたします。

 本法律案では、中古部品や有用金属の市場が機能することを前提に再資源化システムを構築しています。今後は、廃棄される自動車が増加し、これら市場に対しての売りの圧力が強まることが予想されます。有用資源に係る事業には固定資産税などで支援策を取っておられますが、中古部品等の活用はわずか四%にすぎないとの調査もあります。需要と供給のマッチングを更に進めるために強力な支援策が必要だと思われますが、いかがお考えか、経済産業大臣にお伺いをいたします。

 次に、資金管理法人についてお伺いいたします。

 現在、新車の販売台数が年間約六百万台、国内の保有台数が七千万台です。例えば再資源化費用が一台二万円平均としますと、一兆四千億円もの預託金が入ります。巨大な資金管理法人が誕生するわけです。巨額の資金を公的機関が扱うことについては利権の温床になりかねません。今までも苦い経験があまたあります。政府は、既存の公益法人にこの役割を担わせるようですが、このような巨大な公益法人を誕生させることは行政改革の流れに逆行するものではありませんか。どのように透明性、公開性を確保するのか、天下り禁止についてはどのような基準を設けるのか、経済産業大臣と行政改革担当大臣にお伺いをいたします。

 預託金の管理をメーカーではなく資金管理法人とした主な目的は、企業倒産、撤退に伴うリスクの排除です。リサイクル費用の価格変動についてはメーカーがそのリスクを負うとしておりますが、倒産したメーカーの自動車を指定再資源化機関で処理する場合、その費用が預託金を上回るときは欠損についてどこが負担するのでしょうか。経済産業大臣にお伺いいたします。

 さらに、処理システムのゴールキーパー的役割を果たす指定再資源化機関についてお伺いいたします。

 輸入代理店やメーカー等の委託を受け、再資源化費用の算出と最終処理を実施するわけですが、設備については新たなものが必要ですし、メーカーや車種が様々ですから、当然その処理費用は高くなると考えられます。民間でできるものは民間でとの基本とコスト最小化との考えに立てば、少なくとも再資源化機関は事務処理レベルにとどめ、再資源化処理の実行は民間に移すべきだと考えますが、経済産業大臣、いかがお考えですか。

 資金管理法人、情報管理センターについてお伺いをいたします。

 二つの法人の運営には相当の費用が予想されますが、一体どの程度の規模で、どの程度の運営費用を見込まれているのか、経済産業大臣にお伺いいたします。

 本法案では、公益法人の運営費用を預託金から支払うとしております。預託金を流用すれば処理費用に欠損を来します。資金運用は一〇〇%安全確実というものではありません。国債、有価証券、預金等で運用とされていますが、金融機関でさえ淘汰が進む中、運用の安全性を一体だれが担保できるのでしょうか。運用資金のルールはどのように明確にされるのか、資金運用面で欠損が生じた場合はどこが責任を負うのか、経済産業大臣、お答えください。

 次に、対象外となったオートバイについてお伺いをいたします。

 そもそも、使用済自動車の野積み、不法投棄の問題は、車両法の改正や登録制度で厳しく対応するべきであり、循環型社会形成とは次元の違う問題でありますが、不法投棄されるオートバイの実態も自動車と同様であります。

 現在、年間約七万台のオートバイを地方自治体が処理し、業界が協力を行うという自主的な処理手法を取っておられます。登録制度や引取り品目に自動車と若干の違いはありますが、なぜ本法律案の対象にされなかったのか、経済産業大臣にお伺いをいたします。

 廃タイヤ、廃バッテリーについても不法投棄や野積み等の実態があり、地域によっては深刻な状況を招いています。昨年八月の環境省の調査によりますと、七百五十万本もの廃タイヤが違法状態にあると報告されています。廃タイヤの八割は中途で交換品であるという問題もありますが、今後、本法律案の対象として検討されるお考えがあるのか、経済産業大臣にお伺いいたします。

 次に、自動車重量税についてお伺いをいたします。

 租税特別措置法の改正により、引取業者に引き渡した者に重量税を還付するとしています。放置自動車対策としてインセンティブを与えるという意味では一定の評価はいたしますが、そもそも、重量税は地方の分の全額、国の分の八割が道路整備に使われており、その趣旨は、自動車が道路を走ることによって生じた損傷を補修するためであります。日本の道路を走ることがない輸出車に対して重量税を還付しないのはなぜなのでしょうか、財務大臣にお伺いをいたします。

 さらに、自動車に係る税は複雑かつ高額な負担水準となっています。購買時に掛かる自動車取得税と消費税の二重課税などの問題もあります。自動車取得税の撤廃や高止まりしている暫定税率を本則に戻すことなどを含め、年間九兆円に達する自動車関係諸税の簡素化、軽減を実現すべきだと考えますが、財務大臣、いかがお考えになりますか。

 ここ数年、大規模な自動車窃盗団の横行が問題となっております。これは、ユーザーにとっても保険会社にとっても深刻な問題です。

自動車の盗難は、平成十年では三万六千件であったものが、昨年は六万三千件、三年間で二倍に急増しております。一方、検挙率は五〇%から二一%に急落です。

 税金は高い、再資源化費用は負担しなければならない、自動車は盗難に遭うでは、自動車ユーザーは踏んだりけったりです。さらに、不正に外国に持ち出される事例も目立っています。輸出入管理と併せ、徹底した対策が必要ですが、国家公安委員長、いかがお考えですか。

 最後になりましたが、民主党の自動車再資源化に対する基本的な考え方を申し上げます。

 自動車のマーケットは全世界であり、使用済自動車の再資源化は、今後、グローバルな取組が必要になってきます。EU各国においても試行錯誤の段階にあり、今後は使用済自動車に関するEU指令の方向で調整が進められると考えられます。

 こうした海外の動向も踏まえ、さらには、輸出車に対する最終処理の責任問題、資金管理法人に対する過重な費用負担の問題等々を考えれば、企業内にリサイクル費用積立てにかかわる法定準備金を創設し、この積立金を柱に使用済自動車再資源化システムを構築することが望ましいと考えております。

 以上、民主党の考え方を表明させていただきまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)
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