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2002/04/22
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」に対する本会議質問(参議院)
民主党・新緑風会 本田良一


私は、先ほど議長選挙におきまして新議長に選出をされました倉田議長の御指名によりまして、ただいまこの本会議場に登壇できましたことを光栄に思い、ただいまから質問をさせていただきます。

民主党・新緑風会、本田良一でございます。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。

米国のハーバード大学教授マイケル・E・ポーター氏は、最近の著作の中で、戦後の日本においては、世界市場において激烈な競争にさらされた輸出企業と、そのような環境には置かれず規制に守られた国内企業が並列的に存在をしてきたという趣旨のことを述べております。このポーター氏の著作の題名「キャン・ジャパン・カンピート」をそのまま訳いたしますと、「日本は果たして競争できるのか」ということになります。今の日本の一番痛いところをついた言葉だと思います。

日本は自由主義経済の国と言いながら、戦後長く官と特殊法人による護送船団行政が行われてきました。その実態は統制経済であったのであります。その結果、激しい競争にさらされることのなかった生産性と効率の低い産業分野が温存をされました。日本経済全体の構造的な転換が遅れたことが、現在の日本経済停滞の根本原因であると考えます。日本における生産や生活のコストが諸外国に比べて高く、日本の国際競争力が年々低下しつつあるのもこの影響が大きいと考えます。

また、地政学的に見ますと、我が国周辺のアジアにはまだ三つの共産主義国家があります。日本のアジアにおける役割は大変大きい、これをまず自覚すべきであります。アジアにおける自由貿易を推進する旗手とならなければならない。そのためには、まず日本が真の自由主義経済の国にならなければなりません。

そのためには、経済活動に対する様々な事前規制を廃止し、官が独占している業務であっても、民でやれることは民に開放する自由な経済活動のグラウンドを広げることが重要であります。しかし、自由な経済活動は、しばしば独占につながり、かえって自由な経済活動を阻害するという自己矛盾に陥ることもあります。そこで、事後規制の必要性が生じます。ここに公正取引委員会の大きな役割があるのであります。

日本の独占禁止法は戦後にスタートしたにすぎません。欧米に比べて極めて歴史が浅く、しかも不徹底であります。建設談合一つ取ってみても、現在に至るまで全国に広く存在をしている。これは国民が広く知るところであります。

小泉総理は、昨年五月、第百五十一国会の所信表明の演説の中で、「市場の番人たる公正取引委員会の体制を強化し、二十一世紀にふさわしい競争政策を確立します。」と述べておられます。この全体的な趣旨には賛成でありますが、しかし、私は、言葉の揚げ足を取るわけではありませんが、公正取引委員会は理念なき番人であってはなりませんと思います。どこへでも出掛けていって、自由主義市場を貫徹するための先兵となるべきであります。自由競争を日本全国津々浦々まで行き渡らせる、そういう気概を持って職に当たるべきであります。市場の番人として公正取引委員会を強化するのでなく、市場の先兵としてそれなりの陣容と権限を与えるべきであると思いますが、官房長官、竹中経済財政担当大臣にお伺いをいたします。

今回の独禁法改正は、政府の規制改革推進三か年計画に基づいて、それにこたえる形で法改正されるものであります。同計画は、平成十三年三月三十日、閣議決定をされ、その後、今年三月二十九日に改定されたものであります。

この三か年計画は、公正取引委員会に対し、十数目にわたってその実施を求めております。今回の法改正は、その中のわずかな二項目についてこたえたものであります。一つは、いわゆる一般集中規制項目に対して、いま一つは、カルテル・談合に対する執行の強化という項目に対して、罰金の上限を引き上げるなどの若干の対応を取ったものであります。

私は、先ほども述べましたとおり、公取は市場の番人にとどまるべきではないという観点から、このカルテル・談合に対する執行の強化という内閣府の総合規制改革会議の指摘項目に対し、公正取引委員会がどこまで踏み込めるのかを大変重視をしております。今回の罰金額の引上げ程度の法改正では誠に不十分と考えます。

そこで、政府にお伺いをいたします。

このカルテル・談合に対する執行の強化に関して、政府は今回の法改正も含めて、現在までの公取の対応に満足しておられるのでしょうか。その評価をお伺いをいたします。

さらに、執行の強化に関連をして、公正取引委員会にもお伺いをいたします。

今回の法改正に間に合わずとも、来年以降の改正として検討されているものはあるのでしょうか。それとも、今回の法改正、すなわち罰金額の引上げでその対応はおしまいでしょうか。石原規制改革担当大臣、公正取引委員長にお伺いをいたします。

次に、罰金額の引上げについてお伺いをいたします。

今回の法改正は、従来一億円であった罰金刑の上限を五億円に引き上げるものであります。別に課徴金制度があり、違反企業は悪質なケースについて課徴金と罰金を払うことになります。脱税事件を例に取って粗っぽい比較をすれば、脱税分の税金を納めるのは課徴金であり、重課税などとして懲罰的に追加的に取られるのが罰金であります。課徴金のほかに罰金を科すことが違反企業にとって大きな戒めになり、市場に対する厳しい警鐘となるのであります。

ところが、現在、一億円の上限にかかわらず、一社当たり六千万円の判決が最高であります。このような実績、罰金の上限を五億円に引き上げても、果たしてどうなるのか、本当に企業に対する警告、制裁になるのか。課徴金を含めて、措置制度全体、司法も含めた全体の見直しが必要ではないでしょうか。公正取引委員長にお伺いをいたします。

やはり規制改革推進三か年計画において公取に求められた改革項目として、入札談合に関与した発注者側に対する措置の導入があります。いわゆる官製談合の問題です。

二〇〇〇年に起こった北海道庁における談合事件、日本下水道事業談合事件など、官製談合事件が大きな社会問題と化しております。公共工事入札などで国や地方の官公庁の発注担当者らが受注業者を割り振ったり予定価格を漏らす事例が日常的に行われているという実態が日弁連の調査でも明らかになっております。また、内閣が行った世論調査においても、半数以上の国民が入札談合の取締りが不十分であると答えております。

公正取引委員会の排除勧告については、これまで事業者のみが対象となっているために官製談合を防止する効果が乏しかったことから、発注者側であるべき官に対して公正取引委員会が改善措置命令を行えるようにすることが、独禁法を見直すべきと考えます。民主党では、こうした内容を含む官製談合防止法案を昨年国会に提出をしております。

政府としては、この官製談合の問題についてどのような対応を図るつもりか、官房長官にお伺いをいたします。

また、現実には、現下の厳しい経済情勢の下で苦しい経営を迫られている数多くの下請中小企業が存在をいたします。週末発注や不当な価格設定など、不公正な取引を放置をして公正な競争は決して成り立ちません。毎年、千件を超える下請法違反事件が起きておりますが、そのうちのほとんどが公正取引委員会からの警告にとどまっております。法律で定められた勧告処分はわずかな件数にすぎず、違反行為に対して十分な取組がなされているとは言えません。

民主党は、昨年の臨時国会で下請代金支払遅延等防止法改正案を提出し、その発議者に私もなっております。保護される下請仕事の範囲を映像、デザイン、プログラムなどの知的成果物や役務の提供に広げたり、罰金額を引上げをすることなど新たに提案をしております。今国会も再提出をしておりますが、これについて、経済産業大臣、公正取引委員長にお伺いをいたします。

日本が真の自由主義経済の国にならない、日本にはなかなか公正な競争社会が実現をしない大きな理由として、公正取引委員会の独禁法運用の甘さ、非力さを指摘する声があります。法律上では厳しい刑事罰が定められていても、実際に刑事告発するケースが極めて少ない。反競争的な行為に対する公取による刑事告発は、一九九〇年から二〇〇〇年までの十年間にたった六件しかありません。

日本の独禁法運用が弱体であると諸外国の指摘する理由の一つとして、訴訟による解決ではなく、行政指導あるいは処分に頼っているとする指摘があります。平成十二年度の実績を見ても、公正取引委員会が摘発したカルテルは二十五件ありましたが、刑事告発をされた事件は一件もなく、ほとんどが勧告あるいは警告などの行政的手段により処理されております。私は、現在の公取の対応は甘過ぎると思いますが、与えられた権限の問題もあるやと聞いておりますが、公正取引委員長、いかがでしょうか。

また、これに並行をして指摘できるのは、審査件数そのものがそもそも少な過ぎるのではないかという事実があります。公正取引委員会は、人員が足りない、その結果、違反を探知するのに十分な数の触手を持っていないことをその理由として挙げておりました。確かに、現在の公正取引委員会の人員構成は諸外国と比べると見劣りをしております。今年度予算では増員されましたが、これで人員的な問題は解決するのか、公取委員長にお伺いをいたします。

米国の通商代表部などについて指摘をされているのは、最初に違反行為を通報した企業に対して司法取引的な措置により処罰を減免する権限を日本の公取が持っていないという点であります。このような権限なしには、違反行為に加わっている企業から当局への通報の増加が見込めるとは思えません。規制改革推進三か年計画でも、調査に積極的に協力をし、かつ違法性の低い事業者に対する課徴金の減額措置の必要性、導入の可能性を指摘をされておりますが、この辺りはどう対処をされるのか、公取委員長にお伺いをいたします。

独禁法十一条の改正の中には、証券会社をいわゆる事業会社株式の五%ルールから除外するという趣旨も盛り込まれております。今や銀行、保険、証券サービスを融合したユニバーサルバンキングが世界の趨勢となりつつあります。近い将来、日本の証券会社が他の機能を共有するようになることも十分あり得ると思われますが、このような事態の出現にはいかように対応されるのか、公取委員長の御所見をお伺いをいたします。

最後にお伺いをいたします。

今後、公正な競争政策を一層強化していくためには、公正取引委員会に対して、より一層の独立性を与えることが大きな前提条件となると思います。公取を現在の総務省管轄下から内閣府に移行させるという考えについては、たしか昨年の国会で、小泉総理も答弁の中で、前向きに検討する旨を表明をされております。この実現の目途について、官房長官にお尋ねをいたします。

以上、幾つか論点を挙げてまいりましたが、最後に、公正取引委員会の機能を強化をし、公正な競争をより一層進めることは、日本経済全体の回復や国民の生活水準の向上のために不可欠でありますし、併せて国際社会における日本の立場を強化するものであることをここに改めて指摘させていただき、独禁法の一部改正法案に対する私の質問を終わります。

どうもありがとうございました。(拍手)


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