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1999/12/01
宮沢大蔵大臣の財政演説に対する代表質問/藁科満治議員
参議院本会議
宮沢大蔵大臣の財政演説に対する代表質問
民主党・新緑風会 藁科 満治

 私は民主党・新緑風会を代表し、宮澤大蔵大臣の財政演説に対し質問をいたします。

 最初に、予算編成をめぐる基本的な問題ですが、政府は、経済新生対策を発表したその日に、今年度の経済見通しについても見直ししております。それによりますと、実質成長率は、当初見通しの〇・五%から〇・六%へ〇・一%の上方修正となっておりますが、一方で名目成長率は当初見通しの〇・五%からマイナス〇・三%へ〇・八%の下方修正となっております。政府は、今年度は「はっきりとしたプラス成長」を達成すると公約しましたが、名目ベースの成長がマイナスということは、「はっきりとしたプラス成長」が達成されたとは到底言えません。まず、この点につき、小渕総理のご見解をお尋ねします。

 また、今次補正予算で七兆円以上の国債を発行する結果、小渕総理は、就任後わずか一年余りで五十兆円以上も借金を重ねることになり、今年度の一般会計予算の歳入に占める国債の割合は、戦後最悪の四十三・四%になります。しかし、大盤振る舞いの経済運営を続けているにもかかわらず、我が国経済が収縮していることは、政府の経済運営が不適切であることを如実に証明していると言えます。宮澤大蔵大臣が「大魔神を一回から登板させた」と豪語された当初予算は、最終回までもたず、今次補正予算に救援を要請せざるをえなくなったわけでありますが、これについて小渕総理及び宮澤大蔵大臣の明解なご答弁を求めたいと思います。

 併せて、最近における急激な円高の景気への影響と今後の対応策について、宮澤大蔵大臣のお考えを伺います。


 さて、今次補正予算では、社会資本整備関係費として三兆五千億円の予算が計上されております。小渕総理は、経済新生対策について、「新規性」「期待性」「訴求性」をキーワードにしてとりまとめたものだと自画自賛しておられますが、実態は旧来型公共事業の焼き直しに過ぎません。言葉づらだけを追えば、「歩いて暮らせる街づくり」や「基幹ネットワークインフラの整備」、「情報化の飛躍的推進」などと、いかにも将来を先取りした斬新な事業のように見えますが、これらは道路や港湾・整備新幹線などの旧来型公共事業の寄せ集めや、電線地中化計画などの既存計画の看板のかけ替えに過ぎません。これら旧来型公共事業の景気刺激効果は極めて限定的であることは、多くの識者が指摘しているところです。一部の業界の救済のためだけに、国民の血税を大量に注ぎ込むことは、まったく不公平なものであり、ましてその財源が将来へのツケ回しであれば、無責任極まりないものでもあります。この点について、小渕総理のご見解を伺います。


 次に、「中小企業基本法」が、我が党の主張も取り入れて改正されました。改正案は中小企業者の定義を拡大するとともに、中小企業に積極的な役割をもたせ、独立した中小企業の多様で活力ある成長発展を基本理念としています。しかし、今次補正予算の中小企業対策をみますと、旧態依然とした施策が散りばめられ、基本法改正の方向に逆行しているのではないか、との印象を受けます。

 その典型的なものが、中小企業金融安定化特別保証枠の安易な拡大・延長であります。この制度は、金融システムが大きく揺らぎ貸し渋りが激化する中、あくまでも緊急避難的措置として設定されたものです。しかしながら、ケースによっては実質的に無審査で保証が行われ、本来市場で淘汰されるべき企業まで延命されるなど、運用上、様々な問題が生じていることも事実です。さらに問題なのは、保証枠の追加分である十兆円の積算根拠が甚だ不明瞭であることであります。当初、通産省は、追加分は二兆円もあれば十分と見込んでいたにもかかわらず、与党三党の調整で、その金額は十兆円に跳ね上がりました。まさに選挙対策の見せ金としか言いようがありません。これは、まさに新しい「中小企業基本法」の精神にも反するものといわざるを得ません。以上の諸点について、小渕総理のご所見を伺います。

 その他、中小企業・ベンチャー企業振興策と銘打つ施策が盛り込まれていますが、小手先の対策ばかりで、実際に効果をあげるかどうかは疑問です。いま必要なのは、中小企業の「やる気」を支援する政策です。中小企業税制の抜本改革、直接金融市場の整備、商店街を中心とした福祉コミュニティの再構築、独占禁止法や下請関連法制の厳格化などに重点的に取り組むべきと考えますが、これらの点につきましても小渕総理のご意見をお聞かせ願います。


 次に、来春の実施を前に、現在、国民と地方自治体に大きな不安と不満をもたらしている「介護保険問題」について質問します。政府の見直し案は、高齢者の保険料について、来年四月から半年間は徴収凍結、その後一年間は半額を徴収するとしております。そこでまず、最初に小渕総理にお伺いしたいことは、介護保険を社会保ッ制度で運用する意義と目的について、どのように考えておられるかということです。

 社会保険として運用される今回の介護保険につきましては、いざという時のための担保として、そして国民相互が助け合う社会的システムとして、国民がこの新制度を信頼し、保険料を収めることに納得したわけです。ここに社会保険が成り立つ原則があるわけですが、しかし現在、政府が打ち出した保険料の減免措置は、この社会保険の存立基盤を否定した、まったくの選挙目当てのものであると言わざるをえません。これまでの国民間の合意形成の努力と、地方自治・地方分権の精神にのっとり諸準備をすすめてこられた市町村の努力を踏みにじるものであります。どうか、高齢化社会に不可欠な介護保険が、内容的にも充実し、国民の評価が得られる制度としてスタートできるよう、今一度、再考していただきたいと思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。併せて、高齢者保険料対策費の七千八百五十億円につきましては現在、自治体関係者より、保険料の減免分に限定するのではなく、サービス基盤の充実など市町村の独自性に任せてほしい、との要望が出されていますが、この点についても小渕総理の見解をお伺いします。

 
 次に、医療保険者対策費の千二百六十億円に関連してお尋ねします。政府は、個々の医療保険者の財政事情を見ながら支援する考えのようですが、これでは、医療保険制度の下で財政状況が悪化した保険者に公費補助を行うことになりませんでしょうか。そもそも、医療保険制度の改革が遅々として進まないことが問題なのですが、そのために保険者は厳しい財政状況に追い込まれているのです。医療保険制度の抜本改革について、政府は二〇〇〇年度からの実施を約束しましたが、来年四月からどのような改革を実施するのか、小渕総理にお尋ねします。介護保険の実施を目前にした今回の見直しには、国民も自治体も大混乱しています。与党三党がばらばらの主張をし、介護保険制度の将来も見えてこない中で、国民の不安や不満は頂点に達しています。小渕総理、国民が安心して生活することができるように、介護・年金・医療など社会保障全体の将来像について、今ここで説得力のあるビジョンを語っていただきたいと思います。


 さて、企業・団体献金の禁止問題に移ります。私たちは五年前に、二〇〇〇年一月をもって資金管理団体に対する企業・団体献金を禁止するということを、もちろん自民党も含めて、国会の明確な意志として国民の前に約束いたしました。しかるに、自民党はこれを反故にしようと動かれました。先のクエスチョンタイムでは、我が党の鳩山代表の追及の中で、総理はようやくこの約束の履行を明言されました。しかし報道等によりますと、自民党内では、抜け道探しや「政治資金規正法」附則第十条削除の議論が盛んに行われている、とのことです。これが事実といたしましたら、国民の政治不信はますます増幅されるのではないか、と考えます。小渕総理、このような事態が起こっている現状をどのようにお考えでしょうか。また、総理・総裁として、この際、政治倫理確立のために強力なリーダーシップを発揮すべきだと考えますが、いかがですか。併せて、附則第九条に基づく法案をいつ提出し、いつまでに成立させるのか、明確にお答えください。

 民主党は、企業・団体献金の禁止は当然のこととしまして、政党を迂回路する「ひも付き献金」などの抜け穴を塞ぐ措置として、いくつかの提案をしております。例えば、選挙運動に関するものを除き、政党や政党の政治資金団体が政治家の資金管理団体・その他の政治団体に寄付を行うことを禁止すること。また団体寄付を受けられる政党支部を限定し、支部に対する団体寄付に年間五十万円の個別制限を設けること。さらには、政治資金の透明化を進めるために、収支報告書の保存期間を刑法上の時効期間である五年間に延長するとともにコピーを解禁すること、などです。これらの政策は国民世論からすれば当然のものですが、小渕総理のご見解をお尋ねいたします。


 次に、衆議院の定数削減問題ですが、この問題は大きく言って二つあります。その第一は削減の方法です。自自公三党合意によりますと、衆議院定数を五十議席削減するとしながらも、当面は比例区から二十議席削減し、残り三十議席については先送りされております。民主党は、与野党の協議会において、再三再四、残り三十議席の削減方法や考え方を示すよう求めましたが、与党各党の発言はバラバラなままで、突然協議が打ち切られました。当初の自自合意に基づく法案では、比例区のみから五十議席削減でしたが、今回の自自公合意は、残り三十議席について小選挙区を中心に削減すると、曖昧ながらも法案の根幹を変更するものとなっています。まさに、理念も哲学も違う政党が政権延命のために選挙制度を貶めているように思えます。改めて小渕総理及び二階運輸大臣、続総務庁長官に、残り三十議席の具体的な削減y@、つい最近まで各党が主張していた方針が変節した理由、そもそも各党はどのような選挙制度を目指しているのか、それぞれ具体的にご説明願いたいと思います。

 第二の問題は、与野党協議を不正常な状態にしておき、与党だけで改革を強行しようとする姿勢です。かつて、民主主義の土俵づくりに関わる選挙制度の改革を、与党のみで強行したことはありません。政権にある者が、それぞれの都合で選挙制度を変更するようなことは決して民主的とは言えません。むしろ、選挙制度に関しては、自自公合意で記されている在日永住外国人の地方選挙権の付与、また衆議院小選挙区で法定得票数に達しなかった重複立候補者の比例代表選挙名簿削除、くら替え等の立候補禁止、比例代表選挙当選議員の政党間移動の禁止、消滅した政党の比例名簿繰上げ当選の排除等についての改革を先行させるべきでありますが、小渕総理のお考えをお伺いします。

  
 次に、北朝鮮・朝鮮民主主義共和国との関係改善について伺います。冷戦構造が崩壊して十年が経ちましたが、期待とは裏腹に世界の各地では地域紛争が続き、東アジアにおいても朝鮮半島をめぐる情勢は予断を許さないものがあります。昨年来、テポドン発射などで日朝間の緊張は著しく高まりましたが、そうした情勢の中で、昨今、南北間の新たな交流の動きが出始め、またアメリカ・韓国の柔軟な対応姿勢が出てきています。そして、このほど超党派による村山訪朝団が北朝鮮を訪問することになりましたが、今後の両国の関係改善につながる環境づくりとして、大いに意義のあるものと期待しております。しかしながら、二十一世紀に向けた両国の関係を確固たるものにするためには、政党レベルや民間レベルの努力だけでなく、政府の継続的かつ強力な取り組み努力が不可欠であります。そうした意味から、総理の日朝関係改善に向けてのご決意の程をお伺いしたいと思います。


 最後になりますが、小渕・自自公連立政権に決定的に欠けているもの、それは将来へのビジョンと責任ではないでしょうか。とりわけ小渕政権の経済運営は、予算のバラマキ、財政規律の欠如、将来世代へのツケ回しといった言葉に特徴づけられます。そのために、すでに破綻したと言っても過言ではない財政の再建策も示されておりません。一方で、東海村の臨界事故、神奈川県警の不祥事、商工ローン問題、これらに代表されるようなモラルハザードが世の中に蔓延しているのは、政治の世界の現状と全く無縁ではありません。国民の正当な信託を得ていない小渕・自自公連立政権は直ちに衆議院を解散し、国民に信を問うべきであることを強く訴え、私の代表質問を終わります。
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