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1999/11/04
小渕総理の所信表明演説に対する代表質問(寺崎議員)
民主党・新緑風会 寺崎 昭久

(自自公政権について)

私は、民主党・新緑風会を代表して、総理の所信表明演説に対して、総理及び関係大臣に質問を行います。

連立政権において規模が大きくなり過ぎた状態は、一般に「過大規模連合政権」と呼ばれ、「それによって、議会は法案を通過させるだけの無力な承認機関になり、議会政治の精神は死滅してしまう。それは、政党間競争が議会から内閣に移転してしまうからである。」と政治学上その弊害が指摘されているように、数の横暴により議会の形骸化、民主主義・政党政治の堕落を招くと考えられております。


しかるに、先の十月四日に合意した自自公連立政権は、衆議院で七二%、参議院で五六%を占める戦後最大の巨大与党政権であります。ところが、小渕総理は自自公連立政権の意義について、「政治の安定のため」や「多数派の形成は民主主義の基本である」などの発言にとどまり、巨大連立政権の弊害について一言も、言及されておりません。政権の安定と国民生活の安定とは別物です。一国の総理として、一般則無視の不見識な発言と断ぜざるを得ません。所信表明演説で総理は、三党派政策合意に盛り込まれた「衆議院定数の削減」「安全保障」「政治家個人への企業・団体献金禁止」といった重要課題への取り組みについては触れられませんでしたが、このことは、国会での論争が既に連立政権内に移転している証左ではありませんか。その上、「三党間調整が難航必至だから言及できなかった」では、三党派連立は、やはり政策を実行するための政権ではなく、単なる数合わせでしかないと言わざるを得ません。

以上の指摘について、総理のご所見をお聞かせ下さい。


先の参議院選挙では、自由党は自民党と厳しく対峙して戦われました。

にも拘わらず、その後、自由党は、選挙公約の反故、国民の意思を踏みにじる背信行為とも言うべき、自民党政権延命のための自自公連立政権へ走りました。与野党の関係で闘った政党が連立を組むのであれば、少なくともそれについて国民の洗礼を受けるのは当然、それが憲政の王道であります。

事実、昨年八月の衆議院本会議で小沢自由党党首は、「もともと自民党に対しては、衆議院においても国民は過半数を与えておりません。そうである以上、野党に政権をゆだねるか、衆議院の解散・総選挙を断行し、国民の信を得た正当な政権に道を譲るのが憲政の常道であります。」と述べておられます。自由党は、何故に党首自らが解散・総選挙を主張しながら連立に参加するのでしょうか。

また、今年一月には、自自で「衆議院比例定数を五十名削減する。」「国連平和活動に積極的に参加する。」ことなどを政策合意しましたが、その後の自自公協議の中で、なぜか自由党の主張はトーンダウンしております。これでは、政権に居残りを図るため、譲歩、妥協を繰り返していると見られても仕方ありません。

自由党は、日頃の立派なご見識、主張を曲げてまで、なぜ連立政権に参加されるのか、自由党の二階運輸大臣のご所見をお聞かせ下さい。


これまで、自民党は公明党に対し様々な批判を行ってきました。例えば、自民党のある幹部は、「公明党との閣内協力は、憲法の政教分離に照らし疑義がある。」と述べておられます。小渕総理は、この発言を、どう受け止めておられるのか、併せて政教分離についてのお考えをお聞かせ下さい。

また、このような自民党の公明党批判に対し、公明党の続総務庁長官はどのようにお考えか、忌憚なきご見解をお聞かせ下さい。

昨年十一月七日、新党平和と公明が合流した公明党は結党大会を開きました。大会で神崎公明党代表は「自民党の補完勢力になる気は全くない」と強調し、当時注目された「自公」連携の可能性に否定的な考えを示され、「自民党と連携しない公明党」が誕生したはずです。


しかし、結党から一年も経たずして、党是を一八〇度転換しました。国民は、「公明党は反自民ではなかったのか。」「露骨な公約違反だ」と驚き、公党のあり様を疑っております。路線として自民党との連立政権参加を選ばれるなら、先の結党を振り出しに戻して、「自民党と連携する党」としての新しい公明党をつくらないと、国民に対して説明がつかないのではないでしょうか。続長官に明快なる答弁を求めます。

総理、このように、自自公連立は矛盾だらけであり、無理があり過ぎます。処女航海で沈没したタイタニック号同様、内憂外患の氷山に激突して海の藻屑と消えるは必定、到底、国民の付託に応えられる政権ではありません。国民を冥土の道連れにしないで下さい。総理、可及的速やかに解散を決断し、国民の信を問うべきではありませんか。真摯なご答弁を求めます。


(西村前防衛政務次官問題について)

 次に、西村真悟前防衛政務次官の核武装発言等について伺います。

 西村議員は雑誌のインタビューで、「日本も、核武装した方が良いかもしれないということも、国会で検討せねばならない。」と発言したとされていますが、政府の要職にある者がこのように発言すれば、わが国が国是とし、日米安全保障体制の前提である、非核三原則を変更しようとしていると誤解されてもしかたがありません。健全で活発な安保論議に水をさしかねない問題でもあります。

 また、西村議員は核抑止力を論ずる中で、「強姦」という比喩を多用していますが、この発言は女性の尊厳を損ない、人権を無視した極めて悪質な暴言であり、断じて許せません。

 こともあろうに、その西村議員は、政務次官辞職にあたって防衛庁から栄誉礼で送られました。青木官房長官は、「慣例に従っただけだから問題はない」との見解を示されましたが、総理が国民に対して、「遺憾」「陳謝」の表明を余儀なくされた、問題の政務次官に対し、また国民感情や自衛官の志気、栄誉礼の意義にてらし、今日でも「栄誉礼は問題なかった」、と考えておられるのですか。「過ちを改むるにやぶさかでない」とは、こうした時のための言葉ではないですか。その無神経さに憤りを覚えつつ、青木官房長官のご見解をお尋ね致します。

 西村議員が、防衛問題に一家言もっている人物であることを承知の上で、防衛政務次官に任命したとすれば、総理は西村議員の爆弾発言を期待していたのではないかとさえ疑います。総理、ご自身の進退も含め、責任の取り方を国民の前に明らかにしていただきたい。


(藤波孝生元官房長官辞職問題)

次に、政治倫理及び政治改革に関連してお伺いします。

まず、先に受託収賄罪の有罪が確定した藤波孝生元官房長官への対応についてであります。

昭和六十三年に発覚したリクルート事件は、カネに絡んだ政治家と企業の歪んだ関係をクローズアップさせました。このリクルート事件をきっかけにして当時の竹下内閣が崩壊し、自民党単独政権の終焉につながったことを、小渕総理は、よもやお忘れではないでしょう。

リクルート事件後、平成四年に改正された公職選挙法では、収賄罪で有罪が確定した議員は自動的に失職することになりました。法理には刑罰不遡及の原則があることは承知しておりますが、しかし、法改正前の事件とはいえ、立法府の一員として、汚職の罪で有罪が確定した議員は法の趣旨に則って、当然、辞職すべきです。

 また、藤波元官房長官は自民党に離党届を出したそうですが、自民党総裁でもある小渕総理はそれで一件落着とするのですか。また、所信表明演説で、総理からこの問題について一言の陳謝・釈明が無かったのはなぜですか。総理の答弁を求めます。


(地位利用収賄罪創設と利益誘導政治の改革について)

 さらに当時、多数の政治家が、藤波元官房長官同様、リクルート社から未公開株を譲渡されながら訴追を免れたことから、収賄罪に係る法改正が政治的懸案となってきたことを、この際、思い起こしていただきたい。利益誘導政治から政策本位の政治へと転換を図ることが、政治改革の原点であったはずであります。

総理、今なすべきは藤波元官房長官の速やかな議員辞職を促すとともに、新たな立法措置を講じて政治倫理の確立へ明確な姿勢を示すことです。しかるに自民党は、あっせん利得罪に関する法律の制定を約束しながら、いまだに提出しておりません。総理、リーダーシップが問われているのです。それとも、政治家個人への企業団体献金の継続が念頭にあって、『お蔵入り』とでもおっしゃるのですか。総理の答弁を求めます。


民主党は、公明党や社民党、参議院の会とともに、今年五月、地位利用収賄罪処罰法案を提出しました。これは、国会議員が役所にあっせんして、特定の業者等に不当に便宜を図って報酬を得た場合は罰することにしたものです。これも、一刻も早く審議入りをし、法案の成立を図るべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。

 また、この法案を共同提案した公明党の続長官には、この法案成立に向けた決意をお伺いします。


(東海村事故及び、山陽新幹線コンクリート剥落事故について)

 次に、茨城県東海村で起きた臨界事故についてお尋ねしますが、質問に先立ち、今回の事故で被ばくされた多くの方々に、心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早いご健康の回復をお祈りいたします。

 私ども民主党は、事故翌日に現地を訪れ、橋本茨城県知事ともお会いし、混乱する状況を見聞し、地元の皆さんのご要望をお聞きしましたが、政府の初期対応の拙劣さ、指揮命令系統がまったく機能していなかったことに愕然としました。事故発生から時系列で追って行けば行くほど、政府の対応の悪さが露呈されます。加えて、総理が政府事故対策本部長として、現地視察されたのは事故発生から六日も経ってからのことであります。何故ですか。総理。ご自身のことも交え、政府の対応がなぜここまで遅れたのか、見解をお聞かせ下さい。


 そして原子力の安全面のチェック機構が的確に機能しなかったことも問題であり、このままでは、再び同じ轍を踏むおそれがあります。

そこで私は、現行の機構を、アメリカの原子力規制委員会=NRCのように強力な権限を持った完全な独立機関に、統合改編すべきだと考えますが、総理、いかがですか。

 また原子力損害賠償法が、適用されるのは「身体への傷害、物品の損壊などの直接被害」との報道等がなされ、今回の事故で間接的な被害を受けた方は、何の補償もないのではないかと、大変心配されています。総理はどのようにお考えでしょうか。


 また、現在検討中の原子炉等規制法改正案は、核燃料加工施設などにも定期検査等を追加するようですが、その際、事故調査したアメリカ・エネルギー省調査団が、帰国後に「日本では、作業員は規則に従うもので、ルールを守れば事故は起きないとの立場だが、人はミスを犯すこともある。ミスがあっても防ぐシステムが重要」と指摘していることを考慮すべきですし、さらに、私は、作業マニュアルは、しばしば現場で作られている、という実態にも留意する必要があると思います。総理はどのようにお考えでしょうか。


 次に、山陽新幹線のコンクリート剥落事故について、お聞きいたします。

今年六月二十七日、山陽新幹線・福岡トンネルでのコンクリート剥落をはじめ、平成八年以降、高架橋からのコンクリート片落下問題等が、山陽区間だけで四十九件も発生しています。幸いこれまでは大惨事を免れていますが、再発防止は焦眉の急であります。なぜ、このような事故が続発するのか。建設当時の資材、人材不足の影響なども原因と見られているところですが、国鉄OBで交通評論家の角本良平氏は「関係者が緊張感も自負心も失った結果だ」と、危機管理意識の希薄化と体制の不備を鋭く指摘されています。十月九日の北九州トンネルでの剥落事故再発では、大方の国民は、「またか。」「本当に安全点検をやったのか。」「八月の安全宣言は営業を優先したのではないのか。」との疑念を抱き、不安を払拭しておりません。

この際、政府には、事の重大性に鑑み、「列車の運行を停めてでも、即刻、徹底的に安全総点検と対策を講じ、以って国民の信頼を回復するよう」、とりわけJR西日本に対して、強く指導・対策する責任があるのではありませんか。総理のご見解をお尋ねします。


(経済対策、第二次補正予算について)

次に、政府が近々決定する経済対策及び第二次補正予算についてお尋ねします。
 今、景気に明るさが見え始めたことは事実ですが、しかし、企業のリストラによる雇用不安が続き、所得の伸びが低迷し、また、企業が過剰設備を多く抱える状況では、本格的に消費が回復する見通しは持てません。円高基調が進めば、せっかくの回復の芽が摘み取られてしまうおそれもあります。

 私たちは、当初予算の段階から、構造改革につながるメリハリある景気刺激型予算を編成するように求めてきましたが、政府・与党は全く聞く耳を持たず、原案をがむしゃらに成立させました。しかも、当初予算が執行されてわずか三か月ちょっとで第一次補正予算の提出を余儀なくされ、この国会で第二次補正予算を提出するとは言語道断であります。

当初予算も第一次補正も欠陥品であったことの証左です。本来、このような失態は内閣総辞職ものであります。この点について、総理の見解を伺いたい。

 
 私たちは、本来の景気牽引役である民需が安定するまでは、財政・金融政策による景気下支えは必要であると考えておりますが、それは、将来にツケを残すバラマキではなく、構造改革につながる経済対策でなければなりません。

徒に規模を増やすのではなく、政策の質を高めるべきです。その一環としての効率的な補正予算を編成すべきであり、平成十二年度予算につなげる未来志向の予算とすべきです。

 即ち、第二次補正予算では、公共投資は従来型の配分はやめ、介護基盤の充実、IT投資等の情報通信インフラの整備、バリアフリーのまちづくりなどに集中して実施すべきであります。


 整備新幹線の建設前倒しを進めるのなら、先ほど指摘したコンクリート剥落事故等の実態を踏まえて、いっそのこと、予算を新幹線総点検事業に振り向けた方が賢明ではありませんか。東海村の放射線漏れの例にも見られるように、これから高度成長期のひずみとも言える事故が、次ぎ次ぎに起こる可能性がないとは云えません。新事業よりも、戦後日本の手抜き工事を点検したり、社会資本を補修する事業に力点を置くよう提言いたします。

 また、コンピューター西暦二〇〇〇年問題や、耐震都市づくりへの対策にも万全を期し、「過去を振り返り、未来に備える」、安心・安全事業に力を入れるとともに、あわせて東海村事故の政府の初動態勢の遅れを反省し、原子力事故・災害・有事等に備えた政府の危機管理体制を整備・充実することを提言します。


 失業や老後に備えたセーフティーネットを着実に整えつつ、規制撤廃、新規事業創出、新しい時代に対応した雇用の流動化、知的財産権における競争力強化、政府事業の徹底した民営化などを進める政策メニューに取り組むべきであります。
 この民主党提言に対する総理の見解を求めます。


(中小企業政策について)

 次に、中小企業政策についてお尋ねいたします。

 雇用の約八十%、事業所数の約九九%を占める中小企業は、わが国経済と国民生活にとって、極めて大切な存在であります。産業、雇用の空洞化が危惧されている現在、わが国産業の再構築に向けて、中小企業活力の維持、起業家精神の喚起こそ、日本経済が必要とする喫緊の課題であります。

 それには、国民にビジネスチャンスが十分提供され、容易に新規事業を起こすことのできる環境づくりを重点施策に据える必要があります。

かかる観点から今回、政府が打ち出そうとしている新事業・ベンチャー企業育成策を推察すると、全く魅力の乏しいものと言わざるを得ません。最大の目玉であるいわゆるエンジェル税制に関しては、株式会社の株式の譲渡損失を他の所得からも繰り越して繰越控除ができるようにすべきとの民主党の提言を葬り去りました。これから、事業を起こそうとする人、ベンチャー企業に資金を提供しようとする人だけでなく、世界の市場も、政府の対応に失望するに違いありません。


先の国会で、民主党は、女性起業家の育成、補助金を交付されなかった場合の理由の開示、エンジェル税制やストックオプション税制の拡充、国立大学教官の民間役員兼務の解禁などを盛り込んだ、「起業家支援法案」を衆議院に提出しましたが、自民党だけでなく、自由党や公明党も反対しました。何故ですか。自由党の二階大臣、公明党の続長官にその理由について明快なる答弁を求めます。


また、実効ある事業承継税制が先送りされたことも問題です。「中小企業国会」と銘打つなら、 政府は事業承継税制等を含め、抜本的な施策に踏み込むべきではありませんか。

 中小企業金融安定化特別保証制度によって、中小企業の倒産が減り、貸し渋りに効果を発揮したとの評価がありますが、他方で、かえって中小企業の足腰を弱め、逆に創意工夫に努力したり、やる気のある企業が報われないとの批判もあります。加えて、政府はこの制度の詳細な実態を明らかにしていないことも問題です。なぜ今回保証枠を十兆円追加する必要があるのか、その根拠も不明であります。私たちは、この制度については、運用状況を厳しく検証した上で、真に必要な金額のみを追加すべきと考えます。以上のわれわれの提言にどう応えるのか、総理の答弁を求めます。


(財政問題について)

 次に、我が国の財政についてお尋ねします。

現在、国と地方の長期債務残高は、六〇〇兆円という巨額に達しようとしております。その原因の一端が、バブル崩壊後の景気対策と称する財政出動の繰り返しにあったことは周知の事実です。アメリカ、イギリスに比べても、我が国の財政事情は異常をきわめております。

安易な赤字国債の増発が、金利の上昇を呼ぶ可能性にも留意しなければなりません。さらに円高基調につながり、二重に経済にマイナス効果をもたらす懸念もあります。
以上の点についてどのようにお考えか、総理の見解をお伺いしたい。


 近く提出される第二次補正予算では、財源をまた赤字国債に依存せざるを得ない状況です。こうした中、自自公三党の合意に「国債の円滑な消化を図るため、国債多様化を協議する」という項目が盛り込まれました。今後の国債の消化が楽観できない状況を踏まえて深読みすると、重大な懸念がわき上がってきます。すなわち、日銀の国債引受けを想定しているとも読めるからです。総理は、財政法第五条が設けられた経緯を、よもやお忘れではないと思いますが、「日銀の国債引き受けはない」と断言されますか。明確にお答え願います。


 私は、今すぐ財政出動をすべてやめるべきだとは申しません。しかし、少なくとも、今後どのようなスケジュールや方法で財政の健全化を進めるかということは、直ちに明確にする必要があります。小渕総理は、財政の健全化について、どのようなビジョンをお持ちなのか。十一月二日の衆議院本会議で総理は、「経済が回復軌道に乗った時点で検討する」とおっしゃいましたが、これでは答弁になっていません。逃げていては、国民の理解も協力も得られません。国民一人当たり五百万円もの国と地方の借金をどう解消するのか。国民にメッセージを伝えるべきです。総理、骨格なりとも是非、お聞かせ願います。


(金融問題について)

 次に、金融についてお尋ねします。

 昨年の金融国会から一年が経ち、金融不安は少なくとも表面上は沈静化したと言われています。しかし、問題の本質は果たして解決されたのでしょうか。私は、そうではないと考えています。

 例えば、「ペイオフを延期せよ」という、問題のすり替え論の背景を考えてみてもそれは明らかであります。すなわち、もともと、二〇〇一年四月にはペイオフの凍結が解除されるので、それまでに金融不安を完全に解消しようという議論であったものが、いつの間にか、このままではペイオフの凍結解除は危険だ、だから延ばしては、という議論になってきたことは問題だと考えます。

ペイオフの凍結解除を先送りすべきかどうかではなく、金融自由化についての哲学とタイムスケジュールを国民に示し、あわせて金融機関に徹底的に不良債権処理をさせ、不健全な金融機関を整理すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。


次に、金融機関への公的資金投入問題についてお尋ねします。

金融再生法に基づく「特別公的管理」の適用第一号として、一時的に国有化されている日本長期信用銀行が、アメリカの投資グループ、リップルウッド・ホールディングス社に営業譲渡されることになりました。その際、必要な公的資金は四兆円にのぼるとも言われています。一年ちょっと前までは「債務超過ですらない」と言われていた銀行が、経営陣も逮捕された挙げ句、どうしてこのようないきさつになったのでしょうか。

小渕総理は昨年、長銀を住友信託銀行に救済させようとしたことを、まさかお忘れではないでしょう。この救済案を持ち出したことや、巨額なコストを税金で支出する結果を招いたことについて、内閣の責任をどう感じておられますか、お尋ねします。


受け皿の金融機関には、長銀から引き継いだ借り手に、必要な事業資金を供給する責任があると考えます。単に融資を引き揚げるような経営がなされるなら、約四兆円もの公的資金を投入して、長銀を国有化した意義がなくなってしまいます。新しい受皿機関には、金融再生法の趣旨を理解し、預金者へのサービス、健全な借り手の保護という、私たちが強調してきた銀行の役割を十分に認識したうえで、効率的で信頼できる経営の基盤を確立することが期待されますが、政府としてどのような見通しをお持ちか、総理の見解をお伺いしたい。


(商工ローン問題について)

続いて、商工ローン問題についてお尋ねします。

政府の失策で、景気が後退し、金融問題に適切な手を打たなかったため、銀行の貸し渋りを背景に、過剰融資や高金利、苛烈な取立て等で中小企業を苦しめている商工ローン問題が取りざたされています。公的資金を受けている金融機関が商工ローン業者に多額融資をしているといった問題もありますが、元々この問題は、小渕内閣の傍観者的な態度によって引き起こされたと言っても過言ではありません。民主党は、貸出金利の引下げを図るため、出資法等の改正を衆議院に提案していますが、一刻も早く改正案を成立させるべきです。

連立三党は民主党の案に賛成か反対か、小渕総理、二階大臣、続長官、それぞれの見解を明らかにしていただきたい。なお反対の場合は、詳細な理由も示していただきたい。


(教育問題について)

教育問題についてお尋ね致します。

 総理はかねてより、『富国有徳』の国家づくりを目指すと表明され、有徳の実現には、感動をする教育、心の教育、いわゆる道徳教育が重要と強調されてこられました。しかし、教育現場は、道徳教育の充実どころか、親も学校も子供も、心が荒廃し、学級崩壊、いじめ、少年犯罪や不登校生徒の増加など、暗いニュースが覆っております。児童・生徒だけでなく、家庭内における児童虐待や、指導する側の教職員の不登校、不祥事も増加傾向にあり、徳や心の不在が引き起こした惨状が現実に存在しております。

どうにかしなければという気持ちは、私も同じであります。しかし、あそこでも、ここでもと改革案を出したところで、その理念が明確でなければ、教育が混乱するだけです。


そこで、総理にお尋ねします。

 教育改革の根幹となる理念は何ですか。そして、三党派合意の「教育改革国民会議」の設置目的は何でしょうか。具体的にどのようなテーマを取り上げるおつもりなのでしょうか。イギリスでは、もはや、抽象的な教育行政では解決できないとして、教育成果を上げた校長や教頭に高給の保証、運営効率の悪い学校の民営化策が発表され、子供の不登校問題に関しては、子供のズル休みを黙認する親に対し、逮捕刑を含む罰則規定の導入を設ける政策が発表されました。手法には賛否両論があり、実効性に疑問の声もありますが、ブレア首相の教育に対する熱意や緊張感について学ぶべきものが大いにあると思いますが、総理はどうお考えですか。


(有事法制、PKF凍結解除について)

 安全保障について伺います。

 自自公政策合意に、わが国の緊急事態への対応として、「有事法制研究を踏まえ、第一分類、第二分類のうち早急に整備するものとして合意が得られる事項について立法化を図る。」とありますが、具体的な内容は何ですか。合意が得られる事項と云うだけでは、政策とは云えません。

 小渕総理はどのような内容の法整備を考えておられるのか、その全体像についてご説明ください。


 また、政策合意はPKF本体業務への参加の凍結解除に関し、法的措置を早急に講ずることも掲げていますが、PKO参加五原則を維持するか、変更するかについて、三党派で合意が得られているのでしょうか。今国会中にその法改正を行うつもりなのか。或は、東ティモール情勢への人的貢献は、PKFの凍結解除なしでも可能か、総理に伺います。


 さらに、PKO以外の国連活動に関する役割強化についても、三党派合意がなされていますが、この内容も不詳です。これは、自由党が提案している多国籍軍への後方支援を可能とする法律を制定するということなのでしょうか。多国籍軍への後方支援を行うことについて三党派政策合意ができているのか、役割強化は従来の憲法解釈論の範囲なのか、総理に伺います。

 また、前国会で、いわゆるガイドライン関連法案の原案から、船舶検査活動に関する条項を削除した問題について、自自公三党は、「前国会中にも別途立法措置をとる」と合意し、その後、与党の幹部は、本臨時国会に法案を提出すると公言されていましたが、この約束はどうなっているのでしょうか。総理に伺います。


(対北朝鮮政策について)

 朝鮮民主主義人民共和国に対する政策について伺います。

 北朝鮮による二回目のテポドン発射の可能性は本当に遠のいたのでしょうか。北朝鮮の核開発とミサイル開発を確実に停止させることが、わが国の安全保障上重要な課題です。この十月十三日、ウィリアム・ぺリー アメリカ・北朝鮮政策調整官の報告書が公表されましたが、総理は、どう受け止めておられますか。また、十月二十三日に、韓国・済州島で行われた日韓閣僚懇談会や、これに先立つ総理とキム・ジョンピル首相との会談で何が話し合われたのでしょうか。この度のチャーター便運行停止の解除と関係あるのか、食糧支援、朝鮮半島エネルギー機構(KEDO)への資金協力について、今後どう取り扱うつもりか。総理に伺います。


(日露交渉について)

 日露領土交渉について伺います。

 平成九年十一月にクラスノヤルクスで、二○○○年までに領土問題を解決して平和条約を締結することが合意されました。しかし、この問題にイニシアティブを発揮してきたエリツィン大統領の健康不安やロシア国内の政治・経済の混迷が続く中で、目に見える交渉の進展がありません。今年三月、当時、在札幌ロシア総領事であった、アンドレイ・クリフツォフ氏は、「二〇〇〇年までに領土問題を解決し、平和条約を結ぶとの基本的流れは変わっていないが、二〇〇〇年に平和条約を締結することは、準備が整っておらず、達成が難しくなった。」と発言しております。政府は、この問題は二〇〇一年以降になっても、それは誤差の範囲で、継続協議はやむを得ないと考えているのでしょうか。領土問題の見通しについて総理の見解を伺います。

 
 「信なくば立たず」とは、政治の要諦であります。冒頭にも申し上げましたが、自自公政権は、国民の審判を経て成立した訳ではなく、矛盾をベールで覆い隠しただけの『モザイク内閣』です。政治不信を増幅させるだけです。この際、速やかに解散総選挙を行い、国民に信を問うことこそ、小渕内閣の最優先課題である、ということを重ねて強張し、私の質問を終わります。
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