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1999/08/11
円より子参議院議員の「荒木清寛法務委員長解任決議案趣旨説明」
参議院本会議議事速報から

午後五時六分開議

○議長(斎藤十朗君)これより会議を開きます。

日程第一 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案
日程第二 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案
日程第三 刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(いずれも第百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付)

以上三案を一括して議題といたします。

○議長(斎藤十朗君)これより法務委員長の報告を求めるのでありますが、円より子君外五名から、委員会審査省略要求書を付して、法務委員長荒木清覧君解任決議案が提出されておりますので、まず、本決議案についてお諮りいたします。(拍手)
 法務委員長荒木清寛君解任決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なししと呼ぶ者あり〕

○議長(斎藤十朗君)御異議ないと認めます。よって、本決議案を議題といたします。まず、発議者の趣旨説明を求めます。円より子君。
〔円より子君登壇、拍手〕

○円より子君 ただいま私ども民主党・新緑風会は、日本共産党、社会民主党・護憲連合とともに、荒木法務委員長の解任決議案を提出いたしましたので、代表して、その趣旨を御説明いたします。(拍手)

 先週の金曜日、自民党参議院国対委員長は、議員総会で、八月九日月曜日、つまり一昨日の法務委員会で組織犯罪対策三法案の採決をすると明言され、それがテレビのニュース等でも流れました。私たちは、法務委員会の理事懇談会で今週の日程協議の真っ最中でございました。そこで、自民党、自由党、公明党が主張するような採決を前提とした委員会開催に応ずることは国民に対する裏切りとなりますので、私は、民主党の理事として強硬に反対し、平行線のまま理事懇は深夜に及びました。

 ところが、突然、荒木……(「あなた、いなかったじゃないか」と呼ぶ者あり)おりました。

 一々こんなことに、不規則発言に応じることはございませんね。不規則発言はおやめいただけますでしょうか。

 ところが、突然、荒木委員長は、自民党、自由党、公明党の理事だけの賛成のもと、職権を乱用し、委員会開催の定例日でもない一昨日月曜日に、通信傍受、いわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法案の委員会を決定いたしました。私、民主党の理事は、共産党、社会民主党・護憲連合のオブザーバーとともに反対を表明し、怒りを持ってその理事懇の席から退席いたしました。
(発言する者多し)

 不規則発言はおやめいただけませんか。議長、少しお願いいたします。

○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。
○円より子君(続)ありがとうございます。(拍手)

 そして一昨日、定例日でもない午後人時という異常な時間帯に、荒木法務委員長は職権を乱用し、法務委員会を強行に開催いたしました。そして、あろうことか、採決を強行しようと企てたのです。

 その後、慌ただしく、まるで逃げるように委員会室を抜け出て、参議院議長に採決をしたと報告した後、九時半から記者会見をなさったその席で、委員長はこのようにおっしゃったそうです。

 質疑を終了し、直ちに採決すべしとの自民党鈴木理事の動議を採決し、その後、組織犯罪対策二法案について採決し、可決したと説明したそうです。それがテレビのニュースにも流れました。

 しかしながら、私どもはその席におりましたが、自民党理事の緊急動議は聞こえませんでしたし、委員長が……(「聞く耳持たないからじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)聞いていらっしゃれば聞こえます。本会議場ではお静かにしていただきたいと思います。

 しかしながら、私どもは、自民党理事の緊急動議も聞こえませんでしたし、委員長がそれに従って採決をしたとは全く見えませんでした。

 ましてや、可決などしなかったし、自自公がもくろんだ一昨日の強行採決は全く不発に終わったのです。つまり、採決はなかった、そして可決もなかったのです。(拍手)

 テレビや新聞では、このいわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法案が参議院の法務委員会で可決されたと報じられ、国民はそれを信じてしまうかもしれません。委員長が、荒木法務委員長が偽りの報告をした罪は重いと言わねばなりません。

 私どもは、国民すべての方に、強行採決という暴挙はあったがそれは不発に終わったこと、この採決は無効であることを報告する義務があります。そこで、一昨日の夜八時五十分前後のことを、国会内の院内テレビからとりましたビデオと、そして速記部から受け取りました未定稿で再現するとこのようになりますので、国民の皆様にしっかりとお聞きいただきたいと思います。

 ちょうど八時五十分ごろのことでございます。もちろんこれは私の決められた質問時間のまだ途中でございました。そこで、私はまず法務大臣にこのようにお尋ねしたんですね。よろしいですか。皆さん聞いていてくださいね。今……(発言する者多し)

○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。
○円より子君(続)もう一度申し上げます。速記部から受け取った未定稿で再現いたしますので、皆さん聞いていてください。法務大臣にお尋ねしたところでございます。

 法務大臣、よろしいですか、と私は尋ねました。今、私がいろいろ議了できない理由を話しましたけれども、法務大臣の御答弁ももちろん欲しいんですけれども、私は総理にも先ほどからぜひ質問をしたいと申し上げておりましたが、大臣はこの総括質疑をすることに反対でいらっしゃいますか、賛成でいらっしゃいますかと。国務大臣陣内孝雄君が答えております、その点については委員会でお決めいただくことだと思います。で、円より子君、私です。申しわけありません、今生く聞こえませんでしたので、もう一度お願いできますでしょうか。このように言いましたのは、ふだんは四十三委員会室というのは大変広いところでございます。自民党の委員の方々はよく席を立っていらっしゃいまして、全く閑散としているような委員会なんですが、この日は大勢の傍聴人がいらっしゃいまして、異常な雰囲気の中で全く御答弁が聞こえませんでした。(発言する者多し)

○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。
○円より子君(続)すると、国務大臣陣内孝雄君はこのように答えられました。委員会でお決めいただくことだと思います。で、(「そのとおり」と呼ぶ者あり)。で、円より子君、では、これは多分理事懇か理事会での協議になると思いますので、委員長、ぜひ総理への質問ができるように総括質疑を開いていただきたいんですが、明確なお答えをいただけませんでしょうか。このように私が言いましたら、委員長荒木清寛君、彼はこのように答えました。理事会で協議をいたします。理事会で協議をいたします、そのようにお答えになった。速記録にきちんと残っております。そして、ただし、そのようなことであれば、どうして金曜日の八月六日の理事懇の際にそういう御主張がなかったんでありましょうか。大変私は不思議に思うわけでございます。少なくとも…:(発言する者多し)になっております。それで私、円より子君、私どもはまず、皆さんちょっとお静かにしていただけませんでしょうか。これは速記録を読んでおりますので。私どもはまず、皆さんちょっとお静かにしていただけませんでしょうかと速記録に書いてあります。(「理事会、理事会」と呼ぶ者あり)で、私がまた申し上げます。私どもは、六月一日に衆議院からこの法案が送付されたときに、まず質疑の日程について全体にこういう形で質疑をしていこうという提案をいたしました。そのときに、しっかりと総理を招いての総括質疑をお願いしたいと申しております。先週の金曜日は、そういったことの話し合いもできないうちに、荒木委員長が御自分の裁定できょうの組織三法の委員会を開くと、それこそ強行なさったわけで、今ごろ、金曜日になぜ言わなかったのか、そんなことをおっしゃるとは思いませんでした。今ぜひ、もしあれでしたら今から理事懇を開いていただきたいと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)。それで、委員長荒木清寛君、円理事に申し上げます。質疑を続けてください。質疑を続けてくださいと委員長は申されたんでね。そして、円より子君、私は、理事会を開いていただくということの確約がありましたら、私、これから質問したいと思います。(発言する者多し)で、また、委員長荒木清寛君、円理事に申し上げます。質疑をお続けください。(「答えは」と呼ぶ者あり)。それで委員長が、先ほど申し上げましたように、理事会で協議をしますということは申し上げましたが、それは今やるべきことではございませんから、質疑を続けてください。質疑をお続けください。こうおっしゃったんですね。そして私が、今、理事会を開くとおっしゃいましたよね。協議をするとおっしゃいましたね。いっそれはなさいますか。

 私が翌日速記録を要求いたしましたら、一応私の質問のところだけ、もちろん長い質疑の最後のところだけ今申し上げたんですが、ここまでいただきました。その後、委員長の許可をいただきまして、その後のところがどうなっているか、いただいたところ、この後は鈴木正孝君となっていて委員長と書いてあります。私はこれは聞こえませんでしたが、こう書いてあります。その次に、委員長荒木清寛君が、後刻、後刻……(議場騒然、聴取不能)、鈴木君提出の動議に賛成の方の挙手を願います。(議場騒然、聴取不能)、委員長退席、このようになっているわけです。ここで速記は終わっております。

 委員長は、挙手を願いますとおっしゃったけれども、鈴木理事は委員長としかおっしゃっていないわけで、この中身が何だったのかだれにもわかっておりません。一体何の動議だったのか。委員長は中身を聞かずともわかっていて挙手を求められたのか。それなら緊}動議の出る以前に強行採決を決めていらしたことになるわけです。

 このとき……(発言する者多し)お静かにしていただけませんでしょうか。このとき委員会室は騒然となりまして、速記録にある鈴木理事の「委員長」という言葉も聞こえなければ、私たちは、委員長が鈴木君と指名なさった声も聞こえませんでした。指名はありませんでした。ということは、委員長の了解なしの自民党理事の発言は不規則発言でしかないわけです。つまり、月曜日、私の質疑時間中に行われた緊急動議は無効でしかありません。

 その上、私たちは、委員長が挙手の確認をなさっていないこともしっかりと確認しております。もちろん、記者会見でおっしゃったような二度日の採決も見ておりません。

 委員長は、記者会見で二度採決をしたとおっしゃっているんですよね。私たちは二度の採決を全く見ておりません。これはビデオでも議事録でもしっかり確認できることです。委員長は、記者会見で、何人の人が手を挙げたんですかという記者からの質問にもお答えにはなれませんでした。それは当然のことです。数えていない、確認などできる状況ではなかったからです。

 つまり、緊急動議の中身を聞かず挙手をさせ、そして確認をせず、可決しましたともおっしゃらず、まるでこそこそと逃げるように退場なさったわけです。速記の方々は、かわいそうに、委員長が休憩とも散会ともおっしゃらなかったので、ずっと座り続けておられました。

 まず、私どもは、この採決が無効であることを怒りを持って表明いたします。また、それを可決されたと議長に報告され、記者会見までされた委員長の良識を疑わざるを得ません。

 私どもは、まず、委員長が良識をぜひお取り戻しいただき、委員会を再開なさり、一昨日の前代未聞の強行採決の企ては間違いだったと謝罪なさることを切に願っておりましたが、態度をお変えにならないということであれば、前代未聞の、そして参議院として恥ずべき一昨夜の暴挙に対し、国民を代表し委員長の解任決議を出さざるを得ないとの結論に達しました。

 荒木法務委員長、私はしかし、こうした解任決議を出さざるを得ないことを大変残念に思っております。もう一度委員長に再考をお願いしたいと思います。

あなたが、荒木委員長が法務委員長になられてからのまじめで誠実なお人柄と委員会運営を私はよく知っております。(発言する者多し)不規則発言はおやめいただけませんでしょうか、せっかく委員長のことをお話ししておりますのに。

外国人登録法改正では、私どもは衆議院に先立って審議を重ね、指紋押捺を拒否し協定永住資格を失った、そして人権救済の最後のとりでと思っていた最高裁で争って敗訴し、失意の日々を送っていたピアニスト崔善愛さんの原状回復に委員長が御尽力いただいたことを私は忘れてはおりません。

それだけに、自民党の誘いで与党の仲間入りをすることになり、委員長としては、本心を裏切ってのこのいわゆる盗聴法への賛成と、今回の採決を強行せざるを得ない立場になったことについては日夜悩まれたに違いなく、同情を禁じ得ないのでありますが、ともに人権と正義と平和のために闘ってきた荒木法務委員長にこそ一昨日のような強行採決を企てていただきたくはありませんでした。

委員長としての解任の理由の第一は、以上のように、私、民主党の質疑を途中で打ち切る、つまり質疑の妨害をした自民党理事の動議を採用し、組織犯罪対策三法案の採決を強行したことであり、それが全く無効であるにもかかわらず、議長にまで採決、可決したと報告し、なかんずく、記者会見をして、この採決は有効であり組織犯罪対策三法案は可決されたと伝えたことであります。

こうしたいわゆる盗聴法の採決は議会制民主主義に対する冒涜であり、よもや、参議院と二院制の意義を高く評価し参議院の改革に熱心に取り組んでおられる斎藤十朗議長も、このような暴挙を……(「ストップ、ストップ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)

○議長(斎藤十朗君)どうぞ発言をお続けください。
○円より子君(続)こうしたいわゆる盗聴法の採決は議会制民主主義に対する冒涜であり、よもや、参議院と二院制の意義を高く評価し参議院の改革に熱心に取り組んでおられる斎藤十朗議長も、このような暴挙をお認めにはならないと信じます。

さて、くしくも委員長が職権を乱用して一昨日の委員会を設定した先週の金曜、八月六日は、五十四年前、広島に原爆が落とされた月であり、そして良識の府の参議院として恥ずかしい強行採決を企てたAもちろんこの採決は無効でございますが、その採決を企てた一昨日は長崎に原爆が投下された日でありました。

情報を操作し、国家の管理を強め、戦争へと突入した結果、多くの人命が失われたあの戦争の後、私たちは二度と国民のプライバシーを侵し、国民を監視するような国にしてはならないと誓い合ったはずです。(拍手)

それなのに、今、小渕内閣は、国家の管理を強めるこの危険性のある、そして国民の生活を再び不安に陥らせるようなこのいわゆる盗聴法を、一昨日、強行採決の挙に出ました。私どもは、当初からこの法案には問題が多いと訴えてきましたが、審議を進めるにつれ、この法案の問題点がますます顕著になってきました。なぜ廃案にすべきなのか、継続にすべきなのか、今ここで議了してはならないのか、いわゆる盗聴法の問題点を指摘しなければなりません。(拍手)

委員長にも与党の方々にもぜひもう一度理解していただきたいと思います。この三法案は、六月一日に衆議院から参議院に送付されてきました。大変残念なことに、衆議院では審議は全く尽くされず、また公聴会などで国民の意見を聞くこともなく、問題を積み残したまま、自民党の委員長によって強行採決されるという異常な状態で衆議院を通過したわけです。参議院では、このような状態を非常に憂い、三法案の問題点をしっかりと究明する必要があるとの観点から、国民の立場に立った審議を行ってきました。しかしながら、十分な審議を尽くしたという与党の言い分は決して認められるものではありません。確かに、参議院では良識の府として、議員らによる対政府質疑だけでなく、参議院の会の委員外発言を認めたり、また参考人質疑や……(「休憩休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)

○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。御静粛に願います。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)発言を続けてください。
○円より子君(続)参議院ではこのような状態を非常に憂え……(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。御静粛に願います。円君、発言を続けてください。どうぞ。どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)御静粛に願います。
○円より子君(続)しかしながら、十分な審議をし尽くしたという与党の言い分は、決して認められるものではありません。確かに、参議院では良識の府として、委員らによる対政府質疑だけでなく、参議院の会の委員外発言を認めたり、ただ二院クラブの委員外発言は、一昨日、せっかく来ていただいたのに委員長の審議強行打ち切りで実現しませんでしたが、とてもこれは残念なことです。ただ、参考人質疑や中央公聴会……(発言する者多く、議場騒然)
○議長(斎藤十朗君)議員は議席に御着席ください。どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)議席に御着席ください。御静粛に願います。御静粛に願います。不規則発言はお慎みください。どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)御静粛に願います。不規則発言はお慎みください。どうぞ御発言ください。
○円より子君(続)先ほども申しましたように、残念ながら、二院クラブの委員外発言は、一昨日、せっかく来ていただきましたのに委員長の審議強行打ち切りで実現いたしませんでしたが、参考人質疑や中央公聴会を開いて専門家や一般国民から広く意見を聞いてまいりました。しっかり私どもは参議院として審議を尽くしてきたと思っております。

しかしながら、私たちが要求していた総理が出席する総括質疑は開催されませんでした。

総理は、本会議で、こういった法案が通ると警察が権力を乱用するのではないかと言う人がいるが、私は警察を信用しているし、違法捜査などということは決してあり得ないという趣旨のことをおっしゃいましたが、そういった総理の楽観主義と、ただ総理のお言葉だけでは国民の心配は決して消えないのではないでしょうか。だからこそ、委員会での総括質疑に応じることできちんと国民の疑問に私どもは答えてほしかったのです。また、衆議院で自民党の委員長が強行採決をした後、総理は、衆議院の自民党の法務委員長に電話をなさり、よくやったとねぎらわれたそうですが、幾ら電話魔と言われていらっしゃる総理であっても、立法府の手順と民主主義を無視した委員長の態度を褒めたたえるとは総理にあるまじき行為としか思えず、それも確認させていただきたかったのです。しかし、総理出席の総括質疑はついに実現しませんでした。(発言する者多く、議場騒然)

○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。議員の皆さんは議席に着いてください。議席に着いてください。議員の皆さんは議席に着いてください。御静粛に願います。議員の皆さんは議席に着いてください。(「休憩してください。抗議したいんです」と呼ぶ者あり)今、各党の理事が協議をしておりますから、それにお任せください。皆さんはお着きください。各会派の代表が協cをしておりますので、皆さんの御意向はその代表者が協議されておりますから、どうぞ議席にお着きください。議長の整理に従ってください。円君、どうぞ発言を続けてください。どうぞ御静粛にしてください。
○円より子君(続)また…(発言する者多く、議場騒然)
○議長(斎藤十朗君)議席にお着きください。聞こえますか。議長の指示に従ってください。---どうぞ発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)---議員の皆さんは御着席ください。議席にお座りください。今、各会派の代表理事が相談をしておりますので、どうぞ御着席ください。
そして、円君、発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)一発言中も理事の協議は続けておりますから、どうぞ議席に御着席ください。御発言願います。(発言する者多く、議場騒然)円君、発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)どうぞ議席に着いてください。議席に着いてください。(発言する者多く、議場騒然)皆さんの代表理事が協議をしておりますので、どうぞ議席にお戻りください。(発言する者多く、議場騒然)どうぞ発言を続けてください。発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)円君、どうぞ発言を続けてください。
○円より子君(続)はい。私は発言を続行したいと思いますが、何やらよほどのことが起きたようで、議場が騒然となりました。

その理由は、私に対する個人的な中傷とセクハラ発言のように今聞こえました。それをしっかりと私にお話しいただいて、解決できない限り私はここを立てません。そして、発言はできません。教えてください、どういうことがあったのか。

個人的中傷やセクハラは、私はこんなところで許せるはずがありません。(拍手)

議長、お願いいたします。私は、どんなことが言われて、こんなに議場が騒然となったのか、ぜひ私に聞かせていただきたい。それがわかってからしか発言を続行できないと思います。(「休憩、休憩」「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)

○議長(斎藤十朗君)これにて十分間休憩いたします。

午後六時九分休憩

午後六時五十一分開議

○議長(斎藤十朗君)休憩前に引き続き、会議を開きます。休憩前の議事において、不規則発言の中で不穏当な発言があったとの指摘につきましては、後刻、議院運営委員会理事会において速記録等を調査の上、議長において適切に措置いたします。
○議長(斎藤十朗君)法務委員長荒木清覧君解任決議案を引き続き議題といたします。円より子君。
〔円より子君登壇、拍手〕
○円より子君(続)一昨日、私の法務委員会での質疑中に緊急動議が出まして、私の質問は打ち切られました。それと同じことが、今また自民党からの不規則発言によって打ち切られたことは大変残念でございますが、私は粛々と趣旨説明をいたしておりましたのに、大変私を侮辱するような発言があったとのことでございました。

全くこの壇上においてはわかりませんでしたけれども、民主党の方々や他の野党の方々もお立ちになって騒然といたしましたとき、多分、傍聴席の方々やテレビでこれを見ていた方々は、私ども野党が審議を妨害しているかのようなイメージを受けられたかもしれません。しかしながら、その種をまきましたのは自民党の方と聞いております。それも、ちょうど荒木委員長に対して、私が長い間法務委員を務め、荒木委員長の誠実なお人柄とそのまじめな委員会運営について申し上げておりましたそのときに、なぜこのような強行採決をなさるのか随分悩まれたのではないか、そのように話しているときに、大変下品な言葉で私をあんたとかおまえとか、そんな言葉で人様から呼ばれたことはございません。それを、あんたも離婚したんだろ、そのようにおっしやったそうでございます。

私は、そんなことは何度も今まで言われてまいりましたから、普通のところでございましたら軽く聞き流してもよかったのでございますけれども、ここは参議院、良識の府の参議院でございます。そこでそのような人権を無視するような発言をなさったことは大変遺憾でございます。

なおかつ、私はこれを個人的な中傷とか差別とは思っておりません。多くの人たちが、特に与党の方たちは離婚に対して大変ひどい差別感と偏見をお持ちでございます。今までの政策を見ましても、今、離婚件数は明治以来統計をとり出してから最高の件数の二十四万件を超えておりますが、そして離婚率もこれまでの史上最高でございますが、それに対して、自民党が長年政権をとってきた中でどれだけ、なぜ離婚せざるを得ないのか、そうした家庭の人たち、住宅政策や経済政策、雇用政策、そして福祉、それらについて本当の意味で人々が生きやすい政策をつくってきたか。

それは決してそうではありません。そこには常に女が勝手に離婚したという形で、女の人たち、その子供を引き取った女性たちを制裁する政策しかとってはきませんでした。離婚したことを制裁するだけで、人々が生きやすい政策などつくれるわけがありません。離婚しないで済むような雇用政策、経済政策、そして離婚しても子供たちと母親と、そして離婚した男性も生きやすい社会をつくることこそが政治家としての使命ではないでしょうか。(拍手)

日本では未成年の子供たちの七割が母親に引き取られております。その母親は、ほとんどの女性が結婚をして姓を夫の姓に変えざるを得ず、九七・七%が男性の姓になっております。そうした中で名前を変え、そして夫の転勤や、子供が生まれ、育てる、そういう中で仕事をやめざるを得ず、離婚をしても年齢制限があって再就職もできないようなそういった状況の中で、なぜ離婚に対しでそのような差別や偏見をなさるのか。私は多くの離婚を考えている人たち、そして離婚した人たちを代表して、怒りと、その発言の撤回を求めます。(拍手)

さらにつけ加えるならば、離婚に対する偏見と差別は、結婚をしない女性や結婚をしない男性、そして子供を産む産まないは本来はそのカップルの選択であるのに、産めないこと、産まないこと、そうしたことに対して差別をする社会をも助長するものであります。私たち民主党は、どういう生き方をしても差別されない、偏見を持たれない、公正な社会であるよう政策をつくってまいりたいと思っておりますが、どうも先ほどの不規則発言を聞きますと、自民党の方々にはそのようなお気持ちはないようで大変残念でございます。

それでは、先ほどの発言の続きをさせていただきたいと思います。

先ほど私は、委員会で総理が総括質疑に応じてくださるよう法務委員会でその場を設けたい、そのように六月一日に衆議院から回ってまいりましてからずっと要請をしてきたと申し上げました。その理由は、るるこの法案には問題点が多いことを説明いたしましたが、そこでぜひ総理に国民の疑問に答えていただくように、理事会を開いてでも今やってほしいと申し上げたわけですが、法務委員長は、一昨日月曜日の午後人時から始まりました法務委員会で、私の質間の途中、では理事会を開催してくださるんですねと申し上げましたら、理事会で協議しますとおっしゃり、そして、今ではやっていただけませんかと申し上げますと、今は無理ですが後刻、後刻とおっしやったわけです。

ところが、そこで自民党の理事から緊急動議が出て、出たことを私たちは知りませんでしたが、何やら委員会室が騒然として、そして何も聞こえないうちに委員長は退席なさり、参議院議長のお部屋にいらっしゃって、この組織犯罪対策三法、いわゆる盗聴法を含むこの三法の採決がなされ、そして可決したことを報告なさったわけです。

しかし、私たちは、議事録を見てもビデオを見ても、委員会での採決は全く存在しなかったことをしっかりと確認しております。そしてもちろん可決もされませんでした。それを採決があったかのように参議院議長に報告し、可決もされたとそのように報告し、そして記者会見まで開いた。そのことは参議院議長に対する侮辱でもあり、国民に対してうそ偽りの報告をしたことは決して許されることではないのではないでしょうか。

さて、この法案の問題点の途中で私の質疑が休憩となって終わりましたので、途中から話させていただきたいと思います。多分、議場が騒然としておりましたので、ほとんどの方が私が申し上げたことをお聞きになっていなかったかもしれません。そこで、ほんの少し前からですが、お話ししたいと思いますが、委員会での総括質疑に応じることできちんと総理には国民の疑問に答えてほしかったのです。

また、衆議院で自民党の委員長が強行採決をした後、総理は、電話魔と言われているそうですが、電話をなさり、杉浦委員長によくやったとねぎらわれたそうです。立法府の手順と民主主義を無視したこの衆議院法務委員長の態度を褒めたたえるということは、皆さん、総理にあるまじき行為だとは思いませんか。それも本当に、総理がよくやったと思われ、民主主義を無視したやり方をいいことだと思っていらっしやるのかどうか、私は確認させていただきたかったのです。しかし、総理出席の総括質疑はついに実現しせんでした。

また、携帯電話やインターネットも傍受対象とするということで、今後の日本経済を牽引していくはずの情報通信産業の発展を阻害する危険性もあるため、私たちは通産大臣、郵政大臣、自治大臣が出席しての連合審査を求めてまいりました。連合審査は、担当の経済・産業委員会、交通・情報通信委員会、地方行政・警察委員会からの要求によって開かれるわけで、民主党はそれらの委員会で連合審査を要求してまいりました。もちろん民主党だけでなく、共産党も杜民党も、そして無所属のオブザーバーもこれらを要求してまいりました。

しかし、それらの委員会の理事懇で与党はかたくなにこの連合審査を拒否し、私たち法務委員会の方に連合審査の要請をいたしませんでした。これは大変国民にとってもこの法案にとっても残念ネことと言わねばなりません。

また、良識の府である
参議院は、衆議院よりも確かに長時間の審議を行ってまいりました。しかし、長時間審議をすればそれで十分審議をし尽くしたというものでは決してありません。物事は時間の問題だけではないのです。これまでの審議によって法案のさまざまな問題点が浮かび上がってきたわけですが、審議の中でそれらの問題点は決して究明されたり、解決されてはおりません。

六月一日に参議院に法案が付託されてから、七月三十日で六十日が経過しました。その前後から、理事懇では、憲法五十九条第四項の条文が頻繁に話題に上がるようになりました。憲法五十九条第四項は次のように言っています。「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十目以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」。そして、衆議院で出席議員の三分の二以上で再び可決した場合は、法律となるわけです。

これまで、百以上の法案が六十日を経過しましたが、五十九条四項によってみなし否決をされたのはたった三例にしかすぎません。ほとんどの法案が六十日を過ぎても審議を続けてまいりましたのは、国民の立場から慎重で徹底した審議を行っていたからであり、みなし否決された三例は、海上保安庁職員の給与等、国民生活を左右するような重要法案ではありませんでした。

今回の通信傍受法は、これからの二十一世紀の日本がどうなるかを決するほどの重要法案であります。それを、憲法の規定を盾にとって、私、民主党の理事に対し、脅迫材料のように採決しろ、採決しろと理事懇で自民党、自由党、公明党が言い続けましたのは、むしろ国民軽視として非難されるべきことではないでしょうか。(拍手)

衆議院では明らかにされなかった問題点を、この法律の、特にいわゆる盗聴法の問題点を参議院で明らかにし、慎重かつ熱心に審議している最中に、衆議院がみなし否決をするのであれば、それは参議院を侮辱するものであります。もしうした衆議院のみなし否決をするような態度が見えれば、与野党そろって抗議する姿勢こそ、参議院の存在意義であると私は思っております。(拍手)

そう思っておりましたから、自自公のそのような脅迫にも動ずることはありませんでした。そして、法律案のさまざまな欠陥を国民の前に明らかにしてきましたし、今後もさらなる審議を尽くしていくことが国民の利益であると考えます。それなのに、審議を突然打ち切って強行採決を企てるとは、国民が政治への不信をますます強めることになるでしょう。荒木法務委員長の責任は大変大きいと言わねばなりません。

そもそもこの法案は本当に必要なのでしょうか。審議をしていく中で、その必要性の希薄さは明らかになりました。法務省では、二、三十年前から通信傍受を可能にする法律の制定を検討されてきたということです。若い検事をアメリカヘ毎年留学させ、彼らはアメリカで、もちろん捜査に熱心で日本の組織犯罪を何とか食いとめたいという思いからだとは思いますけれども、盗聴が捜査に大変有効だと聞き、そして日本でぜひともこの盗聴法を成立させたいと皆さんに諮られたと聞いております。

自白というものが年々得られにくくなってきている状況の中で、何とか日本でもこの盗聴法の捜査方法を取り入れたいというのは、その若い検事の方々だけではなく、法務省全体の長年の悲願であったと聞いております。

○議長(斎藤十郎君)円君、時間が相当過ぎておりますので、そろそろまとめてください。
○円より子君(続)はい、申しわけありません。なるべく早く話したいと思います。しかし、本当になぜこの法律が必要なのでしょうか。なぜ強行採決を企ててまで急がねばならなかったのでしょうか。

陣内法務大臣は、趣旨説明の中でその理由を、急増する組織犯罪に対処するためということを言い、その最大の具体例として、一連のオウム事件を挙げてまいりました。大臣は、葉テレビ番組の中で、通信傍受法、つまりこれは盗聴法のことですね、これがあればオウム事件は防げたという趣旨の発言をなさいました。しかし、この法律があってもオウム事件は未然には全く防げなかったということは審議の中で明らかとなりました。大臣は後になってテレビ番組での発言を撤回なさいましたが、テレビ番組であのような発言をしたということで国民に大きな影響を及ばしたことは間違いありません。

また、与党の委員は審議の中で、暴力団、オウムなど昔とは犯罪の形態が変わってきており、通信傍受法があればいかにもサリン事件は起きなかった、つまりこれも盗聴法のことですが、これがあればいかにもサリン事件は起きなかったというよう空言い回しで質問をしております。

盗聴法があってもオウム事件は未然には防げないのに防げるかのような言い回しこれは明らかに国民を惑わすものではないですか。そして、国民の不安をあおることによって崇ョ法の必要性を印象づけようとする卑劣なやり方ではないかと私は思います。

さらに、組織犯罪の大ボスを捕まえるには携帯電話の傍受が必要だ、だから盗聴法がどうしても必要なのだということもたくさん言われてまいりました。ところが、携帯電話の傍受は現在の技術では非常に困難であることが、ほとんど不可能に近いということが審議の中で明らかになりました。そうすると、今度は、法案が成立すれば補助金を出して技術開発をするからいいんだと、そういう答弁をなさったわけです。

不可能なことをできると言い、できないことが・わかれば今度はこれからやります、そうおっしやる。これでは全く詐欺と同じではないでしょうか。

これと同じような答弁が傍受対象に報道機関を含めるかどうかという点についてもありました。

政府は当初、報道機関は基本的に通信傍受の対象になるという答弁をしておりました。ところが、つい先週になりまして、基本的に傍受対象にはしないというふうに答弁内容を百八十度変えられたわけです。しかも、それは法律に書くのではなくて運用で対応するとおっしゃる。つまり、法案に書かない限り後でいかようにも対応を変えられる、抜け道はあるというわけです。このように、政府がころころと答弁の内容を変え、妥協してくるというのは、この法案が理にかなっていなくても、何が何でもこの法案を通したいという傲慢な態度のあらわれかと私は思います。

また、ある与党の委員は、覚せい剤があたかも一般市民へ蔓延しているかのように印象づけるため、細かな数字を使って次のような説明をしました。ことし半年で押収された覚せい剤の量は千百三十二・八キロであり、これは約三千七百七十六万回分の使用量に当たる。そして、これがもしも十トンであれば約三億三千万回分となり、全国民が一年に一回以上使う計算になるとおっしゃったわけです。どうも私にはこうした数字の使い方はわかりません。

このような仮定に基づいた説明をして、いかにもすべての国民が覚せい剤汚染に関係するかもしれないような、そういう言い回しは、私は扇動のような気がいたします。国民はそんな扇動に乗りはしないとは思いますけれども、組織犯罪が広がり、日本が覚せい剤によって支配されてしまうかのような宣伝をするなど、国会議員としては余りおやりにならない方がいい議論ではないかなと思えてなりません。

日本国内の凶悪犯罪の発生状況は、欧米諸国と比較して極めて低い水準で推移していることは政府も認めています。人口十万人当たりの発生率では、日本は殺人ではアメリカの約九分の一、強盗では約百十三分の一にしかすぎません一銃器を使用した犯罪も増加してはおりません。オウム事件に対する捜査が盗聴法やマネーロンダリングの規制がなかったため十分でなかったという主張は、全く論外です。

つまり、このような与党側の質疑と政府の答弁からもわかりますように、必要性のための根拠が全く明確ではありません。このような説明で幾ら法律の必要性を説かれても、良識ある国民ならとても納得がいくはずがありません。これは、この法律がまともな法律ではないことを示しています。本当に必要な法律なら、偏った数字を出して脅迫めいたことをせず、普通に事例を出して、普通に審議をすれば必要性が自然に理解できるというものではないでしょうか。携帯電話の傍受があたかもできるようなことを言うなどということは、本当にやってはならなかったことではないでしょうか。

このいわゆる盗聴法の成立を急ぐ理由として、国際的な要請があるということも言われてきました。しかし、いわゆる国際組織犯罪条約はまだFATF、つまりこれは金融活動作業部会のことですが、ここで審議中であります。採択はされていないのです。条約の内容がまだ確定しておりませんのに国内法を整備する、そういうことは今まではなかったことです。採択された条約を批准するために、必要があれば国内法を整備するというのがこれまで我が国の通常の順序であったと聞いております。我が国はこれまで、特に私ども野党が要求してきた人権関係条約の批准にした。長い時間をかけて、私どもが要求してからしぶしぶ国内法を整えるという、それが今までの状態でした。それなのに、なぜこの盗聴法の成立だけはこんなに急ぐのでしょうか。不思議でなりません。

そもそも、国際組織犯罪条約の原案では、各国の状況に応じた組織犯罪対処策を広く認めております。各国に通信傍受法の制定を、つまり盗聴法の制定を義務づけているわけでは決してないのです。そのような捜査手法の国際化などより、日本においては、刑事手続の改革の方が先決ではないでしょうか。例えば、捜査段階における弁護土の立ち会いや証拠の全面開示など、捜査の可視化、つまり捜査内容がよく見える、どういうふうに捜査をしているかということが国民の目に明らかになるようにすることが、まず私どもがしなければならないことなんです。それをしないで、ネぜこのいわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法の成立をこのように執拗にこだわって成立を急ぐのか、全く理解できません。

盗聴捜査は、サミット参加国からの要請だと言われております。でも、それを言う
ならば、一九九八年十月、国連規約人権委員会から出されました警察での取り調べの
改善、また、死刑廃止等の勧告をなぜ我が国は無視しているのでしょうか。権力を拡
大するときだけ、国家の権力を拡大するときにだけ国際社会の要請を持ち出しても、
決して国民は納得しないと思います。(拍手)

この盗聴法は、憲法二十一条に定める通信の秘密を侵すものであり、国民のプライバシーの権利を脅かすものであることも広く指摘されてまいりました。政府は、公共の福祉のためには必要やむを得ず市民の基本的権利を制約する、そのための法律であると言いますが、とても通信傍受、盗聴が公共の福祉に当たるとは、また必要やむを得ずのものであるとは思えないわけです。

法務省は、報道関係者に盗聴法とは呼ばないでくれと指示なさった、それはお願いしただけだとおっしゃっておりますが、指示したそうですが、人々はこの通信傍受を盗聴法としか考えられないという不安を持っています。そして、この盗聴は、個人の内心の秘密に対する著しい侵害性を持つにもかかわらず、既に存在している犯罪の、今ある犯罪の証拠物件を対象とするのではなくて、これから話されようとしている会話を対象とするために、強制処分の範囲が全く特定されないという性質が、そういう特質がこの盗聴捜査にはあるわけです。

こういった本質的な危惧を、これまで参考人質疑においても、また刑法の学者たちによってもるる訴えられてまいりましたが、それは専門家だけではなくて、そうした法律の細かなことは余りわからない、私も法律の専門家ではありませんが、国民の多くもまたそうした不安を本能的に察知しており、その危惧は私ども参議院での慎重な審議過程の中でるる明らかになってはきて、不安は全く払拭されてはおりません。

このいわゆる盗聴法は、このように憲法に違反する疑義があるだけではなく、刑事訴訟法の根本概念をも変えてしまうものであることを、多くの弁護士や刑法学者、そういった方々が指摘なさっております。

このいわゆる盗聴法案は、従来の刑事訴訟法の概念、その概念といいますのは、犯罪から犯人を求める、それが今までの刑事訴訟法の概念であったわけですが、それを、犯人があってその犯人から犯罪を求めるという全く違うものに変えてしまうものだからです。

また、このいわゆる盗聴法案は、固定電話を想定してつくられたものです。国民の多くの方々が盗聴法と聞いたとき----まず、通信傍受法なんて言われても、だれも自分の電話などが盗聴されるかもしれない、そんな法案だとは思わないと思います。盗聴法だと聞いたときに多分ほとんどの人が固定電話が盗聴される、そういうふうにしか思わないのではないでしょうか。

確かにこの法案は、国民の皆さんが思われるように、固定電話を想定してつくられております。しかし、今この世界は通信の技術はどんどん発達し、インターネット通信が本当にこれから隆起してまいると思います。そうしたインターネット通信の傍受、つまり盗聴についてはほとんど想定されていないのがこの法案です。このことが、多くのインターネットを使っいらっしゃる方々や、またそのインターネットのプロバイダーの方々や、そして通信業者、そのすべてにかかわっている方々から問題提起され、不安が訴えられてまいりました。

このインターネット通信の盗聴については、さらなる審議をお願いしたい、そうした切なる訴えも私ども野党にはたくさん寄せられておりますし、また、与党がお呼びになった参考人からもこの問題点はるる指摘されました。

この法案のままでは、不特定多数のメールが警察に捕捉され、これから日本の未来を担うであろう通信産業に悪影響を与えることも指摘されました。インターネットを初めとする情報通信産業は、本当にこれからの日本の経済にとって大変重要であり、今後ますますこの通信産業分野によって不況を打開できるかもしれないという、こういう今、瀬戸際に来ております。

ところが、このいわゆる盗聴法案はこれに逆行するものでしかありません。情報通信産業を萎縮させるものでしかないのです。失業率が五%にならんとする雇用不安を抱え、貸し渋りも決して解消していない今、多くの人々がボーナスももらえず、またボーナスも払えない人たちが大変苦しんでおります。そして中高年の男性の自殺もふえておりますし、そうした多くの国民が、早くこの雇用不安を何とかしてほしい、景気を回復してほしいと切に願っているこのときに、逆に日本の経済を牽引していくに違いない通信産業界を萎させ、何十年か後の発展を妨げるようなこの盗聴法案を通していいものでしょうか。

政府は、従来どおりの経済政策しかできず、それでいて景気は回復しているなどと、ただひとりぬか喜びをしておりますが、将来の産業であるこのインターネットをつぶすようなこの盗聴法を数の力で押し通しては将来に禍根を残すことになると思います。そしてこの法案を通すことは、私たち今国会議員として本当に恥ずかしいことだと思います。

さて、さらに、インターネットを使っている市民やその業者の方々から出ている懸念として……

○議長(斎藤十朗君)円君、そろそろおまとめいただけませんか。
○円より子君(続)申しわけございません。あと少しでございますので、お待ちいた
だけたら幸いでございます。

さらに、インターネットを使っている市民やその業者から出ている懸念として、今回の盗聴法案では通信事業者内部の情報の漏えいが発生しないようにする技術的な歯どめが規定されておりません。そのことへの憂慮や盗聴への協力にかかるコストのこと、顧客からの法的な損害賠償などのトラブルヘの対処等も解決していないという訴えが来ております。

さて、国民の警察に対する不信感も、審議の中では大変残念なことに払拭することができませんでした。小渕総理は、警察を用する、通信傍受の乱用はあり得ないとおっしゃいましたが、国民は、これまでの政府側の答弁では決して警察を信頼することはできません。

ことし三月二日の参議院予算委員会で野党議員が、共産党の緒方元国際部長宅、今参議院議員でいらっしゃいますが、この緒方さんの家の電話を現職警察官が盗聴していた事件について、これは警察の違法捜査ではないかと何度も何度も追及いたしました。しかし、それに対し警察庁長官は、ついにイエスと言いませんでしたし、この法務委員会でも、このと申しますのは参議院の法務委員会でございますが、そこでも警察組織の犯行とは全く認めませんでした。

現職警察官が盗聴行為を行ったんです。東京地裁も、上司の命令なしに警察官が実行したとは到底認められないと指摘しているんです。それにもかかわらず、このように非を認めない警察が、この盗聴法が成立した段階で本当に乱用しないという保証が、たった小渕総理の信用しているという言葉だけで担保できるものかどうか、国民が信じられるわけがありません。

制度として、法律として歯どめをかけてそのようなことが起きないようにするというのが人間の知恵というものであり、リーダーとして、総理として、そして法務大臣としての責任ではないかと私は思います。法務大臣の答弁はございましたけれども、総括質疑が開かれず、小渕総理にこの点をしっかりと御答弁いに残念でなりません。

令状できちんとチェックするとの御説明がもちろん政府側からなされましたが、これまでも裁判所が検察からの令状請求を却下しましたのは○・一%にしかすぎません。ほとんどの令状がそのまま通ってしまうということです。これはチェックになりません。そのことも、審議の中で令状では歯どめにならないことが明らかになりました。

立会人のことについでもさまざまな問題点が挙げられました。立会人に切断権、これは、この盗聴はおかしい、やめなさいということですけれども、この立会人に切断権を認めるべきであるということや、通信事業者ではなく裁判所職員を立ち会わせることも私たち民主党は主張してまいりました。そうすれば、立ち会いが裁判所職員であれば裁判官も令状審査に慎重にならざるを得ないわけです。

傍受した通信のうち捜査に関係のない通信の当事者には、当該通信、つまり今受けている通信、話している通信を傍受した旨の通知が行かないことも、捜査に関係がなければ幾ら聞かれていても通知がされませんから、通信傍受されていたこと、つまり盗聴されていたことがわからないわけです。そうした傍受した旨の通知が行かないこともプライバシーの保護の観点からは非常に問題だということが審議の中で明らかになりました。

政府は通知すると逆にプライバシーの侵害になるなどという説明をいたしましたが、これは全くおかしな論理です。何がプライバシーなのかということを全くおわかりじゃないんじゃないか。傍受された、つまり盗聴されたということは、まずもってそれだけで重大なプライバシーの侵害であります。それさえしかしわからないということは、さらなるプライバシーの侵害ではないですか。このような事態がまかり通れば、日本は間違いなく互いが互いを監視する監視社会となってしまうでしよう。

通信傍受つまり盗聴にかかるコストが膨大であることも指摘されました。特に、携帯電話の傍受を可能にするためのコスト、開発費は巨額になることが参考人等の質疑で明らかになりました。

このように、まだまだ挙げれば切りがないほどさまざまな問題点が出てまいりますが、まとめますと、このいわゆる盗聴法案には、その必要性、実効性、有効性、そして妥当性が全くありません。この法案の国民への影響を考えた場合、百害あって一利なしということが言えるのではないでしょうか。確かに犯罪を取闥 ワることは大変重要です。しかし、犯罪を取り締まるためには、もっと根本的な解決策が必要です。例えば、オウムの問題を解決するためには、脱会者の社会復帰を進める政策を打ち出すなど、さまざまな社会改革が必要ではないでしょうか。また、国際的犯罪については、日本がターゲットとなるような根本的原因を解決し、縦割りではなく横のネットワークを重視した総合的な解決策、そうした政が必要だと私ども民主党、日本共産党、社会民主党は思っております。もちろん無所属の方々もそうだと思います。

つまり、結局のところ、犯罪をなくすためには、捜査方法を強化するのではなく、国民が安心して暮らせる公正な社会をあらゆる側面から構築していくことこそが必要なのです。それこそが根本的な解決策なのです。そのためには、通信傍受法の制定などという拙速な対応ではなく、省庁横断的、そしてそこにさまざまな専門家や一般の市民の方々を交え、プロジェクトチームをしっかりと設置し、国民的議論を巻き起こしていくことが重要だと思います。以上、法務委員会の委員だけではなく、参考人や公述人、そして広く国民の方々から出てきた多くの疑問、不安に全く答えないまま、一昨日、法案審議を突然打ち切り、それも、先ほども申しましたけれども、二院クラブの方に、法務委員会のメンバーでもありませんのに、委員外発言を要請しておりました。その発言も全く無効になるような形で、私の質問の最中に、この後にはまだ公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、そして自由党、また無所属の中村敦夫さん、そして今言った二院クラブの佐藤道夫さん、その方々の質疑が予定されていたわけです。その予定の審議を突然私の質間の最中に、委員長がまだ答弁をしておられるときに緊急動議が出て打ち切られたという、とても参議院としてあるまじき行為が一昨日の月曜日に行われたわけです。

その委員会も、残念ながら、私どもが関与しない委員長の裁定によって開かれました。それも、本来は、法務委員会の法案審議は火曜日と木曜日というのが定例日となっております。それを月曜日の定例の時刻でもない夜の八時から開いて、それでいて私の質問の最中に審議を打ち切ったわけです。

先ほどビデオからも、また速記録からも明らかになりましたように、この盗聴法は、多くの国民の方々の不安に、また、疑問に全くこたえないまま一昨日法案審議を突然打ち切られ、強行採決が,企てられ、存在しなかった採決と、そうです、皆さん、一昨日の採決は決して存在してはいないんです。(拍手)

この存在しなかった採決と存在していない可決の報告をした荒木法務委員長に対し、私は、野党の皆さんだけでなく国民を代表し、解任決議案を提出するものであります。(拍手)

与野党のすべての皆様にお願いしたいと思います。

二十一世紀はもう本当に目の前に来ております。この二十一世紀を担う子供たちが、本当に安心してこの国で暮らせるように、この社会、明るい社会、平和な社会をつくっていくために、この二十一世紀の日本を、人々が互いに監視し合うような、お互いを疑心暗鬼で見て、そういう中で暮らさなきゃいけないような、プライバシが尊重されないような、そんな監視社会にしないために、与党の皆様と公明党の皆様が再度考えを改め、本当に良識ある対応をしてくださることを切に望むものであります。(拍手)

委員長が、お役目といいながら、本当に自民党、そして自由党、公明党の御指示があったのかどうかわかりませんけれども、動議の中身がわかりませんから、なぜその動議に応じられたのか私は知るところではございませんけれども、何カ月も強行採決をしないように何とか頑張ってこられ、もしそういうようなことになるならばどうしようときっと本当にお悩みになったことは大変同情いたしますけれども、荒木委員長のことですから、今もなおこの存在しなかった採決、存在しなかった可決を報告したことを、記者会見したことをぜひ撤回し、法務委員会に差し戻してくださるのではないか。荒木委員長ならばきっとそれをしてくださるのではないか。

また、公明党の皆様も、政府の法案は全くむちゃな法案だったとおっしゃいました。それをすっかり修正し、これは全く別の法案だと何度もおっしやいましたけれども、私たちから見れば余り変わったとは思えないんですね。五十歩百歩。どこが全く違う法案なのか、そう思えてなりませんので、ぜひともこの法案をもう一度法務委員会に差し戻し、審議を続行してくださることを、荒木委員長のためにも御決断いただくことを私どもは切に願うものであります。(拍手)

どうか、どうかお願いしたいのですが……(発言する者あり)

○議長(斎藤十朗君)御静粛に願います。
○円より子君(続)どうかお願いしたいのですが、良識の府である参議院の名を汚さないようにしていただきたい。良識の府とは名ばかりかと国民は今集っております。なぜ、存在しなかった採決があったニ言えるのか、国民はそんなことで言いくるめられたりはしないと私は思います。

もし、おかしいとお思いならば、何でしたら、私、もう一度その速記録をお読みいたしましょうか。残念ながら、原稿は手元にはございません、その部分は。しかし、全部覚えております。私が質間の最中、るるこの法案の問題点は全く究明されていないことを、また解決していないことを訴え、この法案を議了すべきではないと言い、そしてまた、総理を呼んでの総括質疑をして、連合審査もして、この法案を継続すべしと訴えてまいりました。そのとき、総括質疑について、委員長は理事会で協議しますとおっしゃつたんです。そのとき、荒木法務委員長は、法案をあの時点で議了する気はなかったんだと私は思います。ですから、理事会で協議をして、総理を呼んでの総括質疑をするとお約束なさったわけです。ですから、では、今してくださいますかと私が言ったのに対し、委員長は後刻、後刻とおっしゃった。それは……

○議長(斎藤十朗君)円君、そろそろ終えてください。
○円より子君(続)はい。もう終わります。

委員長が後刻、後刻とおっしゃったそのときに、自民党の理事から緊急動議が出たようであります。しかしながら、速記録には委員長としか出ておりません。中身は全く聞こえず、速記録には書かれていないんです。それなのに、挙手のお願いをしますと委員長はおっしゃり、そして全く挙手の数を数えず、可決したとも申されず、そのまま席を立たれてしまいました。速記の方々は、休憩とも散会とも委員長がおっしゃいませんでしたので、ずっと座り続けておられた。それが速記録、そし、て今週月曜日、一昨日の、一九九九年八月九日八時五十五分の出来事でありました。(拍手)

このように、この盗聴法案の採決は全く存在しなかったのであり、可決もされてはおりません。それを採決したと言い、可決もあったと言い、あろうことか、斎藤十朝参議院議長にまで偽りの報告をし、記者会見までして国民を欺き愚弄したこの荒木法務委員長の責任はとても許せるものではありません。

○議長(斎藤十郎君)円君、円君、どうぞ終えてください。
○円より子君(続)あと一言です。どうぞ、良識の府である参議院の名を汚さず、一昨日の法務委員会の採決は全く無効であったことを全員で確認し、そして法務委員会を再開し、いわゆる盗聴法の審議を続行するか、潔く廃案になさることを切望し、私の荒木法務委員長解任決議案の代表趣旨説明を終わりたいと思います。(拍手)
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