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1999/07/13
大蔵大臣の財政演説に対する質問(足立良平議員)
民主党・新緑風会 足立良平

私は民主党・新緑風会を代表して、宮沢大蔵大臣の財政演説に関連し、総理及び関係大臣に質問いたします。


(災害)

質問に先立ちまして、去る六月からの集中豪雨によってお亡くなりになった方々並びにそのご遺族に対し心から哀悼の意を表しますとともに、大きな被害を受けた広島県をはじめとする被災地の皆様方に対し、心からお見舞いを申し上げます。

 政府は、昨年成立を見た「被災者生活再建支援法」を初めて適用するとのことですが、ぜひとも法律の趣旨を踏まえ、迅速な支援を要望いたします。

 総理のご所見をお聞かせください。


(総理の訪中について)

 ところで小渕総理、ハードなスケジュールの中、中国及びモンゴル訪問お疲れさまでございました。

 まずは、今回の訪中についてお尋ねいたします。 

 西ドイツでよくいわれる言葉に、「過去の克服」という言葉があります。たとえば、政治学者のユンゲル・ヴェーバーは「過去の重荷が克服されてはじめて、ドイツの民主制の再建が成功することがわかっていた。過去の克服がドイツの戦後政治の前提となったのであった」と述べております。

しかし、日中関係においては一九七二年の日中共同声明が調印されたにもかかわらず、残念なことに今なお「過去の克服」が実現しておりません。

 常に過去の歴史認識が足枷となり、両国の未来指向の関係を構築する際の大きな阻害要因となっております。

 事実、昨年十一月の江沢民国家主席の来日においても、日本に対し「正しい歴史認識」を厳しく求めております。

 今回の訪中において小渕総理が提示した一〇〇億円の「小渕基金」ともいわれる緑化対策に象徴されるように、日本のODA等の資金供与が「小切手外交」と揶揄され、「過去の克服」を実現しようという政府の強い意思が見えません。

 二十一世紀に向け小渕総理は、日中関係の「過去の克服」をいつまでに行い、中国の求める「歴史認識」を克服し、未来指向の日中友好関係をどのように構築なさるのか、ご所見をお聞かせ願います。



 また、小渕総理は、李鵬全人代常務委員長およびモンゴルのナランツァツラルト首相に対し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル再発射阻止を依頼したとされております。

 私は依頼そのものを否定するものではありませんが、当然ながら先ず最初に主権国家として毅然たる態度を示すことが国際社会の常識であります。

 政府は、朝鮮半島エネルギー開発機構(いわゆるKEDO)に対し一九九六年に一九〇〇万ドルの拠出を行っておりますが、今後ともKEDOへの拠出を行うのか、テポドンの再発射阻止に向けて北朝鮮に対し日本国として厳しく対処すべきであると考えますが、総理の今後の外交姿勢をお聞かせください。


(雇用)

 さて、長引く不景気と産業構造転換の影響で、本年五月の失業者数は三三四万人、完全失業率四・六%と依然として高水準にあり、雇用情勢は危機的な状況に陥っております。

 失業者のうち九七万人は世帯主であり、その家族の生活に深刻な打撃を与えていることは、特に憂慮すべきことであります。

 加えて、今後さらに企業がリストラを加速させ、雇用や所得に下方圧力が働くことは避けられません。

 また、昨年一年間の自殺者が史上初めて三万人を突破し、特に経済・生活問題を抱えた自殺者が七割も増加しております。

 昨日、大蔵大臣が財政演説で明らかにされたように、我が国経済が依然として厳しい状況にあるという認識は我々も同じであります。

 しかし、今回提出された補正予算では、雇用不安がふっしょく払拭されるとは到底思えません。

 それは、国民が年金、医療を含めた将来への不安を抱いているにもかかわらず、将来ビジョンを示さず、全ての問題を先送りしている政府に対する不信感が、景気を牽引すべき個人消費を低迷させているという認識が希薄だからであります。

 そしてまた、無為無策の政府に引きずられ、バブル崩壊による不良債権処理を遅らせてきた企業の、生き残りをかけた容赦ない人員削減の嵐が国民の不安を増幅しているのであります。

 政府は、今回の予算額および対策で必要十分であると考えておられるのか、そしてまた今回の対策により、今後の失業者数や失業率はどのように推移すると予測しておられるのか、総理および労働大臣にお伺いいたします。


(早期に補正予算編成を余儀なくされた政府の責任について)

 本通常国会において、わが民主党は、平成十一年度の当初予算では政府公約の実質○・五%経済成長を達成するのは不可能だと主張し、予算の組み替えを求めたにもかかわらず、政府・与党は我々の主張を一顧だにせず、原案のまま成立を強行しました。

 そして今、当初予算が執行されてわずか三ヶ月あまりで補正予算提出を余儀なくされたことは、欠陥予算であったことを如実に示すものであり、小渕内閣の責任は極めて重大であります。

 経済認識を誤り、対策を後手後手に回して、日本経済の傷口を拡げたことに対する責任をどのようにとられるのか、総理及び大蔵大臣にお伺いいたします。


(金融)

  昨年あれほど騒がれた金融不安は、現在では、少なくとも表面的には、かなり収まっていることは事実であります。

 特に、長銀や日債銀が破綻したにもかかわらず、日本発の世界金融恐慌が起きなかったことは、民主党をはじめ、当時の野党が作り上げた金融再生法の正しさを立証するものと言えます。

 もっとも、早期健全化法による資本注入の効果は一時的なものであり、いずれまた金融不安は再燃すると敢えて指摘をしておきたいと思います。

  さて、長銀や日債銀が破綻し、金融再生法に基づいて関係者の責任の追及が行われておりますが、その過程において、長銀の旧経営陣が粉飾決算の疑いで逮捕されるという由々しき事態も発生をいたしました。

 その長銀に対し、昨年三月、政府は一、七六六億円の税金を投入しただけでなく、八月二十日、小渕総理は官邸に住友信託銀行社長を呼び、長銀を救済合併するよう迫っております。

 総理として誠に軽率な行動であったと言うほかありません。

 民主党をはじめとする当時の野党の強い反対がなければ、長銀の犯罪は明らかにされず、巨額の税金が投入されていたのは間違いありません。

 小渕総理は、債務超過で市場から退場すべき銀行を税金で救済するという、まさに国民に対する背任行為を犯そうとしたのであり、その責任は極めて重大であります。

 小渕総理の反省の弁を求めます。


金融再生法第三条には、金融機関の破綻処理の原則として、「破綻した金融機関の株主及び経営者等の責任を明確にするものとすること」という規定があります。

 金融再生法を提案した民主党としては、この規定について、大蔵省等の行政の責任は当然含まれるものと考えております。

 この点について、金融再生委員長のご見解をお伺いします。


(政治改革)

 昨年来、政治家や官僚の倫理の確立を求めてさまざまな議員立法の取り組みが行われてきましたが、これらが一向に実現していないことは、誠に憂慮すべきであります。

 我々は、この問題を最重要課題として、繰り返し取り上げてまいりました。国家公務員倫理法はようやく今国会の成立に向けて与野党の合意がなされたようですが、そこでいっそう問われるのが「政治家の倫理」であります。我々は公明党、社会民主党・護憲連合、参議院の会とともに、特定の業者に便宜を図って報酬を得るような利益誘導政治にきっぱりと訣別しようとする「国会議員の地位利用収賄罪を処罰する法律案」を本院に提出しております。

また、民主党は七月六日に「資金管理団体に対する企業・団体献金の禁止法案」を衆議院に提出致しました。

 これは、政治資金規正法附則第九条に明記されていることを実現する法案であります。

即ち、平成六年一月二八日に当時の細川総理と河野自民党総裁の間で交わされた合意書は、「企業等の団体の寄付は、地方議員及び首長を含めて政治家の資金管理団体に対して、五年に限り、年間五十万円を限度に認める」と記されており、自民党として資金管理団体に対する企業・団体献金は五年に限ることを明確に合意しているのであります。

 これだけ明確な「合意書」及び附則第九条がありながら、いまだ政府・与党の責任者として何らの手立ても講じていない責任を小渕総理・総裁はどう説明されるのでありましょうか。

 両法案に対し、自民党総裁としての考え方をお聞かせいただきたい。

 また、野田自治大臣には政治資金規正法の所管大臣としてのお考えを伺うとともに、自由党としての態度を、あらためて明らかにしていただきたいと思います。


(自自公連立の目的、真意)

 最後に、小渕総理は先般、神崎公明党代表に自自連立政権への参加を正式に要請したとされています。

 仮に、自自公による大連立政権が実現をすれば、衆院で三五○議席を軽く超え、参院で一四○議席の絶対的権力基盤が形成されます。かって、西ドイツでは、キリスト教民主同盟とドイツ社民党の大連立を実現し、緊急事態法案(いわゆる有事法制)を成立させました。

 そこで総理にお伺いします。

 今なぜ、衆院で三分の二をはるかに上回る大連立を行おうとするのか、連立の目的、真意をお聞かせください。

 しかし、自自公大連立は、かつての西ドイツの大連立のように、政策合意の上に成り立った政権ではありません。政策の重要課題については、ガイドラインにおける船舶検査、国会議員の議員定数、介護保険制度等々、先送りにされたままであります。つまり、絶対的権力を保持するためだけの大連立であります。「絶対的権力は絶対的に腐敗する」と言われているように、このような連立政権は必ず腐敗するでありましょう。

 加えて、五五年体制以降の自民党政権は、安全保障問題などハイ・ポリティクスなテーマを回避してきました。このことに対し、国民の多くが、保守政権政党としての軽さ、言い換えれば歴史的責任感の欠如、国家観に対する見識の脆弱性といったものを直感しております。

 戦後国会の内外で繰り返されてきた不毛な議論の根因、引いては日本の民主主義、政党政治が高まらない大きな要因となっております。このような自民党政権の戦後の負の遺産を自自公大連立の中でどう解消されるのか、小渕総理の真摯なるご所見を求め、私の質問を終わります。
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