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1999/02/10
「平成9年度決算の概要」に対する代表質問(木俣議員)
民主党 木俣佳丈

 ただいま大蔵大臣から報告のありました平成九年度決算につきまして、民主党・新緑風会を代表し、小渕総理並びに関係大臣に質問致します。

 質問に先立ち、ジョルダン・ハシェミット王国を46年にわたって統治し、中東和平に大きな貢献をされたフセイン国王の逝去に対し、謹んで哀悼の意を表します。

 決算の質問に入る前に日本債権信用銀行、日債銀の経営破綻に対し一言申し上げておきます。

 昨年12月、日債銀が経営破綻し、一時国有化されました。既に同僚議員から、その不明瞭な破綻までの経過について厳しく責任が追及され、信じがたいような事実さえ明らかになっております。

 一昨年の4月、大蔵省は、奉加帳方式で金融業界に日債銀の増資2906億円を引き受けさせ、そのうち800億円は新金融安定化基金の日銀出資枠から拠出されました。さらに、昨年3月、整理回収銀行が優先株600億円を引き受けることととなり、公的資金が注入されました。

 大蔵省が、一昨年9月時点で、回収懸念債権である第三分類債権が1兆1212億円であるとの検査結果を日債銀側に伝えていたにもかかわらず、当時の東郷日債銀頭取は日銀に対し、「第三分類債権は7000億円」との中間報告の数字を報告した事を考えると、これら注入された公的資金は、国民を欺き、どぶに捨てられたのと同じであることを指摘したく、今後さらに厳しく追及して参りたいと思います。

 さて、政府の度重なる政策判断の誤りの中で、経済・景気は低迷し、不況は深刻化し、失業が日に日に増え、国民は大きな犠牲を強いられております。

 このような情勢の中で、九年度の国の一般会計は1兆6000億円余りの決算上の不足額、いわゆる歳入欠陥を生じたのであります。この不足額相当額は、本来、決算調整資金からの組入れによって処理されるところでありますが、資金の残高ゼロであったため、国債整理基金から決算調整資金へ繰り入れ、それを一般会計に組み入れたものであります。この決算上の不足額1兆6000億円余りは、11年度当初予算に計上され、国債整理基金に繰り戻されることとなっております。あたかもタコが自分の足を食っているような有様といえます。

 このような歳入欠陥は、昭和56年度、平成4年度及び5年度に続いて、戦後四回目のことでありますが、財政構造改革元年と言われた平成9年度において、歳入欠陥を生じたことに対して総理並びに大蔵大臣の所見を伺いたい。


 9年度に歳入欠陥が生じた最大の原因は、税収の落ち込みにありますが、その背景には、税収見積もりが過大であったことが挙げられます。9年度の税収実績は53兆9000億円余りで、当初予算に比較して3兆8600億円の減収、補正予算に比較して2兆2800億円もの減収となりました。

 現在国会で審議中の11年度予算の税収見積もりは47兆1000億円となっておりますが、9年度の税収見積もりと実績の乖離を踏まえ、11年度の税収見積もりの精度向上のために、どのような工夫を加えられたのか、大蔵大臣、お示し願いたい。


 次に、中小企業対策について、我が国の産業政策的な観点を含め質問いたします。

 我が国の中小企業は、企業総数の99%、雇用者総数の78%を占めており、まさに国家の浮沈を握る産業であることは言を待たないところであります。いわば国家・国民の生命線とも言える中小企業が、戦後未曾有の不況に苦しみ、昨年の倒産件数は約二万件を数え、最悪とも言える状況にあります。とりわけ、九年半ば以降急速に悪化した金融機関による、いわゆる「貸し渋り」による倒産が急増し、中小企業を取り巻く金融環境は一段と厳しさを増しております。

 一方で、金融機能安定化緊急措置法に基づく金融機関への公的資金の資本注入に伴う銀行財務の引き締めは、銀行の経営合理化の名の下に、弱きを挫く金融機関の経営姿勢によって企業選別を助長させ、却って中小企業を核とする我が国産業が縮小均衡に陥る危険性さえ伴うのであります。

 中小企業の倒産、失業者の増大は、「もの作り」を支える技術者の離散を意味し、「もの作り」から離れることによって、政府自ら技術革新の貴重な源泉を放棄することとなり、我が国産業の衰退を招くことになりましょう。

 政府は、平成9年度11月の経済対策における中小企業対策を皮切りに、9年度補正予算において806億円の中小金融対策、10年8月の「中小企業等貸し渋り対策大綱」による40兆円を超える貸し渋り対策、11月の緊急経済対策における事業規模5.9兆円の信用収縮対策等を講じておりますが、一向に中小企業再起の活路が見出せません。私は、むしろ、「もの作り」を支えるネットワークの支援や、大学や研究機関との共同研究の推進による技術開発の促進に対し重点的に予算を投入すべきだと考えますが、通産大臣のご所見をうかがいたい。

 今まさに、経済のグローバル化が進展する中で、企業が立地する国を選ぶという国際的な大競争社会に突入し、厳しい企業淘汰の時代を迎えています。そうした中で、私はフリーダム・トゥ・フェイル、すなわち「リスクをとって行動したものが敗者復活できる」社会に向かわなくてはならないと思うのであります。つまり敗者復活の制度と仕組みを組み込んだセイフティネットを構築する必要があります。

 メガコンペティション、すなわち国際的大競争社会の中で、今後日本が向かうべきところのビジョン無くして、企業の活性化、国民生活の質の向上はありえません。

 中小企業対策の根幹には、「もの作り」の伝統的風土を守り、フリーダム・トゥ・フェイルとセイフティネットの仕組みを持つ社会構造への変革が求められるのであります。総理、「並の凡人ではない」と言われるあなたの確固たる日本社会のビジョンを明らかにしてください。


 次に、次代を担う女性と子供達のためのエンゼルプランについて、その進捗状況を伺います。

 総務庁の「労働力調査」によると、平成10年に働く女性の数は2656万人に達しておりますが、女性の労働力人口はMカーブと言われるように、子育て時代の三十代前半に極端に落ちる傾向にあります。女性の社会進出は社会の活力を生むものであり、女性が働きやすい環境を作り、進行する少子化に歯止めをかける必要があります。

 政府は、子育て支援を行うエンゼルプランの具体化の一環として、緊急に保育対策を促進するため、7年度から11年度までの五年間、「緊急保育対策等五か年事業」を実施し、消費税収の一部を含めこの事業に11年度までに1兆2000億円投入されることとなっております。

 しかし、事業の進捗状況を見ると、順調に推移しているとは言えません。そのことは、7年度の合計特殊出生率が1.42であるのに対し、9年度は1.39とさらに少子化に拍車がかかっていることにも表れております。

 一時保育は、11年度までの目標3000ヶ所に対し10年度補正予算段階で僅か1000ヶ所のみ、地域子育て支援センターは3000ヶ所の目標に対し840ヶ所、乳幼児健康支援一時預かり事業500ヶ所の目標に対し僅か150ヶ所に過ぎません。五ヵ年計画の達成は極めて難しい状況にあります。

 一時保育、地域子育て支援センターの設置、乳幼児健康支援一時預かり事業という施策が進捗しなかった理由は何か、そうした施策が具体的なニーズにマッチしていないのではないか、また、民間参入の機会が阻害されているようなことも聞きます。私も間もなく四人目の子供を持つ親として厚生大臣からご所見を伺います。


 最後に、我が国の重要な外交手段の一つであるODAについて伺いたい。

 我が国では平成9年実績で1兆1320億円が投じられ、平成3年以降7年連続で世界第一位の援助実績を誇っていることはご承知のとおりであります。

 しかしながら、世界の現状を見ると、今なお十億人を超える人々が飢餓に苦しみ、一日に4万人、一分間に21人もの子供が飢え死にしているのであります。世界でも最も富める国の一つである我が国がこうした人々・子供に手助けをすることは至極当然なことです。

 OECD開発援助委員会の「新開発戦略」では、2015年までに極端な貧困下で生活している人々の割合を半分に削減する事を目標に掲げております。我が国は世界第二位の経済大国として、この目標の実現に向けて、国力にふさわしい先導的な役割を果たす事が求められているのであります。外務大臣のご所見を伺いたい。

 一方、九年度のODA予算は前年度に比較して2.1%増と過去最低の伸びであり、十年度当初予算は前年度に比較して10%以上削減されており、援助の量から質への転換が求められていると思われます。

 こうした中、「九年度決算検査報告」において、バングラデシュの水産関連事業等五事業について、その効果が充分発現していない事態が生じているとの指摘がなされております。検査を実施した九十六事業のうちの五事業に過ぎませんが、事業の一層の効率的・効果的実施が求められることは言うまでもありません。検査院の指摘に対して、政府はどのように取り組むつもりか外務大臣に伺います。

 ところで、我が国の援助は「プレゼンス」という観点から問題があるように思われます。

 例えば国民の間では途上国に自ら出向き、実際に援助に携わる人が増えており、青年海外協力隊への応募は毎年1万人に上っております。しかし、定員枠が少ないため、応募者の10人に1人しか合格できず、意欲のある若者を排除する結果となっております。若者が海外で現地の人とじかに接しながら援助活動を行うことは、途上国への人的貢献にも積極的に寄与すると共に、我が国にとって有意な人材の育成に役立つものであります。政府は、予算枠の拡大、制度の充実に努めるべきであります。

 また、成長著しいNGOに対する政府の支援がまだ不足しております。NGOによる小規模なプロジェクトに対し、現地の在外公館が中心となって行う「草の根無償資金協力」が実施されておりますが、9年度実績で僅か50億円に止まっており、一兆円を越すODA供与額から見れば、その規模は余りに小さすぎるのではないでしょうか。

 今後は、こうした事業に対する支援をより充実させ、きめの細かい援助による質の向上を図り、国際社会における我が国の評価を一層高めていく努力が必要であります。外務大臣のご所見をお伺いします。

 聖書に「一粒の麦がもし地に落ちて死ななければ、それは一つのままです。しかし、もし死ねば豊かな実を結びます」という言葉がありますが、私は、この身一つで済むのなら、という気持ちで明るい日本の実現に向け、努力することを誓いながら質問を終わります。
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