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1998/12/01
小渕総理の所信表明演説に対する代表質問
民主党・新緑風会 北沢 俊美

■はじめに

 私は、民主党・新緑風会を代表して、小渕総理の所信表明演説に関連し、総理並びに関係大臣に質問いたします。

 まず、質問に先立ちまして、今年の夏から秋にかけての豪雨や台風による災害でお亡くなりになられた方々やご家族、関係者の方々に哀悼の意を表明するとともに、被災地の皆様方にお見舞いを申し上げます。民主党・新緑風会として、災害の復旧に全力を傾注していく決意であります。

■小渕内閣の評価、自自連立について

 さて、七月三十日に小渕総理を首班とする内閣が発足しておよそ四か月が経ちました。

 自由民主党は、一昨年の衆議院選挙でも、今年の参議院選挙でも、過半数を獲得することができませんでした。自民党は政権維持のためになりふりかまわず、他党の議員を引き抜いて衆議院で過半数を確保し、参議院での首班指名の結果を無視して、強引に政権政党の地位を維持してきました。まさに民意なき政権であります。

 衆議院が小選挙区制度になってからの選挙は、政党と政党の公認候補を選出することによって総理大臣を選ぶ予備選挙的な意味合いも強くなってきました。そのことは同時に、有権者が政権か反政権かを明確に意思表示することにもなったのであります。その制度の中で選出された議員が、政権側の甘い囁きと権力への渇きに負けて変節することは、許しがたきことであります。もし仮にそれをしようとするならば、辞職し再度民意に自らの政治行動を問うことが正道ではないでしょうか。

 この道筋を無視してきたここ二年余の我が国政治は、まさに民主主義崩壊か、あるいは民主主義の真空期間であったと思うのであります。ここの政治家の無節操と共に、これを受け入れてきた自民党の姿勢は、民主主義に背を向けた国民への背信行為そのものであります。私は、今小渕総理が進めている自自連立について論ずる前提として、先ずこのことに対する小渕総理の見解を伺いたいと思います。

 また、同時に、この時期幹事長代理として、巷間、一本釣りを楽しむなどと伝えられ、辣腕を発揮されたと云われておる野中官房長官にうかがいたいのでありますが、あなたは、彼らが国会議員とはいえども権力への誘惑の前に右往左往し変節する様々な人間模様を見てきたことでありましょう。憲政の常道に照らして、政権党の多数派工作について見解をお聞かせいただきたいのであります。

 さて、今回の所信表明演説について二つの欠落を指摘致します。その一つは、小渕内閣の景気対策の目玉として公約に掲げた減税に対する言及がほとんどなかったことであります。

 減税は、退陣した橋本内閣との決定的な違いであり、あなたの目玉政策であったはずです。経済再生に「内閣の命運をかける」とか「思い切った施策を果断に決定し、実行に移した」と見栄をきっておりますが、あなたは危機意識のかけらもないのでしょうか。もっとも、十一月五日に早くも野中官房長官が「減税の先送り」を表明してしまっておりますので、長官おまかせ総理とすれば、何も言えなかったのでしょう。しかし、事は重大であります。先送りがどれほど我が国経済に深刻な影響を及ぼすかお判りですか。総理の見解をお聞きいたします。

 次に政権の枠組みについてであります。十一月十九日に総理は自由党の小沢党首と連立政権の合意をされました。民意に諮ることもなく、具体的な詰めを先送りしたまま、国会運営、選挙協力を優先させて連立内閣を組むことは、「野合政治」であると断ぜざるを得ません。

 また、内容すなわち「いま直ちに実行すべき政策」を見ますと、一小渕内閣にとどまらず、自民党の政策はもちろん歴史と伝統にもかかわる事であります。おまけに、肩書は「内閣総理大臣」と「自民党総裁」が並んでおります。弁明の逃げ道は閉ざされております。各項目は、まさに国政の根本にかかわるものであります。国連軍参加、消費税、閣僚数、政府委員制度、議員定数等の問題については、合意した以上、あとは実行あるのみでありますが、本当に実行されるのか、各項目についてお答えをお願いします。

 さらに、この連立の意味するもの、目的について、国民の前に明らかにすべきであります。総理の見解を伺うものであります。

 さらに、参議院の立場から申し上げますが、昨日の衆議院答弁では、この自自連立は前国会の経験から、特に参議院の過半数割れが発端になったようですが、仮にこの自自連立が成立しても参院の過半数割れは解消しないのであります。安定政権とはほど遠いのであります。他に何か企てがあるのでしょうか。それとも参議院はこの程度で何とかなるとでも思っておるのか。参議院軽視ではないのかということを申し上げたいのであります。


■「緊急経済対策」、第三次補正予算について

 次に「緊急経済対策」及び第三次補正予算についてお尋ねいたします。
 民主党は先の臨時国会において、金融関連法が成立した後も国会を続けて、恒久減税を含む抜本的な景気対策をとりまとめて、補正予算を成立させるよう政府に提言してきました。しかし、政府は先の国会を閉会し、不況に追い打ちをかけました。景気対策の策定と補正予算の編成に手間取り、この国会の開会が遅れた挙句、さらに予算書が間に合わないという不始末でありますことを残念に思います。

 小渕総理は総裁選出馬に際しても、また八月の参議院本会議でも、恒久的な減税を実施すると約束いたしました。その後、九月の日米首脳会談、十月の先進七か国蔵相・中央銀行総裁会議でも、日本は減税の実施を公約し、世界各国からも抜本的な景気浮揚策をとるように最後通牒を受けていました。減税抜きの景気対策は公約違反であり、容認するわけにはいきません。総理の釈明を求めます。

 しかも「事業規模で二十三兆円超」と見せかけの規模を膨らませていることも問題であります。今回の補正予算に盛り込まれた景気対策関連の総額はわずか八兆円あまりで、民主党が求める「国費で二十兆円」の対策に比べると不十分であり、しかも構造改革につながる対策が全く欠落していることは納得できません。政府の対策は国民、諸外国、市場の期待を裏切るものであり、十分な景気回復は到底見込めないものであります。

 政府が「緊急経済対策」を決めた翌日に、ムーディーズは、日本の国債と外貨建て債務の格付けを最上位の「Aaa」(トリプルエー)から一ランク下げ、「Aa1」(ダブルエーワン)に引き下げました。

さらに、経済企画庁の大本営発表では、政府の対策について、「向こう一年間の押し上げ効果は実質で二・三%」と試算されていますが、主な銀行、証券系シンクタンクは、九八年度の押し上げ効果は、わずか〇%から〇・三%にとどまり、九九年度でもたったの一・〇%から一・九%にしか効果がないと見ています。

 国内外からの専門家からも効果が少ないと指摘され、国民からも「総すかん」の対策で本当に日本経済を建て直すことができると総理はお考えなのでしょうか。根本から対策をつくり直すつもりはおありか総理の見解を求めます。

 民主党が従来から「財政構造改革法の凍結」を主張し、対案まで提出したにもかかわらず、政府自民党はわれわれの声を無視してきました。この期に及んで財革法の凍結法案を提出したことは遅きに失しただけでなく、無節操な政策転換と言わざるを得ず、内閣の責任を厳しく追及したいと思います。総理大臣はいかなる責任をとるのか明快なる見解を求めます。

 政府の「緊急経済対策」には、なぜわが国が未曽有の長期不況から抜け出せないのか、なぜ過去の景気対策は効果がなかったのか等々について的確な分析が欠落しています。役所が旧来型の施策を出し、惰性的に積み上げているだけの対策であります。経済学者を交えて、真摯に経済政策論争を行った形跡も全く見られません。

 私たちは、現下の経済危機の原因が単なる循環的なものではなく、冷戦構造崩壊や大競争時代の到来による世界経済の大転換、成熟・少子・高齢時代を迎えた社会構造の変化などにわが国の経済システムが適合できなくなっていることにあると考えています。

 政府の「緊急経済対策」はいかなる理念、原則に基づいているのか。経済政策論についてどこまで議論したのか。過去の対策の効果をどう評価しどの点を修正したのか。総理から詳細に答弁をいただきたい。

 私たち民主党は、六つの理念に基づいて、十一月十二日に「減税!安心!未来への投資!」をスローガンとした「構造改革につながる景気・雇用対策」を発表いたしました。六つの理念とは、第一に将来の日本の構造改革につなげる政策を実施すること、第二に「質」も「規模」も重視すること、第三に民間・個人・市場の活力を重視すること、第四にまず現在の危機を脱することに全力を尽くし将来にわたる持続的成長を達成すること、第五に国民が安心して暮らせる「セーフティーネット」を整備・充実すること、第六に地方財政には過大な財政負担を求めることなく国の責任で実施することであります。

 とりわけ現在の経済にとって重要な五つの要素、すなわち資金、株式、土地・住宅、起業・創業、雇用にカツを入れ元気を取り戻すための斬新な施策をとりまとめました。
 以下に民主党の「景気・雇用対策」を紹介しつつ、関連する質問をいたします。

■税制問題等について

 続いて、税制問題についておたずねします。
 総理は、演説の中で、政権発足以来思い切った施策を果断に決定し、実行に移してきたが、さらに今般二十兆円を大きく上回る緊急経済対策を取りまとめたと力説されましたが、税制問題については、この臨時国会での具体案の提出をせず、通常国会への先送りを決め込んでしまいました。このため、税制問題についての総理の演説内容は、前回の臨時国会冒頭で表明された内容からほとんど一歩も深まっていないというお粗末なありさまです。

 いったい、方針を最初に表明してから四か月間経った今なお内容を具体化できずに、どうして「思い切った施策を果断に決定した」と言えるのでしょうか。来年の通常国会に法案を提出しても、実施できるのは早くて初夏になってしまうのではありませんか。国民や経済界の間では、一月から実際に所得減税を実施すべきだという声が強まっています。なぜこのようにもたついたのか、いつから実際に減税を実施するつもりで検討を行っているのか、まずこのことを明確にしていただきたい。

 その上で、私は、個人所得課税をはじめとする当面の減税についての民主党の考え方を申し上げ、総理の認識を具体的に何点かおたずねいたします。

 第一に、民主党は、経済活力と国民生活の安心をもたらす抜本的税制改革の方向に沿った減税を実施すべきだと考えます。国民生活の安心感を高める中長期的な税制改革を前倒しで実現するという観点にたって実施すべきであります。特に個人所得課税に関しては、橋本内閣が場当たり的な特別減税を繰り返して税制を歪めた上に、景気対策としても見るべき効果をもたらさなかったという愚策の轍を踏むべきではありません。

 総理は、わが国の将来を見据えて、個人所得課税をどのように抜本的に見直すことが必要と考えているのか。そのことと、当面の所得減税の内容はどのような関係に立つこととなるのか。ご所見をたまわりたいと思います。

 第二に、総合課税化と課税ベース拡大による不公平是正が不可欠であるということです。実際の所得に対する税負担の割合について依然として大きな不公平が存在しているといわれます。個人所得課税改革にあたっては、まず納税者番号制度の導入による総合課税化、各種控除等の見直しによる課税ベースの拡大について方向と時期を明確にした上で、税率引き下げによる減税を前倒し実施するという進め方をとるべきだと考えますが、総理のご所見をたまわりたいと思います。

 第三に、すべての所得階層を対象とした税率引き下げの制度減税を実施すべきであるということであります。所得税が課税されるすべての所得階層を対象に、各段階の税率を引き下げる制度減税を実施すべきと考えます。民主党は、具体的に、所得税の一〇〜五〇%の五段階の税率をそれぞれ二割程度ずつ引き下げて八〜四〇%とすることを提案いたしております。また、これと併せて、中間所得層の負担を緩和するために、最低税率区分の上限を現行の課税所得三百三十万円から四百万円に引き上げることを提案しております。

 総理は、高額所得層だけが制度減税の恩恵に浴し、その他の所得階層は一時的な定率減税でがまんしろとおっしゃるのでしょうか。それは国民各層一人一人の声に耳を傾けるという総理の政治信条に合致するものなのでしょうか。総理の率直なご見解をお聞かせください。

 第四に、民主党は、地方財政破綻を招く地方税減税には反対であるということをあらためて強く表明いたします。地方へのこれ以上の減税の押しつけは、地方分権推進に逆行するだけでなく、地方財政を破綻の淵に追いやり、結局国の行う景気対策の効果をも相殺することにしかならないからであります。むしろ、景気回復という観点からも、国から地方への税源移譲等により地方税財源を充実し、国民生活の安心感を高める社会的セーフティーネットの確立を図ることが必要です。以上の観点から、少なくとも、当面の減税は基本的に国税の範囲内で国の負担によって行うべきであると主張してまいりました。

 先週決着した国・地方の負担割合は、当初の宮澤蔵相案に比較して地方財政へのしわ寄せを減らしたという点では一歩前進ですが、問題が解決したのではないということを強調しておきたいと思います。

 第五に、民主党は、税率引き下げ等による所得税減税とあわせて、扶養控除の見直しとセットで児童手当を抜本的に拡充した「子ども手当」を創設すること、さらに基礎年金国庫負担率二分の一への引き上げによって保険料をただちに引き下げることを提案いたしております。民主党は、消費税の一時引き下げよりも、その財源を基礎年金等の福祉財源の安定化に充てることによって、将来にむけた国民生活の安心の基礎を確立する方向に政策を一歩進めるべきであると考えます。一時的な小手先の景気対策よりも、しっかりとした社会的セーフティーネットを確立することにより、生活不安の解消を図ることこそが現在求められているのではないでしょうか。これらの提案について総理のご所見をたまわりたいと思います。


■貸し渋り対策、中小企業対策について

 次に貸し渋り対策、中小企業対策についてお尋ねいたします。
 今、全国の中小企業は、倒産・廃業の多発に苦しみ、深刻な経営危機に直面しています。一番深刻な問題は中小企業に対する金融機関の貸し渋りであります。破綻金融機関と取引していた中堅企業に対する信用保証制度の確立にもめどがつきました。この法律を早期に成立させるとともに、さらに政府系金融機関による貸付制度、信用保証制度を拡充させ、あわせて中小企業に対する貸し渋り、資金返済の強要、労働条件への介入を行っている金融機関に対する指導・監査を強化すべきです。

 中小企業対策については、とりわけものづくり産業対策と商店街対策に力を入れるべきだと考えます。ものづくりの基盤技術を振興する施策を総合的に推進するため、民主党がとりまとめて、与野党でとりまとめ中の「ものづくり基盤技術振興基本法」を早期に制定するとともに、熟練労働者の養成、中小企業の経営基盤強化、工場設置に関する規制の撤廃・緩和、工場アパート・賃貸工場建設の推進等を図るべきです。

 以上の私たちの提唱する貸し渋り対策、中小企業対策を政府はどれだけ実施するのか、総理の御見解を求めます。

 次に中小企業金融安定化特別保証制度についてでありますが、先の国会で成立し、すでに累計で約二十四万件、金額で六兆円近い利用がなされております。中小企業者にとってはまさに干天に慈雨と評価されました。しかし一方で多くの問題も指摘され始めました。我が党の調査によれば、信用保証協会は全国で五十二、支所百五十二所、職員六千名、年間保証約十五兆円の規模であります。これに対し全国の金融機関の数万の店舗から二か月で約六兆円という、年間の半分の仕事が殺到したのであります。したがって、制度としての無保証・無担保に加えて、事実上の無審査状態となり、職員の士気・信条に悪影響を及ぼし、戦後五十年蓄積してきた制度を崩壊させる危険があります。このことは、我が国信用補完制度の崩壊であります。

 さらに懸念されることは、財務基盤強化策としての保険公庫八千億円、保証協会二千億円の算出根拠である代位弁済率一〇%、回収率五〇%という見込みは、現場から見れば経験則的に代位弁済率二〇%、回収率〇%に近いとの指摘があります。特に、回収率は時間差がありますので、五〇%を見込むことそれ自体がそもそも現実的ではないわけであります。これは由々しき問題であります。これのよって来る原因は、金融機関の不良債権処理を前提とした旧債の振替に利用されているということなのではないでしょうか。そうであるとすれば、明らかに旧債乗替え禁止の免責特約に抵触するものであります。しかし、今の時点でこれをチェックする能力はありません。

 中小企業育成・貸し渋り対策が銀行の不良債権回収に利用され、金融バブルを保証バブルに転化し、保証協会のモラルハザードを起こし、やがては保証協会のデフォルトに陥り、またしてもこれに税が使われるという図式であります。この問題提起に対し通産大臣の見解をお伺い致します。

 また、すべての前提であり、所信表明でもふれられている四十兆円の根拠についても明らかにしていただきたいのであります。たぶん、これは第二分類の八十兆を元にしたことだと思います。第二分類の八十兆とはそもそも不良債権であります。不良債権を救うために保証協会を利用し、保障制度を利用して、それを銀行が悪用して、そして保証協会制度、保証補完制度を崩壊させるということは、国の根幹に関わる問題であります。

 さらに、この事については過般、野中官房長官が「腹わたが煮えくり返る」と激怒されましたが、氷山の一角であり、地下にもぐってしまいました。利用者からすれば、半分でもゼロよりは助かるということでしょう。庶民の心をとらえ正義の怒りを表した野中官房長官のご見解をお伺いいたします。

 なお、議員諸兄にも申し上げますが、この問題は今後も真剣に委員会等で論議すべき問題と提案をいたす次第であります。


■地方財政危機問題について

 次に戦後最大の危機に直面している地方財政についてお伺いします。平成十一年度は収入不足が更に増大し、今後行われるであろう減税の影響を除いても八兆八千億円の不足が予想されています。さらに減税の影響が加われば、収入不足が十兆円は超えるのは明らかな状況となっています。地方財政制度の抜本的な改革がなければ、地方財政の好転はあり得ないのです。地方分権が新たな「この国のかたち」を創造するための最重要手段と考えている我々民主党は国の権限を大胆に地方に移譲すると同時に、財源も国から地方へ大幅に移譲することを訴えています。こうして地方が住民の監視と責任の下で効率的な行政を行う体制を整えなければ、現在の地方財政危機の根本的な解決策とはならないと考えているのです。

 そこで総理に伺います。今申し上げましたような構造的な地方における収入不足、公債費負担比率が一五%を超える団体が千八百以上もあるような状況に対してどのようなご認識をお持ちなのか、更にこの状況を打開するためにどのような対策を講じられるのか、ご答弁をお願いします。財政状況が困難な自治体は来年度予算が組めるかどうかという状況になっており、これは緊急の課題であります。このことを念頭に、具体的で明快な答弁をお願いいたします。

 併せて現在政府で検討中の減税案について伺います。ここでは特に地方の財源確保の観点から、今後予定される定率減税部分における住民税について総理の考えをお伺いします。

 次にこの地方財政危機の大きな原因となっている公共事業について伺います。バブル崩壊以降幾たびも行われてきた景気対策において、地方における社会資本整備事業は大きな役割を果たしてきました。しかしこの地方の協力も限度に達しており、既に景気対策への協力を拒む自治体が出てきています。この理由を自治体に聞きますと、一つには国が進める事業と自治体が進めたい事業が一致せず財政状況が苦しい中までやる気になれない、もう一つにはここ数年の地方債発行増の償還負担が重くなりこれ以上地方債残高の増大を避けたいことが大きな理由であるといいます。

 これへの回答は一つであります。景気対策として地方の社会資本整備事業を行うためには、地方が主体的に事業を選択できる財政資金を国が供給することです。我々民主党はこのような観点に立ち、自治体が即ち住民が必要と感じる社会資本整備を、地方債の発行なくして実現できるよう環境整備を図る所存であります。

 そこで総理に伺います。まず第一に今回の景気対策では、地方の協力が得られないことから地方単独事業を外していますが、これで本当に地域が必要と考える社会資本整備が可能とお考えなのか。同じ国の財政資金を活用するなら、事業選択は地方に任せた方が良いのではないか、即ち民主党案をご活用になった方が良いのではないかと考えますが、総理のご見解を伺います。


■雇用対策について

 総理は、早急な雇用の創出及びその安定をめざす観点から、中小企業における雇用創出、失業給付期間の訓練中の延長措置の拡充、職業能力開発対策の充実等からなる「雇用活性化総合プラン」を実施し、特に、雇用情勢に臨機に対応して中高年の失業者に雇用機会を提供できるよう「緊急雇用創出特別基金」を創設する、と表明されました。雇用不安の深刻化に早急に歯止めをかけ、大胆な雇用創出策を実施することは、景気対策のもっとも重要な柱の一つであります。民主党はすでに「百万人雇用創出と新規事業創造」のための提案を行っておりますが、今回の政府提案は、大筋において私どもの主張に沿うものであると受け止めております。ぜひともこの分野については与野党が一致協力して、知恵を出し合って早急に抜本的な対策を講じるべきであると考えます。

 そこで、次に総理に特に一点だけご提案申し上げます。それは、現行法にある失業給付の「全国延長給付」の要件緩和です。比率要件を四%から三・五%に緩和することで、多くの受給者が救われることでしょう。総理のご所見を賜りたいと思います。


■社会保障について

 次に、社会保障分野について伺います。
 来年の通常国会では、国民生活に直結する公的年金制度の改革が大きなテーマとなります。そこで年金問題に絞って、政府の基礎年金に対する基本的な考え方を伺います。私は、次期年金改正を真に抜本的な改革とするには、土台となる基礎年金の改革が絶対に必要であると考えます。先頃示された厚生省の考え方では、現行基礎年金の問題点をほとんど放置しており、小手先の改革案と言わざるを得ません。

 私は、基礎年金の財源は将来的に全額税で賄う方式を真剣に考えるべきだと思います。逆進性の高い定額保険料や保険料の未納・未加入など基礎年金の空洞化につながる懸案が解消でき、厚生年金の保険料も引き下げられ、誰もが基礎年金を受け取れることになるからです。現役世代の年金不信を解消するため、将来とも安定した年金制度を維持していくためには、次期改正で、基礎年金を将来的に全額税方式へ転換することを明確に示しておくべきではないかと考えますが、この点、総理のご見解を伺います。

 また、基礎年金の将来税方式を展望しつつ、来年度改正では具体的に国庫負担率を現行三分の一から二分の一へ引き上げるべきだと考えます。昨年六月三日の閣議決定では、「基礎年金の国庫負担率の引き上げについては、財政再建目標達成後、改めて検討する」とされていますが、財革法凍結となれば、閣議決定も当然凍結されるものと考えられ、九四年改正の国民年金法附則第二条に基づき、「財源を確保しつつ、基礎年金の国庫負担の割合を引き上げることについて総合的に検討を加え、政府として必要な措置を講ずる」必要があると考えますが、この点、総理の明快なご答弁を求めます。


■むすび

 自民党は、前国会終了後、派閥活動が一段と活発になり、公然化しておるようであります。報道もいつの間にか当然のことのように扱っております。やはり、人間が権力に向かって繰り広げる人間模様ほど興味深いものはないのでしょう。いわく、分裂・世代交代・禅譲等、何かと騒々しいかぎりですが、自民党の驕りであり、国民にとっては危険な兆候であります。なかんずく、派閥の会長職の去就が重要閣僚の進退と連動して悩んでいるかのような発言が公然と報じられておりますが、小渕総理、自民党の派閥は復活したのですか。お伺いします。

 終わりに、再び自自連立についてでありますが、自由党は理念と政策を大切にする政党であると思っておりますし、私自身経世会分裂以来のお仲間も何人か居りますので、無節操に党利党略の数合わせに走っているとは思いたくありません。しかし、提示された政策は大変に高いハードルとなっております。多分、連立が成立するにはハードルをかなり下げなければ無理でありましょう。そうすれば、事志と異なって、批判されておるように野党の疲れと権力への渇きに負けたことになります。そんな小沢党首でもありますまい。多分、今は、押して良し、引いても良しの小沢流でやっていることでしょう。まだ連立が成立していないので公式的な質問はできませんが、是非代表質問の際にきっちりと事の成行きを説明していただくよう、自由党に対し要望致します。

 自民党も実は大変な事に手をそめてしまったというのが実情ではないのでしょうか。つい先頃まで、「この国の将来を一緒にやって行くことはない」とか「一人になっても反対する」等という言葉が飛び交っていた小沢党首と、にわかに連立すると云われても、国民は唯耳を疑うばかりでしょう。その理由として、この国の窮状にかんがみなぞと云っても、それは所詮自民党の窮状であり、更には小渕内閣の窮状であり、結局のところは政治家の保身以外の何ものでもないのであります。その結果国民の政治不信だけが増幅されることになるのであります。

 このような政治状況に対し過去いくつかの言葉がありますが、一つは吉田茂先生の回想十年の中に「政権維持のための政党の合同は邪道である」と云っておりますし、また今日の一方の当事者である小沢さんは平野さんの著書「小沢一郎との二十年」の中で「現在の連立政権は、政権維持だけを目的に一緒になっている。三党の枠組みでやりたいのなら早く解散して国民に信を問うべきだ」と厳しく批判したと書かれております。自らの言葉に忠実であるべきは、政治家の務めであります。

 さて、小渕総理、景気対策で行き詰まり、その打開のために連立を組もうとすれば、解散が憲政の常道であります。どうやら小渕内閣も袋小路に入ったようであります。早期に衆議院を解散し、国民に信を問うべきだと考えます。小渕総理のご所見を求めて、私の質問を終わります。
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