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1998/08/10
第百四十三国会における小渕内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問
民主党 中野 寛成

 私は、民主党を代表して、小渕総理の所信表明演説に関連し、政治姿勢を中心に基本的問題にしぼって総理に質問いたします。
 質問に先立ち、甚大な被害をもたらした新潟県をはじめ集中豪雨の被災地の皆様に対し心からお見舞い申し上げます。わが党としても最善の努力を尽くしておりますが、政府においても万全の措置を講じられるよう求めます。
 世界に目を転じますと、中国揚子江流域の水害、韓国の豪雨も被害が広がっています。先日のパプアニューギニア北西部で生じた津波も大きな被害をもたらしました。自然災害への対処はもとより、地球環境保全に今ほど国際的な協力が求められている時はありません。また、核実験禁止、核兵器廃絶のためにもわが国は率先して主導的役割を果たさなければなりません。
総理の決意を求めます。

[政治問題]

◆民意に支えられていない内閣との自覚はあるか

 さて、さる7月30日、小渕総理を首班とする内閣が発足いたしました。
 「はからずも」という言葉がありますが、わが国が存亡の危機に直面している今日、民意の支えもなく、市場からも、世界からも歓迎されないまま、「はかりにはかって」就任された総理に、「先ずはご苦労様」と申し上げます。
 参議院では、私どもの菅直人代表が総理大臣の指名を受けました。直近の民意が示された参議院選挙の結果に従えば、それこそ現在の国民の意思と考えるべきであります。しかるに、総理大臣指名については衆議院の議決が優越するがために、小渕総理が誕生しましたが、一院のみでしか信任を得ていない事実を総理は厳粛に受けとめるべきであります。その衆議院においても、自民党は一昨年の総選挙で過半数を割りながら、その後野党の議員を取り込み強引に過半数を達成したに過ぎません。この国難を克服するには、国民に信頼された政府が必要です。
 しかるに、主要マスコミの世論調査によれば、小渕内閣の支持率は25%から30%台前半に低迷し、不支持率は支持率を大きく上回り、40%台後半から 60%近くにのぼっています。世界のマスコミも小渕総理を酷評しています。7月25日付のニューヨーク・タイムズ紙は、「日本の有権者と世界の市場が不況回復に大胆な行動を求めている時に、日本の与党は、大衆が最も希望しない内気な人物を次期首相に選んだ」として、小渕氏を「国民の選択ではない」と論評する社説を掲載しています。
 小渕内閣は、国民の審判を受けた内閣でも、民意を反映した内閣でもありません。この事実をどう受けとめているのか、まず小渕総理の認識をお伺いします。

◆世界における日本の地位回復への決意を問う

 今、わが国は、政治、経済、社会、あらゆる面にわたり混迷や不安が続き、世紀末と言われる状況に陥っています。政治は国民の信頼を完全に失い、一連の官僚不祥事で行政は行き詰まり、金融機関の相次ぐ破綻や不良債権処理が棚上げされ金融不安が加速しています。
 世界はいわゆる「日本売り」、「橋本売り」によって、日本政府に不信任を突きつけて来ました。今回の小渕政権の誕生についても、それこそ恐慌を世界に輸出しかねないとして日本政府におそれを抱いております。
 現に、スイスの民間研究所がまとめた世界競争力白書によれば、日本の国際競争力は総合評価で93年に米国に1位の座を明け渡した後、毎年のように順位を下げ、97年には調査対象46か国中、9位に落ちています。分野別でみても、首位を保っていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差を広げられています。
 7月23日、米大手格付け会社のムーディーズが日本の国債や政府保証債の格付けを、最高位の「トリプルエー」 から格下げ方向で見直すと発表したことも、日本への市場の信頼が急速に落ちていることの一例です。
 小渕内閣は、世界において現在日本が置かれた状況をきちんと認識されているのでしょうか。橋本内閣と同様、改革を骨抜きにし、ずるずると日本の空洞化、衰退を傍観するだけで、わが国を「つかの間の繁栄を享受した国」として世界史に登場させる役割を演じるのではないかと国内外の多くの人々が危惧しております。
 「何が何でもわが国の国際的競争力及び地位を回復させる」との決意をお持ちなのか、総理にこの場で明らかにしていただきたい。

◆橋本内閣の六大改革への取り組みについて

 小渕総理は、自民党総裁選立候補にあたって、橋本政権の六大改革路線を基本的に継承すると表明されました。しかし、この六大改革はすべてが失敗し、破綻したと言っても過言ではありません。
 財政と金融の完全分離もなく、大蔵省は「財務省」と名を変えてちゃっかり生き残り、「総務省」というお化け官庁も誕生する道が開かれ、行政改革は挫折しました。財政構造改革法は真の財政改革を進めることなく、景気の足を引っ張るだけに終わりました。社会保障構造改革では医療負担がプラスになり、年金制度に対する信頼も揺らいでいます。経済構造改革は中途に終わり、充分な新産業創造・雇用創出に結びつかず失業・倒産が増えるばかりです。金融システム改革では、金融機関救済ばかりにのみ税金が遣われる仕組がつくられ、「担保があれば何でも貸した銀行」が「担保があってもなくても何にも貸さない銀行」に変わっただけであります。教育改革も功を奏さず、逆に社会的モラルを低下させ、青少年犯罪は増加しています。
 橋本内閣の六大改革は、日本経済をどん底に陥れ、国民生活を破壊し、モラルの退廃を招きました。参議院選挙で国民はこの六大改革に「ノー」の審判を下したのであります。
 小渕総理、自分だけは総理に昇格し、橋本前総理をスケープゴートにして、責任逃れをされるおつもりか。橋本内閣の外務大臣であり事実上の副総理格であった小渕総理は、橋本内閣の経済失政について、共同して責任を負わなければなりません。いかなるけじめ、責任をとるのか国民に明らかにすべきです。
 あわせて、小渕総理は、この際、橋本内閣の六大改革がまやかしの改革であったことを認め、これを徹回し、真に改革に値するプログラムをつくり直す決意がおありか。それとも、「ツギハギの弥縫策」を盛り込んだ六大改革を継承し、それさえも後退させ日本を破滅へと追い込み、「橋本内閣の亜流」たることを自ら証明するおつもりか。総理の明快なる御所見を求めます。


[経済・金融・税制問題]

◆金融不良債権問題について

 金融不良債権問題についてお尋ねします。
 多額の不良債権の発生、貸し渋りに見られる今日の金融危機は、これまでの大蔵省を頂点とした護送船団行政が構造的に行き詰まったことが主要な原因であります。
 振り返ってみれば、製造業は保護や規制も少なく、厳しい競争に晒され、日本経済を必死で支えてきました。まじめに社会の発展に寄与してきたにもかかわらず、金融業界に比較すれば製造業は待遇も低く抑えられてきました。他方、多くの金融機関は大蔵省と癒着し、強い規制によって庇護され、投機に狂奔し、法外な利益をあげてきました。
 民主党は、自民党政府によって温存されてきた閉鎖的で不透明な金融行政を根本的に転換する立場に立って、金融機関の経営情報を徹底的に開示し、不健全な経営を続けてきた金融機関は破綻処理させて、関係者の責任を徹底的に追及することが金融安定化のために不可欠だと主張してまいりました。
 にもかかわらず、政府は不健全な経営をしている金融機関も含めて一斉に優先株や劣後債を発行させて公的資金で買い取るという一時しのぎの弥縫策しかとれず、モラルハザードを加速させ、不良債権の抜本的な処理を放置してきたのであります。
 この場ではっきりと確認させていただきますが、経営危機が噂されている長期信用銀行も含めて、大手銀行で債務超過の銀行は本当にないのですか。優先株等の引受けに際しては債務超過の金融機関は除外したはずですから、絶対にその原則は破りませんか。総理の明確な答弁をいただきたい。
 この期に及んで、ようやく政府・自民党は「金融再生トータルプラン」をまとめましたが、「子どもだまし」としかいいようがありません。宮沢大蔵大臣が表明したように、大手銀行は破綻させないという市場原理に反する原則を打ち出しております。
 不良債権の実態を隠蔽し続け、国民の血税を資本注入という形で投入することにより、厳しい責任追及もなく、銀行やその経営者である大蔵省OB等を守ろうとするものです。そこには、銀行業界が自民党に対して長年にわたり巨額の政治献金を行っていたという事情があります。本気で金融改革を進めるのなら、先ず自民党は金融業界からの献金を辞退すべきです。
 民主党は、中立厳正な金融再生委員会を国会監視の下に、いわゆる三条委員会として設置し、大蔵省による裁量の余地を無くし、徹底した情報開示と預金者保護を前提に不良金融機関を消滅・退場させ、その不良債権は、強力な権限を持った公的債権回収機関を設立して回収に当たることを原則とし、もし破綻させることが内外の経済に与える悪影響が甚大である場合に限り、破綻銀行の「国有・民営」の公的管理銀行の設置を時限措置として導入することを提言しました。他の野党の皆様方とも相談して、対案をまとめ国会に提出する準備を進めています。
 自民党が参議院で過半数割れしている現状では、政府案を強行しようとしても廃案になることは必至であります。これまでの金融政策、不良債権処理の誤りを率直に認めて、野党の提案に耳を傾けるべきと考えますが、小渕総理の見解をお伺いしたい。

◆宮沢蔵相の起用について
 また、80年代後半のマクロ経済政策の失敗も今日の金融不安の一因と言わざるを得ません。
 プラザ合意後の長期にわたる金融緩和政策により、株式や土地の価格が急騰し、いわゆるバブル経済が発生しました。不良債権問題はこれで峠を越したわけではまったくなかったにもかかわらず、この春に至るまで政府は不良債権の処理は順調に進んでいるとの発言を繰り返し、不良債権の実態を隠蔽し続けてきました。大蔵省や金融機関による情報の隠蔽と問題先送り、そして歴代内閣が大蔵省の報告を鵜呑みにしてきたことが、不良債権問題を深刻にしてきたのです。
 さて、今回大蔵大臣に就任した宮沢喜一議員は、86年7月から88年12月まで、大蔵大臣を務めましたが、この時期はまさにバブル経済が発生した時期ではありませんか。さらに、宮沢議員は91年11月から93年8月まで総理大臣を務めましたが、これはまさにバブル経済が崩壊し不良債権問題が発生した時期ではありませんか。してみると、宮沢議員とはまさに不良債権問題の罪深きA級戦犯というほかありません。
 ドイツの社会学者マックスウェーバーは「最良の官僚は最悪の政治家である」と述べていますが、宮沢蔵相ほどこの言葉があてはまる人物は他にいないと考えます。宮沢総理、三重野日銀総裁が引き起こしたMM(エムエム)不況は、今日の経済危機、社会的衰退のさきがけともなりました。
なぜ宮沢蔵相を任命したのか。小渕総理の政治センスを疑いますが、明快なる答弁をいただきたい。

(税制改革)
 次に、税制改革についてお尋ねします。
総理は、所得税の恒久減税など6兆円超の減税を約束されました。これは、一見いたしますと、私ども民主党が、先の参議院選挙でも公約として掲げた「6兆円減税」に総理ご自身が賛同されたものとも受け取れるのであります。しかし、総理の6兆円減税の内容につきましては、所得税減税分が3兆、いや4兆だ、という具合に説明が変遷し、また、その後の宮沢大蔵大臣の発言とも整合性において疑問が生じております。最終的には所得、法人あわせて7兆円規模になると聞いていますが、理念、哲学もなく受けだけをねらって、減税方式を猫の目のように変える手法は政府・自民党に対する不信をますます増大させました。
 われわれが強く主張してきた法人諸税の実効税率を来年度から40%程度に下げるとの改革は当然でありますが、遅きに失したと言わざるを得ません。今まで産業の空洞化、企業の競争力低下を放置してきた責任は極めて重大です。
 また、政府が取り組もうとしている所得減税についても、大きな疑念があります。99年の所得減税の規模は4兆円として、累進税率の引き下げは最高税率分のみに限定し、その他については“手品”のような所得階層別の定率減税で対応するとしています。しかし、この方式は本格的な恒久減税とはほど遠く、まやかし以外の何物でもありません。二段階方式という手法を使って、本格的な累進構造の緩和等の抜本的な制度改正を先送りしたことも不満であります。
 今年は4兆円規模の特別減税を定額方式で行っていますが、これを定率減税にすると低所得者に増税との指摘もあります。景気が厳しい今、生活苦に喘いでいる勤労者の生活をさらに圧迫することはないのか。答弁をいただきたい。
 当然、恒久減税とは、単なる景気対策だけでなく、経済の国際化・ソフト化、社会の高齢化・少子化の進展、国民のライフサイクルの変化等に対応できるものでなくてはなりません。また、抜本税制改革を進めるのなら、資産課税の適正化、消費税の欠陥是正や使途の明確化等にも踏み込まなければ、意味がありません。民主党は、今回の参議院選挙で「消費税を3%に下げる」とは、あえて言いませんでした。高齢社会の社会保障を支える上でも、消費税は重要な税制であると考えます。
 この際、将来を見据えた抜本税制改革の一環として減税政策も考えるべきでありますが、総理の見解を伺いたい。

◆国家への不信、社会不安への対応

 今、国民は不安な気持ちで毎日を送っております。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列・終身雇用制度が揺らぎ、未曾有の経済・金融危機が起こっております。地域のきずな、家族のきずなも綻び、日本は心の貧しい国に成り下っています。
 とりわけ雇用不安は深刻です。6月の完全失業率は史上最悪の4.3%となり、この春四年生大学を卒業した学生の就職率も最低の65%となりました。政府・自民党においては、「経済政策」「社会政策」がばらばらで、目先の景気浮揚策だけを推し進め、新産業創造・新雇用創出に結びつきません。教育の荒廃や年金、医療制度に対する信頼が揺らいでいることも社会不安を増長させています。ダイオキシン、環境ホルモン等への政府の対策が後手後手に回っていることも問題です。
 減税や金融対策だけでは、リストラの不安におののいている勤労者、年金生活者が消費をふやすことはあり得ません。
同様に、組織的犯罪や悪質な無差別殺人、自然災害等に対する政府の危機管理体制が杜撰なことも国民の不安を倍加させています。和歌山市で発生した毒物混入事件に対する当局の初動体制がお粗末だったことを、政府は猛省すべきであります。今後の対応を明らかにされたい。
 いわゆる保守政党とは異なり、私たちは「経済政策」と「社会政策」を有機的に結び付て、安心・安全の社会をつくり、もって景気回復・金融安定化を図っていくべきだと考えます。社会保障、教育、雇用を確保する制度がしっかりしていなければ、どんな景気対策を講じたところで、大きな効果は期待できません。特に、「十分な年金が受給できるのか」「老後の医療は確保されるのか」という社会保障に対する国民の不安を払拭すべきです。年金、医療の負担増と給付抑制論だけに終始しいたずらに暗い未来を語るのではなく、しっかりした財源論を示しつつ「安心・安全の未来」への設計図を政府は示すべきではないでしょうか。
 以上の諸点についてどうお考えか、小渕総理のご見解をうけたまわりたい。

[民主党の政策理念、小渕総理の政策理念について]
 新しい民主党が生まれて、まだ100日あまりであります。私たちは、これまで既得権益の構造から排除されてきた人々、まじめに働き税金を納めている人々、困難な状況にありながら自立をめざす人々の立場に立ち、すなわち、「生活者」「納税者」「消費者」の立場を代表することを党是にいたしました。
 世の中が複雑になったせいか、政治の世界でも個別政策の議論は盛んになっています。しかし、最近は政治や政党の理念、政策の総論の議論が少なくなりました。冷戦時代に見られた不毛なイデオロギー論争は避けるべきですが、優先順位なき相対主義の政治、各論・技術論だけの政策論議から脱して、おおいに政治理念の議論をたたかわせる時だと確信いたします。マハトマ・ガンジーは「資本主義の七つの大罪」として、「一、哲学なき政治、二、道徳なきビジネス、三、労働なき富、四、人格なき教育、五、倫理なき快楽、六、人間性なき科学、七、犠牲なき宗教、」と言っております。まさに日本の現状そのものではありませんか。
 私たちは、アダム・スミスに回帰しようとする新古典派の経済理論には与しません。英国、米国、ニュージーランドなどで行われたレーガン、サッチャー流の改革はマクロで見ると景気回復、新産業創造などの成果をもたらしましたが、国民生活というミクロで見ると貧富の格差拡大、企業内のリストラ、福祉の切り捨てによる生活圧迫などの現象をもたらしました。
 本年2月19日の本会議質問において、私は外科医の座右の銘「鬼手仏心」という言葉を用いて、外科医が鋭いメスと技術だけでなく、患者を生かす仏心で手術を行うように、大胆な改革を進めつつも、中小企業、子ども、女性、高齢者等に充分な配慮をすることが不可欠であり、「弱肉強食」の社会ではなく、自立した個人を尊重しつつも国民相互の「友愛」の心に支えらる社会を目指すべきとの理念を披歴いたしました。
 一例になりますが、未だに部落差別があること自体、わが国に「友愛」の精神が根づいていないことの証明であります。この際、「部落解放基本法」制定実現に政府が積極的に取り組むよう求めます。
 大変光栄ながら、小渕総理も「鬼手仏心」という言葉で所信表明演説を締めくくりました。しかし、具体的説明はありませんし、どのような意味合いでお使いになっているのか不明確であります。小渕内閣が目指す国家、社会像を明らかにしつつ、あなたのいう「鬼手仏心」について敷衍していただきたい。

[外交・防衛問題]

◆日米関係をはじめとする外交姿勢について

 わが国が未曽有の経済・金融危機に直面していることと関連して、ここ数年政治の重要課題は内政に集中しています。しかし、外交や防衛問題においても、重要な問題は山ほどあります。先日まで小渕総理が外務大臣を務めていたにもかかわらず、最近、日本全体がうち向きになり、政治が外交問題に不熱心になっていることは極めて遺憾であります。
 経済危機に陥った日本に対する国際的信頼を取り戻すことがまず急務であります。とりわけ、わが国の重要な同盟国である米国との関係を深めることが不可欠です。景気、金融だけでなく、日本の市場開放、規制緩和の継続、新たな日米防衛協力の「ガイドライン」の早期法整備などについても米国は厳しく日本政府の対応を見ています。
 9月には日米首脳会談も行われる予定と聞いていますが、まず日米間の信頼関係をいかに回復させていくのか、総理に見解を求めます。
 アジア諸国もわが国の政治、経済の行方に一喜一憂しています。日本以上の厳しい経済危機に直面している韓国は、日本からの特別な経済協力を望んでいるとも伝えられています。ASEAN諸国は、自律的かつ内需主導型の成長路線への復帰を目指す日本の決意が、アジアの経済回復に重要だと注文をつけています。ロシア、中国との関係をどうかじ取りするかも小渕内閣に課された課題と言えます。
 アジア諸国、ロシア、中国等との外交についての基本姿勢について総理の見解を求めます。

◆日米ガイドライン関連の法整備について

 わが国の平和と安全に重大な影響を与える事態においては、日米が適切な防衛協力を実行することが重要であり、そのために「日米防衛協力のための指針」を実効あるものにするための法整備が必要だと考えます。周辺事態の範囲については、担当大臣が曖昧な言い方を繰り返す一方で、少し踏み込んだ発言をした官僚が更迭されるという無責任と混乱の状態が見られることを深く憂慮しています。また、政府案は周辺事態に必要となる措置の基本計画を国会に報告するにとどめ、日本の対応を閣議のみで決定することにしています。シビリアン・コントロールの観点や対米防衛協力が国民生活に与える影響の大きさに鑑み、基本計画を国会承認事項とし、不都合があれば国会が修正できる仕組みにすべきだと考えます。事後承認を認めれば、緊急の場合にも対応できると思いますが総理の意見はいかがでしょうか。


◆沖縄問題

 次に沖縄問題についてお尋ねいたします。野中官房長官は、大田知事ら県幹部が橋本前総理の退陣に際して挨拶がなかったとして、上京していた沖縄県副知事の面会を拒否したと会見しましたが、あまりにも了見の狭い政府の姿勢は極めて遺憾であります。
 誠意をもって沖縄の人々の声に耳を傾け、沖縄が置かれた実情を知ることが不可欠だと考えます。那覇地裁への自己破産申立件数は昨年、ついに1000件を超えました。失業率は全国平均の2倍のおよそ8%に達し、復帰27年目の今も、基地、公共工事、観光の「3K経済」に依存する現状が続いています。政府は、まず沖縄経済の振興、人々の雇用確保に全力を尽くすべきであります。そのことがひいては、県民の信頼をかちとり基地問題も含めた沖縄の抱える課題の解決を進めることにもなると考えます。
 小渕政権の沖縄問題に対する基本姿勢、具体的取り組みを総理に明らかにしていただきたい。

◆秋野政務官殺害に関連したPKOのあり方について

 先日、タジキスタンの首都ドゥシャンベの東方の山岳地帯で、国連タジキスタン監視団に政務官として派遣された秋野豊さんが射殺されたことに対し、哀悼の意を表します。秋野さんたちの情熱と犠牲、残された遺族の皆様の悲しみを考えると、誠に無念です。
この事件は、国連平和維持活動に参加する文民の安全確保という面で大きな課題を残しました。政府は秋野氏の功績をたたえるための基金を国連に創設すると聞いております。この点には賛成ですが、まずPKOに関わる地域の治安情勢の把握については国連任せと言われている現状を正すことが急務だと考えます。
 これまでのPKO活動で任務遂行中に生命を失った要員は1500人を超すと聞いています。とりわけ、国際援助機関のスタッフが現場での活動中に犠牲になるケースが最近増えています。わが国がPKOを含めて人的貢献をさらに進めていくことは当然と考えます。しかし、PKO要員やボランティア精神で国際的人道支援に当たる人々の安全を真剣に考え、必要な対策を講じるのは政府の義務であると考えます。
 以上の点について、総理の見解をお伺いしたい。

[結び]

 先の参議院選挙において、有権者の皆様のおかげで私たち民主党は躍進をとげることができました。この結果に奢ることなく、今後とも日々の努力を続けていく決意であります。
 65年前、米国が大恐慌の克服に取り組んだ際、共和党フーバー大統領から民主党ルーズベルト大統領へと政権が代わり、消極財政から積極財政へと大がかりな転換が見られました。わが国でも、この際、政権交代、高級官僚の入れ替え、金融経営者の責任追及と交代、具体的政策の4点セットをすべて変えなければ、完全な再生はありません。
小渕総理が、先の総裁選挙で衆議院を解散しないことを明言したことは、まさに「国民の声を聞かない」「民意を問わない」「自民党のためにひたすら時間稼ぎをする」という宣言をしたものと言わざるを得ません。
今、国民の理解と協力をこそもっとも必要とする激動と大改革の時代に直面している時、国民の審判を受けない内閣に何の資格と力があるでしょうか。わが民主党は、「私は変えたい」という国民の皆様の声とともに、正々堂々と全力を尽くして正義の戦いを進める決意を申し述べ、質問を終わります。
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