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1998/03/12
政権奪還に向けて
民友連政権戦略会議

 政権戦略会議は、現在の自民党を中核とする政権から、民友連を中心とする政権への政権交代を実現するための基本戦略を策定することを任務として、さる2月6日に準備会を開いたのを皮切りに、今日まで18回にわたり、党内外の意見を聴取し、ここに以下の通り政権交代実現に向けての報告をとりまとめた。

1. 政権戦略の基本的な考え方

現在の自民党を中核とする政権は、政官業の癒着と中央集権による利権の配分や構造的腐敗という高度成長期の負の政治体質を引きずる政権であり、社会の成熟化と国際化という今日の日本の政治の担い手として、根本的な限界を有している。いま暴かれつつある底知れぬ官僚腐敗の頂点に君臨するものこそ、自民党政権なのである。橋本内閣の経済運営やいわゆる六大改革の失敗は、この政権の構造的な制約によるものであり、この政権が続くことは、国民にとって大きな不幸である。一方で自民党支配を打破するために結成された新進党は、政権交代の受け皿となり得なかった。自民党支配に満足しない国民は、代わりに政権を担いうる政治勢力を未だ持たないという、極めて憂慮すべき事態に置かれている。
 政権交代を担う政治勢力の存在は、言うまでもなく民主主義の基本である。われわれは政権交代によって日本の民主主義のレベルアップを図らなければならない。この役割を担い得るものは、われわれ民友連を中核とする政治勢力以外にはない。われわれは、自民党のような負の政治体質から自由な、経済と社会の国内的・国際的な構造変化が求める国民本位の政策を真に担い得る政治勢力として、政権交代の選択肢を国民に提示する。

2. われわれは自民党に代わる政権選択肢である

 われわれは、以下の意味において自民党を中核とする現政権に代わる政権選択肢であることを国民に提示する。

1. 自民党政権が続くことは国民の不幸である

 橋本内閣は、野党の反対にもかかわらず、9兆円の増税や国民負担増によるデフレ政策、財政構造改革法の強行などによって、昭和恐慌以来といわれるまでに、日本経済を最悪の状態に追いやり、なおかつ小出しの経済政策により、事態をますます悪化させている。その政策責任は免れない。
 また、国民の税金を投入した住専対策では、今後かかる事態は繰り返さないと明言したにもかかわらず、都市銀行や大手証券会社の破綻をもたらし、そのツケを国民に押し付け、なりふり構わぬ金融安定化策に狂奔している。高らかに成果を謳った沖縄の普天間基地の返還はその後滞り、これを実現しなければ「日本がダメになる」と言い切った行政改革も、何ら成果が見られない。
 国民受けだけを狙った政策は看板倒れで既に破綻している。これらは単に橋本首相のリーダーシップの欠如によるものではなく、自民党政権の構造と体質によるものであり、国民の不幸は政権交代によってしか解決できない。

2. 新進党の経験に学ぶ

 新進党はわが国における二大政党制の一翼を担う政党として期待されながら、結党3年で解体した。新進党の失敗は当事者であった者には謙虚な反省が必要だが、問題は何よりも同党が結束よりも分裂の政治力学を抱え続けたことにある。それは、内部に基本的な路線の対立を抱え続けていたこと、自民党政権との距離感及び野党の役割についての認識に食い違いが存在したこと、さらに、しばしば党内民主主義を無視する運営がなされたことなどであった。
 われわれは、今後政権を担いうる政治勢力として自らの体制を整備していく過程で、こうした新進党の経験に学ばなければならない。

3. 政権交代に向けてのわれわれの体制

 われわれの政権戦略が国民に現実感と期待感をもって受け止められるためには、それにふさわしい具体的な政権の姿と、それを実現し支える政治体制のあり方を明らかにする必要がある。特に小選挙区制を基本とする新選挙制度は、政権の選択を問うという意味で、実体的に「首相公選」に代わり得る制度であることをよく踏まえた上で、政権を担う政治集団の形を示さなければならない。
 われわれが理念、価値観、政策において共有するものは大きい。われわれは、われわれが既に共有しているものがそのまま、自民党中心の政権に代わりうる政権の政策の基礎となり得ることを確信する。われわれは、対等の立場で統一した政党となることによって、自民党に代わる政権の担い手としてのイメージを具体的に国民に示していきたい。

3. 統一のための基本事項

 われわれ民友連各党は、次の基本事項に基づいて統一する。

1. 4党は、基本的理念・政策をとりまとめた上、参院選までに対等合併して統一する。

2. 統一した政党の名称は「民主党」とする。

3. このため、直ちに統一のための準備会を設置する。

 上記の諸点についての合意の下に発足する統一準備会は、以下の任務を負う。

1. 統一準備会は、民友連代表者会議の下に設置し、政権戦略会議の報告を踏まえて、理念・政策、組織・規約・財政、選挙対策の3つの検討課題について協議する。

2. 統一した新たな党が政権選択肢となりうるため、速やかに首相候補を擁立するよう、その手順をとりまとめる。尚、首相候補は、政権獲得後(例えば、4年間)に実現を目指す優先的政策テーマを明らかにする。

4. われわれの基本的な理念と政策

 われわれは、民主主義的な諸価値を尊重する。われわれはまた、市場万能主義とも福祉国家至上主義とも異なる立場に立つ。このような立場は、今や世界の潮流となりつつある。こうした「民主中道」の立場に立って、われわれは自由と効率が発揮される市場の機能を活用しつつ、共生の精神や公正さ、機会の平等などを確保する政府の役割を重視する。われわれは、このような観点から、以下の基本政策を遂行する。

1. 新しい時代にふさわしい政治、経済、社会の構造改革

 戦後のわが国の政治、経済、社会は、敗戦からの復興とその後の経済成長を遂行するのにふさわしいものとして整備された。官僚主導、規制、企業社会、金融支配、終身雇用制や年功序列などはその例である。また、国際化は未進展で、談合など仲間内だけで果実を分け合う仕組みも存在した。
 しかし今や右肩上がりの経済は終焉し、少子化、高齢層の増大など、わが国は成熟社会の段階に突入している。一方で国際化の進展により、経済は既に大競争の時代に突入している。現在の不況は、戦後のわが国のさまざまな仕組みが、わが国をとりまく現在の諸条件に適応できずにいることによって生じ、あるいは加速されている。
 よく問われる「大きな政府」か「小さな政府」かという問題は、選択としては既に後者の方向が基本的流れとなっている。政府の役割は、国民が自らよりよい生活を築く機会を提供することであり、国民が手にすべきあらゆるものを直接与えることではない。われわれは、戦後の集権構造を抜本的に変えていくために、官僚主導型政治を打破して、国の役割を限定列記し、その他のものは地方と民間に大胆に委ねていくべきと考える。さらに裁量行政からルールに基づく行政に転換するための規制緩和、国の活動の透明性を高めるための情報公開制度の確立、司法改革、男女共同参画社会の実現、NPOとNGOの役割の拡大などを積極的に推進する。
 また、資源消費型の経済構造とライフスタイルを改め、環境重視とリサイクル型社会の構築に努め、地球と子孫に対する責務を果たす。これらは、既得権益による利権の分配の上に立つ政治勢力にはなしえないものであり、われわれは消費者や市民セクターなど既得権益から自由な幅広い各層との対話を通じて、これらの政策の実施に邁進する。

2. 公正で自由な選択がなされる社会の実現 

 成熟と国際化の時代には、いかに個人の自由な活力を引き出すかが鍵である。戦後のわが国は、個人の自由な選択よりも、集団としての生産活動と集団間の配分の均等化を重視し、個人の活力を引き出す自由で公正な機会に乏しい社会であった。集団としての目標を優先させることにより、集団を構成する個人の負担と受益には不均衡が存在してきた。
 税負担とそれによる受益の不均衡、九六四などの負担の不公平はその典型である。受益の不均衡は特に顕著で、職業間、性差間、年齢層間、地域間にも不均衡が生じている。
 21世紀に向けてわが国が活力を取り戻すためには、一人一人の国民の将来や職業、日常の活動の選択において、公正な機会が提供され、また負担と受益の公正さが維持されていることが重要である。男女を問わず自由な選択ができ、お互いを尊重しつつ共生できる自発的社会であることと、政府はそれをセ−フティネットなどにより支援するということが、新しい社会の理念でなければならない。
 このような社会の実現は、既得権益の網の目の中に組み込まれた自民党にはなし得ない。われわれは従来の雇用、社会保障などの見直し、また、危機に直面しているこの国の重大な問題である教育を改革することなどにより、このような社会の実現を目指す。

 
3. 国民生活の防衛と老後不安から自由な社会の実現

 われわれの政権は、当面の最優先の政策課題として、日本経済の再建を位置づける。健全な日本経済の安定成長軌道確保の重要性を無視した近視眼的政策手法を排し、日本経済が本来備えている成長の力に見合う軌道に誘導することを、経済政策の目標として明確に位置づける。そのためサプライサイドに光をあてた政策をすすめる。
 具体的には、日本経済がその力を発揮できるための、簡素で公正、公平な税制の姿を明確に示し、まずは経済の再建のために減税を先行的に実施する。財政状況の改善は増収策の検討よりも、無駄な歳出削減を優先する。つまり真の行革による「行革減税」をめざす。
 社会資本の整備は、国民経済が貯蓄超過で低金利である現在のような局面で積極化することが望ましい。これまでのバラマキ型の無駄な公共投資をやめ、国民に真に便益を提供する、情報通信、社会福祉、交通、生活環境、文化・スポーツなどのインフラ整備に重点をおく。
 経済活動全体を貫く基本制度として、公正なルールに基づいて市場メカニズムがその機能を最大限発揮できるよう、経済的規制の撤廃、市場ルールと監視機能の整備、グローバルスタンダードに対応する国際競争力の確保を目指す。経済構造の転換に伴う摩擦的痛みを緩和するために、新規企業、新規産業の誕生を支援する抜本的な施策を実施するなど、雇用の機会の増大につとめる。金融産業についても、金融システムの安定確保には万全の対応をとるが、現在の護送船団方式を排し、自己責任原則を基本にすえた政策に転換する。
 経済運営の基本に市場メカニズムの活用を置くが、一方で社会的弱者に対しては、政府が全面的に支援の手を差し伸べることを重視する。社会の強さは社会を構成する鎖の輪の中で、最も弱い鎖の強さで測られる。真の弱者を大切にする立場は、われわれの政権の重要なスタンスである。
 そのような観点に立って、老後不安の解消のためには、将来にわたり安定した年金制度の確立、老人世帯の保有資産の活用による生活安定システムの整備とともに、介護保険制度の不断の見直しと効果的な運用が必要である。その際重要なことは、国の企画した仕組みを一律地方に押し付けることではなく、パイロット的な地方の創意工夫による政策実験を行い、成功例により制度の逐次的手直しを行うことである。高齢者どうし介護しあうなど、国民の間では自発的なボランティア意識の高まりが見られる。官僚主導の政策ではなく、地方や国民の自発性を奨励して政策実験を行い、それを国の政策に取り入れていく手法は、欧米では一般的になりつつある。われわれはこのような政策手法の変更により、国民の将来に明るい希望を与えることを目指す。

 
4. ポスト冷戦の安全保障政策と主体的な外交政策の確立

 冷戦の終結によっても、アジアを含む世界には、なお多くの不安定要因が存在している。特に今日のアジア経済危機について、わが国の果たすべき役割は極めて大きい。われわれは、国連を中心とする世界平和の構築を目指して、国連平和維持活動には憲法の枠内で積極的に参加すると同時に、国連改革の実現につとめ、国連においてそれにふさわしい責任を果たしていく。特に、わが国としては、核の廃絶、軍縮、地球環境、人口・エネルギー問題、貧困の撲滅などの先頭に立って行動する。
 またわれわれは、国の安全を守るためのリアルな認識と戦略を持たなければならない。「日米同盟」の政治的重要性、両国が共有する利益と価値の故に、今後とも「同盟」はわが国の安全保障と外交政策の基軸であるべきだが、同盟を持続可能なものとするためにも、われわれは引き続き国際情勢の変化に対応して、沖縄などをはじめとする米軍基地の整理・縮小・移転実現のための外交的努力を行う。
 また、先の戦争の反省を踏まえ、わが国としてなし得る限りアジアの安定化のための貢献を行う。

5. 民主主義の質を高めるための政治改革

 政治改革はいまなお、われわれの大きな課題である。非自民連立政権によって衆議院の選挙制度と政治資金制度を中心とする政治改革が実現したものの、自社さ政権によりその後の政治改革の熱意は急速に失せてしまった。
 しかし例えば、小選挙区制を中心とする選挙制度は、官に対する政治の指導性の強化や政党間の論戦主体の国会の実現と組み合わせることによって、初めてその効果が十分に発揮される。政治改革はなお未完成であると言わざるを得ない。
 そして、問われていることは、何よりもわが国の民主主義の質である。われわれは、国民に開かれた論戦主体の審議方式や行政に対する監視能力の強化などの国会改革、内閣における首相のリーダーシップの一層の強化、副大臣制の導入などの更なる政治改革を推進する。
 また政治に対する国民の信頼性の確保も、政治改革の重要な要素である。さきの政治資金規正法の改正により、平成12年からは個々の議員の政治団体に対する企業献金等の団体献金は禁止されることになっているが、自民党では禁止の先送りの動きが見られる。政治に対する国民の信頼の確保のために、政治資金規正法の趣旨に従い、所属議員の政治団体に対する団体献金は受け取らないものとする。

  
5. 政権交代実現の手順

1. 基本方針 

 政権交代を最終的に実現する場は、次回の総選挙である。しかしわれわれは、その前に最初の国政選挙として、参院選挙に直面する。参院選挙もまた、政権交代実現のためのステップそのものであり、自民党の過半数獲得を阻止し、われわれの政権戦略に対する国民の支持をかち得るために、全力を挙げて闘わねばならない。
 これらの選挙対策の一方で、われわれはまた、国会活動と日常活動を重視し、争点の形成と、政権選択肢としてのわれわれの存在感のアピールに全力を尽くす。

2. 総選挙、参院選挙対策

 総選挙と参院選挙の対策を併行して進める。特に政治的関心の高い積極的無党派層を引き付けるための政策の整備、候補者の発掘・調整に努めるとともに、われわれと基本的立場を共にする各党との選挙協力を積極的に推進する。候補者の調整に当たっては、各種の調査なども含め合理的基準に従って決定する。
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