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2006/05/22
国の基本的制度を変えない限り本当の改革はできない 小沢代表


民主党と日本経済団体連合会(経団連)との政策対話、「民主党と政策を語る会」が22日午後、経団連会館で開催された。この中で小沢一郎代表は、自身の考える議会制民主主義・政党政治の理想型、民主党のめざすべき国家像、真の改革のあり方などについて語ったほか、民主党と経団連とで、個々の政策について活発な意見交換が展開された。

 会の冒頭、まず奥田碩経団連会長が挨拶し、昨年に続き2回目となるこの政策対話について、自民党の時より参加者が多いとしつつ、参加者に忌憚のない意見交換を呼びかけた。そして、人口減少、少子高齢化といった前例のない「環境の変化に、適切に対応しなければならない」とし、「改革を加速するためには、政策本位の政党政治の実現が必要だ」と指摘して、「本日の議論を踏まえ、国会の場で政府・与党に建設的な政策論議を展開していただきたい」などと語った。

 続いて小沢代表も挨拶。民主党をめざす大きな方向性について触れ、特に、「国民に対する分かりやすい明確な政策を提示できるよう」にすることの重要性を強調した。そしてわが国における議会制民主主義、政党政治の定着のために、「政権を担い得る、基本的な哲学・理念をそれぞれもった最低二つのグループが、その時々の情勢に応じて政権を担うという姿」がめざすことろだと述べた。

 民主党自身についても小沢代表は、「世間で言われるより、遙かに色々な意味で考え方を共有している者たちが集まっている集団であるということを、是非ともこの際ご理解いただきたい」とし、そういうことが、うまくアピールできていない点については率直に認めた。そして、「世間では民主党と自民党とで、対立軸が見えないとか、あまり(対立軸が)ない方がいいとかいう類の議論がなされている」が、「この二つとも、そうは思わない」と指摘。55年体制下の「この半世紀こそが、私は対立軸のない時代だったと思う」と述べた。

 小沢代表は更に、「自社55年体制」を「現実的には満場一致の政治」だったと総括し、それで過ごせた時代であったが、今や東西対立もなくなり世界的に様々な変化が起こっている中で、「日本も55年体制、戦後体制的な発想や行動では、なかなかこの変化を克服できなくなった」と指摘。社会の矛盾が信じられない事件の続発といった形で噴出する中で、「これからの政治は、きちっとした方向性とビジョン、社会のあるべき姿を、政権を担い得るそれぞれの政党が持って、互いに切磋琢磨して政治を行っていくということでなければならない」などと語った。

 そして小沢代表は、自民党に代表される、「日本の伝統的な手法・哲学に立脚」し、「コンセンサスを大事にして、できるだけ旧来のやり方を守りながら、少しずつその変化に応じて変わっていけばいい」とする考え方の政党・グループと、「旧来の伝統的なコンセンサス社会、護送船団的な社会、中央官庁による規制社会から、もう少し自由で、オープンな、外向きの考え方」を持った政党・グループが存在するのが理想の形だと述べ、「そういう考え方の違うグループが、その時代時代に応じて、交互に政権を担当していく」ことの必要性を語った。

 真の改革のあり方についても小沢代表は言及。「最近は自民党が、改革、改革と言うものだから、国民の皆さんも、何が改革で、誰が本当に改革するのか混乱している」とした上で、「国の基本の制度や仕組みを変えない限り、本当の改革はできない」との考えを改めて強調。「もし本当に改革を進めようとするなら、中央集権的な官僚統制支配を、制度として変えなければならない」とした。

 そして、「中身のない話は、イエスかノーかで簡単にできる」が、こうしたことを「簡潔にきちっと国民の皆さんに伝えるということは、なかなか難しい」とし、「民主党としては、大きな基本の政策について、きちっとお互いの議論の中から結論を出して、それを簡潔に国民の皆さんに伝え、訴える作業」を早急に進めなければならないと強調して、挨拶を締めくくった。

 続いて鳩山由紀夫幹事長も挨拶を行い、外資の政治献金規制の問題、「共生」の理念、地方分権に関する補完性の原理などについて触れ、経団連との意見交換に期待感を示すとともに、出席者に対して改めて謝意を表した。直嶋正行政策調査会長代理は、経団連の示す優先政策への民主党の考え方を説明。結党8年となり、「政策本位の政治に力を入れてきた」と強調しつつ、歳出削減、官製談合と天下り禁止政策などについて具体的に言及した。

 経団連側からは、出井伸之副会長が行政改革の必要性について触れ、「官民の役割の再考などがますます重要」だとして、「日本の競争力をどう向上させるかという観点から進めていく必要がある」などと指摘したほか、勝俣恒久副会長からは地球温暖化問題とエネルギー問題について、宮原賢次副会長からはWTO・EPAを通じた貿易自由化問題について、それぞれ言及があった。

 これに対して、小沢代表、直嶋政調会長代理、峰崎直樹『次の内閣』ネクスト財務大臣が詳細に民主党の考え方を述べた。そして、会場の出席者からも質問を受け付け、年金制度改革と潜在的国民負担率、コンテンツ産業の振興、容器包装リサイクル法改正などの問題について意見交換が行われた。

 最後に経団連より御手洗冨士夫副会長が閉会の挨拶を行い、「様々な課題について率直な意見交換ができた」とするとともに、「このような政策対話を通じて、経済の実態を把握してもらうことはきわめて重要だ」として、「引き続きこのような会をもちたい」などと述べた。

 なお、今回の会合には、民主党側から、仙谷由人ネクスト厚生労働大臣、前田武志財務局長も参加した。
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