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1998/12/08
財政構造改革法凍結法案
政府案に反対、民主党案に賛成する討論 |
民主党 日野 市朗
私は、民主党を代表し、内閣提出の「財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律案」に反対し、民主党提出「財政構造改革の推進に関する法律の停止に関する法律案」に賛成する討論をおこないます。
我が国の財政状態を見、経済状態を見るとき、その惨憺たる姿に、私は慨嘆せざるを得ないのであります。
累積の国家赤字は、平成九年度末すでに三五七兆円、国と地方を合わせれば四八九兆円に達し、いま審議中の第三次補正予算が成立すれば、国と地方を合わせた長期債務残高は、五六〇兆円になる見込みであります。
平成一〇年度のみ見れば、税収は約五〇兆円で、国債発行額は三四兆円であります。 つまり、国家財政の三八.六パーセントを借金に頼る、借金づけなのです。
しかも、経済は極度の不振に、喘いでいます。
一体、自民党政府は、なにをやっているのですか。私は、その責任を追及したい。
自民党政府の施策は、まったく一貫性を欠いています。
すなわち、平成九年九月二九日、政府は財政構造改革の推進に関する特別措置法案、いわゆる財革法案を国会に提出し、民主党の修正案を押し切って採決、可決し、参議院においても同月二八日採決して、一二月五日法律第一〇九号として、公布施行されたのであります。ところが、早くも翌年、平成一〇年五月一一日には、その改正案が国会に提出されました。その内容は、特例公債発行枠を弾力化する措置、財政健全化目標達成年度の延長などを、盛り込んだものでありました。
これに対し、民主党、平和・改革、自由党は共同で財革法停止法案を提出したのですが、停止法案は否決され、財革法改正案が成立しました。
そして、今度は半年後、政府から停止法案が出てきて、民主党からも対案が提出されその審議が行われています。
私が、煩を厭わず、この経過を述べるのは、この経過こそが、最も雄弁に、政府の財政や経済に対する、定見のなさと、無責任さとを示すと考えるからであります。
そもそも、財政は国家存立の基礎であります。
しかるに、わずか一年の間に、三度も財政をめぐる方針の大転換がおこなわれて、いいのでありましょうか。
当初、財革法が提出されたとき、政府は経済のファンダメンタルズのいいうちに、財政構造を改革するとの、志を語っていました。 しかし、その直後に政府は、景気対策の大合唱と、族議員の圧力により、志を捨て、赤字国債の増発に踏み切ったのであります。
志を失った財政構造改革は、もはや景気の悪いときにデフレ政策をとるという形骸のみを残すこととなり、当然の事ながら、景気を極度に悪化させました。
しかも、今回審議されている政府案は、財政構造改革のための、積極的な手段を講ずるどころか、その思索すらも停止しているかに見える。すなわち、財革法を、期限を定めずに停止し、そして講ずべき施策にも、何の言及もしてないのです。
政府・自民党は経済対策の優先をいうが、景気対策をするにあたっても、財政をいかに健全に運営するかの政策が、常に考慮されていなければなりません。しかるに、その考慮の跡さえもない内閣提出の法案は、財政再建政策の放棄に等しい内容と言うべきでありましょう。
国家財政は、国家の一大事であります。
現下の不況の根源には、国民の年金や、医療や、生活全般についての不安があります。その不安は、せんじ詰めれば、国家財政への不安なのであります。その不安を取除かねばなりません。対症療法としての、景気対策も必要でありますが、同時に、財政立直しの断固たる意志を示し、その方策に取組むことが、景気対策として必要であります。
また、このような国債に頼っての財政運営が、危険なものであることは、論をまちません。国債の値下がりや、引き受け手がなくなるなどのことは、決して架空の事柄ではありません。ムーデイズの日本国債格付けの引き下げに、感情的反発をしていても、何にもならないのです。
財政の再建のためには、国民と国家の関係を、根本から問い直すという、大問題に取り組まねばなりますまい。時間のかかる大事業であります。
景気がよくなれば、財政もよくなるという考えも、短絡的に過ぎます。
要は、財政再建の努力を休むことなく、行わなければならないのであります。
わが党の提出した法案は、現行財革法の施行を二年間停止し、その間に財政健全化目標及びその達成期限、その他財政構造改革の在り方について見直しをおこない、目標期限までに、公債発行額及び借入金の総額を、対GDP比三パーセント以内に抑え、経済活動が著しく停滞した場合は、目標達成期限を延長できるようにするというものであり、国家財政に対する、政治の責任を、まっとうしようとするものであります。
政治家たる同僚諸君の良心に訴え、民主党提出法案に賛成されることをねがって、討論を終わります。
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