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2002/02/26
未来の交通を考えるシンポジウム開く


 26日夜、東京で「未来(あす)の交通を考えよう」と題するシンポジウムが開かれ、議員、有識者と約200名が参加した。シンポジウムは有志の実行委員会が主催。民主党は、すべての人々が自由かつ安全に交通機関を利用して移動できる社会をつくるための「交通基本法」を準備しており、その一環として積極的に取り組んだ。

 シンポジウムには、障害者の人権運動から政府機関に入り、日本のバリアフリー法案づくりにも影響を与えたアメリカ運輸省のマイケル・ウィンターさんも顔を見せ、「すべての人々に使いやすい制度をこの日本につくってほしい」と激励した。

 冒頭、民主党の鳩山由紀夫代表が「この国が経済発展の中で取り残してしまった問題。皆さんのお知恵を借りて解決したい」と挨拶。次にワーキングチームの座長として法案の取りまとめにあたった細川律夫衆議院議員が、「すべての国民に移動する権利=交通権を保障する」という基本的な考え方を説明した。続いて、石毛えい子衆議院議員の進行でパネルディスカッションに入った。

 戸崎肇・明大助教授は、「バリアフリーだけでなく、福祉や環境問題も含むもっと広い概念で交通体系を考えるべき」と提言。自動車労連事務局次長の久保秀一郎氏は「道路が財政面だけから問題視され、必要性や効果、役割の議論がない」と問題提起した。

 国土交通省の丸山博政策統括官は、規制緩和を通じたマーケットメカニズムに委ねるべきという国の姿勢を説明。DPI日本会議常任委員の今西正義氏は障害者の立場から「交通バリアフリー法では、一定量の乗降客がいるところのハード面の整備が中心。移動の自由の確保は考慮されていない」と指摘し、今だにさまざまな場所で車椅子の利用者が乗車拒否されている事例を証言した。

 客席との質疑応答では、あちこちから手が上がり、車椅子利用者の方々や支援活動をしている人たちから、悲鳴にも似た切実な思いや、一層のバリアフリーを求める声が相次いだ。また地方公共交通の切り捨てへの懸念も示された。

 最後に石毛議員が、「交通基本法が単なるバリアフリーの延長でないことは確かだが、その幹になるのは交通権、移動権ではないか」と、短い時間の中では多くの論点が示されたシンポジウムを締めくくった。

 民主党では3月下旬から4月初め頃の法案提出を目指し、与野党の協力を経て成立させたい考え。
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