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2008/02/14
オウム真理教犯罪被害者等を救済する給付金支給法案を衆院に提出




 民主党は14日昼、地下鉄サリン事件など、オウム真理教による事件の被害者に対して国による給付金の支給を定めた民主党議員立法「オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律案」を衆議院に提出した。教団の破産手続きにより、債権が未払いの被害者に対し、国が代わって給付金を支払うというもの。

 法案提出者の枝野幸男、長島昭久、泉健太、園田康博各議員が衆議院事務総長室を訪れ、法案を提出した。

 提出後に会見に臨んだ枝野議員は、「亡くなられた方や重い後遺症に苦しんでいる方がいたり、ご家族を含めて大変厳しいご苦労を強いられている」と指摘した。そのうえで、教団の破産手続きによって破産事件が集結する見通しになっているなか、本来被害者に充当されるべき金銭債権の約3分の1しか弁済されないまま集結を迎える状況にあることを踏まえ、集結に先立って被害者の経済的な補填を進めるべきではないかという観点で法案提出に至ったことを明らかにした。

 枝野議員はまた、「さまざまな犯罪の被害にあわれて、その犯人から被害弁償を受けられないという方がいるが、オウム真理教による一連の犯罪行為は、広さという意味でも被害の大きさという意味においても未曾有のものである。と同時に、オウム真理教が暴力によって国の統治機構を破壊するとの主義を推進する目的のために行われた犯罪である」とも説明。いわば国家や政府というものに対する犯罪の犠牲者であり、そうした意味においては、他の事件の被害者とは若干性質をことにするとの認識を示した。

 さらに枝野議員は、将来的には一般の犯罪被害者の救済についても広げていきたいとの考えを表明したうえで、「少なくとも現時点でも、オウム真理教による犯罪被害を本来の犯人のターゲットであった国家、政府が補填するということは他の国民の皆さんの理解も得られると考え、判断した」と語った。

 法案の内容としては、身体的被害に対する届出債権として裁判所で認められた債権のうち、未払い分について国が支払うというもの。

 枝野議員はまた、オウム真理教に代わって、被害者の被害弁償を国が行うという形になることによって、国はオウム真理教等に対する求償権を自動的に得ることになるとも指摘。「再びおかしな犯罪を犯さないように」という監視を現在も行っているわけだが、25億円分の債権を国が弁済することで得る求償権によって、教団に対する金銭面での締め付けが可能となり、再発防止という観点からも重要な意義をもっており、その意味からもこの法律には大きな意義があるとした。

 同時に、今回はオウム真理教に関連する被害者への、一種の特例法ではあるが、民主党としてはテロリズム等の被害者等については、同じような法制度をつくるべきであると主張していることも枝野議員は明らかにし、「今後は拡大して犯罪被害者一般について現状の支援を超えた、さらに踏み込んだものを検討していく」とした。

 続いて長島議員は、米国における9・11テロにおいて、被害者に対する米国の国家としての補償は総額で60億ドル、一人あたり約1億5000万円で被害者全員に給付されたと説明。一方で日本の場合、被害者5500人(12人死亡)という地下鉄サリン事件において犯罪被害者給付金の対象となったのはたった2人名であったと指摘。国家に対するテロ、そこでの犠牲者は国の代わりに犠牲になったと見る米国と日本では、人権侵害に対する補償のスタンス、思想に大きな隔たりがあるとの見方を示した。

 そのうえで、今回提出した法案は、国家テロに対する国の補償のあり方について、研究・検討を進めてきた結果であるとした。
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PDF オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律案
PDF  オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律案要綱
PDF 法律案の概要
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