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2008/02/21
【衆院予算委】道路特定財源の廃止、道路建設ルールの見直しを提議 菅代表代行




 菅直人代表代行は21日、道路特定財源に関する集中審議が行われた衆議院予算委員会で質問に立ち、今後10年間で総額59兆円の事業費を投じる道路整備中期計画について政府与党の主張の根拠を首相はじめ関係大臣に質すとともに、民主党の考えを「国民のみなさまにご理解いただきたい」として「民主党の抜本改革案」を説明した。

 冒頭、菅代表代行は海上自衛隊イージス艦と漁船との衝突事件に触れ、国民の信頼を得るべき存在であるはずが、「逆に国民の安全を脅かしている」との考えを示し、重大なる責任が政府にあるという認識のもとで取り込みを求めたいと、政府の対応を強く求めた。

 そのうえで菅代表代行は、「59兆円ものお金が国民のために使われるのか、それともお役人のためか、あるいは族議員のために不公平に使われるのではないかという疑問がある」「使い方のルールの透明化を求める声も都道府県知事はじめ国民には多い」との認識を示し、政府与党案と民主党の基本的な改革案について詳細を示していきたいと語った。

 菅代表代行は、17日には宮崎県内の道路状況を視察し、19日には全国知事会との道路特定財源をめぐる公開討論会に臨み、20日には東京湾アクアライン連絡道「海ほたる」を訪れるなど、現場活動を展開していると報告。現場の実態・現場の声を踏まえて、質問を行った。

 宮崎県では東九州自動車道の建設現場を視察し、地元の方々との意見交換会等を行った菅代表代行は、「私なりの感覚から見て、必要だろうと思った」と述べるとともに、なぜ完成がこんなにまで遅れたのか、力のある政治家がいる地域が優先されたために後回しされたのかとして、公平公正に優先度が決められていたかという点に疑問を呈し、遅れた原因に関して、合理的な説明を求めた。

 冬柴国土交通大臣は「審議も経て、客観的理由がある」と言葉としては述べたが、客観的理由を示すことはできなかった。それを受けて菅代表代行は審議の基本となるデータも国土交通省の外郭団体が作成したものであると指摘するとともに、どういう道路事業を優先させるかを議論する国幹会議の公平性にも疑問を呈し、会議の実施状況を質した。冬柴国交相の答弁からは、国幹会議は第1回目が平成15年12月25日、第2回目が平成18年2月、第3回目が平成19年12月25日に実施されたことが明らかになり、菅代表代行は「2年おきに1時間および1時間半の国幹会議で到底公平性が担保されていると思うか」と質問。公平性の担保につながらない会議の実態を浮き彫りにするとともに、国交省の息がかかっていない団体や地方6団体の代表などが参加する形に修正し、実効性のある議論ができる会議に改めるよう検討を求め、冬柴国交相も「重く受け止める」と応じた。

 菅代表代行はまた、1兆4400億円の費用を投資した東京湾アクアライン連絡道の償還計画のあいまいさを指摘。開通後の予測通行量に対し、実績通行量は6割も低い実態を冬柴国交相の答弁から確認したうえで、「べらぼうな建設費」が「予想を大幅に下回る交通量」のために到底償還できない実態を問題視した。また、道路公団が民営化されたことで、借金の所在も不透明になり、この計画自体の問題を問う責任主体もあいまいになった点も指摘。そのうえで菅代表代行は大雑把な予測のもとに45年間の償還計画を作り上げた、この東京湾アクアライン連絡道と同様に、使い道について透明に議論する体制を整えない限り、道路整備中期計画に計上された10年間で総額59兆円の事業費も、杜撰な計画のもとムダづかいされ、国民に有効に活用されない道路ばかりが作り出される危険性があるとしての危機感を示した。

 そうした認識に立ち、改革の必要性を民主党は痛感していることを改めて明らかにした菅代表代行は、道路特定財源の一般財源化を訴える民主党の考え方の基本について、「民主党の抜本改革案」として、(1)道路だけを特定財源化する必要はないとの認識に基づく特定財源の廃止(2)国民への増税を継続しようとする政府与党とは反対の立場から期限切れを迎える暫定税率の廃止(3)直轄負担金の廃止や臨時交付金を4分の1から2分の1にすることによる地方の財源確保(4)国と地方の役割分担明確化、国幹会議の見直し、責任の明確化・償還見込みの厳格化―といった道路建設ルールの抜本的な見直し――などの改革内容を説明。ムダづかいを正し、地方が地方の裁量で使えるように特定財源ではなく自主財源化するなど、国の形の基本を考えるのが我々の民主党の考えだとした。
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