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2000/02/04
年金問題について真剣に議論〜「もう一つの国民福祉・厚生委員会」
 民主党は4日、国会近くのホテルで「もう一つの国民福祉・厚生委員会」を開き、 年金問題について専門家や関係団体代表らと活発に議論をおこなった。委員会には約 200人が参加し、金田誠一衆院議員(厚生委員会筆頭理事)の司会ですすめられた。


◆政府案はつじつま合わせ――山本副大臣が批判

 所信表明に立った山本孝史雇用・社会保障副大臣は、「支給開始年齢の引き上げと 給付水準の1割ダウンを内容とする与党案は、厚生省の官僚自ら『つじつま合わせ』 と認めるひどい内容。最初から国民への責任を放棄している」と批判。さらに「民主 党は基礎年金の国庫負担率を現行3分の1から2分の1に引き上げ、基礎年金を税方 式に改めることなどを改革の柱としている」と、党の改革案を燒セした。


◆「支給開始年齢の引き上げが最大の問題」「給付水準の現行維持を」
―――有識者から注文、主張

 続くゲスト発言では、一橋大学経済研究所の高山憲之教授が「最大の問題は支給開 始年齢の引き上げ。60歳定年制の企業が大多数で再就職も困難な現在、サラリーマ ンの不安は大きい」と強調。「ただ、制度を維持するには経済的に余裕のある年金受 給者が負担アップを受け入れるなどの譲り合いも必要。民主党も将来の財源を提示し てほしい」と注文をつけた。

 次に連合の桝本純生活福祉局長が、「給付水準の引き下げは認められない。このま までは夫婦で受け取る年金が生活保護の支給額以下になってしまい、若い世代が年金 を払う意欲を失う。ぜひ現行水準の維持を」と主張した。

 障害者インターナショナル日本会議の金政玉さんは、「長期国外滞在中に障害を受 ければ無年金状態となり、さらに国籍条項によって無年金者が生まれている。就労機 会から除外された障害者は生活保護を申請するしかないが、そのためには家族から世 帯分離しなくてはならないなど現行制度には多くの欠陥がある」と指摘した。

 東京・生活者ネットワークの新井美沙子さんは、「サラリーマンの妻など第3号被 保険者に保険料の負担はないが、この分を第2号被保険者全体で負担しており不公平 だ。男女共に働き、税を担う制度が必要。第3号被保険者は離婚すると老齢基礎年金 しか受けられず、生活できない状態に追いやられる」と述べた。

◆「年金の負担と給付、将来的には原則として個人単位へ転換を」
―――――――担当大臣らが答え

 これを受け、峰崎直樹予算・決算副大臣は、「財源は消費税でまかなうべきと考え ている。現行消費税は問題が多いので改革するのが前提だが、将来的には年金とリン クさせるべきだ」と回答。朝日俊弘雇用・社会保障副大臣は、「年金の給付と負担に ついては、将来的には原則として世帯単位から個人単位へ転換すべき。また、高齢者 に年金の負担をお願いするのは避けられないのではないか」と述べ、石毛えい子消費 者・産業担当副大臣は「第3号被保険者の問題は税方式でしか解決しないのではない か。ただ、年金では男性にも矛盾のしわ寄せがある。女性を特別枠化するのはどう か」と指摘した。

 この後、電子メールで寄せられた「専業主婦は地域活動の担い手。税などの優遇措 置を守ってほしい」との声が紹介され、会場からも「被用者の保険料が国民年金につ ぎ込まれているのはおかしい」、「学生だが、いつごろから世代単位が個人単位にな るのか」などの質問がだされ、今井澄雇用・社会保障大臣が、「被用者の保険料につ いては、将来の基礎年金の税方式化によって解決されると思う。また年金制度はすぐ 転換できるものではないので、数十年のスタンスで考えてほしい」と説明した。
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