|
2003/01/18
<2003統一地方選挙政策集>第3章 民主党の政策が一目でわかる個別政策のガイド
2.消費者・人権・ 共同参画 |
【消費者・NPO】
経済社会が成熟し、個人の価値観が多様化している現在において、官主導の一元的公益判断では社会的ニーズが十分に満たされなくなっています。民主党は、多様な価値観を認めあい、市民が主導で公益を実現する社会へと変革するために、市民活動を社会システムに組み込むとともに、市民活動に対する税制を含む支援策の拡充に積極的に取り組んでいます。安全性に対する信頼が揺らいでいるなか、衣食住に関する安全性を十分に確保することが必要であると考えます。規制の強化や表示の徹底など、国民が安心して暮らすことができる社会の確立に向け、提言を行っていきます。
消費者教育等
「賢く強い消費者」を育成するため、義務教育の段階から消費者契約やカード利用等についての知識も含め、消費者教育充実に向けた政策を行います。個人だけでなく、消費者団体などが悪質な約款などの差し止めを求める裁判をおこすことができるように団体訴訟権の確立をめざします。また、民主党提案の「消費生活製品の危険情報公表法案」を成立させ、消費生活用製品の危険情報が公表されるようにし、危害の発生や拡大を防止します。
食品の安全性
BSE発生を契機に日本の行政が消費者に安全な食品を提供する視点に欠けていることが明らかになりました。農産物などの原材料が食品になる過程で、その所管は複数の省庁間にまたがり一貫性がありません。また世界一の食料輸入国でありながら、監視体制は機能していません。タテ割り行政の枠を越え政策に左右されない食品安全の確立のため、食品安全基本法を定め、独立した新機関による一元的管理を行います。
NPO活動の促進・支援税制の拡充
21世紀を柔軟で自己改革可能な活力溢れる社会にするため、NPOの育成は緊急かつ重要な課題です。第155回臨時国会にてNPO法改正案が成立し、従来民主党が主張してきたNPO法人の活動分野拡大や設立認証申請手続簡素化等が図られることとなりました。今後もたえず制度の見直しを図ることで、NPO活動が社会にしっかりと根付くための努力を続けます。
また現行のNPO支援税制については認定要件が厳しいために、これを利用することができる「認定NPO法人」は、NPO法人全体(約8,600団体)の中でわずか9法人に過ぎません(2002年11月現在)。民主党は、NPO全体の6〜7割が支援税制を利用できるように、認定要件を緩和するなどの改善をはかります。
【男女共同参画】
人生80年時代、女性が先行したライフスタイルの多様化は、今や男性にも及び、性別・年齢にかかわらず多様なライフスタイルを生きる時代になりました。しかし、私たちの社会システムは、旧態依然としたままで、社会の活力を失わせています。時代と社会の変化に適合した新しい女性政策が必要とされています。多様なライフスタイルを前提に、性別や年齢を問わず、自立した男女が共に参画できる社会システムづくり。そんな新しい女性政策(男女共同参画)が日本に活力を蘇らせます。老若男女が、それぞれ生きがいを感じる社会システムづくりが社会全体を豊かにするのです。性別役割分業を固定化しない(ジェンダーフリー)社会こそ、日本を再創造するカギとなります。
年金制度
多様化した女性のライフスタイルに適合していない年金制度を改革します。税方式によりすべての国民に基礎年金を実現します。世帯単位から個人単位の年金へ切り換え、被扶養配偶者の拠出は二分二乗方式(夫婦の所得を合算し各二分の一の所得で保険料を負担)を採ることとします。これにより、誰でも自分の厚生年金を持つことができます。年金分割を実現し、離婚が不利にならない安心して女性が暮らせる環境をつくります。
税制
働く女性に不利な税制を改め、個人所得税を性的役割分業に固定しないジェンダーフリーの税制に変えます。配偶者控除・配偶者特別控除を廃止して、税の増収分で子ども手当(児童手当)を充実します。手当は義務教育年齢までの支給とし、食費、被服費をまかなえる水準とします。特定扶養控除(16歳以上23歳未満)は廃止し、学びたい子が学べるように奨学金制度を充実します。激変緩和のために、基礎控除の引き上げを検討します。
雇用・労働
時間外勤務手当ての割増率を国際水準に引き上げます。サービス残業の法的規制を検討し、育児休業・介護休業による間接差別禁止を法制化します。パートに対する均等待遇の実現は喫緊の課題であり、また、ワークシェアリングの前提ともなるため、均等待遇に向けての法整備をすすめます。人員削減による長時間労働化を抑制し、時間外や休日労働分を新規の雇用へ振り向けます。政府調達事業の女性起業家への一定比率割り当て、NPO等による起業を推奨し、女性起業家を増やします。
次世代育成
低年齢児保育、延長保育、休日保育、夜間保育、障害児保育、病児保育など「多様な」保育体制を整備します。NPOなどによる保育の質チェックの仕組みをつくります。保育所と幼稚園の連携強化、一元化を図ります。民主党提出の民法改正案を成立させ、協議離婚の養育費の取り決め等を明記します。子ども手当に「ひとり親加算」をします。母子(単身)家庭の自立のため、保育所の優先入所、子育て・生活支援、職業能力開発支援等を推進します。
男女平等の基盤づくり
生活のさまざまな場面で知らず知らずのうちに刷りこまれていく固定的な性別役割分業意識の克服に向け取り組みます。自律能力の形成を教育目標に据え、職業体験学習、男性の家庭参加促進教育などをすすめます。人権に密接に関わる仕事(例えば教員、医療福祉関係、警察、入管職員等)に従事する人への男女平等教育をすすめるとともに、政策・方針決定過程へ女性の参画を拡大するためクオータ制(割当て制)を含む積極的差別是正(アファーマティブアクション)を講じます。また、女性に対する固定観念に基づく社会制度や慣行を改めます。
介護保障
2000年4月に介護保険制度がスタートしましたが、現場を支えているのは低賃金で身分保障の不安定な女性が中心です。とくに、訪問介護の「家事援助」は、女性のアンペイドワーク(無償の家事労働)に対する無理解が反映され、低額な報酬にとどまっています。介護する人たちが安心して働けない職場環境では、サービスの向上も期待できず、安心して介護を任せられません。民主党は、ケアマネージャーやホームヘルパーなどの介護職員の専門性を高めるとともに、職員の待遇改善、短時間労働者への社会保険の適用などに取り組みます。また、介護保険制度を改善し、介護基盤の整備に取り組みます。
女性の健康
それぞれの女性が自分らしい健康を生涯にわたって保障される環境づくりに取り組みます。性と生殖に関する女性の権利と健康を守るための法整備をすすめるとともに、年齢にふさわしい性教育を男女ともに行います。また、新しい医療の領域である「ジェンダー・スペシフィック・メディスン」(性差を考慮した医療)の考え方を、医学教育の段階から徹底します。不妊治療については、治療の効果と安全性を、漢方治療なども含めてきちんと検証し、適応症と効果が明らかな治療法については医療保険の適用を検討します。その一方で、「女性は子どもを産んで一人前」というような画一的な価値観に縛られない社会を作っていきます。
男女共同参画型の国際協調
紛争国や開発途上国において、女性の教育水準向上と仕事の充足を図ることは、貧困を是正し、男女格差、国際間格差の解消のために重要な方策です。更にジェンダー主流化*こそが開発援助において中心的な考え方になっていますが、日本の援助についてはジェンダー政策などを重点にする指導力が欠けています。私たちは、ODA予算配分とODAの実施に際して、調査、計画、立案、推進、評価の全ての段階において男女共同参画の視点からNGOの参加を求めます。また、いまだ国際スタンダードに達していない女性や子どもに関わる条約と関連法案を精査し締結の促進と法制化を図ります。
*開発におけるジェンダー主流化=経済開発、人間開発のすべての過程に女性が主体的にかかわる援助のあり方。
【暮らしと人権】
日々の暮らしを安心・安全に送ることはすべての人々の願いです。しかし近年、家庭や地域で周囲からは見逃されがちな人権侵害や偏見が日常化し、地域社会の活力を奪っています。また、地震や台風などの自然災害のみならず、最近ではテロ行為も市民生活を脅かしています。民主党は、市民のための司法改革や女性・子ども政策、災害対策やテロ対策など、市民生活に関わる諸施策を具体化し、安心・安全の社会づくり、生活のなかでの小さな人権侵害も許さない社会づくりをめざします。
司法制度改革の推進
民主党は、国民に開かれた、迅速な司法の実現をめざしています。具体策としては、(1)法曹人口を大幅に拡大するため、ロースクールを新設、(2)裁判を迅速化するため、集中審理方式を導入、(3)弁護士などを経験した人から裁判官を登用(法曹一元化)、(4)国民や専門家が裁判に参加する陪審制・参審制を導入、(5)裁判を受ける権利を充実するため、被疑者国選弁護法を制定などを推進しています。
刑罰の見直し
法定刑が軽すぎるという批判を踏まえて刑法を全面的に見直します。特に、現行の無期刑は最短10年で仮出獄できてしまうことから、仮出獄を認めない終身刑を創設します。死刑制度の廃止についても検討を進めます。
少年犯罪の防止
少年犯罪の防止には、少年を取り巻く環境(家庭、学校など)の整備、早期発見のネットワーク、安心して相談できる仕組み、家庭裁判所の充実強化など、総合的な対策が必要です。2000年11月に大改正された少年法については、「立ち直らせる」という法の理念を堅持する立場にたって、(1)刑事処分にできる範囲を安易に拡大しない、(2)少年が不利にならないよう厳正な事実認定手続きを創設する等の修正案を提出しました。
犯罪被害者への支援
犯罪被害者に対し、国が給付金を支給する制度をさらに拡充します。また、民主党は、犯罪被害者の権利を保障し、国や自治体に総合的施策を義務づける「犯罪被害者基本法案」を提出していますが、その早期成立を求めています。
人権擁護機関の創設
政府から独立した人権擁護機関の設置は、国連からも勧告されている緊急の課題です。しかし政府の案(人権擁護法案)では、刑務所や入管施設を管理する法務省に設置するとしており、刑務官らによる虐待・人権侵害を握りつぶすおそれがあります。また、報道による人権侵害についても介入できることから、「表現の自由」への悪影響が懸念されます。民主党は、政府からの独立性を確保し、報道機関による自主的な人権救済を尊重する修正を求めます。
青少年対策
残虐な暴力や性暴力などの有害情報から子どもを守るため、書物の区分陳列や放送時間帯の配慮などによって、普通に暮らす子ども達が有害情報に触れないですむ環境をつくります。また子どもの有害情報について第三者機関(中央子ども有害情報対策委員会)を置き、事業者が自主的に取り組むこととします。大人社会のモラルと保護者の責任感を高め、子どもの権利を擁護します。今後、情報との付き合い方についても単に与えないだけではなく、与えつつ、情報化社会に生きる子どもが、情報の持つ意味を正しく理解し活用できる能力(メディアリテラシー)を育てる教育をすすめます。
子ども政策
大人社会の権利や利益に対して、子どもの権利利益に関する取り組みは後まわしにされています。現在頻発している両親、祖父母、義理の親、兄弟、保育所などによる子どもの虐待は計り知れないショックを子どもに与えています。民主党は、子どもの持つ「生命・生存・発達の権利」を明確にし、学校でも家庭でもどこにいても、子どもが伸び伸びと育つことができる環境づくりをめざして、「子ども政策」をまとめていきます。
ドメスティック・バイオレンス対策
従来、夫婦間の暴力事件は民事不介入として扱われていましたが、頻発するドメスティック・バイオレンス(DV)事件は現在では社会問題にまで発展し、「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)の被害者を多く生みだすなど、無視できない状況に至っています。2001年の通常国会で、民主党主導により、配偶者からの暴力は犯罪であることの明記や被害者保護に関する国、地方公共団体の責務、配偶者暴力支援センターの機能充実などを内容とする「DV防止法」が成立しました。今後、さらに同法に「加害者更正プログラム」を盛りこむなどの見直しを行い、充実を図ります。
選択的夫婦別姓
夫婦同姓にすることも貴重な選択ですが、別姓を選べない法律下では、女性が「改姓したくない」と思ったときに、「女は結婚したら夫の姓を名乗るのが当たり前」という価値観が押しつけられるのが現状です。民主党提出の民法改正法案を成立させ、希望すれば夫婦が別の姓を選択することができる制度と、自らが何ら責任を有さない出生の事情によって子どもが不利益を被らないよう婚外子(非嫡出子)の相続差別をなくすことを実現します。
個人情報の保護
個人情報を適正に取り扱うため法律による規制は必要です。しかし、政府が提出した法案は、自分に関する情報を見たり訂正等を請求する権利である「自己情報コントロール権」がないうえに、公権力による民間への不当介入や取材への不当な規制が行われかねないなど、まったく受け入れがたいものでした。民主党は政府法案を廃案に追い込みましたが、今後、「自己情報コントロール権」を明確にしたうえで、行政や事業者による個人情報の適正な収集や維持管理などを定める法整備に取り組みます。
住民基本台帳ネットワークシステム施行問題
重大なプライバシー侵害の危険性が指摘されており、実施主体である自治体からも凍結を求める声が多くあります。個人情報保護法制の不備のため、個人データ漏洩事件が多発している現状があり、国民の多くは、行政や企業が自分の情報を勝手に収集・蓄積して活用しているのではないかという不安と不信をいだいています。住民基本台帳ネット稼動は、個人情報保護法の制定を少なくとも前提とするべきです。
障害者の人権
日本では障害者差別に対する法的規制が世界的にみても遅れているために何が「差別的取扱い」か、何が「虐待か」を定める実体性の証明できない現状を変えるため、実効性のある法整備(「差別禁止法」の制定など)を行います。2002年度が最終年の政府の「障害者対策に関する新長期計画」に対応し、民主党は、2002年12月、自立と参加の共生社会づくりをめざす「新たな障害者基本計画と障害者プランの提言」を発表、政府に申し入れを行いました。
人権教育・啓発促進法
様々な文化、宗教、価値観を認め、憲法で定める人権の尊重、世界人権宣言、人権関係国際条約などの趣旨に基づいてあらゆる不当な差別をなくすことは国民の等しい願いです。このような視点から、民主党は現行の「人権教育・啓発推進法」を見直し、国や地方自治体、国民の責務で、さらに充実した教育・啓発を実施します。
テレビ字幕普及法案
インターネットでの市民からの政策提案を受けて、民主党は、2001年10月に「テレビ字幕普及法案」を提出しました。この法案は、聴覚障害者の利便を増進させるため、(1)放送事業者に対して字幕番組の提供計画を義務化する、(2)総務大臣への同計画達成状況の報告を義務化する、(3)総務大臣の勧告を可能とすること等を内容としています。更に、政府に対しては財政上及び税制上の支援措置を講じるものとし、2007年までに字幕付与可能番組については 100%の字幕付与を達成するものとしています。
国内テロ対策
わが国においてもテロ対策は焦眉の課題です。民主党は、情報収集・分析体制を内閣官房に一元化するとともに、危機管理に関する権限を一元的に行う「危機管理庁」(日本版FEMA)を創設します。原子力施設へのテロ対策、ハイジャック対策、核・生物・化学兵器テロ対策、在外邦人や在日外国人の安全対策、テロ資金対策など、広範囲にわたるテロ対策の整備を行います。
大規模災害対策
災害発生後の救急活動や情報伝達、交通規制や応急復旧などを円滑に進めるため、国・地方公共団体・警察・消防・自衛隊・民間企業・ボランティア・NPO等の役割分担、協力体制の整備をすすめ、情報伝達システムを確立するなど、民間の諸活動を強力に支援します。また大規模かつ激甚な災害に迅速に対応するため、内閣総理大臣の責務と権限を強化するとともに、米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)を参考にした組織(日本版FEMA)を設置します。
災害復興体制の整備
災害による心身的ダメージを被災者が一刻も早く克服するには生活基盤の回復が必要であるため、「住宅再建支援法」の早期制定をめざします。生活再建支援金の支給額の引き上げ、支給要件の緩和、財源の全額国庫負担等、「被災者生活再建支援法」及び「災害弔慰金法」の改正に取り組みます。また、「激甚災害法」に基づく指定基準の緩和を図り、その指定及び実施の迅速化を図ります。とりわけ、三宅島雄山噴火の被災者は避難生活が長期化していることから、支援措置の拡充と早期実施を強くすすめます。
化学物質過敏症・シックハウス対策
快適さや便利さを求めるあまり、私たちの住環境は人工の化学物質で取り囲まれており、それによる健康被害が生じています。建築物由来の化学物質被害を防止するために、民主党では、建物完成時の化学物質濃度測定義務づけと、大規模建築物における化学物質の定期的測定を義務づけたシックハウス対策2法案を提案しました。また、化学物質過敏症対策として、メカニズムの解明や治療体制の確立、療養所の建設、学校(シックスクール)対策の徹底などについても提言を行っています。
たばこ・飲酒対策
未成年者に対するたばこ、アルコール飲料の販売、提供の禁止を徹底するとともに、健康、公衆道徳、教育、国民の安全等の観点から、行き過ぎた喫煙、飲酒が行われないような環境を整備します。健保財政への財源確保対策も視野に入れて、たばこ税および酒税の税率アップを検討します。民主党提案の「軽犯罪法の一部を改正する法律案」を成立させ、公共の場における喫煙を禁止し、危険で迷惑な歩きたばこをやめさせます。
戦後処理問題
わが国と近隣諸国との建設的関係の土台を構築するためにも、歴史的事実の真相究明は必要であるという観点から、国会図書館に恒久平和調査局を設置する「国立国会図書館法改正案」の成立をめざします。また、アジア等の女性に対する旧日本軍による「慰安婦」問題の解決を図るため「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の成立と、在日の旧植民地出身軍人軍属の救済を図るため「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案」の成立をめざします。これらの法律案は、当事者の方々が高齢化していることに鑑み、早期の成立を図ります。
|
|
|
|