ニュース
ニュース
2008/08/18
鳩山幹事長ら、八ッ場ダムの建設現場を視察 地域住民のなまの声を聞く




 鳩山由紀夫幹事長をはじめ国会議員、次期衆院選挙公認内定候補者ら一行は18日午後、群馬県八ッ場ダムの建設現場を視察。地元住人らから概況説明を受け、要望を聴取するとともにダム建設に伴い移転先となる代替地などを視察した。

 一行ははじめに、党の八ッ場ダム研究顧問を務める群馬第2区総支部長の石関貴史衆院議員から八ッ場ダム建設の経緯と目的、現在の状況などの説明を受けた。

 八ツ場ダムは、治水と利水を兼ねた多目的ダムとして、国が1952年に群馬県長野原町の利根川水系吾妻川中流に計画。住民の反対運動の末、2001年に国と水没地域住民が土地の補償基準で合意したが、代替地整備が進まず本体工事は未着工のまま。度重なる基本計画の変更により、事業費は当初の2110億円から4600億円に膨らんだ。しかし2007年には当初の目的に加え、地球環境に配したものをとダム放流水による水力発電を追加。これについての予算は加えられておらず、今後さらに膨らむ可能性が高いことも含め、反対派は多くの問題点を指摘している。

 同じく八ッ場ダム研究会顧問を務める島津氏(全国水源問題連絡会代表)は八ッ場ダム事業の様々な問題点として、(1)美しい吾妻渓谷の喪失(2)貴重生物の喪失、(3)水質悪化(4)ダムサイト岩盤の崩壊の危険性――等を具体的に列挙。国民は巨額の負担を強いられることになるとして事業の見直しを訴えた。また、生活再建のアフターフォローの必要性を主張。ダム見直し後の生活再建・地域振興を確実なものにするためにはその実施を制度的に裏付ける法整備が不可欠だとした。

 川原湯温泉観光協会会長の樋田氏は、ダム事業をめぐり祖父母の代から3代、60年間も政治の渦に巻き込まれ地元住民たちは疑心暗鬼になっていると述べ、「正直ダムをつくってもつくらなくてもどちらでもいい。子どもたちが安心して暮らせる場所と時間ができればいい」と切実な思いを明かした。水没地区の住民は移転を余儀なくされ、そのことで子どもたちが学校を移り、友達と分かれることになったり、安心して通える通学路が閉ざされたりするなどの実態を紹介。「一番泣いているのは子どもたち。子どもたちを泣かせない政治を」と悲痛な叫びをあげた。

 川原湯地区区長の豊田氏は、ダム事業に伴って川原湯地区が危険にさらされること、これまで建設省、国土交通省と体質は変わらず、長年仕事をせずに工事を長引かせてきたこと、地元住民に事実を明かさず事業を強行していることを問題視。何よりも安全性を重視した取り組みを、と要請した。

 鳩山幹事長は続いて、高山長野原町長、茂木東吾妻町長から早期の生活再建と移転を強いられた水没地区へのインフラ整備を求める陳情書を受取った。

 党「公共事業チェックの会」の会長を務めていると挨拶した鳩山幹事長は、八ッ場ダム事業をめぐっては、「政治家の思惑により地元住民が右に左に翻弄され、たまらないという気持ちわかる」と理解を示し、次期衆院選挙のマニフェストへの明記を含め、今後どのような対応をすべきかしっかりと検討していくと約束した。

 この後一行は、水没地区の代替地を視察。国土交通省関東地方整備局の八ッ場ダム工事事務所のスタッフの案内のもと、小学校や温泉地区などを見て回った。参加した議員らからは、ダムの費用対効果をはじめ様々な質問が飛び、本当にダムが必要なのか問題視する声が多く上がった。しかしながら担当者は、「今は明確な数字はいえない」など明言を避け、ひたすらに当初の目的の正当性を強弁。議員らは、費用対効果の根拠となる数字では、現在10万人の観光客がダム建設により700万人に増えると見込んでいることなどを指摘し、工事ありきの基本計画の変更だったのではないかとして、今後国会審議を通じても議論していく決意を固めた。

 視察には、川内博史、小宮山泰子、高山智司、福田昭夫、松木謙公、村井宗明各衆議院議員、大久保潔重、尾立源幸、広中和歌子各参議院議員、総支部長の柳田和己氏(茨城7区)、宮崎岳志氏(群馬1区)、柿沼正明氏(群馬3区)、橋本勉氏(岐阜2区)、萩原仁氏(大阪2区)、長尾敬氏(大阪14区)、大谷啓氏(大阪15区)、森山浩行氏(大阪16区)、阪口直人氏(和歌山2区)、石川貴夫、久保田勉両群馬県議会議員が同行した。
記事を印刷する