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2008/10/01
総理所信表明に対する代表質問 鳩山由紀夫幹事長
 民主党の鳩山由紀夫です。民主党・無所属クラブを代表しまして小沢一郎代表に続き、麻生総理の所信に対して質疑を致します。

〈総理の品格〉
 小沢一郎民主党代表は、民主党政権において自民党ができなかった「国民の生活が第一。」の政治とその具体的政策を、必要な財源と実施のプログラムを含めて国民の皆様に提案いたしました。
 それに比べて、総理の所信とこの場における答弁は、国のビジョンも政策も具体性を欠き、まるで小沢総理の所信に対する代表質問のようであり、もう与野党が逆転したのかと思われた方々も多かったと思います。
 あなたが総理の責任の重さを語るなら、民主党を批判する前に、付け足しのような形ばかりのお詫びでなく、自民党総裁として政治空白を招いたことに対する国民への謝罪、そしてなぜ二年の間に三人目の総理となったかの総括と反省を真剣に語るべきでした。
 なぜ総理の座をいとも簡単に投げ出してしまったのか。それは、リーダーに必須のこの国をこう変えたいというビジョンも政策も、そのためには死を賭しても闘うという覚悟も、お二人とも持ち合わせていなかったからです。失敗に対する反省と総括抜きでは、例え総理の椅子を継承されても、また同じ過ちが繰り返されるだけです。
 あなたの所信は到底、「責任と実行力ある政治を行う」姿勢には見えず、真摯さも謙虚さも見られません。はっきり申し上げます。あなたの姿勢は、第九十二代内閣総理大臣としての品格に欠けています。

〈閣僚の資質と任命責任〉
 麻生総理、あなたは所信で簡単に中山国土交通大臣の辞任に触れただけで、あなたの任命責任については述べませんでした。中山議員について、「任命したときには適任だった」と語ったと伺いましたが、その言葉は任命責任を回避する発言です。
 元々中山議員は偏向した発言を繰り返していたではありませんか。それとも、歴史観と国家観を共有する同志と思って大臣に任命したのでしょうか。あなたもかつて日本は「一民族」であると発言されていました。その言葉は本音でしょう。アイヌ民族が先住民族であることが認められた年に、何と言う発言をする大臣を任命してしまったのですか。成田空港問題や大分の教育委員会汚職の事実すら把握していなかった人を閣僚に任命し、五日で辞職させなければならなかったことは、単なる失言問題でなく、重大な不祥事です。任命責任について、しっかりと国民にお詫びし、あなた自身を含めて二度と繰り返さないと誓うべきです。いかがですか。

〈解散権と総理の見識〉
 民主党は国会の役割を発揮した後、直ちに解散・総選挙の実施を要求します。「信を問え」、それが国民の声です。選挙を前に麻生内閣が最低限国民に示すべきことは、民主党批判ではなく、福田内閣の何を引き継ぎ、何を新しく提案するかをはっきりと提示することです。ところが、後期高齢者医療制度にしても見直しを一年かけて検討する、年金財源も検討を急ぐなど、重要政策のほとんど全部が結論の先送りです。全部曖昧にしたまま、選挙を戦おうとしているのですか。あまりに国民に対して失礼で誠意のない態度です。
 また、民主党が補正予算に賛成するか否かを代表質問の中で答えよと言われました。これも総理としての資質が疑われる、国会に対しては失礼な話です。全体像がさっぱりわからない予算の賛否は、予算委員会の質疑を通して決めるのが当然ではありませんか。
 民主党は補正予算の審議を引き延ばすことなど毛頭考えていません。六日から予算委員会の審議をしようではありませんか。民主党はこんな補正予算では決して景気回復にはならないと考えますが、それでも補正の審議を行なってから、国民のみなさんが待望している解散・総選挙に臨むべきです。総理の所見を問います。

〈民主党への批判と質問に答える〉
 麻生総理、あなたは民主党に対して多くの質問をされました。しかし、野党には答弁権が与えられていません。もし、ルールに反して答弁を求めるのであれば、質問時間の制限を外してください。あるいは野党にも所信表明を行わせるべきです。あなたの態度は、ただ選挙に勝たんがために国会を利用する、総理たる資格を欠くものです。
 あなた方が自民党総裁選挙でお祭り騒ぎをやり、政治空白を作り出していた間、リーマン・ブラザーズの破綻に始まる金融不安が広がり、汚染米が学校給食に使われていた事件、社会保険庁による組織的な「消された年金」事件など次々と新たな重大問題が起きました。北朝鮮には拉致事件の再調査の延期を通告される始末です。しかし自民党は総裁選に明け暮れ、福田総理は居留守状態で、なんの対応もできなかったではありませんか。
 その張本人のあなたに民主党を批判できるのでしょうか。本来、憲政の常道に従い、直ちに政権を野党に明け渡し、民主党政権で国民に信を問うべきです。
 わが国には政権交代とそのための二大政党制が必要です。民主党と自民党は理念も政策も違います。政策を競い、その優劣で国民の審判を仰ぐのが議会制民主主義の基本です。もちろん野党といえども、政権が国民を豊かに導いている時には大いに協力すべきです。しかし、国民生活が破壊され国の尊厳が失われていく時に、自民党政権を倒すことは民主党の使命とも言うべきものです。国民生活を破壊し、この国を駄目にしてきた自民党を政権の座から追放することを、民主党が目標とするのは当然ではないですか。
あなたは民主党の協力を求め、民主党が自民党に協力しないことを非難しますが、それはあなたが安倍さん、福田さんと同じ間違いを犯すことを宣言していることになります。
 ある国際的なエコノミストは、「良し悪しや、好き嫌いは別として、この政治的なデッドロック(行き詰まり)から早期に抜け出すためには、民主党が次回の総選挙で勝つしかない。単独にせよ、連立にせよ、民主党が与党となる必要がある。さもなければ、現実問題として停滞が長引くだけだ」としております。
 あなたの批判に対する反論はこの評論で十分であると考えます。
 あなたの幾つかの質問ですが、まず民主党の政策を勉強してから質問してください。あなたの所信で示された政策はそのほとんどが福田内閣の政策ですが、民主党はその全てに具体的な政策を提案しております。自分に賛成しない者は敵であり、悪であるとして攻撃する路線、それを人はファッショと呼びます。あなたは民主党をナチスに例えられました。あなたに民主党がなぜナチスなのかこの場でご説明を頂きたいと存じますが、あなたの質問は政策が異なる政党に対して極めて傲慢不遜です。これがあなたの質問に対する民主党の回答です。

<経済財政>
 総理、あなたが強調する「安心実現のための緊急総合対策」について、安心したのは自民党の政治家と官僚であり、まさに古色蒼然という声が聞かれます。すなわち、これで経済と国民生活の立て直しの展望が示されたとは言えず、むしろ既得権益の枠の中での中途半端なバラマキという評価がほとんどです。
 民主党はすでに、ガソリン税などの暫定税率廃止と地方財源の確保、高速道路無料化、中小企業減税と金融円滑化、住宅ローン減税、後期高齢者医療制度の廃止などを盛り込んだ「緊急経済・生活対策」の実施を提案していました。ところが自公連立政権は今年の夏まで、「いざなぎ景気を超える戦後最大の景気拡大、今後も米国景気の復調に伴って輸出が伸びる」などと喧伝し、サブプライムローン問題の深刻さを軽視し、解散が取りざたされる頃になって経済対策に乗り出すお粗末さでした。
 百年に一度の金融危機と言われる事態はますます深刻化しています。今、緊急に行うべきことは、第一に、潤沢な流動性の供給を行うこと、第二に、金融機関による貸し渋り、貸しはがしの監視、第三に、真に経済効果のある施策を迅速かつ十分に行うことです。さらに、カジノ資本主義から健全な資本主義の再構築のため、わが国の政治経済の仕組みを抜本的に変える必要があります。
 民主党はすでに、若者や働く貧困層のための職業紹介・職業訓練、住宅支援など就業支援、中小企業を支援しつつ最低賃金の全国平均で千円への引き上げ、二カ月以下の派遣労働の禁止、全ての非正規労働者の社会保険加入など正規・非正規の同一条件での均等待遇の実現、公立高校授業料の無償化、私立高校などの学費負担軽減、生活費も支援できる奨学金制度の創設、月額二万六千円の子ども手当や出産助成金の支給などの経済的支援と、保育サービスの充実など、個別具体的な政策を打ち出しています。
 なぜあなたはまだ具体的な政策を示せないのでしょうか。それはこれまでの自民党政治への反省も総括もないからではありませんか。これから検討している暇はありません。民主党に政権を直ちに任せてください。あなたの後は民主党が責任を持ちます。

 具体的に問います。まず、定額減税を実施すると言いながら、額も財源も示されておりません。つい最近は自民党幹事長が追加策として定率減税や法人税減税に言及しています。あなたはほかにも配当金非課税など政策減税の実施に言及していますが、何をやり、その財源は何か、はっきりお示しください。
 また、財政再建は努力目標に変えられたようですが、これは当面、赤字国債の大量発行も念頭に置かれてのことでしょうか。二〇一一年度におけるプライマリーバランスの達成という看板は降ろしたのですか。お答えください。
 また、いままで政府・与党は埋蔵金などはないと言ってきましたが、あなたの認識では埋蔵金はあるのかないのか、使うのか使わないのかお示しください。

 総理は日本経済を「全治三年」と言われました。日本経済を重病にしたのは自民党、そしてあなたも主要な責任者の一人ではないですか。あなたが全治三年というならそのようになった原因、総括を示してください。また、あなたは病にかかった日本経済と国民生活に、消費税税率を三年後には上げると言っておられるのか、上げないというのかお答えください。
 あなたは、バラマキのツケが赤字国債と消費税増税ではないかという疑問に、何もお答えになっていません。この際、麻生内閣の財政方針を明確に示してください。


<消えた年金、消された年金>
 五千万件の「消えた年金」のほとんどは未だに宙に浮いたままです。これに加えて、先月はじめ、民主党の追及により、社会保険庁の意図的な改ざんによる「消された年金」の実態が明らかになってきました。
 舛添厚生労働大臣は改ざんの疑いがある事例が六万九千件と答えています。しかし、これは氷山の一角であり、納付期間の改ざんやオンライン化以前のものは含まれていないとのことです。
 また舛添大臣は「組織的関与があったと推量する」と答えています。元職員は、毎月行われる社会保険庁の収納対策会議で標準報酬月額を改ざんして徴収率を上げるよう指示があったことや、こうした手法は社会保険庁の本庁の職員も承知していると証言しています。これは困り果てた事業者を役人がそそのかして、まじめに働く人たちから年金を奪い取る組織的な犯罪ではありませんか。
 あなたは、ひたすら手間と暇を惜しまず確かめ続けますと言います。しかし、これは「冬になれば年金の全部が灯油代で消える。今年の夏は会えたが、来年はもう会えないかもしれない」と淋しげに語るお年寄りへの答えにはなっていません。さらに、記録が回復せずに本来の年金額を受給できないまま、あるいは記録が改ざんされたことも知らぬままに、お亡くなりになる方も多いのではありませんか。
 民主党政権では、国家プロジェクトとして全記録の確認と訂正を徹底的に集中して速やかに行い、訂正から年金受給額の回復までの期間を短縮し、全ての加入者に「年金通帳」を交付して、いつでも自分の年金記録が報酬月額も含めてすべて確認できるようにすることを提案しております。
 総理、あなたは具体的に国民に何を約束するのでしょうか。消えた年金はお年寄りが亡くなられる前に回復するのでしょうか。消された年金はその全容を調査するのでしょうか。
 さらに、総理就任会見であなたは、基礎年金の国庫負担率を約束通り来年四月から二分の一に引き上げると言っておられますが、その財源は何によって確保するのか、明快にお示しください。

<汚染米に見られる行政腐敗>
 次に、これもあなたの政府の腐敗の象徴である汚染米について問います。
 この事件は、事故米を処理したい農水省と安価な事故米で儲けたい業者が結託して起こした事件です。そもそも、食用でない事故米を工業用として売り渡すこと自体、食の安全・安心を預かる農林水産省としてあるまじき行為であり、国民から見れば犯罪行為です。総理、あなたはこれをどう説明するのですか。
 三笠フーズに九十六回も調査に入りながら、何も発見しなかったことは、農水省と業者が癒着していた何よりの証拠です。実際にはその内の四回、焼酎用に使う予定と報告されています。汚染米をなぜ水際で止めなかったのですか。汚染米をなぜ焼却処分にしなかったのですか。汚染米をなぜ着色するなど区別しなかったのですか。
 事件発覚直後、農水省の役人は責任を否定し、農水大臣は「じたばた騒ぐな」と言い放ちました。そして辞めました。今度は、政府が農水省に改革チームを作ると言っています。でも、国民の誰もが知っています。泥棒が泥棒を取り締まることも、告発できるはずもありません。
 偽装、改ざん、不正転売など食の安全が脅かされる事件が相次ぐ中、民主党は、抜本的な制度の改正が必要と早くから主張して、原料原産地表示の義務付けの拡大、食品取引の流れを追跡するトレーサビリティ・システムの導入と徹底、食品行政の一元化等を柱とした「食の安全・安心対策関連法案」をとっくに衆議院に提出しています。しかし与党はその重要性を理解せず、たな晒しにしています。もし民主党の提案を受け入れていれば、このような事件は起こらなかったのです。
 食品行政に対してこんな体たらくの政府だからこそ、既存のものを寄せ集めただけの消費者庁を設置すると言われても、果たして機能するのかと疑わざるを得ません。民主党は消費者の立場から省庁を強力に監視し消費者の心を十分に反映できる独立した機関として「消費者権利院」を提案しています。

 もう一つ、あなたは中国製餃子事件の解決に取り組まれるのでしょうか。今度はメラミン入り乳製品の問題が燎原の火のごとく広がりつつあります。政府は抜本的な対策を講じるどころか、中国政府に遠慮して、中国内で回収した餃子で中毒被害が出たという重大情報を国民から隠蔽しました。あなたは今年の二月、熊本市での講演で中国製餃子事件に関連して「中国に感謝しなくてはいけない。ものすごく付加価値がついた」などと発言されました。被害を受けた方々のためにも発言をこの場で撤回することを求めます。
 薬害C型肝炎訴訟がようやくにして解決に近づいていますが、患者の粘り強い取り組みがなければ肝炎被害はさらに多くの国民に広がっていたでしょう。
 消された年金、汚染米、この薬害肝炎、いずれも政府が加害者であり、それを告発し正しい方向に転換させようと努力してきたのは国民です。公僕たる官僚が国民の税金や利権にあぐらをかき、それに乗っかり怠惰な政権の美酒に酔ってきたのが自民党です。自民党は誰がトップになっても変わらない、「官僚内閣」「官僚政権」であり、政権交代が必要だと民主党が主張する所以はここにあります。

<後期高齢者医療制度、障害者自立支援>
 「介護の次は、医療保険。少ない年金から天引きされてもう生活できない。新聞も牛乳も止めた」、「年寄りは病院に来るなというのか、九十日経ったら病院から出ていけということか」。こういった国民からの強い批判があったにもかかわらず、政府は後期高齢者医療制度を今年四月から強行しました。あなたは微笑みを忘れた日本人に微笑みを蘇らせると所信で言いました。しかし、国民から笑顔を奪ったのは、まさにこのような弱者切り捨て、競争至上主義の自民党政治なのです。
 十月十五日、まもなく子どもの扶養家族になっており半年間保険料の徴収が凍結されていた人などを含め、新たに六百二十五万人の高齢者を対象に保険料が天引きされます。あなたの所信では「一年を目途に、必要な見直しを検討します」とされました。国民への説明不足というのがあなたの基本認識のようです。自民党総裁選の終盤になってあなたは「抜本的に見直す必要がある。七十五歳という年齢制限はつけない」とテレビなどを通じて国民に明言されました。
 しかし、自民党総裁になった途端に、まったくやる気が失せたようです。「抜本的見直し」が、単なる「改善」に変わりました。聞けば、千三百万人の七十五歳以上のお年寄りのうち、会社勤めをしておられる約三十五万人の方々のみ、以前入っておられた保険に戻すだけのようです。これでは苦しいお暮らしをされている方々にはまったく無縁の話ではないですか。結局のところ、あなたにはお年寄りや障害をお持ちの方々の日々の暮らしがお分かりにならないのです。一年をかけて見直しを検討している暇などないのです。
 民主党は、制度を直ちに廃止し、それに伴う自治体への財政支援を行い、国民健康保険と被用者保険など制度間の不公平を是正し、順次統合して医療制度を一元化することを提案しています。
 制度の欠陥を「説明不足」でごまかし、一年間の検討で時間稼ぎをするというのはあまりに姑息ではありませんか。
 自民党は六十五歳以上の障害者も後期高齢者医療制度に組み入れました。「自立支援」の美名のもとに、所得保障のないままに障がい者の方々に定率負担を押し付け、結果として障がい者の自立が妨げられたどころか、日々の暮らしにさえ困る方が大勢おられるのです。
 民主党は先の通常国会に、障がい者の方の一割負担を凍結して応益負担を応能負担に戻し、サービス事業者への財政支援を行う法案を参議院に提出しましたが、与党のご賛同をいただけませんでした。
 自公合意で抜本的見直しが確認されたと言いますが、何を具体的にやるのでしょうか。具体的に障がい者のみなさんにお示しください。

〈地域の再建〉
 総理の所信で食料自給率を五〇パーセントに引き上げるという表明がありました。あなたは、「攻めの農業へ、農政を転換する」と言われますが、これは数年前から自民党が言ってきた色あせたスローガンであり、未だになにも成果を上げておりません。例えば沿岸漁業、例えば酪農農家にどのような政策を進めるのか具体的に示してください。
民主党は、自給率を高め、安全な食料を供給するために、生産・流通・販売の一体的な農業の再構築を提案しております。そのためにもまずは経営の安定です。私たちは農業、畜産・酪農の戸別所得補償制度を創設します。そして漁業の所得補償制度、森林・林業の直接支払い制度も検討を進めています。せめて民主党に対抗するくらいの政策は示すべきではないでしょうか。
 「設備投資どころか融資が細って毎日の資金繰りすら厳しい」、「利益どころかやればやるほど赤字だ」「地域の建設業が立ち行かない」。地域を支える中小・零細の地場産業や商店経営者からの切実な声です。
 民主党は中小企業減税と金融の円滑化、地元企業への発注比率向上、中小企業いじめ防止法の制定を実現します。さらに中小・零細企業に対する貸し渋り貸し剥がしを食い止め、円滑な経営に資するため、かつて実施した「特別信用保証制度」を復活させます。
 総理は所信で「中小零細企業の底上げを図る」と言われますが、四千億円余りの補正予算で九兆円の事業規模を引き出すという上げ底政策の臭いがする補正予算案で十分と考えているエコノミストは皆無に近いとされます。率直に言ってもう少し実のある政策を示す熱意はないのですか。補正予算の審議前から、第二補正の声が政府からも聞こえてきます。どうやら政府も、この補正予算ではとても不十分と思っているのではありませんか。
 さらに地域経済、分権の問題です。自民党政府はこれまで、中央官僚の言いなりに肝心の権限は譲らず財源は取り上げる名ばかりの「三位一体改革」で、地方の力を削ぎ、自治体間の格差を広げてきました。
 民主党は、地域のことは地域で決め、地域の特性・特徴を生かして、主体的に創意工夫で取り組める真の地域主権のかたちを実現することこそ、地方の活性化の起爆剤だと考えます。そのために財源も権限も人材も大きく地方に移譲します。地方の出先機関も廃止・縮減し、国から地方への個別補助金を廃止し、地方が基本的に自由に使える「一括交付金」とします。
 そして、第一次産業や中小企業の立て直し、高速道路の原則無料化、国民生活を確保して地域社会を活性化するための郵政事業の抜本的見直しなど、地域経済と社会の再建に取り組みます。
 総理、あなたは地方税源の減収対策を野党に尋ねましたが、私たちに言わせれば、ひも付き補助金と直轄事業負担金こそ問題です。これをあなたはどうしようとされるか、お示しください。

<外交>
 さて喫緊の外交問題に限って触れさせていただきます。
 福田総理が政権を投げ出したことで、八月の日朝実務者協議で曲がりなりにも北朝鮮が約束した拉致問題に対する再調査を延期する格好の口実にされてしまいました。また北朝鮮がこれまでの六者協議の合意をふみにじり、核施設の無能力化の中断を発表したにもかかわらず、政府としての対応はまったく聞こえてきません。
前内閣が私の手で解決しますと言い切った拉致問題を解決するために、あなたは一体、どのような具体的な取り組みをされるのでしょうか。
 民主党は、米国から言われるままにイラクやインド洋に自衛隊を派遣したことは、憲政史上に汚点を残したと考えています。イラクからの撤退をようやく決断した政府は「テロ新法」の延長しか頭にないようですが、七年を経た今、むしろアフガニスタンの治安情勢は悪化しており、隣国のパキスタンでもテロが頻発しています。
 今改めてわが国がテロとどう闘っていくのか、アフガニスタンの平和と安定、復興のために何をなすべきか、給油にとらわれず、もっとアフガニスタンに期待される支援のあり方を、冷静かつ主体的に見直すべきです。
 あなたの外交は、結局古い日本の保守派外交を、言葉を換えてなぞろうとしているだけではないですか、お答え下さい。

<民主党の財源と麻生内閣の財源>
 最後に、自民党と総理が執心している自民党と民主党の政策実現のための財源問題をもう一度、整理いたします。
 民主党は、年金・医療・介護、子育てと教育、農林漁業・中小企業、生活コストの五分野でセーフティネットをつくり、財政構造、国民主導の政治、地方分権を三本柱とする政治と行政の仕組みを変えることで、日本を地球に貢献する国とし、新しい生活と地域経済の再生が可能となり、日本が生まれ変わることを可能とします。そのために、ムダ使いの根絶、不要不急な事業の中止・延期などを徹底すれば、平成二十四年度までに、一般会計、特別会計の合計約二百十二兆円の約一割にあたる二十一兆円を国民の支持を基盤とする民主党政権の意思により確保できると考えています。
 それに対して、麻生政権においては、総理自身が今年度中の実施を断言した定額減税の財源、来年度の実施が法律で定められている基礎年金国庫負担引き上げの財源、二〇一一年度におけるプライマリーバランスの実現のための財政対策を含めて未だに財源対策は示されていません。赤字国債の発行、消費税の増税、埋蔵金の取り崩しなど、色々と取りざたされていますが、はっきり示されていません。後期高齢者医療制度創設で節減された五千七百億円の予算、基礎年金の二分の一国庫負担の財源にするとされた定率減税の廃止による二・五兆円の増税分もどこかに消えてしまいました。
 すなわち、野党と政府・与党で財源対策は逆転しており、民主党のガラス張りのムダの排除、総組み替え論に対して、麻生自公政権の財源対策はまったくのブラックボックスとなっています。
 民主党は、国の直轄事業の節減、国家公務員人件費の二割削減、天下り禁止と入札改革による随意契約と談合の廃止による政府調達予算の節減、ひも付き補助金の一括交付金への振り替え、特別会計の余剰金の活用、政府資産の計画的売却、租税特別措置の抜本整理などにより、政権初年度、二年目、三年目から四年目までに順次、政策の実施に併せて予算の総組み替えを行っていきます。
 私たち民主党は、国民からお預かりした税金は一円もムダにいたしません。自民党は当たり前にように無駄遣いをしてきたではありませんか。総理。たとえば、地元が不要と言った事業費二千六百五十億円にものぼる川辺川ダム国営事業は中止しますか。八ツ場ダムはどうですか。十二兆六千億円にもなる天下り団体への資金交付をどれだけ削減できますか。当然、野球道具、マッサージチェア、居酒屋タクシーなどへの支出は止めても、まだまだ隠れた役人の既得権はたくさん残っています。これらの全てのムダ遣いをあなたの「官僚内閣」で止めることができるはずがありません。
 自民党、公明党議員に申し上げます。民主党に対する批判はご自由ですが、党に帰って自分たちの政策の財源をまず確かめてください。選挙区に帰って有権者に説明できる財源は何か、赤字国債か消費税増税か。なぜ、民主党には税金のムダ遣いを止めることができて、自分たちの政権ではできないのか。これこそ国民が最も知りたいところです。
 選挙区であなた方の主張が通るのか、家計をやりくりしているご家庭の主婦、経費を節減している零細企業や商店のみなさんになんと説明するのか、総選挙で試すべきです。

<政権交代>
 さて、総理は所信で「合意形成のルール」と言われました。私は、なぜ民主党が自民党と談合しなければならないのか、さっぱりわかりません。議会のルールは確立しており、それを換骨奪胎させてきたのは自民党ではないですか。自民党、公明党は、衆参で絶対多数を握っていたときは、強行採決の繰り返しだったではないですか。むしろ直近の民意である参議院の意思を無視して、自分たちの主張を丸呑みしろというあなた方の姿勢こそが合意形成を妨げてきたのではありませんか。
 総選挙で民主党が勝利すれば衆参の捻れは解消します。そして私は必ず捻れが解消すると確信しております。民主党に政権は任せられないと自公政権は言います。しかし、自公にこれ以上政権を委ねていて、国民にとっても、この日本にとっても、なにもいいことはありません。あなたは、日本人の変化を乗り切って大きく脱皮する力を信じると言われました。私も、日本人は自民党政治から大きく脱皮する力を持つことを信じています。
 今までやれなかったことは、これからもできないのです。すなわち、自公政権の延長線上に明日はなく、総理の言う強い日本も、明るい日本もないのです。少なくとも民主党政権には、「国民の生活が第一。」という政権の大目標があり、革命的改革によって国民生活と日本の経済社会を変えることができます。「官僚政権」に代わって「国民政権」を樹立しようではありませんか。

 来るべき総選挙において、民主党は国民の期待に応えるため全力を挙げることをお誓いし、私の代表質問を終わります。
 国民の皆様、ご静聴ありがとうございました。
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