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2006/05/24
【衆院教育特】教基法審議入り 松本議員、民主党案の妥当性指摘


衆議院教育基本法に関する特別委員会が24日午前、小泉首相出席のもとで開かれ、終盤国会の最大の焦点ともいえる教育基本法改正案が総括質疑が行われ、実質審議入りした。

 冒頭、民主党が23日に衆議院に提出した「日本国教育基本法案」に関して、民主党・無所属クラブの笠浩史議員が提案理由説明を行い、続く質疑には政調会長の松本剛明議員、藤村修議員が立ち、民主党案と政府案を一括で審議した。また、民主党案に関しては、笠、達増拓也、大串博志各議員がそれぞれ民主党案提出者の立場から答弁した。

 質問に立った松本議員は、教育の根幹に係る重要法案であるにもかかわらず、会期が実質1カ月しか残っていない段階で提出したうえ、質疑では「じっくり審議する」「慎重に対応する」といった言葉を多用した答弁を繰り返しながらも、実際には今国会での成立を目指しているとされる政府の姿勢を問題視した。そのうえで、教育基本法に関する国民的議論が進んでいるか否か、首相に認識を質した。首相の「教育基本法について審議が始まったばかり、これが毎日審議していただくことで国民的な議論がはじまる」といった趣旨の答弁を受けて松本議員は、「郵政並みの熱意をもつように」との指摘が自民党内からもあがっていることを指摘し、首相の取り組み姿勢に注文をつけた。
 
 続いて「教育基本法改正案について5年以上にわたって議論してきた」とする政府の主張について疑念を呈した松本議員は、3年ほど前に出された中教審の答申内容とも今回の政府案は異なるうえ、70回にわたって議論してきたと政府・与党は述べているがその内容は全く国民の知るところではないと分析。「そういう意味では、この教育基本法の議論は、今から国民的な議論をしっかりと行うべきだ」と改めて問題提起し、「会期中にあげるというのは本末転倒だ」と重ねて指摘した。
 
 なぜこの時期の改正か、改正の狙いは何かを質したのに対して小坂文部科学大臣は、痛ましい事故が多発する今日の社会変化、不登校や学級崩壊、家庭や地域の教育力の低下といった諸問題の解決には教育の立て直しが必要との要望も多く、この時期の改正となったとした。それに対して松本議員は考えが一部一致するとしたうえで、「これからの教育をどうするかとの視点が大切。教育基本法を変えて、これからの教育のスタートになるような法律をつくっていくことが原点」と主張し、民主党案の意図・理念について質した。

 答弁に立った笠議員は「民主党としても教育基本法が出発点であるとの観点で党内で議論を重ねてきた」と前置きしたうえで、日本国憲法に順ずる重要な法案ということで、法案名も「日本国教育基本法案」としたことを明らかにした。「教育を取り巻く環境は現行法ができた60年前とは大きく変化してきている」との見方も示した笠議員は、問題が山積するなか、これまでの物質至上主義の限界を認識して未来を展望した新たな文明の創造を担う人材を育てることこそが教育の使命であると考え、そうした理念のもとで、日本の教育を具体的に展望・改善していくための大きな第一歩として法案を提出したとも語った。

 松本議員は、議論すべき課題のひとつとして、教育格差の問題を取り上げ、現行法では機会均衡を謳いながらもその前提が崩れていると指摘。民主党案ではその点にどう応えようとしているかを質した。その点については達増議員が、「教育は経済的格差を克服する機会であるにもかかわらず経済的格差ゆえに教育を受ける機会が不平等になれば、回復不可能な人生の出発点における格差問題となる」と分析したうえで、学びの機会が得られないことは決定的な人権侵害になるとも主張。そうした視点に立って民主党案では、第2条に「学ぶ権利の保障」を掲げ、機会均等を明確に謳ったとした。

 また、この間、話題となっているいわゆる愛国心の問題についても、民主党案では「日本を愛する心を涵養し」と表現し、水がじわじわとしみこんで行くように自然体であることを意味する涵養という言葉を使うことで、国を愛する心を一方的に押し付けられることはないよう配慮したと笠議員は答弁した。他方、政府案に関して松本議員が質したのに対しては、小坂文科相が「伝統や文化について学んだことを生活に生かそうとする態度を総合的に評価するもので、子どもたちの内心を評価するものではない」とする答弁だったが、評価につながるものではないとする根拠は極めて不明確だった。

 松本議員はさらに、教育への財政的裏づけの問題を取り上げ、教育予算の対GDP比支出の低下傾向と国際水準と比べ非常に低い日本の教育予算の現状を指摘した。民主党案ではこうした実情改善に向けてどう対応しているか問われたのに対しては大串議員が答弁。民主党案では、第19条で教育の振興に関する基本的計画の策定と公表を政府に求めるとともに、第19条2項でその基本計画には国の予算の確保及び充実目標を盛り込むよう規定しているとした。そうした答弁を受けて松本議員は、教育への財政的裏づけの希薄な政府案を問題視するとともに、「日本の教育を根本的に変えて行く」とするからには、民主党案に見られるようなこうした視点が不可欠だとして、政府案のあいまいさを浮き彫りにした。
関連URL
  → 民主党提出の「日本国教育基本法案」の趣旨説明
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=139
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