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2008/11/05
【衆院財金委】階議員、公的資金導入先の金融機関の自己責任基準の明確化求める




 衆議院財務金融委員会で5日、金融機能強化法改正案に関する質疑が行われ、階猛議員が質問に立ち、麻生首相はじめ中川財務・金融担当大臣に質した。

 冒頭、階議員は米国大統領選でオバマ氏が当選確実となった報道にふれ、米国のように2大政党でリーダーとなるべき人が主張をぶつけあって国民の審判を仰ぐことを首相も行いたくなったのではないかとして、麻生首相に答弁を求めた。首相は、「民主党という名前はあちこちにある」などとしたうえで、米国で民主党政権ができたから日本でもという思考はもっていないとして、解散・総選挙に出て国民に審判を仰ぐか否かについては答弁をはぐらかした。

 階議員は続いて、金融ビッグバン後の金融と実体経済の関係についても質問。階議員は10年前に長銀に勤務していたことを明かしたうえで、当時は公的資金を投入するかどうかについて大きな議論が沸きあがったと説明。そのうえで今回のあり方について「公的資金を使うことが当たり前のような雰囲気が漂い、隔世の感がある」と指摘した。

 同時に、平成8年から橋本政権下で金融ビッグバンが断行され、金融機関の業務の自由化、ルールの明確化・透明化、世界標準にあわせた制度の導入が進んだと階議員は説明。「以来、金融機関の競争が激しくなり、金融機関も自己責任を問われることになり、その結果、平成10年に長銀などが破綻した」と語り、金融ビッグバンのもとでは自己責任が大原則で、公的資金の導入は例外中の例外であったはずだと改めて語った。

 そのうえで階議員は、「新たな経済政策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」が10月30日付けで示した「『生活対策』について(概要)」に記された「『金融機能の強化のための特別措置に関する法律』の活用・改善」とされる項目を取り上げ、「金融機能強化法の活用・使い勝手の改善を図るとともに、十分な政府の資本参加枠の拡大を検討する」とする一文について、公的資金に安易に依存するというニュアンスがあると指摘。「自己責任の大原則と矛盾するのではないか」として答弁を求めた。

 中川大臣は「公的資金を注入することは国民の税金を使うのであるから十年前も今回も慎重な制度設計をしなければならないし、国民の理解を得ることでは同じ」とした上で、緊急な経済対策の一環として緊急に公的資本を使って国が資本参加をすることについてはルール通りに行えば国民のニーズ、期待に応えられると理解すると答弁するに留まった。

 これを受けて階議員は、自己責任の大原則があるということは政府が認めているとの見方を示したうえで、「自己責任を問おうとしても問えない場合がある。それが大きな問題」と述べ、金融ビッグバンによって金融と実体経済の関係が大きく変わったことに言及。かつては実体経済に貢献するのが金融の役割であったが、最近は実体経済の成長に関係なく金融が肥大化して金融危機が起きると実体経済に悪影響を及ぼしている状況にあると分析した。階議員は「自由と責任はセットだ」と問題提起し、今までは自由の方だけにウェイトが置かれすぎていたとの認識を示し、自由を行使するなら責任を負うべきだと指摘し、規制のあり方を見直すべきだと指摘。自己責任で解決できずに公的資金導入で社会全体に迷惑をかける結果を招くのであれば、「規制のあり方も自由ではいけない」と階議員は述べ、儲けた金額を利益の配当に回すのではなく、自己資金を厚くするなど、リスク管理のあり方を考えていくべきだとした。

 麻生首相は「金融機関が大きくなればなるほど破綻したときの社会的な影響は大きい」とした上で、銀行への公的資金導入の基準も定めなければならないと答弁。「何を基準にするかというと、大事なところは踏まえてやらないと基準をきちんとしておかなければならない。基準は明確にしておかなければならない」との認識を示した。

 質疑後、政府原案に反対、修正案に賛成の立場から松野頼久議員が討論を行い、また、古本伸一郎議員が、「農林中央金庫及び農協系統金融機関は、本法に基づく公的資金注入の対象となることをかんがみ、貸出し等の金融業務の実施に際しては、厳正な政治的中立性を確保すること」とする8項目を列挙した付帯決議を読み上げた。

 金融機能強化法改正案は同委員会において、与党が提出した修正案とともに、修正部分を除いた政府原案の両方を採決。民主党は、与党の修正案には賛成したが、政府原案そのものには反対した。

 与党が提出した修正案においては、(1)金融危機とは別の理由で資本不足に陥った金融機関に公的資金を注入する際は経営責任を明確にする、(2)農林中金のほか信金中央金庫など中央機関に公的資金を一括注入する場合は支援先の協同組織金融機関を開示する――などの項目を盛り込んで、民主党の考えを一部受け入れる形となった。


 
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