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2010/01/24
「八ッ場ダムに係る水没地区住民との意見交換会」に参加 前原国交大臣


 前原誠司国土交通大臣は24日午後、群馬県長野原町で開催された「八ッ場ダムに係る水没地区住民と国土交通大臣との意見交換会」に臨んだ。政府からは馬淵澄夫国交副大臣、三日月大造国交政務官も参加、政治に翻弄されてきた地元住民らの苦悩や不安、怒りに耳を傾けながらも、「コンクリートから人へ」という鳩山政権の基本方針の下、公共事業全体を見直すなかでダム建設の再検討が必要であると強調した。

 地元住民との意見交換会は、八ッ場ダム建設中止を表明以降、政府側が希望していたもの。水没地区にあたる長野原町、吾妻町の八ッ場ダム建設に関係する住民が多数参加した。

 意見交換会では冒頭、大沢群馬県知事が挨拶し、「現地の苦労を受け止め、今後の政策に反映を」と求めた。

 続いて挨拶に立った前原国交大臣はまず、「皆さんには何の瑕疵(かし)もない。被害者である。大変な困惑と怒り、迷惑と将来に対する不安を抱かせてしまっていることは政治の責任である」と述べ、長年に渡る反対運動の末にダム建設という苦渋の選択をした参加した地元住民に対し陳謝した。

 そのうえで、「なぜ民主党政権はダムの建設中止を決断したか」と切り出すと、多くの日本人が抱えている日本の将来への不安は、(1)人口減少、(2)65歳以上の人口比率が高い少子長寿化により働き手が減少し社会保障が必要な人口層の増大、(3)900兆円を超える莫大な借金−−の3点が主な原因であると分析。民主党はこれを前提に税金の使い方を大きく変えていくと約束して政権に就いたとして、公共事業を圧縮し医療・介護・年金といった社会保障の充実や教育、子育て支援に充てていく必要性を訴えた。

 同時にこのような日本社会においては河川のみならず道路、空港、港湾整備等全ての公共投資を見直すとして、143全てのダム事業を見直し、トータルで再検証するなかで今の財政状況と優先順位のなかで決めなければならないと主張。「大きな政策変換のなかでご迷惑をけているが生活再建のために何ができるか、議論させていただきたい」と理解を求めた。

 長野原町の高山町長、吾妻町の茂木町長も「生の声を真摯に受け止め温かい配慮を」「世論から、政府から見放されるのではないかという住民の不安を考えてほしい」などとそれぞれ挨拶した。

 意見交換では、八ッ場ダム建設による水没地区の代表者、町議ら12人が発言。ダム建設を受け入れるまでの経緯とともに「住民の安全安心を確保するために苦渋の選択をしてきた。決断したからには後戻りできない」と述べた川原町八ッ場ダム建設企画委員会の野口委員長を皮切りに、「下流地域の1都5県の知事の意見反映を」「これまでダムありきの生活再建策を考えてきたのですぐに切り替えはできない」「近隣地域を含め手厚い保障を」などとする声が相次いだ。

 これに対し前原国交大臣は、公共事業全体を見直す必要性を重ねて訴え、一度始めたら止まらないこれまでのあり方を改め、法律や予算的裏づけを行いながら生活再建を保障していくと主張。同時に長年ダム事業に、政治に翻弄され続けてきた水没地区の住民の苦悩に理解を示した。また、事業継続となった岩手県の胆沢ダムとの違いはとの問いには、「本体工事に着工しているかどうか」がその判断基準だと説明した。

 一方で、住民側からはダム建設に係るムダ遣いを指摘する声も上がり、補償交渉で不公平があるなど地元国交省職員の働き方を問題視し、「会計検査院による調査を」との要望があった。

 前原国交大臣は最後に、「今回の意見交換を通じて下流地域の命と財産を守るために皆さんが苦渋の選択をされたことへの理解を深めた」と述べ、今後1都5県の知事からの意見聴取や下流地域の方々らと意見交換する考えを表明。「予断ない再検証をさせていただく」と締めくくった。
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