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2010/10/07
【参院本会議】郡司議員、菅総理の所信表明に代表質問




 民主党・新緑風会の郡司彰議員(参議院議員副会長)は7日、参議院本会議で菅直人総理の所信表明に対する代表質問を行った。

 昨年8月の総選挙で民主党を中心とする政権が発足して1年を経過したとの認識を示した郡司議員は、団塊の世代を今後どう活かすかはこれからの高齢社会を見通すなかで大事な要素だとして、総理の率直な感想を求めた。

 菅総理は、この世代が元気なうちに(高齢化社会特有の)大きな課題を解決して次の世代に引き継ぐことが世代としての責任だとする認識を示し、「『有言実行内閣』の先頭に立って重要課題を次の世代に残さずに解決していく」と重ねて語った。

 続いて、ブリュッセルで開催されたアジア欧州会議(ASEM)での温家宝首相との会談について郡司議員は取り上げ、今日の日中関係の改善を図ることができたか、主張すべき「領土問題は存在しない」ことを認識させることができたかを質問した。

 菅総理は、会談においてはまず、尖閣諸島はわが国固有の領土であるという日本側の原則的な立場を、温家宝首相からは中国の原則的な立場を述べ合ったううえで、日中関係の現状は望ましくないという点、さらには6月に行った菅総理と胡錦濤中国国家主席との会談で一致した戦略的互恵関係を進展させるという原点に戻ること、そしてハイレベル交流・民間交流を行っていくという3点について確認して見解が一致したことを明らかにした。

 郡司議員はまた、「日本の外交・安全保障の基軸である日米同盟も大きな問題点を抱えている」として、普天間基地移設問題・日米関係を取り上げた。自民党政権時代から先送りを続けてきている、この問題の解決が遅れている最大の理由は地元の沖縄県民が強く反対しているからであり、民主党への政権交代を機に、新しい視点からの見直しが必要ではないかと問題提起し、総理の認識を質した。

 菅総理は、本年5月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中している負担の軽減に取り組む姿勢を強調。目に見える負担の軽減について米国の協力を求めつつ最善を尽くすとした。

 郡司議員は同時にアメリカの防衛戦略について、2つの世界的な危機に同時に対処する「二正面作戦」の変更に着手するなど、決して固定的なものではないと指摘。グアムへの基地移転など極東アジア情勢の今後の変化も見すえて新たな角度から海兵隊基地のあり方を考えてもいいのではないかと問題提起した。

 さらに補正予算に関して取り上げた郡司議員は、菅総理が所信表明演説のなかで今国会の最大の課題は「第二段階である経済対策のための補正予算の成立である」として、急激な円高やデフレ対策として2010年度補正予算案の編成を指示したことを取り上げた。規模は5兆円程度の見込みで、「雇用・人材育成」「新成長戦略の推進」「子育て、医療・介護・福祉」「地域活性化、社会資本整備、中小企業対策」「規制・制度改革」を5本柱とする政策課題を達成しようとするもので、財源には国債の新規発行ではなく、決算余剰金や低金利で浮いた国債利払い費、法人税回収分などと充てるとしていることも改めて説明した。また、玄葉光一郎国家戦略担当大臣が野党の政策責任者と会談し、説明を行ったことにもふれ、「いずれも国民生活に直結する課題。与野党間で意見交換を進め、合意を目指したい」総理の意志の表れと受け止めるとした。

 郡司議員はまた、郵便不正事件に絡んで前特捜部長と前副部長が逮捕されるに至った検察について、組織のあり方や捜査体制の信頼を根底から覆すものであり、相当な覚悟をもって見直しを行う必要があると指摘した。あわせて冤罪を防止するためにも取り調べの可視化が必要だとして、総理の考えを質した。

 菅総理は検察のあり方について検証していく必要があるとの認識を示し、取り調べの可視化についてはその実現に向けて取り組むこととし、法務省で調査・検討を進めていくと答弁した。

 同時に雇用の問題については「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と強調し、新成長戦略実現会議でも成長と雇用に重点をおいた国づくりを示した総理の姿勢を「誠に良し」と評価したうえで、即効性のある雇用対策に重点を置いて予備費約9200億円を使って新卒者の就職支援に力を入れるなどのプランを提示しているのを踏まえ、実現すべき有効な手立ては何かを質問した。

 菅総理は閣議決定に基づき、予備費を活用した雇用対策を迅速に行っていると説明するとともに、3年以内の新卒者を対象とした奨励金の創設、新卒者を対象としたハローワークの設置、採用意欲の高い中小企業の発表、中小企業と雇用のミスマッチ解消に向けた取組みの強化、介護・医療、農林等の成長分野における雇用喪失の解消等に取り組んでいくとして、雇用環境の改善に全力で取り組む姿勢を示した。

 郡司議員はまた、環太平洋パートナーシップ(TPP)について取り上げた。所信表明において総理が、EPA・FTAを重視し、TPP交渉などの参加の検討を表明したことを受けて、「EPA・FTAを推進するに当たっては、閣議決定された食料・農業・農村基本計画や、新成長戦略で示された食料自給率50%という目標達成や、地域経済の中核と担う農林水産業の発展との両立を図ることが基本」と指摘した。

 大畠章弘経済産業大臣は食の安全等、悪影響がないことを十分に考慮して、農林水産業と連携して検討していくと述べ、鹿野道彦農林水産大臣は国益に照らして検討する、農業再生振興と食料自給率との両立を踏まえていくとの考えを示した。

 郡司議員は、消費税、国家戦略室の強化、地域主権改革、成長戦略、国会改革等についても質問したうえで、「現在の情況は各範にわたり大変厳しいものと認識している。しかし、世論は民主党を中心とした政権に期待を失ってはいない。クリーンな政治実現のために企業・団体献金の禁止などに取り組もう」と呼びかけるとともに、「総理には持ち前の快活さを取り戻していただき、強力なリーダーシップを発揮して『元気な日本を復活』させていただきたいことを要望する」として質問を締めくくった。
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