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2000/07/17
「20世紀でもっともおいしい取引」瑕疵担保特約を焦点に衆院大蔵委が集中審議
 衆院大蔵委員会は17日、民事再生法の適用を申請し、事実上倒産したそごうをめぐる問題で集中審議を行った。民主党からは5人の議員が4時間にわたって質問に立ち、そごう向け債権の放棄に応じる預金保険機構の決定を認めた金融再生委員会の判断や、金融再生委員会が旧日本長期信用銀行(現・新生銀行)の譲渡契約につけた「瑕疵(かし)担保特約」(債権買戻し特約)について厳しく追及した。

 これまでも国会で今回のような事態が起こる危険性を指摘してきた仙谷由人議員は、瑕疵担保特約は金融再生法60条の「付帯業務」に基づくものと久世金融再生委員長が説明したのに対し、「拡大解釈、むちゃくちゃな解釈だ」と強く反論、「こういうことができるかどうか裁判所にもっていくべきだ」と政府の姿勢をただした。

また、仙谷議員は、「政府が決めたことが与党の政調会長の一言でひっくり返った。こんな筋がとおらない政治が行われて恥ずかしくないのか」と強い口調で、与党の私企業に対する介入を批判した。

 次に五十嵐文彦議員が、「長い交渉の過程で債権が劣化したのなら、(売り手と買い手の)ロス・シェアリング(損失の分担)の規定を緊急に作ればよかったのでは」と追及。森事務局長は「金融再生法に規定がなくてもできるか専門家と検討したができなかった。瑕疵担保特約は、民法の範囲内でできる」と答えたが、五十嵐議員は「民法の瑕疵担保、金融に使う手続きではない」と反論した。

 上田清司議員は、そごうの再建計画そのものの妥当性を追及。「提出資料では毎年売上が伸びていく仮定になっているが、百貨店業界構造的な不況に陥っている。この計画を見ていいと思ったのか」と迫ったが、久世金融再生委員長は「私は就任時の事務引継ぎに際しての説明として聞いただけで、詳しい数字をいちいち聞いていない」「この問題は私は十分理解していない」などと、大臣としての責任を放棄したような答弁に終始、納得のいく説明はきかれなかった。上田議員は「どうしてそごうだけがこんなに儲かるのか。あまりにもずさんな判断だ」と批判した。

 中川正春議員は、「そごう問題処理のプロセスを見ると、ルールに基づいた行政になっていない。これでは海外の信用を失う」として、自民党の亀井政調会長の介入についての久世委員長の姿勢をただしたが、久世委員長は「党としての高度な政治的判断として尊重したい」「与党の政策は政府のバックボーン。政府と与党は一体だ」などと述べ、自らの責任はうやむやにするばかりだった。

 最後に質問にたった岩國哲人議員は、「旧長銀の譲渡は、利益が上がれば免税になり、債権は返品自由で元の値段で買い取ってくれ、デリバティブというプロの賭博場での取引の負けまで損失補てんするという、世界でも例のない、『20世紀でいちばんおいしい取引』だ。つけを回される国民はかわいそうだ。このような取引を成立させた政府の責任は大きい」と厳しく批判し、瑕疵担保特約を取り消すよう求めた。しかし久世委員長は「売買の対象に何らかの欠陥がある場合、売り手が一定の責任を持つのが公理だ」との説明を繰り返すだけだった。
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