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2001/02/06
「森首相の辞任こそ危機脱出の道」=久保参院議員会長が代表質問
参院本会議で6日、森首相らの施政方針演説に対する各会派の代表質問が行われ、そのトップバッターとして、民主党・新緑風会の久保亘民主党参議院議員会長が閣僚を追及した。

 久保議員は質問に先立ち、インド西部大地震の犠牲者・被災者と、新大久保駅でのホーム転落事故で犠牲となった李さん、関根さんに哀悼の意を表明。また、日航機ニアミス事故の原因と対策について総理に質した。

 続いて、久保議員は、今日の日本の危機について、「経済の危機」「政治の危機」 「外交の危機」「教育の危機」「財政の危機」という5つの観点から、森総理および関係大臣を追及した。

 まず、経済の危機をめぐっては、ダボス会議での「日本経済の構造変化は予想以上に進行しており、まもなく本格的再生を終え…」といった森総理の発言を取り上げ、そうした楽観的な現状認識の根拠について質した。

 次に、政治の危機の焦点になっているKSD事件について、「これは個人的なスキャンダルにとどまるものではない。まさに自民党全体の政官業癒着体質、金権腐敗体質の象徴だ」と喝破。事件の本質についての認識、不祥事による閣僚辞任が続いていることについての責任などについて森総理を追及するとともに、額賀・村上議員、小山前議員らの証人喚問要求については、坂口厚生労働大臣にも見解を質した。

 外交の危機では、機密費横領事件、在日米軍基地問題、日米関係および日露交渉の展望などについて質問。機密費横領事件については「日本外交の汚点だ」とし、外交・官邸機密費の使途、目的の公開、会計検査態勢の改善などの取り組みについて、森総理、河野外相を追及した。また、日米関係をめぐっては、米兵による不祥事が絶えない在沖米軍基地に対する取り組みの方針、さらに、朝鮮半島を含む東アジアの平和と安定に向けた具体的ビジョンを示すよう迫った。さらに、先行不透明な日露交渉について、その展望・方針を質した。

 教育の危機をめぐっては、森総理が唱える教育基本法改正の理由、基本法見直しを答申した教育改革国民会議の性格、さらに関連して森総理の「神の国」発言に表れている国家像などを追及した。

 経済の危機では、景気対策を優先した100兆円の財政投入の結果を追及、急速な財政悪化の原因に対する認識や日本の財政の中期展望をめぐって、森総理および宮沢財相に真正面から議論を挑んだ。

 最後に、久保議員は、「政治への国民の信頼を回復するために、自ら野に下る決断を」と森総理に突きつけ、代表質問をしめくくった。

 答弁に立った森総理は、日航機ニアミス事故について、国土交通省の事故調査委員会および捜査当局による原因調査が進んでいるとし、今後の対策としては、航空管制業務の再検討や訓練体制強化について議論を始めた、と述べるにとどまった。
 経済情勢をめぐっては、設備、雇用、債務の“3つの過剰”の減少によって総じて危機を脱しつつある、といったダボス会議演説同様の認識を繰り返した。

 また、KSD事件をめぐる責任問題については、「結果として閣僚の辞任を生んだことの責任は私にある」としながら、「今後も必要な施策を推進することで責任を果たしたい」などと述べ、関係者の証人喚問についても「議院運営の問題なので国会で判断してもらう」と答えるにとどまった。

 機密費横領事件については、機密費の運営上、使途を明確にすることはできないとし、会計検査院による検査活動の充実などは検討する、とした。また、在日米軍基地問題では、SACO最終報告の実施を求めて米国政府と協議するとだけ述べ、日露交渉をめぐっても、従来の原則的立場で交渉を続けるとだけ答弁した。

 教育の危機をめぐっては、教育荒廃の原因を「教育基本法が日本の文化・伝統を尊重する精神をはぐくむという点で充分ではなかった」ことに求め、基本法の制約をはずして思い切った改革の議論を行うために教育改革国民会議を発足させた、などと述べた。また、「神の国」発言については、「天皇イコール神ということではなく、現在の国のあり方に反するような考えは持っていない」などと釈明した。

 最後に、財政の危機について、平成13年度予算で国債発行高を減少させたことを踏まえて、今後、構造改革にも取り組むとだけ述べ、答弁を終えた。

 また、経済情勢認識について答弁に立った宮沢財務相は、平成9年以降、財政再建を棚上げにして不況打開に当たってきた結果、スパイラル的な悪化は回避したが、企業レベルの回復が予想外に雇用・家計につながらなかったため、全般的に回復するまでの間、依然として財政出動は必要だ、という認識を披瀝。財政構造改革についても、国の税収増の見積もりが立ち、自律的成長に確信が持てなければ、改革のメドは立たない、としてさらに先延ばしする意向を示した。

 機密費横領事件について答弁に立った河野外相は、外務省調査委員会の報告がすべてだとは考えていないが、強制捜査権を持たないために調査には限界があるとした上で、今後も捜査当局と協力しながら全容解明に努めると述べた。

 また、KSD事件をめぐる証人喚問について見解を問われた坂口厚生労働大臣は、「議院運営の問題なので、国会で…」と首相の答弁を繰り返し、在日米軍基地問題などで答弁した橋本・沖縄及び北方対策担当相も「SACO最終報告の実施に向け努力する」と繰り返すにとどまった。
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