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2001/02/14
<衆院予算委>五十嵐文彦議員が財政問題など質疑
衆議院予算委員会で14日、集中審議が行われ、民主党・無所属クラブから五十嵐文彦議員が質問に立ち、財政問題に詳しい議員ならではの不良債権問題についての深い議論を展開した。

 導入として、五十嵐議員は、「ザ・ワールド・コンペティティブ・イヤーブック2000」で日本の潜在競争力が、90年の3位から、2000年は17位に落ちたことをあげ、失われた10年といわれる経済低迷の要因について「一番大きな問題は不良債権。景気対策に追われ、IT化・金融国際化への認識を誤り、ニューエコノミーへの対策が遅れたのが大きい」と指摘した。

 当初の見方ではとっくに償却されているはずの不良債権が株安などで思った以上に残っており、これが信用収縮を招き、銀行だけでなく一般企業でも取引の慎重化・固定化、生産性の低下をもたらしていると五十嵐議員は分析。

 92年8月当時、首相在任時にこれを最初に指摘しておきながら、実際には実行せず、ソフトランディング路線を選んだ宮沢財務相に対し、「公的関与を強めて一挙に処理した方がよかった」として、政策の誤りを質した。財務相は「関係者の誰もがそういうドラスティックな外科手術を必要としないでも事態は改善するだろうと受け取っていた」と答えたが、五十嵐議員は「そのときの総理大臣は宮沢さんなのだから、体を張って反対する方々を説得するのが本来のリーダーシップだ」と批判した。

 五十嵐議員は「失われた10年」の原因として、「95年の大和銀行ニューヨーク支店での巨額損失事件で日本政府がモラルハザードの問題を軽視したことが、直後のジャパン・プレミアムの原因になった」と指摘。第二の原因として、97年11月に三洋証券の会社更生法適用からコール市場のデフォルトが起きたこと、第三には、98年に大蔵省の接待スキャンダルが表に出たことをあげ、「一挙にシステミックリスクが拡大した」と分析した。柳澤金融担当大臣は「全く同意見だが、不良債権処理は銀行だけでできるものではなく、実体経済の側とシンクロナイズしないとできない」と答えた。

五十嵐議員は「不良債権の処理は他の方法もあったのではないか」として、旧長銀をリスク債権の受け皿銀行にしたり、ローンの証券化など、政府として工夫する必要があったとした。これに対して、柳澤大臣は「証券化といい債権の譲渡といい、日本の融資がコーポレートファイナンスであることが、円滑な処理の障害」と応じ、五十嵐議員も「日本の金融機関ではプロジェクト融資が行われていないが、そうした能力をつけなければいけない」とした。

さらに、五十嵐議員は「日本はIT革命のもたらす金融の国際化を見誤っていた」と指摘。また、土地価格についても、「バブル発生以前から日本においては、収益還元価値以上に資産としての価値が重視され、その分が上乗せされていた」と分析し、「この見極めを間違えたのが、不良債権処理が長引いたひとつの原因」として、デフレ傾向がしばらく続くとの見方を示した。
 
 五十嵐議員は、森首相がダボス会議などで根拠のない楽観論をふりまいている点を、「日本の改革姿勢を疑わせ、信用性を低下させる」と批判。
 また、住宅ローンの負担が相対的に重くなっていることを取り上げ、「税制上の措置など、過去の高いローン金利に国が一定の手を差し伸べることが必要でないか」と提起した。

 最後に五十嵐議員は、公共事業政策を取り上げ、「全く効果を否定するものではないが、乗数効果が落ちて一時的な下支えにすぎない。むしろ呼び水効果がなければ副作用が大きい」と指摘。官僚の権益拡大とあいまって、公共事業の自己目的化が起きているとして、その例として諫早湾干拓事業をあげた。また、3本ある本四架橋が800億以上の負債を抱え、今後10年間で8000億円の無利子援助を政府から受けることを指摘。自民党閣僚や政策責任者が国債依存に楽観論を述べていることを「政治の世界のモラルハザード」だと厳しく批判した。
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