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2001/04/03
「民主党経済対策」決定〜不良債権の抜本処理と雇用のセーフティネット整備に重点
民主党は3日のネクストキャビネットで、不良債権問題の抜本処理とセーフティ・ネットの構築を柱とした「民主党経済対策」を政府与党に先駆けて決め、岡田克也政調会長が発表した。

 党がまとめた経済対策は、まず冒頭で、「強い経済を再生し、日本経済がよみがえる道は、自民党を頂点とする政官業癒着構造を打破し、経済構造改革と財政構造改革を断行することしかない」として、国民の将来不安を取り除くためにも、財政構造改革に着手し、財政健全化への道筋を示すべきと強調。(1)強い経済の再生(2)セーフティネットの整備(3)不良債権の抜本処理(4)金融政策の適切な運営(5)生命保険会社の破たんに備えたセーフティネットの見直し(6)証券市場の信頼回復と活性化−−の6項目からなっている。

●強い経済の再生
「強い経済の再生」に向け、新規事業やベンチャー企業の支援のために創業5年以内の中小ベンチャー企業に対する法人課税の免除を盛り込んだ。また、雇用創出効果の高い重点分野への規制緩和を戦略的に進め、先端研究分野への研究開発投資を積極的に支援する。産業基盤技術を強化するために、すべての大学にインキュベーション(起業家予備軍育成)施設を整備し、ハイテク技術を持つ中小企業への補助金制度を質量両面で拡充。
取引刊行を見直して、中小企業向けの資金供給を円滑化させるとともに、中小企業向けの資本・債権市場を創設し、直接金融重視の構造に変える。

●セーフティネットの整備
 次に、構造改革と不良債権処理の過程では失業率が一時的に上昇する恐れがあるとし、雇用における安心の確保を目指した、「セーフティーネットの整備」を提唱した。
 まず雇用保険の財政安定化のため、2兆円規模の基金を一般財源から創設する。財源は交付国債などを視野に入れながら検討する。
 また、「職業能力開発支援制度」として、雇用保険の給付が終わった失業者と自営業廃業者を対象に、「再チャレンジ生活支援制度」と「再チャレンジ教育支援制度」のふたつを3年間の時限措置として創設。
 生活支援では、国が認める職業訓練制度の受講を要件に、最長2年間、雇用保険の失業給付基本手当の日額最低額と同額を給付する。
 教育支援では、国による職業訓練費用を原則国庫負担とし、専門学校や大学、大学院などを含む民間職業教育訓練機関が提供するものについて、国からの委託機関を大幅に増やし、費用のうち1人につき年間60万円程度までを国庫から負担。残りの費用についても融資制度を設けるなど、労働市場のニーズにあった幅広い職業訓練の拡充を図る。
 高金利時代に住宅ローンを借りた債務者への金利減免などの支援策を検討する。

●不良債権の抜本処理
 不良債権処理では、半年間で金融システム危機を解消し、遅くとも2年以内に抜本処理を完了させる。システミック・リスク(多数の金融機関が債務超過または過少資本に陥るなど我が国の金融機能に著しい障害が生じる恐れ)対策として、ただちに大手銀行などの緊急一斉検査を実施し、債務超過など経営の健全性が確保できない金融機関については破たん処理に移行する。システミック・リスクがあると認められる場合は、株主・経営者の責任の明確化や徹底した経営合理化を前提として、公的資金による資本注入も検討する。
 不良債権の直接償却は、ルールが明確な法的整理と不良債権の売却を基本とし、資本注入を受けた金融機関の安易な債権放棄は認めない。
 金融システムを株価変動リスクから守るため、一定の経過期間を経て、決済業務を行う金融機関の株式保有を原則禁止する措置をとる。
 政府が検討している公的資金による銀行保有株買い上げ機構設立については、多くの問題をはらんでおり、特に公的資金による損失補てんには明確に反対する。
 バブル崩壊後の金融行政を総括するため、国会に金融問題監視院(日本版ペコラ委員会)を設置する。

●金融政策の適切な運営
 独立性を保証されているはずの日本銀行に責任転嫁し、露骨に政治的圧力をかける政府・与党の姿勢は容認できない。日銀が早期に正常な金融政策に戻すよう、構造改革と不良債権の抜本処理を通じた経済再生を図る。

●生保の破たんに備えたセーフティネットの見直し
 経営基盤が弱体化している生命保険会社の破たんは国民生活に大きな影響を及ぼすため、破たんに備えたセーフティネットの見直しを検討する。

●証券市場の信頼回復と活性化 
 市場に対する信頼を失わせる不公正取引に対する罰則を厳格化し、証券取引等監視委員会を金融庁から独立させて、日本版SEC(証券取引委員会)に改組し、監視体制を強化。個人投資家が安心して株式投資を行うことができる環境整備として、投資家保護を強化した金融サービス法をつくる。
 税制を歪めない範囲で、株式譲渡益課税など証券税制を見直す。
関連URL
  民主党経済対策(全文)
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=11430
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