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2001/05/09
枝野幸男議員が代表質問〜改革が本当に進むなら党派を超え支援
9日の衆議院本会議の代表質問で、野党側の2番手として民主党の枝野幸男政調会長代理が登壇した。

 枝野議員は冒頭、「政党のために政治があるのではなく、目指すべき政策を実現するために政党が存在することは言うまでもない。改革が本当に前に進むのであれば、党派を超えてこれを全力で支援したい」と前置き。

 しかし、「問題は改革の中身だ」として、鳩山代表への小泉首相の答弁内容をふまえ、用意した質問に加え、その場でアドリブで質問を加え、論戦を挑んだ。

 まず枝野議員は、「首相が歴代最高と言った森前内閣では実行できなかった改革がなぜ小泉内閣ではできるのか」と、先ほど首相がはぐらかした鳩山代表の質問を繰り返した。これに対し、小泉首相は「人間には個性がある。ある人には森総理は多方面に気配りする性格だった。私は党内バランスに配慮せず、適材適所で人事を断行した」と熱弁を振るったものの、内容は次第に脱線気味に。

 また枝野議員は小泉首相が国債発行額を30兆円に抑える法案を民主党が提出したら検討したいと述べたことに対して、「これまでの国会の慣例では野党がどんな法案を提出しても国会で採決にかけられるどころか審議すらされない」「歴代内閣はそれは国会で決める話だとこういった質問から逃げていた。小泉首相はぜひ逃げた答弁をなさらないように」と釘を指し、挑発された小泉首相は「内容によってはよく検討していきたい。民主党と協力できることがあったら協力していきたい」と答弁。このあたりから民主党議員席からはしばしば拍手と歓声が起き、一方の自民党議員席では苦虫をかみつぶしたような幹部の姿が目立つように。

 社会保障についての質問で、枝野議員は「日本を覆っている閉塞感は将来への不安が大きな原因。これまで以上の便利さ、快適さを求めるよりも、老後や失業など将来の不安を少しでも小さくすることこそが21世紀における政府の最大の役割」と述べ、痛みを伴う改革を進めるためには、将来の不安を小さくするための社会保障水準は可能な限り維持すべきと主張した。
 また枝野議員は、年金改革と医療保険改革について、いつまでに具体的な改革案を示すのかと迫ったが、小泉首相は一般論を並べるだけで時期は明らかにしなかった。
 不良債権問題で枝野議員は、鳩山代表への「不良債権と問題債権とは別」との首相答弁に対し、「過去の金融行政を振り返ると、破たん処理の結果、それまで問題債権、健全債権と分類していたものですら、あけてみたら全く回収不能だった」と反論。問題債権についての徹底的な検査を行うべきと提言した、
 さらに、枝野議員は「多くの中小零細企業では倒産が全財産を失うことに直結するのに、バブルに踊った金融機関の幹部や不良債権の借り手が税金や債権放棄に助けられ、その経営責任を免れるとしたら余りにも不公正」と指摘。また、与党で株主代表訴訟における取締役の責任軽減の議論が起きていることについて、「中小零細企業と比べて明らかに不公正。中小零細企業における経営者の個人補償の問題も同時に対処すべき」として、首相の見解を求めた。小泉首相は「金融面での適切な対処等に努める」など、質問の主旨を取り違え官僚の作文を棒読みするだけだった。

 枝野議員は、小泉首相お得意の「郵政3事業の民営化」に話題を移し、「郵政三事業は民間の補完であるべき。郵便局員が新規の郵便貯金や簡易保険を獲得すると奨励手当が出る。民業圧迫ではないか」と指摘すると、首相はがぜんボルテージを上げ、「特殊法人の資金源も最も大事な行政改革で、枝野議員の意見には賛同するところが多い」「私の内閣になったからタブーはなくなった。国営化しかないという前提はとらない」「旧郵政省の訳の分からない論理は小泉内閣には通用しない」「過去の郵政省の事業には民間の活動を妨害している面がある。小泉内閣では断じて許さない」などと時には演壇を叩いて絶叫。しかし肝心の民営化の段取りや方法には一切触れなかった。この間民主党席からは盛んな拍手がまきおこったが、自民党席では郵政族のボスといわれる某議員が顔をこわばらせながら険しい視線を送っていた。

 台湾の李登輝前総統の入国ビザ発給問題について、枝野議員は「公職を離れた民間人であれば一般の民間人と同じ基準で発給すべき。あらかじめ基準を明確にしておくことで政府内の混乱を防止すべき」と提起。また、金正男不正入国問題では、「政治判断を行ったのであれば認めるべき」と迫ったが、小泉首相は「総合的判断で強制退去措置とした」と抽象的に述べるだけだった。

 また、枝野議員は、選択的夫婦別姓の導入について、長年この問題でリーダーシップを発揮してきた森山法相に期待を寄せたが、法相は「国民の意見がなお分かれている。近く5年ぶりに世論調査を実施し、その結果に注目したい」と今ひとつ腰の引けた答弁ぶりで、不満が残った。

 最後に枝野議員は小泉首相に対し、「本当に政党や過去のしがらみを断ち切って、改革に向かっていくのなら、一人の国会議員として、少子高齢社会を支える世代の一人として、ともに協力する」と述べ、最後まで志を貫くよう強く求めて質問を終えた。
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