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2001/05/18
「国会の不作為責任認め、控訴断念を」国会での決議を民主党が求める
民主党は15日の衆議院議院運営委員会で ハンセン病患者の隔離政策見直しを怠った国と国会の責任を認めた熊本地裁判決を受けて、「国会の不作為責任を認め、控訴を断念すべき」との内容の決議案を提示、各党への同意を求めた。

 民主党案のポイントは、(1)ハンセン病患者に対する強制隔離政策の継続を許してきた国会の責任を認め、多くの物故者らに深い哀悼と謝罪の意を表すること。(2)原告の元患者の方々は高齢で、その人権回復をはかるには一刻の猶予も許されないことを踏まえ、国会は控訴せず、政府にも同様の対応を求めるというもの。

 この日の委員会では、各党とも国会が何らかの意思表示をすることでは一致したが、決議案提出については改めて検討することになった。

 18日の同委員会で、自公保3党側から文案が示されたが、亡くなった人への弔意や、今後の立法を実現する方針は盛り込まれたものの、控訴への判断や、国会の不作為責任には全く触れられていなかった。

 そのため、委員会では民主党案に賛同する野党側と与党側の意見が折り合わず、結論は次週に持ち越しとなった。

 折衝にあたった同委員会理事の民主党の伊藤忠治、今田保典両衆議院議員が、共産党の児玉理事、社民党の保坂理事とともに国会内で記者会見。「国会の不作為は判決に触れられているし、国会のたちで厳しく反省すべきではないか。国権の最高機関としての意思表示が必要だ」「今後の問題を積極的にやること自体には問題がないが、ここだけを抜き出すことは意味が軽くなる」と改めて主張。国会の不作為を認めることと、控訴の断念を盛り込むよう、ねばり強く交渉する姿勢を強調した。
野党側が民主党案を基礎にまとめた決議案は次の通り。

ハンセン病問題の最終解決をめざす決議(野党案)

 熊本地方裁判所は、平成13年5月11日、ハンセン病国家賠償請求訴訟につき、厚生労働大臣と国会の法的責任を認め、請求認容の判決を下した。その中で、我が国での90年間にわたるハンセン病政策が厳しく批判され、昭和40年以降の国会の立法不作為の違法性が指摘された。これは、我が国のハンセン病政策が、世界でも例を見ない大規模かつ長期間の苛烈な人権侵害であったことを反映している。

 ハンセン病が、極めて感染力・発症力が弱いにもかかわらず、世界でも特異な、国の強制隔離政策により、患者・元患者は、深刻な偏見・差別にさらされ、また、療養所において、貧困な医療、強制労働や堕胎・断種の強制など、筆舌に尽くし難い人権侵害を受けた。これまで、隔離の壁の中で、無念の思いを抱いて亡くなった方は、平成12年末現在で23700人を超えており、その大多数は、死してなお故郷に帰ることができないでいる。

 本院は、この判決を厳粛に受け止め、強制隔離政策の継続を許してきた責任を認め、深い謝罪の意を表し、さらに数多くの物故者らに対し、深い哀悼と謝罪の意を表する。そして、平均年齢が74歳を超える高齢者らの人権回復は人道上一刻の猶予も許されないことを踏まえ、控訴しないことを相当とし、ここにハンセン病問題の最終解決を進めるとともに、このような不幸が二度と繰り返されないよう、全力で取組むことを誓う。

 以上決議する。



(なお、18日の毎日新聞朝刊が、与党が決議案を出したためあわてて野党がまとめたと報じたが、全くの誤報。赤松国対委員長が同日の会見で強く抗議した)
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