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2003/01/09
菅代表らがヤミ金融問題の実態を視察




民主党の菅直人代表は9日、利用者の被害が多発しているヤミ金融の実態を把握するため、東京・神田の消費者金融街を視察するとともに、被害者や関係者の話を聞いた。

 午後、神田駅東口に到着した菅代表とネクスト金融大臣の五十嵐文彦衆議院議員は、東京都貸金業協会の石井恒男会長らの案内で消費者金融の店舗がひしめくビル街を徒歩で視察。一つのビル内に貸金業登録業者と非登録業者が集中して同居している状況や、「無条件で融資」「絶対断りません」などの“おとり表現”が書かれたチラシが公衆電話ボックスなどに所狭しと貼られている様子を見て回り、違法な貸し付けを行うヤミ金融業者が急速に増えていることを目の当たりにした。

 その後、菅代表がいくつかのヤミ金融業者に電話で接触。「給料日までに3万円ほど借りたい」という問い合わせに対して、どの業者も、まず名前、生年月日、年齢、住所、勤め先などを確認し、金利についてはあいまいにしか答えない。最初に利用者に関する情報をつかみ、金を即座に貸し付けておいて、後に徹底的に取り立てるというやり口が明らかになった。

 ヤミ金融業者は不況を背景にして急速に増加しており、東京都の場合、登録貸金業者(およそ7千社)のうちの7割以上、非登録業者を含めるとその数はさらに膨れ上がる。ヤミ金融における金利は、出資法で定められた上限金利が29.2%であるのに対して、多くが1000%を越え、中には数万%に上った例もある。しかも最近では、摘発を逃れるために携帯電話で融資を受け付ける「090金融」などの手口が広がってきている。

 ヤミ金融被害者からの事情聴取では、悪質な融資の実態が赤裸々に語られた。主婦のAさんは、中小の消費者金融への返済に困り、電子メールで案内を送ってきた業者に電話で融資を申し込んだ。金利は「1日8円」と言っていたにもかかわらず、5万円の融資額に対して10日ごとに2万円の金利返済を迫られ、3カ月後に元金と合わせて7万円を支払わされたという。こうした融資を数社から受けてしまい、脅しによる取り立てもあって追いつめられ、一時は自殺も考えたとAさんは語った。またBさんからは、1社の返済が滞ると30件くらいの融資の勧誘電話がかかってくるなど、ヤミ金融業者がグループで情報を交換しながら借り手を多重債務に追い込む手口が明らかにされた。

 その後、菅代表と五十嵐議員は、ヤミ金融対策に取り組む日本弁護士連合会の宇都宮健児弁護士らと意見交換。宇都宮弁護士らは、全国のサラリーマン金融利用者が1600万人にも上り、ヤミ金融の被害も急激に増加しているにもかかわらず、取り締まりがまったく進んでいない実情を紹介、違法貸付の民事無効と違法な金利・取り立てへの刑事罰強化を柱とする「ヤミ金融対策法」制定の必要を訴えた。菅代表も、貸金業登録制度の改革や出資法の見直しなどを含め、制度的対応への取り組みを具体的に検討する意向を示した。
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