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2002/06/13
【衆院厚労委】名古屋公聴会、患者が納得できる医療体制の必要を指摘
 13日、衆議院厚生労働委員会は健康保険法改正案をめぐる地方公聴会を名古屋市内で開いた。医療機関関係者、社会保険推進協議会関係者など6人が意見陳述を行い、民主党からは五島正規、山井和則議員が出席した。

 民主党推薦の意見陳述者は愛知大学教授で弁護士の加藤良夫氏。28年間医療事故や薬害の問題に患者側の立場で取組んできた経験をふまえ、医療制度の改革にあたっては、質の高い医療、安全な医療、患者の人権を尊重した医療、そして医療被害者の救済システムが不可欠だと指摘した。また加藤氏は、医療事故の防止と被害者の救済は車の両輪だとし、「医療事故を専門的に扱う第三者機関をおくべき」と提案。さらに「患者の知る権利と自己決定権、インフォームドコンセント原則の普及をはかっていくべきだ」と重ねて述べた。

 名古屋大学医学部名誉教授の斎藤英彦氏(与党推薦)は、個人の少ない経験や勘に基づく従来の治療ではなく、根拠に基づく治療を推進すること、また医療の標準化・機能分化が必要だと提起。また、医療の透明性を高めて、医療を受ける側が選択できる体制を整えるべきだと提案した。さらに「いずれにしても医療保険制度は国民の安心の源である」とし、誰が費用を負担するかという議論のみならず、医療制度全体についてどのような政治設計が適しているかを考え、国民のコンセンサスを得られるような改革を進めることが必要だと述べた。

 日本特殊陶業株式会社取締役総務部長の橋本玄次郎氏(与党推薦)は、「事業者の立場から意見を言いたい」とし、中小企業の現状を考えると、事業者負担をこれ以上出すのは厳しい状況にあると主張。「拠出金を出さないというわけではないが、拠出金に依存しない制度の抜本改革が必要だ」とした。

 また長久手町長の加藤梅雄氏(与党推薦)は、高齢者医療の対象年齢の引上げは、制度上、高齢者を多くかかえる国保は現在以上に厳しい財政運営を強いられることになると指摘。同時に将来像が見えない中での対象年齢引上げに疑問を呈した。しかし、「今回の法改正は内容的には必ずしも十分とは言えないが、当面の対策として財政基盤の強化は必要である」とし、法案成立を望みたいとした。

 愛知県社会保障推進協議会事務局長の加藤留美子氏(野党推薦)は、医療の現場で働き、その後社会保障の推進に努めてきた中で感じた実態と、今回の健保法改正はそぐわないとの見方を示し、「大改悪だ」と厳しく批判した。

 医療法人医真会理事長の森功氏(野党推薦)は「日本の医療は事故の海のなかで行われている」として医療事故の深刻な実態を指摘。それらは医師の能力不足やインフォームドコンセントの欠如などに起因するとした。そして、今回の法改正の中ではそうした観点が軽視されているとし、医師の研修体制確立の必要性などを主張した。

 意見陳述に続き質疑に立った五島議員は、医療費自己負担増によって受診抑制が起こると、結果として生活習慣病の患者などが病状を悪化させ、医療保険料増大につながると分析。「疾病にかからないという予防対策ではなく、いかに疾病をコントロールするか。その体制づくりを考えるべきではないか」と質した。橋本氏らは「早く発見し、適切な処置をとるべき」などとし、加藤梅雄氏は行政としても住民検診などで早期発見に努めているとしながら、問題は発見後に徹底的に追跡していく体制をつくることだとした。これを受けて五島議員は、疾病を総合的にコントロールできるシステムの構築を民主党は目指していると述べた。

 公聴会の質疑の中で加藤良夫氏は「意見陳述をここに出席した委員だけが聞くだけで、明日には強行採決といった話もあるが、きちんと国会審議に反映してほしい」と与党の暴挙は避けるよう釘をさした。
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