ニュース
ニュース
2003/01/23
【衆院予算委】菅代表、小泉首相との初の頂上対決制す


衆議院予算委員会で23日、小泉首相ら全閣僚が出席して、2002年度補正予算の質疑が始まった。民主党からはまず菅直人代表が質問に立ち、激しい論戦の口火を切った。

 昼前に1時間にわたって質問に立った菅代表は、小泉首相に「今日は、はぐらかさないで真正面から答えて欲しい」と前置きしたうえで、イラク攻撃問題などでの対米追従姿勢、総裁就任時の三つの公約の破綻、デフレを加速させ続けている経済無策ぶり、自民党長崎県連幹事長逮捕に象徴される自民党の政官業癒着体質などを次々と小泉首相に問いただした。

 イラク攻撃問題について菅代表は、「国連中心の査察が行われているなかで、その結果も待たずに、新たな国連決議もないまま、米国が一方的にイラクに軍事攻撃を行うことには断固反対だ」と党の立場を表明した上で、小泉首相の見解を質した。小泉首相は、米国の攻撃に正面から言及しようとせず、「最初からはぐらかされた」と批判されると、「現在査察中であり、仮定の質問に答える必要はない。これがはっきりした答弁だ」と開き直った。

 北朝鮮のNPT離脱問題では、「小泉首相が訪朝して拉致被害者を連れ戻したことは率直に評価するが、ピョンヤン宣言に盛り込まれた、核開発をやらないという約束が北朝鮮のNPT脱退という行動によって反故にされたことをどう見るか」との問いに、「宣言が誠実に履行されない限り、国交正常化はない。最終的には宣言を守るように韓・米など各国と協力して働きかけるべき。そんなにあせらなくていい」と正面から答えることを避けた。菅代表は、「あいかわらずはぐらかしている。韓国の金大統領、盧次期大統領が太陽政策の継続を表明し、米国にも働きかけた結果、米朝間対話につながりうる流れがでてきている。しかし、小泉首相の対応はまったくわからない」と批判した。

 小泉首相が総裁就任時に掲げた8月15日の靖国神社参拝、ペイオフ完全実施、国債発行枠30兆円という3つの公約が何一つ守れていないとの菅代表の追及に、小泉首相が「その通りにやっていないということでは守れていない。しかし、もっと大きな問題を処理するためには、この程度の約束を守れなかったということはたいした問題ではない」と開き直ると、委員会室は騒然。菅代表は、「よく国民に分かっていただけたと思う。総理になるときの選挙で言うことは、『この程度』の約束は、あとでいくらでも反故にしていいのだと自ら認められた。これから言うことはすべて『この程度』なのだろう」と小泉首相に厳しく詰め寄った。

 続いて菅代表は、経済問題に移り、不況時にデフレ政策を強行し世界恐慌を招いた米国のフーバー大統領や日本の井上準之助蔵相の例を挙げて、現在の日本が1930年代の状況と共通しているのではないかと指摘。小泉首相が「当時の恐慌では物価やGDPが3割も下がった。今とはまったく違う」とかわそうとすると、「こんな程度の認識の総理のもとで経済運営をやったら、本当に恐慌が起きる」「本当にあきれる。能天気とはこのことだ」と畳みかけた。

 補正予算について、菅代表は「最も重視されるべきは、5兆円の国債追加発行の問題よりも、2.5兆円の税収減の問題だ。来年度当初予算では、税収と国債発行額の間に5兆円しか隙間がなく、もし来年度再び2.5兆円税収が落ちたら、両者は一致し、再来年度以降はクロスしてしまう」と述べ、これを小泉首相の経済失政の無策の結果だと指摘。「見通しが違ってくることはある」と答える小泉首相に「天気予報とは違う。失政の結果だ」と批判した。

 菅代表は、昨年暮れに視察した大阪城公園のホームレス労働者の状況も紹介。「1200円の簡易宿泊所に泊まれるだけの仕事もなく、1個1円になるアルミ缶を集め、NPOの炊き出しで食事している。これが雇用の失われたときの実態だ。350万人の失業者が、ぎりぎりの生活のなかで、人間の命、人間の尊厳すら失われかねない」と指摘したうえで、18日の党大会で自ら発表した雇用創出に力点を置く経済再生プランをくわしく紹介した。小泉首相は、このプランに盛られている良質な賃貸住宅の建設、緑の雇用、NPO税制などを挙げながら「良い提案は受け入れていきたい」と表明した。
記事を印刷する