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2001/10/01
政権交代なくして改革なし!――鳩山代表が迫力の代表質問
1日、衆議院本会議において小泉総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が行われ、そのトップとして民主党の鳩山由紀夫代表が質問に立った。鳩山代表は、米国テロ問題、財政・金融問題、狂牛病問題、選挙制度改革および高祖議員辞職問題、外務省不祥事問題などについて、舌鋒鋭く首相を追及し、民主党の政策的立場を鮮明に示した。

 鳩山代表は、冒頭、米国の同時多発テロによる犠牲者・被害者の方々に哀悼とお見舞いの意を表明。続いて、テロ対策問題に対する民主党の基本姿勢──(1)正義と人道に反するテロには毅然として立ち向かう、(2)米国等のテロ撲滅行動への協力に必要な法整備には、憲法の枠内で周辺事態法の議論を踏まえて取り組む、(3)求められる後方地域支援には、犯人の特定と米国の作戦目的の明確化を求める──を示し、小泉内閣の対応の問題点を具体的に追及した。

■米軍支援の具体策、全く答えぬ小泉首相

 まず、鳩山代表は、テロ事件勃発後の政府の初動対応の遅れ、ならびに9月21日に海上自衛隊護衛艦が米空母キティホークの出港に同行した法的根拠について追及。併せて、インド洋へのイージス艦派遣計画の有無ならびにその法的根拠についても質した。

 小泉首相は、「速やかに対応を指示し、遅れたという指摘は当たらない」と強弁。また、海自護衛艦の活動については、防衛庁設置法第5条18項に基づく「警戒・監視の一環」だとし、今後のイージス艦派遣も同条項に基づく活動として検討していることを明らかにした。

 鳩山代表は、次に、国内のテロ対策について質問。首相が先の所信表明で国内のテロ対策について何も触れなかったことに「唖然とした」と述べた上で、現行法のもとでの政府の危機管理対策の現状、ならびに自衛隊法に定められた自衛隊の警備対象の拡大に関する考えを質した。

 小泉首相は、危機管理対策については「出入国審査の強化」や「情報収集体制の強化」を一般的に挙げるにとどまり、自衛隊の警備対象拡大については「米軍施設や自衛隊施設以外についても、(自衛隊法の)治安出動によることなく警備できるように法整備を進めたい」とだけ述べた。

 また鳩山代表は、先に政府が示した7項目の「当面の措置」をめぐる法整備上の問題について4点──自衛隊の米軍に対する後方支援を可能にする法整備と憲法との関係、新法における自衛隊の活動領域と従来の政府見解との関係、自衛隊の武器使用基準に関する政府見解変更の意図はあるか、他国領域での武器弾薬輸送にも周辺事態法における後方地域支援の規定を適用するのか──にわたって質問。加えて、陸上自衛隊のパキスタン等への派遣を考えているのなら「戦闘区域と一線を画される地域」とは言えないと思われるがどうか、と質した。

 小泉首相は、「自衛隊の活動地域や国際活動の内容についてまだ明らかでないので具体的に言えない」などと議論を回避し、「憲法の枠内で意義のある支援・協力を行う」といった抽象的な答弁に終始、議場からの批判を浴びた。

 鳩山代表はさらに、テロ撲滅のための国際共同行動への参加に際しては、国際的には国連決議、国内的には国会承認を要件とすべきだと指摘、首相の見解を質した。また、国際協力のための新法成立後も、それを適用するためには、米国から犯人特定の根拠および軍事作戦の目的に関する十分かつ合理的な説明があることが条件になるとの考えを示し、現在、どこまで米国側から説明を受けているかを質問した。

 ところが小泉首相は、米軍等への協力の正当性については、今回のテロを「国際の平和及び安全に対する脅威」と認めた国連安保理決議(第1368号)で担保されているという強引な見方を示し、あとは「新法の内容はまだ策定中」などとして答弁を避けた。新法適用の条件についても、「米国は(ビンラディン氏が犯人であることは)疑いないと述べている」「(軍事作戦の目的については)事柄の性質上、詳細は報告できない」などと曖昧な答弁に終始した。

 最後に鳩山代表は、テロリズム撲滅のための国際共同行動において、外交や司法の観点からの取り組みが重要性であることを強調。前者に関しては、貧困問題解消のためのODAの戦略的活用や中東和平外交への取組み強化を、後者に関しては、98年に採択された国際刑事裁判所設立条約の署名・批准などを提案したが、首相はほとんど答えなかった。

■不良債権の「国家的飛ばし」は認めない

 「“カイカク、カイカク”という総理の勇ましい言葉とは裏腹に、国民の目の前にあるものはいったい何でありましょうか。それは、日本経済を瀕死の状態にまで追い込んだ経済のマイナス成長であり、本格的な5%失業時代への突入であり、さっぱり進まぬ不良債権処理と相次ぐ大型倒産という現実であります。そして、資金繰りに苦しむ地域の中小企業群の解体であり、中高年者の自殺の増大です。いまや、人間も地域社会も崩壊の危機にあえいでいます」──鳩山代表は、危機感に満ちてこう国内状況を描き出し、構造改革の現状など国内問題について、首相を追及した。

 まず、危機的な経済状況に対する認識を質すとともに、マイカルの倒産で2万人もの個人投資家が財産を失ったことを指摘、金融機関への緊急一斉検査による厳格な資産査定と引き当ての実施を改めて強く求めた。また、整理回収機構(RCC)による不良債権の買い取りを簿価を基準にして行うという「国家的飛ばし」を強行しないよう断固として要請。さらに、補正予算編成に際して30兆円以下への国債発行額抑制という公約を反古にしないことの確約も迫った。

 小泉首相は、「厳しい状況だが、世界的な経済変動の荒波の中で、工程表に従って改革を進める」とだけ述べ、不良債権処理の停滞を積極的に打開する考えは示さなかった。しかし、RCCの債権買い取り価格の弾力化については「時価を基準に考える」と言明。国債発行額についても、30兆円以下に抑制するという方針は「変わっていない」と明言した。

■高祖辞任後の繰り上げ当選は「やり得」

 狂牛病問題については、農水省の虚偽発表や不真面目な対応に国民の批判が集まっていることについて農水大臣の責任を問うとともに、感染経路の早期解明、直接及び風評被害を受けている関係者への補償と対策、感染の実態や人体への影響などに関する情報開示などについて政府の方針を明示するよう求めた。

 これに対して小泉首相は、「行政への不信を招いたことは遺憾」と述べるにとどまり、今後の対策としても、徹底した情報開示を行うと答えたに過ぎなかった。

 高祖議員の辞職問題では、「“ザ・自民党”の政官財癒着構造こそが根底にある」と指摘。辞職議員の積み上げ票によって自民党の候補が繰り上げ当選する「やり得方式」を改め、辞職分の議席を返上することを要求した。また、総務大臣や郵政事業庁長官の責任問題も追及。加えて、中選挙区制復活に関する考えも質した。

 小泉首相は、高祖辞職問題について国民に一片のお詫びを述べることもなく、「繰上げ補充は政党への支持を示した選挙人の意思に沿うもの」などと開き直った。また、選挙制度については、選挙制度改革協議会でいくつかの複数区をつくる方向で検討していることを明らかにした。

■「あなたには改革の意味がわかっていない」

 また、外交政策をめぐっては、靖国神社参拝についてとりわけ中・韓両国にどのように説明するのかを質問。さらに、数々の外交上の問題を引き起こしている田中外相の外交センスと外務省管理能力について、任命権者としての認識を質した。

 小泉首相は、靖国神社参拝について「二度と戦争を起こさないという平和への誓いを立てるために参拝した」などとうそぶき、田中外相についても「着実な成果を挙げている。国民の視点で外務省改革を進めてほしい」などと述べた。 鳩山代表は、こうした答弁を強く批判し、「あなたには改革の意味がわかっていない。自民党政治に身を任せ、政官業の癒着に手をつけようともせず、主体性のある外交も行っていない。私はあらためて、政権交代なくして真の構造改革なしと確信する」と喝破して、代表質問を締めくくった。
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