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2001/10/11
〈衆院テロ特別委〉政府の現状認識の薄さ浮き彫りに〜鹿野道彦副代表が国会承認の必要性強調
米軍などの活動を自衛隊が支援するためのテロ対策特別措置法案の審議が衆議院テロ対策特別委員会で11日から始まった。
 民主党からはネクスト・キャビネット外相でもある鹿野道彦副代表、安住淳、桑原豊衆議院議員の3名が質問に立った。

 トップバッターの鹿野議員はテロ対策特別措置法案に対する政府の基本姿勢を中心に、外交姿勢などについて小泉首相らに質問。そのやりとりからは自衛隊派遣には国会承認がどうあっても必要であることが強く浮き彫りになった。

 鹿野議員は冒頭で、憲法の枠組み内で自衛隊は何ができるのか。できないのであれば何ができないのか。その点を明らかにしない限り、国民の同意は得られないとの大前提を改めて主張し、議論に入った。

 ブッシュ大統領との会見前に小泉首相が“自衛隊には危険なところに行ってもらわないとならない”と発言した点に言及し、真意を質した。小泉首相が「テロ行為が発生する危険を覚悟で、その抑止のために、ある程度犠牲・危険を覚悟しなければならない意味だ」とかわした。鹿野議員は「国民の危険を最小限にするために最大限の努力をすることこそが首相の役目だ」とした上で、「歴代総理のなかで、国民に危険なところへ行ってもらうしかないと発言した総理はひとりもいない」と批判。発言の重さを認識するよう釘をさした。

 続けて、“テロ対策特別措置法案は憲法9条との間にすきまがある”とした小泉首相の発言について質問。「憲法遵守の大前提のもとに法案は成立するものであり、首相自らがそれに疑問を呈する発言をするようでは、法治国家は成り立たない」と一喝した。

 また、米軍への後方支援はアフガニスタン以外の地域でもあり得るかと質したのに首相は「ある」と明言。これに対して鹿野議員は、米国と軍事行動を共にしている英国のブレア首相でさえ仮定の問題には答えられないとしているとして、「テロ行為などが国際法違反であるかどうかの判断を下すまでには幾重ものプロセスを経る必要がある。その判断が下された後でなければ行動には移せない。小泉首相のように簡単に“あり得る”との判断を下すのは、最高指導者としてはあまりにも慎重に欠く姿勢だ」と強く批判した。

 犯人特定の認識について質したのに対し、小泉首相は「オサマ・ビンラディン氏は国際社会のなかで犯人として認めている。わが国も共有の認識をもっている」とし、犯人特定についても「説得ある情報・意見交換は得ている」と答弁。鹿野議員はその情報を国会に提示するよう求めたが、首相は「情報の性質上公開できないものがある」とかわした。

 鹿野議員は「テロ対策のための自衛隊派遣という、わが国にとっての初めてのことをしようとしているからには、国民の理解が必要。その理解を深めるためには、ギリギリのところまでの国会への報告が不可欠だ」として、首相に重ねて求めた。

 田中外相に対しては、「中東に足を運ぶべきだった」と指摘。テロ根絶に際しては中東諸国と共通認識をもつことが最優先課題だとの視点から、外相が現地に足を運ぶ必要性を訴えた。田中外相は「足を運ぶのも大事だが、先方から来る場合もあり、電話会談もある、バタバタと飛んで歩けばいいというわけではない」と、言い逃れに終始。

 これに対し、鹿野議員は「来てもらったからいいということではない。認識を改めてほしい」と叱責。「今回の事態修復には宗教上中立の立場をとる日本の役割は大きい。“非西洋の近代化をはかった国であり、伝統を守る国だ”とする中東諸国の日本への評価を大いに活用するべき」「貧困問題・人口問題・環境問題・教育問題など、外相が自ら各国で思いを語ることが解決に結びつく」と自らの外交哲学を示しながら、積極外交を展開するよう田中外相に求めた。

 同時にODAのあり方について、“現地の要請に応えて実施する要請型”ではなく、“よりよい効果を生み出すようリードしていく提案型”にするよう外相に求め、「外交は戦略的でなければいけない」と提起した。

 また、パキスタン情勢について、田中外相も杉浦副大臣も「私たちが感じている平穏とはちがうが、トータルで見ると平穏で推移している」と、およそ非常時とは思えない見方を示したのを受けて、鹿野議員は「この事態のなかで平穏なわけがない。われわれ民主党の認識とは大きな隔たりがある」ときびしく批判。刻々と変化する状況を全く把握していない答弁からは、法案成立をめざす政府の基本姿勢が何ら現状把握に基づかないことが露見した。

 さらに、武力行使は行わない・地域は戦闘行為がなされない地域と限定している点について、「具体的にはどこまで何を行うのか?」と質問。これに対して中谷防衛庁長官からは何ら具体的な回答は得られなかった。

 これに対して鹿野議員は「官僚の文章を読めばいいのではない。官僚に判断させてはいけない」と一喝。「PKOのように中立の立場ではなく、アメリカ支持を打ち出したからには、派遣する自衛隊員の安全確保を注視し、政治家が政治家の視点で判断を下さなければいけない」と諭した。

 最後に鹿野議員は“テロ対策特別措置法案という枠組みさえつくってしまえば、歯止めは必要としない”とする政府の姿勢を批判。「実態調査の結果も何ら明らかにしないまま法案審議を進め、その承認をもってよしとするのはどうあっても了解できない」と主張し、基本計画についての国会承認の必要性を強調して質問を終えた。
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