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2001/10/18
<テロ対策3法案>「国会の事前承認」修正案提出実らず、与党修正案可決、参院へ
民主党はテロ対策特別措置法案の修正をめぐる15日の党首会談で、与党側が「国会での事前承認」を受け入れなかったことから、翌16日、緊急のネクストキャビネット会議を開き、同法案に対する修正案をまとめ、提出した。しかし、16日の同委員会での審議終了後の採決では賛成少数で否決され、18日の衆院本会議でも与党の修正を経た法案が可決され、参議院に送られた。

 修正案の内容は次の通り。
第5条 基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動については、内閣総理大臣は、これらの対応措置の実施前に、これらの対応措置を実施することにつき、国会の承認を得なければならない。ただし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動を実施することができる。

2 前項ただし書の規定により国会の承認を得ないで協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動を実施した場合には、内閣総理大臣は、速やかに、これらの対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。

3 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該協力支援活動、捜索救助活動又は被災民救援活動を終了させなければならない。

 16日の衆議院テロ対策特別委員会では、玄葉光一郎議員が修正案の提案理由を説明し、答弁に立った。

 民主党・無所属クラブの渡辺周議員の質問に答えて、玄葉議員は民主党が国会での事前承認を主張した理由について、(1)シビリアンコントロールをより徹底させたい(2)自衛隊の派遣に対して国会も政府とともに責任を負うべきだ(3)周辺事態法等との整合性−−の3つをあげ、「今回の法案で、政府は具体的な活動や対応措置について明らかにしていない。周辺事態法では、具体的な対応措置について、実施の前に国会が議論することができる。PKFの本体業務などにおいても、武器の収集や停戦監視には国会の事前承認を求めている」と説明した。

 これに対して、小泉首相は「新法自体が国会で承認をいただければ時限立法だから、国民の理解が得られるような自衛隊派遣が行われる」との立場をあくまでも崩さなかった。

 テロ対策3法案の採決が行われた18日の衆議院本会議でも玄葉光一郎議員が修正案の提案理由を行ったのに続いて、民主党・無所属クラブを代表して渡辺周議員が討論に立った。
 渡辺議員は、「テロ撲滅にむけたあらゆる外交努力、国内外における徹底したテロ対策を行うこととあわせて、国際協調の枠組みの中で、自衛隊の活用も含めた新たな対応が必要である」との民主党の立場を改めて表明。自衛隊の派遣については、「周辺事態法での議論を踏まえ、憲法の枠内で、しっかりとしたシビリアン・コントロールのもとに行うべき」との考え方を重ねて示した。

 その上で、内閣提出法案と与党の「事後承認」とする修正案について、「PKO活動以外で戦後初めて自衛隊が海外で活動を実施するという、まさに歴史的大転換であり、しかもテロという新たな事態において、従来の後方地域という概念すら曖昧にした法体系の下での自衛隊の派遣については、極めて慎重に行うべき」と指摘。さらに、「外交的に、将来のアフガニスタンや周辺諸国の安定と復興に向けて、わが国が果たすべき役割を考えても、自衛隊の派遣には海外の理解を得られるべき」と主張して、国会の関与としての「事前承認」の必要性を強調した。

 渡辺議員は、法案が成立すれば即座に基本計画が策定され、自衛隊派遣が想定されるにも関わらず、国会での政府側の答弁が終始具体性に欠けていたことに不信感を示し、「事後報告や事後承認では、自衛隊の海外展開が既成事実化している可能性が高く、国会がシビリアン・コントロールのもとに、歯止めをかけることが実質的に困難になる」と批判。「国民から選ばれた国会がしっかりと関与することは、かつて軍部の行動を国会が制御できなかった反省に立つ極めて重要な原則だ」と主張した。

 また、「事前承認では機動性、柔軟性が危惧される」との与党側の主張に対しては、「民主党案でも緊急の場合の事後承認を容認しており、なんら法案として問題はない」と反論し、「なぜ、この修正案が与党に理解されなかったのか、政策論というよりも、与党何の内部事情以外の何者でもない」と厳しく批判した。

 自衛隊法の一部改正案については、緊急性に考慮して政府案に「賛成」を表明。しかし、渡辺議員は、新たに設けられた自衛隊の「警護出動」については、「その対象、範囲、要件、警察との関係など、今後の国会審議でさらに検討すべき」とした。また、秘密保持への罰則強化については、「国民の知る権利や、報道の自由等の基本的人権を侵害しないよう運用すべき」と指摘した。

 海上保安庁法の一部改正案については、不審船に対する必要な対応措置と認識して賛成した。

 各会派の討論後、起立採決が行われた結果、3法案とも賛成多数で可決され、参議院に送られた。
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