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2001/10/22
銀行機能正常化よりも中小企業への「金融機能の正常化」を〜大塚耕平参議院議員が初代表質問
参議院本会議で22日、「銀行法等の一部を改正する法律案」の趣旨説明と代表質問が行われ、民主党・新緑風会からこの夏初当選した大塚耕平参議院議員が登壇、18年間日本銀行に勤務してきた経験に基づき、中小企業金融対策を中心に問題点を質した。

 大塚議員は、「金融再編論議自体は10年も前から行われており、遅きに失した感はあるが、漸く具体的に動き始めたという印象だ」と指摘。同時に「再編の直接の契機が、不良債権処理への対応余力の捻出という後ろ向きの要因であることが、大きな問題を発生させている」とした。

 大塚議員はさらに、“銀行自体の正常化”が金融行政の最終目的ではなく、“金融機能の正常化”こそが最終目的だと指摘。そして、“銀行自体の正常化”のために、金融当局が行っている「激変緩和措置」は、“金融機能の正常化”のためにこそ必要ではないかと問題提起した。

 そして、「不良債権処理に起因した“貸し渋り”“貸し剥し”の横行については、話題に事欠かない」と指摘。「不良債権処理に起因して、銀行が突然“今回から継続しません”と企業に宣告し、多くの中小企業が困惑しているのが実情だ」とし、「少なくとも、銀行側の申し出が合理的であるか、銀行法第1条に基づき、チェックする仕組みが必要だ」と述べて、柳沢金融相の見解を求めた。
 これに対し、柳沢金融相は「個々の融資対応は各銀行の自主的な判断によって決定されるべきもので、監督当局が介入して継続融資の打ち切りをチェックする機能をつくることはむずかしい」とした。

 次に、大塚議員は、竹中経済財政担当相が著書『竹中教授のみんなの経済学』で述べている“日本の銀行貸出は対GDP比で100%以上あり、貸し過ぎ。この比率を70%まで下げることが必要である。米国ではこの比率は35%であり、70%でもなお貸し過ぎだ”との主張について、「100%を70%まで下げるといえば、金額にして150兆円の銀行貸出を削減することになる。いつまでにすべきと考えるのか」と迫った。また、「銀行貸出を代替する直接金融市場などの整備も必要」とし、そのビジョンとプランの提示を求めた。
 竹中大臣は「100%を超える水準は高すぎると今でも思う。これがバブルに向かう要因となった」とし、「従来型の相対型の間接金融に過度に依存した状況を、市場型の間接金融に改めていくことが重要だ」との持論を展開。政府の「改革先行プログラム」で、個人投資家の証券市場への信頼向上のためのインフラ整備などを行っていくとしたが、具体的期間については「相当の長期を要する」と述べるにとどめた。

 また、竹中大臣が6月の記者会見で、「不良債権の処理は特定業種の大企業の問題」と答えている点に言及。中小企業への影響をどう考えているのか、4月の「緊急経済対策」でも、不良債権処理に関連して、中小企業に対して金融面で適切に対処すると明記されているとして、大臣の認識の甘さをついた。
 竹中大臣は「今も本質は特定業種の特定大企業に集中している」としたものの、「同時に中小企業にもある程度の影響が及ぶのは避けられない」と言葉を重ね、状況認識の深まりは何ら感じられなかった。

 続けて、塩川財務相に対し、「現在、バブル期以上の金融緩和が行われ、マネーフローは企業金融市場に向かわずに、事実上、国債のファイナンスに回っている」との見方を示し、見解を質した。

 さらに大塚議員は、柳沢金融相が最近、銀行の不良債権問題に関連して“公的資金の再投入の必要はない”と発言していることに触れ、「このように公言して憚られない以上、金融庁による特別検査を実施し、例えば、来年3月決算において公的資金再投入ということになれば、その発言責任には重いものがある。金融担当大臣として現状認識が甘かったという謗りは免れない」として、公的資金再投入が必要になった場合の責任の所在を質した。

 金融相は「個別行において自己資本の充実が必要となった場合は、早期是正措置の枠組みのなかで当該行自らが資本の充実を図るべき」とし、「万一増強を行う場合は法令に従い、経営責任を明確化することが前提」と断言。制度の的確な運用こそが自分の責務だと述べた。

 大塚議員は「関係大臣のご答弁が十分に納得できない場合には、再質問させて頂くことを、予め申し添えさせて頂く」と通告して、質問を終了した。しかし、各大臣の答弁終了後には答弁を不足と見て、「中小企業金融が非常に逼迫していて、ここに何か手を打つ必要はないのかとトータルとして質問したのだ」として、マネーサプライが増えているのに銀行貸し出しが減り、国際の銀行の保有高が倍増していることへの解決策などを再質問した。

 また与党席からの激しいヤジに対し、最後に「与党席からやじっていただき、国会議員になった気がした」とし、新人議員とは思えない堂々とした余裕の質問を展開した。
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