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2004/01/30
【衆イラク特】自衛隊派遣承認案を与党が強引に採決




 衆議院イラク支援特別委員会で30日、自衛隊派遣の国会承認に関する質疑が小泉首相出席のもとで行われた後、与党が承認案を強行採決。野党は、十分な審議を求め、強く抗議している。
 
 質疑では、民主党・無所属クラブから生方幸夫、岡島一正、池田元久、藤田幸久、松本剛明、山田正彦、原口一博、末松義規、中川正春、前原誠司の各議員が質問に立った。

 最初に質問に立った生方議員は、前日の委員会質疑を引き継ぎ、陸自先遣隊がサマワ市評議会議長に会ったとの誤った答弁を行った石破防衛庁長官の責任を追及。石破長官は「確認したら議長代理だった」として「お詫びをし訂正する」と述べたが、生方議員はサマワ市評議会が解散しているにもかかわらず「機能している」とした答弁も問題にし、「無責任発言を繰り返す長官のもとでは議論ができない」と批判。石破長官の罷免を要求した。

 続いて岡島議員は、外務省・防衛庁が現地でサマワ市評議会の「代表」だと紹介された人物を誤って「議長」と判断した経過を質し、「情報がどう収集され、どういうルートで上がってくるのかわからない」と指摘。また、サマワ市評議会が解散しているという情報についても民主党議員が委員会で指摘してから丸一日も確認せずに放置していたことを追及し、自衛隊派遣の判断の前提となる現地での情報収集が破綻していることを突きだした。

 池田議員は、サマワ市評議会についての小泉首相の発言が“存在する”“存在しない”“あるかも知れない”とぶれていることを指摘。首相は「サマワ市の治安状況にとって決定的な問題ではない」などと逃げたが、池田議員は「こんなことで自衛隊が派遣できるか」と厳しく批判した。また、池田議員はサマワ周辺における襲撃事件などの発生状況の情報を公開するよう求めたが、石破防衛庁長官は「情報提供国のインテリジェンスの問題」などとして拒否した。

 藤田議員は、陸自先遣隊の報告ではサマワ市評議会が同市の治安情勢を判断する主要な根拠とされているにもかかわらず、実際に先遣隊が評議会を訪ねたのは29日が初めてであることを指摘し、「先遣隊の調査に信憑性はない」と断じた。

 松本議員は、「評議会の存否に関わらず治安の安定には変わりないというが、先遣隊報告から評議会の記述を除けば、残りは『総合的に安定している』という言葉だけだ。これでは承認するわけにはいかない」と首相に詰め寄った。しかし首相は、「先遣隊報告がすべてではない」などと逃げの答弁に終始した。

 山田議員は、イラクの大量破壊兵器調査団の団長だったD・ケイ氏が大量破壊兵器はなかったと発言していることを取り上げ、「大量破壊兵器があると断言してイラク攻撃を支持した責任をどうとるのか」と首相を追及したが、首相は「証拠がなかったからといって、ないとは断言できない」などと相変わらずの詭弁ぶりだった。

 原口議員は、イラクの治安安定の根拠とされたサマワ市評議会について「実際に機能していれば(政府判断は)間違っていない」とした上で、「住民の意向を反映した構成のため、機能している」「サマワ周辺では連合軍への事件発生はない」とした政府報告の信憑性を追及した。川口外相は治安について「政府は確たる判断を下す状況にない」などと答弁。市内に続く道路での襲撃事件発生を指摘した追及に石破防衛庁長官は「自衛隊が行動するのはサマワ市内だ」と開き直りに終始した。原口議員は「詭弁を弄して国民への議論を逃げる姿勢だ」と糾弾。情報の不透明性が浮き彫りになった。

 末松議員は「テロ撲滅のために(イラク攻撃を)始めたが、国民はより大きなテロの脅威に立たされている」と断じ、攻撃を支持した小泉首相の責任を問題視した。サマワ市評議会の存在が否定されるなか、自衛隊が連携する政治組織の存在を末松議員は質したが、石破防衛庁長官は「行政について責任をもっているのはCPA」などと答弁。市民ニーズに則した活動が成立し得ない実態が明らかになった。また、政府報告書に外交官殺害の調査結果が盛り込まれていない点を末松議員は「不満だ」とし、政府の調査能力なさを指摘。自衛隊派遣を決断するには程遠い実態を指摘した。

 中川正春議員は、まずこの日の委員会運営について「強行採決などあってはならない」と釘を刺した。さらに、シーア派が直接選挙を求め、反米色を強めていることに対して「各地の評議会の解散の動きがあり、また、デモがサマワでも起きている。これをどう考えるか」と質した。しかし首相は、「民主党は治安が良くても(派遣に)反対なんでしょ」などとごまかしに終始した。
 
 前原議員は、「明らかになっている情報不足・誤認にも関わらず自衛隊を派遣して万が一のことがあった場合、どういう責任をとるのか」と厳しく首相に質した。しかし首相は、「自衛隊が立派に任務を果たせるようにするのが私の責任」などとはぐらかし続け、派遣の実施について全責任を引き受けるという態度はまったく見られなかった。
 
 各党の質問が終了するやいなや、自民党委員が質疑打ち切り動議を出し、与党が強引に委員会採決を強行。民主党をはじめ野党は採決の無効を主張し、委員長に強く抗議した。

 その後、与党は単独で予算委員会を開会。平成15年度補正予算案の採決を強行した。
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