民主党の枝野幸男政策調査会長は5日、定例の記者会見を行い、『次の内閣』(ネクスト・キャビネット)において「民主党平成15年度予算案」について協議し、閣議決定したことを明らかにした。
冒頭、枝野政調会長は、今回の民主党予算案について、1.100万人分の仕事を作る、2.次世代への責任を果たす、3.自由に使えるお金を地域に渡す、の3点をテーマにしたものだと説明。また、「従来、予算審議の最終局面で政府の予算案に対して組み替えの要求を行っているが、今回は政府の予算案を前提とせず、われわれが政権をとった場合に備えて昨年から検討してきた」と編成の経緯を明らかにした。
その上でまず、歳入(81.8兆円)の算定のスタートとして政府税収見込み(41.8兆円)を取り上げ、「われわれの予算案を執行していけばそれも可能であるが、政府の予算案ではこの見込みは幻想だ」と指摘。また、発泡酒の増税に見られるような政府税制改正についても全面的に効果のないものだとし、民主党案では消費拡大による経済活性化の観点から、ローン利子控除制度や不動産業登録免許税定額手数料化などを含む3.3兆円の減税を盛り込んだことを明らかにした。同時に、環境税の創設、自動車関連租税の減税、道路特定財源の一般財源化なども採り入れたことを説明した。
歳出については、公共事業費、地方への補助金の一括交付金化に伴う削減、特殊法人等向け支出等を合わせ、政府案よりも8.8兆円の削減を行ったことを説明。その削減分を、1月の「経済財政に関する基本方針」で打ち出した5つの目的――1.潜在的需要を掘り起こす、2.将来不安の解消を図る、3.仕事を生み出す、4.地域の個性を生かす、5.必要な資金を循環させる――に沿って配分することにより、100万人の仕事を生み出すことが可能になる、とした。また一括交付金制度について、「現状の自民党政治に見られる利権に絡む補助金制度をなくし、地域に根ざした自主的な判断でお金を使えるようにする効果的な交付金制度を創設することが重要」と語った。
最後に枝野政調会長は、民主党予算案の総括として「従来型の公共事業を減らして、中小企業の支援や社会保障の充実を目指し、地方が自由に使える予算を編成した。この予算案は現在の政府・与党では編成することは不可能であり、国会の場で広くアピールしていきたい」と語った。
【民主党予算案概要】
1.予算規模
歳入歳出の規模は、政府案と同じ81.8兆、一般歳出も同様の47.6兆
2.税収
○政府の税制改正は行わないこととし、先行減税分1.5兆は見込まない。
○民主党の税制改正案に則り、「ローン利子控除制度」の創設、1.3兆規模の政策減税など約3.3兆の減税を行う。
3.環境税創設
○上記の税制改革の他、約9000億円規模の環境税を創設する。同時に自動車関連諸税の減税を行うことにより、税収中立とする。
○環境税収の使途は、地方の道路整備財源及び新エネルギー開発普及等温暖化防止に有用な分野に優先的に配分する。
○国、地方における道路特定財源制度は廃止する。
4.歳出の見直し
○公共事業の大幅見直し、民主党「特殊法人改革案」に則った特殊法人・独立行政法人等向けの支出の見直し等で8.8兆円の歳出を削減する。
5.雇用と安心を生む分野への重点配分(総額8.8兆・雇用創出100万人)
○上記歳出によって生まれた財源を雇用と安心を生む分野に重点配分する。これによって100万人の仕事を生み出す。
○グループホーム(高齢者・障害者向け)1万戸増設、居住空間倍増・住まいの質向上、「30人学級」の推進など、現在のニーズに合ったサービスを提供し、潜在需要を掘り起こす(配分額=4.9兆・雇用創出=69万人)
○医療費3割負担凍結、介護保険国庫負担拡大、障害者ホームヘルプ事業拡大などに重点配分し、不安を解消する(配分額=0.9兆・雇用創出1万人)
○国民負担増無き雇用保険の財政基盤強化で不安を解消し、職業訓練に重点を置き人材を育成し、働く場としての新たな産業を起こす。若者の無業対策に全力で取り組む(配分額=2.2兆・雇用創出26万人)
○中小企業が、新しいニーズに迅速に取り組めるよう、必要な資金が円滑に調達できる環境を創る。(配分額=0.8兆円)
6.「一括交付金」の創設
○民主党の従来の政策に則り、「一括交付金」を創設する。15兆円規模の裁量可能な資金を地方に渡すことによって、地域の活力を高める。
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